昨年の今頃、映画『スター・ウォーズ』シリーズの新たな連作の第一弾、『フォースの覚醒』の公開が迫るころ、ネット上で「スター・ウォーズの7作目(新作)をボイコットしよう」というハッシュタグ運動が起きた。
そのときのことは当時書き付けてある。書くときはたるかったが、今は、書いておいてよかったと心の底から思っている。
当該のハッシュタグを見たとき、私は「何じゃそりゃ?」と思ったし、だからこそそのハッシュタグの背景を調べてみようと思ったのだが、調べてみた結果は、「…… (・_・)」だった。Twitterでそのハッシュタグ運動をやってる人たちが主張していたのは、端的に言えば、「黒人が重要な役回りで出ているから」ということだった。そのハッシュタグのツイートの数々は、トランプ支持を声高に叫んでいるアカウントから発していた。中でも主要なアカウントは、私でも把握しているような「アメリカのネオナチ・白人優越主義者」のもので、「人種的多様性」を「文化的マルクス主義」と呼んだりするような活動家アカウント。言い出した本人たちは、自分たちの主張することが世間一般では「トンデモ」であることはおそらく十分に認識している。そして、その上であえてそれをやり、見事、「炎上商法」に成功した。その経緯は、Vox.comのジャーナリストの記事を軸として、
去年書いたエントリに入れてあるので、それをご参照いただきたいが、少し抜粋しよう。
ギネヴィアさんの記事は続く。ハッシュタグが、少数の賛同者の間でのやり取りによってトレンドして、彼らの小さな輪の外に出ると、彼らのメッセージに反対する人たちの目にも留まり、「とんでもないことを言っている」というような批判的なツイートが増える。そうして言及数を増やしながら、ハッシュタグは批判の声だけでなく元々のメッセージをも拡散していく。……
「スター・ウォーズ新作ボイコット」のハッシュタグが拡散したことで、実際に、大元のアカウントは大喜びしていることをギネヴィアさんは指摘している。そうしながら、「こう書くことで、私もまた、彼らの望みどおりの情報拡散に寄与している」とも述べている。
http://nofrills.seesaa.net/article/428177297.html
2015年に「スター・ウォーズ新作ボイコット運動」をやったのは、いわゆるAlt-Rightの人たち(ざっくり言えば「トランプ支持者」)だった。
そして、2016年12月、スター・ウォーズは『フォースの覚醒』に続いて、スピン・オフの第1作(ややこしいな)である
『ローグ・ワン Rogue One』が米国などで封切られる。(日本での公開は2017年になってから。前作『フォースの覚醒』は全世界同時公開だったが、今回はそうではない。)
Rogue One will premiere at the Pantages Theatre in Los Angeles on December 10, 2016. It is scheduled to be released in certain European countries on December 14, 2016 before its North American release on December 16.
https://en.wikipedia.org/wiki/Rogue_One
ドナルド・トランプの当選で波に乗ってるalt-Right的には、「あれが去年成功したんだから、今年も成功するだろう」と見込んだのだろう。「スター・ウォーズの新作の封切」は自分たちの主張を拡散してくれる社会的装置にすぎず、どんな主張を乗せるかは後から考えたのかもしれない、とすら思う。ちょうど、「買いたいものがあるから100均へ行こう」ではなく、「100均の前を通りがかったらつい入ってしまったので、何か買おう」となるように、「炎上商法が効果的にできるスター・ウォーズの新作があるから、何かやろう」ということではないか、とすら。だって、選挙運動はもう終わっている。彼ら・彼女らはもう、ドナルド・トランプの当選のために尽力しなくてもよいのだ。回線切ってクソして寝てればいいご身分だ。
だが、彼ら・彼女らは寝ていない。

というわけで、日本時間で12月9日(金)の夜、
#DumpStarWarsというハッシュタグが、UKでTrendsに入っていたのだ(英国では金曜日の昼間のことだ)。
『ローグ・ワン』は、『フォースの覚醒』以上に「人種的多様性」に富んだキャストを迎えている。メキシコ人もいれば、パキスタン系英国人もいる。Alt-Rightが「ボイコットせよ」と叫ぶための材料はごろごろしている。つまり、逆から見れば、映画製作陣は昨年の「ボイコット」騒動にビビって今回の作品を白人だけで進める物語にしたりはしなかったということになるが、まあ、この規模の映画で1年前の「ネットでの騒動」によってキャスティングや登場人物の設定を変えるということはないだろう。そのことが気に食わなかったのかもしれない。こういう連中に主導権を握らせてしまったことについて、「ガクブル」なんて言葉では表現しきれない気持ちで見ているのだが(Brexit後の英国がどうなっているかを見れば、それが大げさなことではないのはおわかりいただけるだろう)。
ともあれ、その
#DumpStarWars(「スター・ウォーズなんかもう見るのをやめよう」)のハッシュタグだが、Twitterの画面で上から順繰りに見ているだけではよくわからない。何がしたいのか、何が言いたいのか。
もっとも、6月の英国でのEUレファレンダムから、米大統領選前の選挙運動が激しくなってきた時期に、あまりにもトランプ支持者がうるさいので(ありとあらゆる話題、それこそ関係のないサッカーのEuroの話題にまで乗り込んできて演説してた)、目立っていたアカウントはすべてミュートするかブロックするかしてしまっているので、私には話の流れが追えない(話の流れがわかるようなアカウントをミュートしてしまっている)だけかもしれない。ログアウトして改めてハッシュタグを見ればよいのかもしれないが、そこまでは……っていう。
ハッシュタグをクリックしたときに私が見た画面は、下記のようなものだった。(タブを開いたまま数時間放置していたので、新着の数がすごいことになっているが、そこは無視していただければと思う。)
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