「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2019年06月16日

「バスで血まみれになってる私の姿をご覧になったかと思いますが、そんなあなたも、ホモフォビアというものすべてについてちゃんと怒ってくれているのでしょうか」

今月7日、女性2人が血だらけでロンドンのバスの中に座っているというショッキングな写真がTwitterにどっと流れてきた。日本語圏でも話題になっていたから、見た人も多いだろう。

07june2019.jpg私が見た画面では多くが報道記事のフィードで、写真はTwitter Cardで表示されるようになっていたのだが、中にはローカルに保存した写真を単独でツイートして、自分の言葉を添えたものもあったかもしれない。

ショッキングだったのは写真だけではなかった。彼女たちはカップル(同性カップル)で、5月30日にロンドンのカムデンのバスの中で「今ここでキスしてみろよ」などと男たちに絡まれ、それを拒んだら、こういうふうになるまで殴られたという。あのカムデンでこんなことが起きるなんて!

あまりに痛々しい写真で、写真を「さらす」ようなことも殴られた彼女たちが気の毒な気がしたが、記事のメモということでGuardianのフィードとMetroの記事のツイートを何件かRetweetした。

その後、警察が動いて加害者が特定され(ロンドンのバスの中は、IRAが暴れていたころからの「テロ対策」でカメラが設置されている)、翌日には5人が逮捕されていた。5人ともティーンエイジャーだ。

2人の女性のうち髪の色が濃いのはメラニアさんという方で、姓も職業も報道されていたが、もう1人の金髪の女性は「クリス」というファーストネームしか報道されていなかった。

さて、6月16日のガーディアンのトップページに「バスで血まみれになってる私の姿をご覧になったかと思いますが、そんなあなたも、ホモフォビアというものすべてについてちゃんと怒ってくれているのでしょうか」(超訳)という見出しが出ていた。筆者名はひとこと「クリス」。スーダンやらイランやらで10日近く前のロンドンでの出来事のことは正直忘れかけていたが、ああ、あのカムデンで殴られた人かと思い、記事を読んでみたら、これはすごい。低気圧だの暑さだのでダルさMAXなのだが、思わず超訳に着手するレベルだった。

You saw me covered in blood on a bus. But do you get outraged about all homophobia?
Chris
https://www.theguardian.com/commentisfree/2019/jun/14/homophobic-attack-bus-outrage-media-white

【以下、超訳(原文の文意をゆがめてはいないつもりですが、読解を間違えていたらすみません)】
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posted by nofrills at 18:00 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

「英国ではサッカーは労働者階級のスポーツ」という類型に対する強烈なカウンターをどうぞ

英国をめぐる類型(ステレオタイプ)の中に、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というのがある。(それと同時に、フットボーラーがファンに丁寧に応対したりしていると「さすが紳士の国」云々のナレーションがつけられたりするのでわけがわからないのだが。)

「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というのは、それ自体は真である。1990年ごろまではそう言われていたものだし、ほかのスポーツ(特にラグビー)と比較するとサッカーは際立って「労働者階級」的な存在だ。

しかし、少なくとも21世紀の現代においては、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」をひっくり返して「労働者階級以外はサッカー以外のスポーツに入れあげる」とか、「サッカーは労働者階級だけのスポーツ」と言ってしまうのは、真ではない。

それでもしかし、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というわかりやすい言説は、ときに「サッカーは労働者階級だけのスポーツだ」と尾ひれはひれをつけながら、今も流通している。「それ、必ずしも正しくないですよ」ということを指摘したい場合は、普通に「今はそうとも限らないですけどね」と言うこともあるが、黙ってほほ笑んで聞き流しておくこともあるだろう。

いずれにしても、「労働者階級だけ」でないことをはっきり示すエビデンスがあれば、「サッカーは労働者階級だけのスポーツだ」という極論を知ったかぶりで吹聴するような人々の発言は無視すべきものだということを、説得力をもった形で示すことができるわけで、その機会を待ち望んでいた人も少なくなかろう。

そしてついにその機会が、まさに願ってもないような形で、我々の前に訪れたのである。

ケンブリッジ公、つまりウィリアム王子といえば、英王室メンバーの中でも最も真顔力が足りていない人である。昨年のヘンリー王子の結婚式の際、あまりに激しいアメリカの黒人教会式の流儀に、エリザベス女王をはじめ王室の方々が居並んだ席のなかでただ一人、顔を真っ赤にして下を向いて肩を震わせているのが中継されていた(ちなみにお父さんのチャールズ皇太子は、口元が多少ひくひくしながらも鼻で大きな息をするなどして持ちこたえていたし、お祖母さんのエリザベス女王に至っては完璧な真顔力の持ち主としての実力をこれでもかこれでもかと見せつけていた)。

そのウィリアム王子がサッカーの「アストン・ヴィラFC」(バーミンガム拠点)のサポーターであることは、英国では広く知られているそうだが、現在チャンピオンシップ(二部リーグ)に落ちているアストン・ヴィラが、来季におけるプレミアリーグ昇格をかけた試合が27日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われ、ウィリアム王子もVIP席で熱戦を見守った。試合は終盤、アストン・ヴィラが1点リードしたまま、アディショナル・タイムに入り、VIP席ではウィリアム王子が(フットボール・ファンにはなじみ深い)例の表情で(つまり感情をむき出しにして)、試合を見守っていた。

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posted by nofrills at 23:53 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月11日

虚構新聞さんの "バンクシー?の「『バンクシー?のネズミの絵』見物客の絵」に見物客殺到" の内容を、英語でわかる(かもしれない)ようにしてみた。

それは、おもしろい冗談記事を読んだあとで書いた、何気ない一言だった。

バンクシー?の「『バンクシー?のネズミの絵』見物客の絵」に見物客殺到 東京

これは英訳したらバンクシーを笑わせることができるのではないか。

2019/05/10 11:46


そして、この投稿から数時間後……

bhatenanejpentrykyoko-npnet2019051001.jpg

……

bhatenanejpentrykyoko-npnet2019051001b.jpg

これがまだこのあとも増えているのだ……。

magao.png

……やるっきゃない(土井たか子調で)。俺、この仕事終わったら終わる前でも、Banksyから笑いを取るんだ。


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posted by nofrills at 01:40 | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月30日

ロンドン、SOHOパブ爆破テロから20年 #AdmiralDuncan

あれからもう20年にもなる……1999年4月30日、ロンドン中心部の繁華街SOHOのオールド・コンプトン・ストリートにある「アドミラル・ダンカン」というパブに対する爆破テロがあり、何十人もが負傷し、3人の尊い命が奪われた。うち1人は妊娠中の女性だった。

このパブは「ゲイ・パブ」として知られていたが、パブの客はさまざまで、要は「LGBTコミュニティに理解がある不特定多数の人々」がネイルボムの標的にされるというテロ事件だった。

爆弾犯はその前の2週間にわたって攻撃をしかけていたネオナチ活動家だった。この男は、まずは17日の土曜日に黒人街であるブリクストンのエレクトリック・アヴェニュー(19世紀に最初に街頭が電化された通りだが、現代では庶民の商店街に鍋釜たわしの類や衣類を扱う露店が立ち並ぶ通りとして人々を集めている)を標的とし、翌週、24日の土曜日にはバングラデシュからの移民が多く住むイーストエンドのブリック・レイン(ここも露店市で有名)を標的として爆弾テロを行なっていた。ブリクストンでは48人、ブリック・レインでは13人が負傷した。

いずれも、「IRAではない」ことは最初から明白で(1999年はまだ英国、いやイングランドは「爆弾テロといえばIRA」の時代だった)、ブリクストンのボムの後、18日(月)には戦闘的極右(ネオナチ)集団C18から犯行声明の電話があったにもかかわらず、警察はぼーっとしていたらしい。「極右テロ」が警察でさえ深刻に受け取られていなかった時代だ。

当時のBBC記事 (via wikipedia):

Combat 18 'claims nail bomb attack'
Monday, April 19, 1999 Published at 18:47 GMT 19:47 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/323295.stm
A man claiming to be from the extreme right-wing group Combat 18 has told police that the organisation was behind Saturday's Brixton nail bomb attack.

The 999 telephone call was made at 0606 BST from a telephone box on Well Hall Road, south-east London - near where Stephen Lawrence was murdered in April 1993.

But Scotland Yard detectives said they were keeping an open mind about the motive behind Saturday afternoon's attack which injured dozens of people and have not ruled out the phone call being a hoax.

The head of the Metropolitan Police's anti-terrorist branch, Deputy Assistant Commissioner Alan Fry, said: "This call should be taken with extreme caution.

"This line of inquiry is being taken very seriously but there is absolutely no evidence and there is no intelligence at this time to support this claim, and I can only reiterate to the public that no motive has been ruled out at this time of the investigation....


こうして警察が「犯行声明はあったが証拠がない」と言ってる間に次の爆弾が準備され、ブリック・レインで13人を負傷させ、さらにその次の爆弾はSOHOで79人を負傷させ3人を殺した。

そうなってからようやく逮捕された容疑者はナチズムを信奉する男で、当時22歳。数年前に極右政党BNPに入って「ターナー日記」に触発され、BNPではヌルいということで離党して、より小規模で過激な「ナショナル・ソーシャリスト・ムーヴメント」(この集団はC18の分派である)に加わっていた。

裁判の結果、男は有罪となり、少なくとも2049年までは仮釈放なしということで収監されている。

以上、概要などはウィキペディアにまとまっている。
https://en.wikipedia.org/wiki/1999_London_nail_bombings

事件当時、私は既に自宅でインターネットを使っていたが、情報環境は今とは比べ物にならないほど貧弱で(SNSどころか、YouTube以前、それどころかGoogle以前の時代である)、1日に1度配信されてくるガーディアンのニューズレターやいくつかのメーリング・リストのほかは、自分でBBC Newsやガーディアンのサイトを見ていたのだったと思う。入ってくる情報はとても少なかったが(何しろ映像なんか流れてこない時代。BBCのニュースも部分的にRealPlayerで提供されていれば御の字だった)、極右の爆弾テロであることはすぐにわかった。

その後、有罪となった男はその界隈で崇拝される存在となり、いくつかの(彼らにとってこれほど「成功」しなかった)極右の爆弾事件に関連してその名が言及されている。「学校での銃乱射」におけるコロンバイン高校銃撃事件の2人(これも今年4月で20周年だった)ほどではないにせよ、同種の「崇拝」の事例だ。

さて、この連続爆弾テロから20年となる今年4月、英国では「事件を振り返る」動きがよく見られた。例年4月17日も24日も30日も、関係団体でなければ特に何も行われていないのだが、今年は大手でも特集が組まれていたようだ。BBC Newsnightがまず、4月16日に一連の事件をまとめた映像を出した――犯人の名前に言及せずに。

映像では、当時の警察の記者会見の様子などがわかる。記者に対して警官が示している「物証」の釘(爆発物の中に仕込まれていたもの)を見るだけでぞっとする。こんなものを大量に詰め込んだ爆発物が、間口が狭く人が密集したパブという空間で爆発したのだ。そして同様のネイル・ボム事件は(どの程度報道されているかということはさておき)その後も起き続けている。例えば2010年にはウエスト・ヨークシャーで火器やらネイルボムやらが大量に押収され、BNPのメンバーだったことのある男が逮捕・起訴の末、有罪となっている(がこのときは「テロリズム」として扱われもしなかったはずだ)。それから、2013年にはウエスト・ミッドランズでモスクに対してネイルボムが仕掛けられたが、たまたまラマダン中で礼拝の時刻がずれていたため、死傷者を出さずに終わった。このボムの犯人は礼拝帰りのイスラム教徒の老人を刺し殺して有罪となったウクライナ人の男で、この男はほかにも複数件のボム攻撃を行なっている。

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posted by nofrills at 22:16 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

当ブログがはてなブックマークでどうブクマされているかを追跡しなくなった理由(正確には、追跡できなくなった)

1つ前のエントリ、『2019年4月時点: Amazon Prime Videoで見られる映画にはどんなものがあるか(北アイルランド関連、シリア内戦関連など)』は、おかげさまではてなブックマーク(以下「はてブ」)で25件を超えてブクマしていただいている。Brexitに関連してアイリッシュ・ボーダー(日本のマスコミ様の表現では「国境」)への言及が増え、またグッドフライデー前夜にジャーナリスト殺害というひどいことが起きるなどしていて北アイルランドという場所について初めて関心を持ったという方も大勢おられると思うが、文字数も少なく内容も薄っぺらい報道記事から何かを語っちゃう前に、No Stone Unturnedのような作品を見て、実際にどのようなことが起きていたのかを把握するための一助となれればと思う。(もちろん、和平合意から20年以上経過しているときに「紛争」だけで北アイルランドを見てしまうのもよくないわけで、関心を持った方には、The FallやDerry Girlsなど、オンライン配信で見られる北アイルランド製の娯楽映像作品にも接していただきたい……Derry Girlsは「紛争」が背景として絡んでるけどコメディ。)

はてブでのコメント一覧を非表示にしてある当ブログで、はてブの件数が10件を超えることはまれである。そして、主観的に「いっぱいはてブがついた」と感じられるときは、以前は、妙な言いがかりをつけられること(そして「炎上」させられること)を避けるためにも、blog authorには閲覧できるコメント一覧の画面をキャプチャし、必要に応じてマスクするなどして、当該エントリの末尾に付け加えていた。例えば2016年11月5日のこのエントリや、2017年6月のこのエントリのように。

最近、一定数のブクマがついたエントリについて、この「ブコメ一覧のキャプチャ」がアップされていないことについて、疑問をお持ちの方もおられるかもしれない。よほどめんどくさがっているのだなと思われているかもしれないし、「何か都合の悪いことを隠している」とさえ疑っておられる方さえいらっしゃるかもしれない。

だが、結論から言えば、これは私の意思でやめているのではない。

いつからか、はてブでは「ブコメ一覧のキャプチャ、というか「blog authorによるブコメ一覧の表示」ができなくなったのだ。

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2019年04月28日

2019年4月時点: Amazon Prime Videoで見られる映画にはどんなものがあるか(北アイルランド関連、シリア内戦関連など)



基本的に、洋書・電子書籍などAmazonでなければ手に入らないものでなければAmazonは使わないようにしているのだが、Amazon Primeは使っている。ここでしか見られないドキュメンタリー映画があるためだ。

以下、そのドキュメンタリーをはじめ、Amazon Prime Videoで見られる映像作品を、北アイルランド・英国関連、紛争関連のものを中心に列挙しておこう。連休で何かお探しの方に役立てていただければと思う。

目次:
■北アイルランド関連:
1. No Stone Unturned (ノー・ストーン・アンターンド)
https://amzn.to/2V24qvK

2. Shadow Dancer (シャドー・ダンサー)
https://amzn.to/2UN2Ed3

3. Five Minutes of Heaven (レクイエム)
https://amzn.to/2PBng6T

■ジョン・ル=カレ原作:
4. Tinker, Tailor, Soldier, Spy (裏切りのサーカス)
https://amzn.to/2Vy4Yce

5. Our Kind of Traitor (われらが背きし者)
https://amzn.to/2Vui7CV
※2019年5月1日まで!

6. A Most Wanted Man (誰よりも狙われた男)
https://amzn.to/2GPmY9L

7. The Night Manager (ナイト・マネジャー)
https://amzn.to/2GOdxHt
※連ドラだから長い。

■「テロとの戦い」関連:
8. Eye in the Sky (アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場)
https://amzn.to/2DD8ojF

9. Zero Dark Thirty (ゼロ・ダーク・サーティ)
https://amzn.to/2Lbby4j

10. Highway to Hell: The Battle for Mosul (地獄への道:モスルの戦い)
https://amzn.to/2GO1CJI

■シリア内戦:
11. City of Ghosts (ラッカは静かに虐殺されている)
https://amzn.to/2UJxlzN

12. Return to Homs (ホムスへの帰還)
https://amzn.to/2PyhqTK

■ほか……:
その他……


以下、詳細。

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2019年04月20日

北アイルランド紛争の死者が1人、増えた。(デリーの暴動でジャーナリスト死亡)

1994年のProvo停戦&ロイヤリスト諸組織停戦から四半世紀が経過する年の、1998年の和平合意から21年目のグッド・フライデー(聖金曜日)を迎える前の晩に、「北アイルランド紛争の死者」が1人増えた。民間人でジャーナリスト。女性。将来を期待される29歳で、数週間内にも書籍が出ることになっており(校了してたみたい)、この先の出版の契約もあった。専門分野は「紛争」のレガシーとトラウマ。

彼女の死は、最初はイングランドではほぼ無視されていたが(イングランドにとって北アイルランドは「よその土地」なのだ)、やがて大ニュースとなり、世界中から彼女を悼む声が集まってきている。葬儀費用などを集めるためジャーナリストたちによるクラウドファンディングも立ち上がった。(彼女自身、とても苦労しながらジャーナリストとして活動してきた人だ。)

記録はNAVERまとめを利用してとってある。まだ完成していないが、このあとまた手を入れるつもりだ。https://matome.naver.jp/odai/2155565677562110001

本ブログでは「記録」とは別に、若干の解説のようなことをしてみようと思う。

最近日本でも「かわいいうさちゃんのイベント」的に商業化しつつある様子が特に100円ショップの店頭で見て取れるイースターは、キリスト教の非常に重要な宗教行事だが、アイルランドでは、現在の(今のところ分断された形での)独立へとつながることになる1916年の蜂起(イースター蜂起)を記念するという歴史的・国家的なナラティヴの機会でもある。

「アイルランド共和国」として独立国家になっている26州では、1916年に蜂起者たちが立てこもったダブリンのGPOの建物の前で、軍事パレード(といってもアイルランドの軍は今は自衛力しか持たず、それも、恥ずかし気もなく「自衛」「国防」を「軍事」「戦争」の同義語としている諸国とは異なり、本当に自衛力)が行われたりする。

一方「英国の一部」として独立前の状態のまま残されている「北アイルランド」、すなわち「北部6州」では、現在もなお、「北アイルランド紛争」までの時代と同じように、「武力を以てのみ、英国からの独立を果たすべし」という主義主張(「フィジカル・フォース・リパブリカニズム」という)を抱いた武装集団が、旗をかかげ軍装にバラクラバにサングラスというスタイルで、紛争で斃れた「同志たち」が眠る墓地までパレードを行なうという、(小規模とはいえ)軍事的な示威行為の機会となっている。

そして彼らは「IRA」を名乗っている。だから、北アイルランドに関心なんか持っていないブリテン本土のメディアが、とっくの昔に停戦し、だいたい武装解除してほぼ機能停止しているProvisional IRA (PIRA) に関する記事に、今なお武力至上主義を奉じているIRAを名乗る勢力の写真を添えることすらある。軍装にきれいな旗の彼らのパレードの写真は、参加人数は少なくてもとても見栄えがするし、一目で「それ」とわかる。(なお、PIRAが今でもギャング団として勢力を持っていること、彼らは銃を持っていること、ときおり内紛で銃撃事件が起きていることは事実だが、もはやそれらは「紛争」時代の「政治的暴力」ではないし、そのように扱われてもいない。)

イースターに軍装で見栄えのするパレードを行なうこういった勢力は、北アイルランド全体でそれができるほどの数を持たない。メンバーや支持者は広い範囲にいるのかもしれないが、パレードを行なえるような地域は数少ない。

そして、北アイルランドから見れば、「川を挟んだ向こう側」なのに「英国の一部」に入っているという、分断の地理的な不自然さを背負っているような都市であるデリー市(DerryかLondonderryかという呼称論争を見れば、そのややこしさがわかるだろう)は、その武装至上主義の勢力がイースターのパレードを行なえるくらいの地域の支援がある。

これらの勢力は、1998年の和平合意(グッドフライデー合意: GFA)を支持していない。というか、2019年の今も武装活動を続けているのは、PIRAがその和平に応じたことに怒ってPIRAから離脱した勢力だ。

そう。彼らの旧称はReal IRA(組織自体は「IRA」としか名乗っていないにせよ……「自分たちこそ本家本元のIRAである」という主張があるので、「IRA」としか名乗らないのだ)。1998年4月の和平合意を支持しない、IRAの中の超過激派・超強硬派だ。1998年8月15日(土)にオマーという「紛争」とはあまり縁のなかった小さな町の商店街に自動車爆弾を仕掛け、9月の新学期前の買い物を楽しむ人々や、スペインから修学旅行に来ていた小学生の一団を殺傷した勢力だ。この勢力が、数年前にデリーを拠点としてきたより小さな勢力と合流して再編した。これも単に「IRA」を名乗っているのだが、IRA諸勢力を区別しなければならない立場(つまり一般の報道など)では、現在は「the New IRA」、または引用符つきで「the New 'IRA'」などと呼ばれている。

GFA後、和平を推進することとなったPIRAが「主流派リパブリカン (mainstream Republicans)」とされる一方で、このReal IRA/New IRAのような勢力は「非主流派(反主流派)リパブリカン (dissident Republicans)」と呼ばれている。

これら「ディシデンツ」には複数の武装勢力があるが、2019年4月の段階で活動しているのはNew IRAだけのようだ(もっともっと規模の小さな集団はあるかもしれないが、ある程度の規模がありテロ組織としての能力があるのはこの組織だけ)。Real IRAの分派よりもっと早い段階で(1980年代に)別の政治的理由によってPIRAから分派したContinuity IRAは、RIRA同様にGFAを支持してなかったが、現在は停戦している(武器庫は持ってるかもしれない)。

繰り返しになるが、彼らは和平合意を支持していないし、現在も武装活動を続けている。2019年1月のデリーのカーボム、2月のロンドンの郵便ボムは、New IRAが「われわれはここにいる」と示すために行ったと考えられる。規模の面では、10年ほど前には「数十人単位にすぎない」と言われていたはずだが、どうやら拡大しているようだ。それも、年少者を大勢加えている。10代の少年たちに「銃を持て、祖国を奪還せよ」のロマンティシズムを吹き込んでいるのだろう。2009年3月の警官銃撃事件(Continuity IRA)のあと、事件の起きたアーマー州の武装集団が身内のSNS(当時はMySpaceか、今はもうなくなってしまったSNSだったかも)で10歳〜12歳くらいの子供をがちがちに武装させている写真を回覧しているのが問題となったこともある。(数年前にイスイス団が子供を武装させて写真を撮っていたとき、「やってることがディシデンツと同じだ」と思ったのはここだけの話。)

New IRAというのは、そういう組織だ。

2019年4月18日の木曜の晩、イースターを目前に控えたこのタイミングで、デリー市のクレガン地区(ここはずっと前からディシデンツの拠点として知られている。有名なFree Derryのゲーブルが記念碑のように立っているボグサイド地区の隣で、おおまかにひとつ市街地側)で、警察の強制捜査が行われた。

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2019年04月18日

彼女たちの地獄

たまたまタイミングが重なっただけだが、今日目にするニュースは若い女性たちの「地獄」の話がずらりと並んでいて気が滅入る。画面の中に、9歳の女子が自殺し、18歳の女子が自殺し、19歳の女子が焼き殺されたという文字情報が連なっている。

以下は相互に関連性のない3つの事件についてのメモである(相互の関連性を勝手に読み取って陰謀論を唱えたり、私がこれらが関連していると主張したりしていると解釈したりはしないでください)。

■アマル・アルシュテイウィさん(9歳)
9歳の女子はカナダのカルガリー市で自殺した。背景には学校でのいじめがあったと考えられ、保護者は学校の教諭に相談したというが、市教育委員会は「いじめを示すものは何もない」と述べ、警察も「捜査が行えるほどの証拠がない」と言っている――日本でもよくある話だ。

これに「ひどい」と憤ると、きっと弁護士先生が信じたがいような上から目線で「現地の法律を見たのですか?」とか「もっと勉強しましょう」などと言ってくださることだろう。

だがこのケースを「学校でのいじめって、どこも同じだね〜」で済ませないものにしているのは、自殺した9歳のアマル・アルシュテイウィさんは、難民だったということだ。3年前、彼女の一家はシリアの戦乱を逃れ、難民としてカナダに定住している。そしてアマルさんはクラスメイトたちから身体的暴力を受け、言葉での暴力も受けていたことを両親に相談していた。

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posted by nofrills at 23:56 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Avast Antivirus (Ver. 19): Gmailの署名欄に勝手に付加される「ウイリスフリー。avast[dot]com」を消す方法

先週、アンチ・ウイルス・ソフトのAvast(アバスト)が起動しなくなってしまい、Avastのサポートサイトで説明されている手順に従って、いったん完全にアンインストールしたあと、再インストールを行なった(この手順に従わないと、完全なアンインストールができないようなので注意)。この一連の手順の中で「セーフモードで再起動」の必要があり、Windows 10だとなんかめんどくさそうな説明が書かれていたのだが(Windows 7までの「F8」が使えないとかで)、私がやったときは、ほっといたら普通にセーフモードで再起動されていた。勝手にアップデートされているWindows 10(ちなみにエディションはHome)で、2019年4月の時点では、セーフモードでの起動について仕様が変わっているのかもしれない(深く調べたわけじゃないので、そのあたりは各自でご確認のほど)。

さて、そうしてAvastを入れ直したあと、ブラウザからGmailでメールを送信したら、フッター部分に勝手に「ウイルスフリー。avast[dot]com」という文言が入ってしまっている。

avast-footer.jpg


gmail-avast-googlesearch.jpgそういえばはるか昔、ウェブ検索してやり方を調べ、このメッセージを消す設定をした気がする。でも詳細を覚えているはずもない。そこでとりあえず「Gmail Avast」という適当な検索ワードでググってみると、みなさん、これに困っているようで、この問題の解決方法を説明したページが検索結果上位に並んでいた。

目にした中で最も日付の新しいApricoさんの「Gmailでavastが勝手にメールのフッタに入れる署名を消す方法!」という記事(2019年9月2日)を参照すると、確かに、「こうだった」と思い出せる内容だ。Avastで[設定]→[一般]と進み、表示された画面で[アバストのEメール署名を有効にする]のチェックを外すだけの簡単なお仕事。30秒もあれば終わる。

おれ、これの設定が終わったらコーヒー淹れるんだ……。

結論から言おう。私がコーヒーを淹れることができたのは、約1時間後だった。なぜか。それは、Apricoさんの記事で説明されていた方法、つまり私自身が以前やったと記憶している方法で必須の画面が、今のAvastでは出てこないからだった。つまり、「Avastで[設定]→[一般]と進み、表示された画面で[アバストのEメール署名を有効にする]のチェックを外すだけの簡単なお仕事」のはずが、「Avastで[設定]→[一般]と進……進めてないんじゃね」となってしまったのだ。



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2019年04月14日

東京では、まだ桜が咲いている。

4月13日の今日も、東京のこのあたりの住宅街の中では、まだ桜(ソメイヨシノ)が咲いている。

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1本の木に、葉っぱだけになった枝(それも、葉っぱがもうかなり大きく育っている)と、「満開」状態の花だけの枝が同居しているものもある。下の方の枝は葉桜、上の方は花。背景には半月。

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Weather Newsに、「今年の東京の桜、ちょっと変?暖冬と季節外れの寒さで"マダラ咲き"に」という記事が出ている。いわく、上野公園の桜が満開だった期間は、過去5年(2014年から18年)平均は5.4日だったが、2019年は10日もあり、2014年以降で最長だったという。この理由について、日本花の会樹木医の和田博幸さんが「この冬は暖冬で休眠打破がしっかり行われないため目覚めが悪かった上に、開花後は季節外れの低温となってしまったため開花が一気には進まず、マダラ咲きを助長」したと考えられると説明している。

確かに今年は「マダラ咲き」だった。上述したように、1本の木の中で極端に状態が違っているのは満開になったあとだけではなく、咲くのもじわじわ、じわじわという感じで時間がかかっていた(下の方の枝が満開になったあとも、上の方はつぼみのままだった)。

とはいえ、すでにとっくに全部散ってしまっているような木もある。だがそれは一日中交通量が多い道路沿いだったり、商業地区だったりして、気温が安定して高そうな場所だ。

でも、3月の終わりに散歩に出たときには、かなり大規模な桜並木になっている場所で、日当たりなど特に条件に違いはなさそうなのに、「この木はもう満開に近くて、その隣の木はまだ2分咲きくらい」ということになっていた。


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2019年04月03日

Awesome Screenshotで「ネットワークエラー」が起きてスクリーンショットの画像がダウンロードできない場合の対処法

PC (Windows 10) + Chrome + Awesome Screenshot でウェブページ全体のスクリーンショット(キャプチャ)をとった際に、「ネットワークエラー」が出てダウンロードが失敗することがある。

キャプチャをとる操作をしてEditの画面に行くまでも時間がかかることからも明らかな通り、出来上がった画像ファイルのサイズが大きすぎることが原因だ。

その場合、直接ダウンロード (Local save) するのは無理だが、Google Driveに送ることはできる。今さっき、約10MBのスクショで成功した。

やり方は簡単で、

  1. Awesome Screenshotで "Capture Entire Page"

  2. 出てきた画面(Editの画面)で必要であれば画像編集の操作をして "Done"

  3. 操作パネル(画面右側)で "Local save" の欄にあるボタンを押してみて(ここまでは通常の操作)

  4. 「ネットワークエラー」が出たら、"Local save" の欄の上にある "Cloud save" から "Google drive" を選択(下図)
    awscs.png

  5. Googleにログインしていなければここでログインして、Google driveへの送信の操作をする(公開範囲の設定などもここで)

  6. Google driveへの送信は数分かかった(お茶を淹れに行っている間には終わっていた)

  7. 操作パネル内に表示されているURLにアクセス

  8. たぶん「プレビューできません」というメッセージが表示されているのでプレビューせずダウンロード



こうして、1350 x 34150 ピクセルのキャプチャ画像(約10MB)を無事ダウンロードすることができた。このように、直接のダウンロードもクリップボードへのコピーも失敗するような場合は、Google driveへの保存が最も手っ取り早いと思われる。

以上、覚え書き。

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2019年04月02日

「新元号の隠されたメッセージ」的な陰謀論が出る日に備えた記録

今日2019年4月1日、新しい元号が決定され、発表された。個人的には、役所の書類の記入でしか使わないと思うが(しかも記入のたびにいちいち「今何年でしたっけ」とか「2018年って平成でいうと……?」とか尋ねることになるに違いないが)、「令和」という元号になったことやその出典が万葉集だということは忘れずにいられるだろう。

その様子を私はTwitterで自分が作成・管理しているNewsのリストで見ていた。このリストは英語圏の報道機関やジャーナリスト、学者が中心で、日本のアカウントも少しはいっているというもので、日本語圏が朝から大騒ぎになってることはここを見ててもわかったが、具体的にどう大騒ぎになってるのかはよくわからなかった。そもそもテレビないし、別に気にならないトピックだからどうでもいいと、ネットの大海に出て様子をうかがうこともしてなかった。

そういう次第で、発表されたあとの騒ぎのようなものも特に見かけていないのだが、ひとつ、秀逸なジョークが流れてきた。それは「令和」という文字の中に「アベ」を読み取るという荒業を見事に成し遂げたもので、座布団5枚くらいあげてもいいんじゃないかと思った。何なら、タモリ倶楽部のTシャツを添えてもいい。

その荒業は、ざっくり言えば、「神」という漢字の中に「ネコ」というカタカナを見て取るのと同じ流儀でなされている。それは、看板に書かれた「神」の字のつくりの一部が消えて「ネ」と「コ」が浮かび上がっている、という偶然の発見が元になっているらしい(本当にそんなふうにきれいに文字の一部が消えた看板が実在したのかどうかは私は知らないが)。実際、「ネコ」と読めはするが、「コ」の字の縦画の長さ(高さ)が足りていないので、とてもアンバランスな字面になっている。でもおもしろいからいい。言葉として意味もあるし、何よりかわいい。

nekotowakaiseyo.jpgこの「神」と「ネコ」はすっごい昔から「ネットのネタ」(英語圏でいうmeme)として有名なもので一種の「パロディ」と言えるものだ。特に有名なフレーズ(元になったフレーズ)が縦書きの「ネコと和解せよ」(より厳密には「ネコ」の部分を半角カタカナにする)で、私が最初に目にしたのはいつだったか、覚えていないが、RSSリーダーが登場する前のこと、つまりウェブサイトの更新を知るために毎日わざわざサイトをチェックするか、「アンテナ」的なものを使っていた時代だったように思う。むろんTwitterとかが出てくるずっと前、ブログとかmixiより前のこと(「Web 2.0」の前のこと)だったと思う。

そのくらい昔からあるから、うちらインターネット老人会の人々は「ネコと和解せよ」と、「コ」の字の高さが足りてなくない横書きのテクストを見ても、元の写真(変になってしまった看板)を思い浮かべることができるし、そもそもそんなルーツなどいわずもがなで、誰にも説明する必要などないことだと了解している。だが、説明が必要ないのは老人会の間でだけのことで、なおかつ「ネット上のネタ」は老人会の面々がかつてよく知っていた「雑誌の投稿コーナー」や「宝島のVOW」のような消え物では全然なく、ネットにアップされて人々の間を流通している限りは、常に「そこにある」状態になる。好事家が古本屋を回って探すようなものではなく、中学生が検索エンジンに適切なワードを放り込むだけですぐに出てくる。そして、20年前のネタが今日のネタのように流行するということも普通にあるし、その場合、そのネタのルーツなど誰も知らなくても、ネタそのものが意味が通っておもしろければ広く共有されていく。

実際、数年前(「数年」といっても老人の言うことなので10年くらいかもしれないが)にTwitterで「ネコと和解せよ」が爆発的に流行ったときには、多くの人が「ネコ」は「神」という文字の一部であるということを認識していないようだった。なぜなら「猫と和解せよ」や「ねこと和解せよ」といった表記も大量に流れていたからだ。解説サイトには横書きで、「コ」の文字も普通にバランスの取れた形で、元ネタの色だけを再現した「ネコと和解せよ」のフレーズが見られた。つまり「元ネタ」がほとんど全く意識されていない形。単にキーボードを「neko」と打鍵しただけで生じる文字列が、「神」という漢字の一部を塗りつぶすという手間のかかる方法で生成する「ネコ(に酷似した文字列)」と同列に並べられていた。

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2019年03月25日

英国では怒りが大爆発した人々がすごい勢いでネット署名をし、デモを行うなどしているが、私は風邪で、東京は桜が咲き始めている。

風邪を引いた。単にだるいんだと思っていたら風邪だった。

その間に画面の向こうではいろんな動きがあった。英国では、Brexitについての政権・政府の仕切りの悪さに人々の怒りが爆発して、「Brexit反対、Article 50を撤回せよ」というネット署名が1日で300万を超える勢いで集まっていた(一方でフランスでは、政府に対する怒りを爆発させたのだという人々がまたパリの街で暴れていた)。署名が300万を超えた翌日には、ロンドンで「Brexit反対」(Article 50撤廃要求、および/または第二のレファレンダムことPeople's Vote要求)のデモが行われ、ざっくり100万人が集まった。あまりに人が多すぎて、「行進」にならなかったらしい。

そこまでは先週、風邪引く前に予想していた通りなのだが、土曜日・日曜日と様子がおかしい。テリーザ・メイに対する退陣要求が出ているというのだ(いずれはそうなるにせよ、まだちょっと早いだろう)。3月18〜22日の週に、EU27か国の側は英国に対し、「テリーザ・メイがEUとの間で取りまとめた合意(協定)案が議会下院で可決された場合は5月22日まで、可決されなかった場合は4月12日までの期限日の延期を認める」と伝えた(英国は6月末までの延期を求めていた。これが拒否された形。ようやく、Brexitの日程に関する主導権は英国ではなくEUが握っているということが英国のBrexit過激派にも伝わっただろうが、遅すぎる)。

これが英議会で受け入れられるかどうかはまだ確定はしていないが、受け入れられないと考える理由はなさそうだ。つまり、「3月29日の合意なき離脱」だけは回避された。そのあと? どうなるかわからない。「合意案の可決」が当面の関心事だが、これまで2度にわたってその「合意案」に不支持の票を投じてきた議員たちの何人かが、ことこの期に及んで「苦汁を飲んで支持する」などといったことを表明しているらしいし、修正もいろいろ提案されて、それぞれ採決されるだろう。だがもう私は集中力がとっくに切れている。今のこの状態についても「んなん、英議会で合意案が2度目に否決されたときにやっとけや」としか思わない。こんなんに振り回されっぱなしの人々がたくさんいるということが、気の毒でならない。

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2019年03月17日

変化したアイルランド、首相が男性パートナー同伴で外交

今日、3月17日はセント・パトリックス・デイ(アイルランドの守護聖人、聖パトリックの亡くなった日)で、アイルランドの祝日。世界各地がシンボルカラーの緑に染まるのは、ここ20年くらいの間にアイルランドがプロモーションを成功させたためだが、元々この「3月17日の緑祭り」はアイルランドが発祥というより在外アイルランド人、特に北米の人々が始めたものだ(ソース)。

アイルランドと北米の縁は深い。映画でもその《物語》に関するものは非常にたくさんある。『タイタニック』や『ギャング・オヴ・ニューヨーク』のような歴史大作もあれば、『ブルックリン』のような一人の女性の人生と内面をじっくり描いたものもある。私は今日は10年以上ぶりにジム・シェリダンの『イン・アメリカ』を見た。天使のような子供から目が離せない、センチメンタルなメロドラマ(とてもよく作られている)。



一方、コンピューターの画面の中は通常運転で、ニュージーランドで発生したモスク襲撃テロに関連して極右がなんちゃらといったフィードがあふれていて、アイルランドはBrexitの話とラグビーのSix Nationsの話(25-0だったのに最後に意地を見せてトライを決めて25-7にするあたり、アイルランドらしいと思った)のフィードがたくさんあるが、中には、一部Brexitと関連して、セント・パトリックス・デイでの訪米外交のフィードもあった。

セント・パトリックス・デイでの訪米外交はアイルランド共和国の政治トップだけでなく、北アイルランドの政治トップも行なっており、Brexitがあの状況のなか、DUPのアーリーン・フォスターはワシントンDCから写真をフィードしてきたりしている。

一方、アイルランド共和国はレオ・ヴァラドカー(ヴァラッカー)首相がDCに行っている。彼はアイルランド生まれのアイルランド人だがお父さんがインド出身の医師で(だからアイルランドの白人優越主義者には嫌われているし、「移民」呼ばわりもされている)、アイルランド初の人種的マイノリティの首相なのだが、それ以上に彼が注目されているのは、ゲイであることをオープンにしているうえで与党党首に選出され、首相となったということだ。

同性カップルが珍しくなくなった現在では、外交行事では「男の首相とファーストレディ」や「女の首相とファースト・ハズバンド」というのが慣習だった場面で、「男の首相とファースト・ハズバンド」「女の首相とファーストレディ」ということになることもある。昨年はヴァラドカー首相は確か外交的な場には単独で出席し、カジュアルな場でだけパートナー(男性の医師)を伴っていたと思うが(要確認)、今年はパートナー同伴で外交行事をこなしている。

中でも注目され、ウェブで実況中継のようになっていたのが、現政権の中でもものすごい保守派として知られるペンス副大統領のもとを訪問したときのことだ。


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2019年03月13日

Flickrの縮小

当ブログがファビコンにしている写真は、2008年5月に撮影した公共の花壇のナデシコだ。カメラを持った腕を目一杯下げて、ファインダーを見ずに適当にシャッターを押して歩いた結果の一枚で、Creative Commonsのライセンスで、写真共有サイトFlickrにアップしてある

2470440325_696afde799_o.jpg


しばらく前から告知されていたように、Flickrが無料サービスを大幅に縮小する。この1月からは、Proアカウントを取得しないと(=無料ユーザーだと)全部で1000点までしかアップロードしておくことができなくなっていて、既に1000点を超えてアップロードしているユーザーはログインすると「Proアカウントに切り替えましょう」と促す画面が表示される。Proアカウントは、月払いだと$6.99/month, 年払いだと$4.99/month, つまり$59.88/yearとなる(Source)。ProアカウントではAdobe Creative Cloudが15%オフになるなど外部の優待も受けられる。

既にアップロードされている写真・ビデオで、1000点を超えている分については、3月12日(米国時間。つまり日本時間ではがっさりいって3月13日)以降、順次削除されていくことになる(当初は2月に削除開始予定だったのだが、データのダウンロードがうまくいかないなどしていてユーザーからの意見があり、1ヶ月延長された)。

ただし、Creative CommonsのライセンスやPublic Domainで公開されているなど「コモンズ」(広く共有されるべきもの)の一部としてFlickrで公開している写真・ビデオは、削除対象とはならない(この点、少し迷走したが、最新の2019年3月8日発表の方針では、CCライセンスにしたのがいつであるかは問わず、Flickr.com上にアップされたCCやPDの写真はすべて、削除対象外にする、と説明されている)。また、既に亡くなったユーザーのページはそのまま保全されるという(Flickrは基本的に「削除されない」という前提で利用されてきたサービスなので、現時点で既に世を去っているユーザーへの対応としては、正しい判断がなされたと思う)。

自分がアップロードした写真・ビデオは、削除が始まる前なら全部バックアップを取ることができる。3月13日に書いても「今さら」感があるかもしれないが、記録のために書いておくと、Flickrにログインした状態でAccount → 画面右下の "Your Flickr Data" の欄で青いボタンを押す、というシンプルな手続きでダウンロードできる(その場ではできず、DLの準備が整ったらメールでお知らせが来るという形……メール来てなかったけどw)。私の場合、写真は6000点を超えているのだが、1時間もかからずにDL準備ができていたようだ。複数の圧縮ファイルに分割してDLできるようになっているから、ファイルサイズが大きすぎてなかなかDLし終わらないというトラブルもかなり回避できるだろう。DLリンクは3週間有効になっている。

d-rdy.jpg

各種ヘルプは、サポート・フォーラムの下記のスレッドの最初の投稿にまとまっている。
https://www.flickr.com/help/forum/en-us/72157676293604137/

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2019年03月10日

今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (2): ブラディ・サンデー事件加害兵士らの訴追の問題、軽視される「法の統治」

今週の北アイルランド関連ニュースから、先ほどのエントリで最近のディシデント・リパブリカン組織の動向についてまとめたが、本エントリではより深刻な「法の支配」や「国家の暴力」についてまとめておきたい(「まとめる」=「一ヶ所に集めておく」であり、「内容を解説する」ではない)。

ここで何をやるか、先ほどのエントリから抜粋すると:
つい先日、パット・フィヌケン弁護士殺害事件についての司法の判断が出たばかりなのだが、来週は1972年1月30日デリーの「ブラディ・サンデー(血の日曜日)」で市民を撃ち殺した英軍兵士の訴追の可否をめぐる結論が出されることになっていて、英保守党の政治家たち何人かが「仕事をしただけの軍人を殺人罪に問うとは」というスタンスでわめき始めており、その中で現在の北アイルランド大臣カレン・ブラッドレーがかなりなトンデモであることが発覚(ブラディ・サンデーについては2010年に「撃ち殺された人々は全員無辜の市民」と結論したサヴィル卿の調査報告書が出たときに、当時の首相デイヴィッド・キャメロンが「英軍の行為に正当化の余地なし」と認めて謝罪をしているのだが、今の保守党の政治家たちはそれを無視している)、それと同時に、今週は1971年8月のバリーマーフィー事件(デリーのブラディ・サンデーの約半年前に、ベルファストで英軍が市民11人を撃ち殺した)のインクェストが始まっていて、非常につらい事件のディテールが改めて語られている(倒れた人を英軍は撃った、というような)。


てんこ盛りだ……。作業が終わる気がしないが、やるしかないだろう。先ほどのエントリでも、いつものような細かいリンクは入れていないが、ここでもそういうのは省略する。詳細を調べたいと思った方は適宜英語で検索を(日本語で検索してもほぼ何もわからないと思うが、検索ワードによれば&運がよければ大学の研究者の論文PDFが検索結果に出てくるはずで、それを読めばよくわかるはず)。

今回の動きが最初にTwitterで見られたのは、3月はじめのことだった。

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2019年03月09日

今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (1): ディシデンツ周り(英軍基地襲撃・警官銃撃から10年、ロンドンの爆発物)

今週(3月3日から9日)は北アイルランド方面が騒がしかった。それも、昨今の主要な関心事であるBrexitとはほぼ関係のないことで。

まず、何もなくても「今週はこういう週」ということがわかっていたのは、2009年3月の2つのテロ事件から10年を迎える、ということだった。

1件は2009年3月7日夜のアントリム州英軍基地襲撃。マセリーン基地(駐屯地)でアフガニスタンに向けて出発する直前にちょっと時間があったのでピザを頼み、配達を受け取りに出た20代初めの兵士(非武装)2人が、基地の外にいた銃撃犯に撃ち殺された事件で、未解決だ。これはReal IRAが犯行を認めていて、2人が起訴されて裁判が行なわれたが、1人は無罪となり、ここで有罪になったもう1人も控訴審で無罪となった。ちなみに2人とも銃撃の実行犯として起訴されたわけではなく、つまり、英軍兵士を基地の入り口で銃撃した当人を、当局は起訴に持ち込むことすらできていない。

もう1件は同年3月9日のクレイガヴォン警官襲撃。通報を受けて駆けつけた警官を銃撃者が待ち伏せして殺すという陰惨極まりない事件で、こちらはContinuity IRAだった(この事件でCIRAの存在を知った人も多かったかもしれない)。この事件では2人が起訴されて2人とも有罪になって、現在刑務所の中にいるが、彼らの支援者というか「反英」な人々が何かと賑やかである。

今これを書いているとき、今日は3月9日で、私は今日は定点観測ということでBBC News NIのページを開きっぱなしにしているが、クレイガヴォンの事件についての「あれから10年」の記事は見かけていない。7日のマセリーン基地襲撃事件については、未解決ということもあって「あれから10年」の記事を見たのだが。

そういうタイミングで、ロンドンの交通の要衝3箇所に郵便で爆発物が送られた。翌日にはスコットランドからも同様の報告が出た。

さらに、つい先日、パット・フィヌケン弁護士殺害事件についての司法の判断が出たばかりなのだが、来週は1972年1月30日デリーの「ブラディ・サンデー(血の日曜日)」で市民を撃ち殺した英軍兵士の訴追の可否をめぐる結論が出されることになっていて、英保守党の政治家たち何人かが「仕事をしただけの軍人を殺人罪に問うとは」というスタンスでわめき始めており、その中で現在の北アイルランド大臣カレン・ブラッドレーがかなりなトンデモであることが発覚(ブラディ・サンデーについては2010年に「撃ち殺された人々は全員無辜の市民」と結論したサヴィル卿の調査報告書が出たときに、当時の首相デイヴィッド・キャメロンが「英軍の行為に正当化の余地なし」と認めて謝罪をしているのだが、今の保守党の政治家たちはそれを無視している)、それと同時に、今週は1971年8月のバリーマーフィー事件(デリーのブラディ・サンデーの約半年前に、ベルファストで英軍が市民11人を撃ち殺した)のインクェストが始まっていて、非常につらい事件のディテールが改めて語られている(倒れた人を英軍は撃った、というような)。

これらのことを、大きく2つに分けて整理・記録しておこうと思う。まずこのエントリでは10年前のReal IRA, Continuity IRAと、今のNew IRA(元Real IRAなどが再編した集団)関連、ディシデント・リパブリカン関連のトピックを。

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2019年03月04日

「モモ・チャレンジ」は、心配のあまり、大人たちの反応が過剰になった事案。「フェイクニュース」ではなく。

この2月末、一度見たら目に焼きついてしまうような奇怪な顔写真のついた報道記事のフィードが、Twitterで私の見ている画面にいくつか流れてきた。往年の「口裂け女」と貞子を合体させたような顔写真で、フィードされている記事はガーディアンのものだった(ガーディアン記事のTwitter Cardで表示される写真が、その奇怪な顔のものだった)。「うげ、何じゃこりゃ」とは思って記事URLをクリックして読んだ記事の内容を、いくつかのツイートに分割して投稿し始めた私は、それを途中で中断して投稿したツイートを全部消した。この件については、連続したツイートの一部だけが拡散されても困ると思ったからだ。

というわけで、さくっとツイッターに流して終わるということにはできなかったのだが、かといってブログに書くこともしなかった。「書くほどのことではない」というより、正直、「書くにしても、どこに重心を置けばいいのか」ということがわからなかったからだ。メディアが別のメディアを批判したりしている声がでかかったし、過去に類例があったのを思い出してその記事の外でネット検索で調べてみたがはっきりしないことが多くて、何というか、全体像をつかみかねてしまっていた。

が、この騒動の発端近くにいたのが北アイルランド警察だった(そして「ねとらぼ」に北アイルランド警察のFBのキャプチャが載っていた! PSNIの「ねとらぼ」デビューなんて、想定外すぎる)という奇遇も手伝って、全体を見渡してみることができた。

下記に書いてある。

「こんな怖い話を聞いたんですけど……」で始まったネット上の "都市伝説": 「モモ・チャレンジ」とは
https://matome.naver.jp/odai/2155168676005142901


問題の奇怪な顔写真は使わないように編集してある(画像を非表示にしてある)ので、そういうのがいやな人が見ても大丈夫だ。私個人はそういう編集はあまりしたくないのだが、ああいう「衝撃画像」的なインパクトのある写真を何度も何度も繰り返し目にすることが精神衛生上よくないということは自分の体験からもわかっているので(イスイス団の暴力の最盛期に本当に懲りた)、「検閲」と批判されるかもしれないが、画像を非表示にした。英国のメディアはそういうところは配慮せず、がんがん奇怪な写真を使ってくるので、けっこう消耗する。(元々、例えば米国のメディアより、何というか、センスがアレだし。)

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ある言説や思想がトンデモであることは、それが社会的に共有されることを全然妨げない: 陰謀論についての注意喚起のために

2001年9月11日の所謂「米同時多発テロ」から17年半になろうとしているときに、今さら「911陰謀論」を自分のフィルターバブル内で見ることになるとは思っていなかった。

だが、逆に考えて、17年半も経過していれば、あのトンデモな陰謀論が「今までになかった新たな説明」みたいに見える人も、それなりに多くいるだろう。ちょうどうちら世代の人々が「アポロは月に行っていない説」など、教科書で事実として扱われていることに「疑問」を「突きつける」言説に新鮮味を覚えたのと同じように。そういうトンデモ言説の中には、南京虐殺否定論のように、一部のトンデモ界隈の外に出て書店の棚をそれなりに埋めるほどにメインストリーム化しているものもある。ホロコースト否定論をぶちかます医療関係者の発言力は、ここ数年で強まりこそすれ弱まってる気配はない(ホロコースト否定論をぶちかましても、「信頼される発言主」というステータスは揺らいでいない)。

トンデモであることは、その言説や思想が社会的に広く共有されることを、全然妨げない。

それだけに余計に、この陰謀論については、それが「トンデモ」だということを知っている者が書いておくべきだろうと思う。たとえその言説や思想そのものをストップすることができなくても(ましてや「潰す」ことなど絶対にできやしない)、それに近づいてしまった人にとって、「そっちは危険だよ」と注意を促すことくらいは、少しはできるだろう。

というわけで、先日のTwitterでの発言をここにまとめておく。


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2019年03月03日

『操られる民主主義』の原著など、ジェイミー・バートレットの電子書籍が300円台なので買うべき。(付: Amazon Kindleで洋書を買うときの注意)

ここ数年、ビッグデータだAIだフェイクニュースだっていうのと並行して、英語圏では「情報通信技術と民主主義」についての調査・検証や考察がなされていて、2018年(特に後半)は日本語の翻訳書の出版も続いた。

そのひとつがジェイミー・バートレットの『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(草思社)。電子書籍もあるので、書店に出向かずとも読むことができる。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
ジェイミー バートレット
草思社
売り上げランキング: 32,318


本書内容より
・アンケート回答がビッグデータに吸い込まれていく
・自分が知っている以上に自分のことが知られている
・トランプの大統領選とケンブリッジ・アナリティカ
・イギリスのEU離脱、プーチンのサイバー戦の正体
・ネットは人びとの抑えられた感情を増幅していく
・怒りの共有が細分化された「部族」を生みだす
・プラットフォームを持つ企業が市場を独占する
・AIは仕事の格差を産み、社会の分断が加速する
・仮想通貨とブロックチェーンが揺るがす社会基盤

◎本書もくじより
イントロダクション テクノロジーが社会を破壊する?
第1章 新しき監視社会――データの力は自由意志をどのように操作しているのか
第2章 「部族」化する世界――つながればつながるほど、分断されていく
第3章 ビッグデータと大統領選――デジタル分析が政治のありかたを揺るがす
第4章 加速する断絶社会――AIによって社会はどうなるのか
第5章 独占される世界――ハイテク巨大企業が世界をわがものとする
第6章 暗号が自由を守る?――国家を否定する自由主義者たち
結論 ユートピアか、ディストピアか
エピローグ 民主主義を救う20のアイデア


このテーマでのバートレットの講演:



で、昨日調べものでamazon.co.jpである書籍のページを閲覧したとき、そのページの下部に、
  The People Vs Tech: How the Internet Is Killing Democracy
  Jamie Bartlett
  ¥320
と表示されているのに気付いた。というか正確には、「¥320と見えたのは見間違いで、¥1,320かな」と思ったので二度見した。

見間違いではなく、Kindle版が本当に320円だった。その場でamazonにログインしてこのKindle版を購入した(そして「デジタル積読」をまた増やしてしまった……)。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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