「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年08月06日

「あの戦争」は過去のひとつの戦争であり、もう終わったものだ。でも「戦争」は終わってなんかいない。核兵器も。

「毎年、8月になると戦争戦争と騒ぎ出す」と人は言う。私は「そうか?」と思う。なぜなら、私の見ている世界は、少なくとも2001年9月以降は、何月だろうとどの季節だろうと、「戦争」であふれかえっているからだ。一見「戦争」とは無縁そうな、大いに話題になっている「楽しいゲーム」に関しても、日本語圏でも取りざたされている「祈りの場」の尊重というような「過去の、終わった戦争」に関するニュースだけでなく、地雷原の話は出てくるし、現に戦火の中にいる子供たちへの視線の必要性を訴えるキャンペーンのことも出てくる。だが「毎年、8月になると……」論の人には、その人の文脈があるわけで、はあ、そういうものかもしれないですね、と黙って聞いておく。聞いているうちにその人の文脈がわかってくる。そのことで、私はそう発言する人の文脈を、多少なりとも(ただの「知識」としてであっても)共有できていると思う。これは、多くの言語コミュニケーション(音声であれ、文字であれ)に伴うプロセスのひとつだ。「はぁ? 8月だけとか、どこを見てたらそんなネボけたことを言えるんっすか」と全否定してかかることもできるのだろうが、そこから生じるのはコミュニケーション・ブレイクダウンでしかないだろう。

ともあれ、そういう時期(時季)になり、日本語圏でぱっと目に付く範囲で「あの戦争」への言及が増えてきた。これから15日まで、それが続く。

普段は気の向いたときにしか見ないYahoo! Japanのトップページを、7月26日の相模原での凄惨にして陰惨極まる大量殺人事件後は、日に何度か見るようになっているのだが、8月6日の朝、少しスクロール・ダウンしたところに、「未来に残す 戦争の記憶」というバナーがあることに気づいた。「ウォー・アーカイヴ」とあるそのURLを見てみると、「戦後70年」、つまり2015年(昨年)作成されたページで、その後も更新が続けられている。



今、この「アーカイブ」のトップにあるのは、7月28日の青森空襲についてのページだ。
http://wararchive.yahoo.co.jp/airraid/detail/15/

1945年7月28日夜、62機のB-29爆撃機が青森市を襲いわずか1時間余りの空襲で、1,000人を超す犠牲者が出ました。

前日に空襲を警告するビラが撒かれたにもかかわらず、消火の人手がなくなることを恐れた行政当局が避難を禁じたことと、投下された焼夷弾に燃え広がりやすい「黄燐」が混ぜられていたことで被害が拡大しました。


2016年6月に行なわれたインタビューで、この空襲で叔母とその幼い子供たちを亡くした(殺された)82歳の富岡せつさんという女性が、次のようなことを語っている。

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2016年08月03日

ふつうじゃない。(米大統領選、というか共和党)

米大統領選に関しては、少なからぬ人が、もう口にする言葉も失っている。

先週金曜日、民主党の党大会でスピーチを行ない、常套句でいう「全米が涙した」状態を現実のものとした人がいる。いや、「人たち」がいる。大切な息子を、イラク戦争で戦死という形で失ったカーン夫妻だ。アメリカにとっては「国を守って戦って死んだ」軍人の親である。

そのカーン夫妻に、信じがたいことに、共和党の候補者となったドナルド・トランプは、敬意のひとかけらも見せず、ただ侮辱をしてみせた。発端は、カーンさんのスピーチで「ドナルド・トランプは国のために何も犠牲にしていない」というようなことを言われてカチンときたことらしい。実に子供じみているが、子供じみたことをすることによって注目が集まり、票がかせげるということに気づいた人物なので、今後も同じような、到底大人とはいえないふるまいをし続けるだろう。(トランプと兵役についても、報道記事が出始めているが。)

トランプの侮辱に、カーンさんは反論した。「ステージには夫婦揃って立っていたのに、しゃべったのは男だけ。女の人はしゃべることを許されてないんですかね」というあまりにひどい発言に、息子を亡くした母親であるガザラ・カーンさんは、「私がしゃべらなかった理由」を説明した。ワシントン・ポストがその反論の場を提供した。

一連の経緯は下記にまとめてある。カギは「イスラム教」だ(カーンさんたちはイスラム教徒である)。
http://matome.naver.jp/odai/2147011961211761301

この「戦死者家族への侮辱」というとんでもない事態を受けて、オンライン・メディア、Vox.comの創設者であるエズラ・クラインさんが、「あまりのことに、私は言葉を失ってしまいました I'm speechless」と書く代わりに、どうspeechlessなのかを説明した長文記事を書いている。
http://www.vox.com/2016/7/30/12332922/donald-trump-khan-muslim

この記事に、次のようにある。
This isn't partisan. This isn't left versus right. Mitt Romney never would have said this. John McCain never would have said this. George W. Bush never would have said this. John Kerry never would have said this. This is what I mean when I write that the 2016 election isn't simply Democrat versus Republican, but normal versus abnormal.


これは、「民主党の党大会でのスピーチは、共和党の人たちはけなす」という党派的な問題ではないと述べ、クラインさんは「2016年の選挙は、単純に民主党対共和党という選挙ではない。ノーマル対アブノーマルの選挙だ」として、7月28日付の記事にリンクしている。
http://www.vox.com/2016/7/28/12281222/trump-clinton-conventions

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2016年07月24日

ミュンヘン銃撃事件: ブレイヴィクを崇めていた18歳の銃撃犯は、「テロリスト」ではないのか、という問い。

ミュンヘンのショッピングセンターでの銃撃事件の発生から24時間以上が経過し、詳細が明らかになってきている。この事件については1つ前のエントリでも書いたが、実は、それはまだ書こうとしていたことの半分だ。残り半分と、もろもろアップデート分をここに書こうと思う。

この事件は、当初、「またイスイス団のテロか」と思われたので(現地警察も「テロである」と宣言し、非常事態宣言を出していたのだが)国外の大手報道機関のイスイス団を専門とする記者がドイツに派遣されるなど、各報道機関が「イスイス団のテロ」であることを前提として報道していたし、ドイツの政治家も、外国の政治家も、「テロ」のときの対応をし、そういう場合の言葉を発していた(例えば米オバマ大統領や、アイルランド共和国のマイケル・D・ヒギンズ大統領)。しかし結局のところミュンヘン警察は、「イスラム過激派(ジハディスト)のテロではなかった(関連は認められなかった)」と結論した。

「イスラム過激派」とは関係なかったとしてもなお、動機が解明されていない以上は、厳密にいえば、「テロである可能性」は残っている――「イスラム過激主義」以外にもテロの動機はいくらでもあるからだ。それに、「テロ」は定義次第だ(アメリカなどは「自軍が外国を占領しているときの自軍、つまり占領軍に対する現地の人々の武力抵抗」を「テロ」と呼んで恥じない)。;-P

でも、英国の報道機関の記事を見ている限り、あの銃乱射は、単なる――「単なる」とかいうとまた言葉尻をとらえて「不謹慎だ」と絡んでくる人がいるかもしれないが――「卑劣な無差別攻撃」であり、「テロ」ではないとほぼ断言されている状態だ。豪州の司法長官は「攻撃があれば何でもかんでもテロテロテロテロと言い立てるのはいかがなものか」といった発言をしている。個人的にも、日本でときどき発生する「通り魔殺人事件」が「テロ」ではなく殺人、傷害といった「刑法犯罪」であるのと同じく、鬱積を募らせた個人の暴力の爆発は、「テロ」ではないと思う。

英語圏で話がややこしくなるのは、ひとつには、「テロ」イコール「卑劣な無差別攻撃」という言い換え(セット思考)があるからかもしれない(実際には、テロリストは無差別ではなく標的を定めた攻撃(暗殺、誘拐など)も頻繁に行なってきたのだが)。Twitterなどを見ていると、「無差別」な攻撃というだけで「テロ」と呼ぶ条件を満たしているかのような発言を見ることが多いように思う(「IRAのテロ」のころはそんなでもなかったような気がするが、そのころアメリカでは「テロはわが国では起こらない」ことになってた)。また、日本語で俗に「無差別」とか「不意打ち」の攻撃を「テロ」と呼ぶが、そのような性質のものをすべて本当に「テロリズム」として扱っていたら、あれも「テロ」、これも「テロ」ということになってしまい、意味がなくなる。(秋葉原の通り魔事件を、その意味で「テロ」と呼んだ人もいたが、そこまで拡大解釈が許されたら、議論は成立しなくなるだろう。)

ともあれ、英語圏のジャーナリストなどが(警察が「テロではない」と結論している)ミュンヘンの銃撃事件を「テロではない」と断言することにためらいを覚えているように見えたのは、おそらく、ミュンヘンの18歳の銃撃犯と、5年前の同じ日にノルウェーで大量殺人を起こした極右テロリストのアンネシュ・ブレイビクとの「つながり link」を考えなければならなかったからだろう。つまり、「テロリストのシンパ」は「テロリスト」なのではないか、ということだが。

18歳の銃撃犯はブレイヴィクに非常に高い関心を抱いていて、ミュンヘン警察が記者会見で "obvious link" か "apparent link" がある、ということを述べたようだ(これはlost in translationを呼ぶよね)。BBCはここに注目してセンセーショナルに「ブレイヴィク」という名前を見出しにして、トップニュースとして扱っていた。(ブレイヴィクが大喜びしているだろうし、どこかにいるかもしれない「予備軍」みたいな人が「これか!」と思っているだろう。)

bbcnews23july2016b.png


だがミュンヘンの銃撃犯とブレイヴィクとでは、大きな違いがあるのではないか。

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2016年07月23日

ミュンヘンの銃撃事件は、「テロ」なんかじゃなかった。



「イスラムのテロ」だという声が上がった。「白人優越主義者・ネオナチのテロ」だという声が上がった。

「ニース、ヴュルツブルクと来て、これだ」という感情の吐露のようなことが言われた。「そういえば今日は、5年前にノルウェーでブレイヴィクが大量殺人をおかしてから5年目だ」という指摘があった(誰が忘れようか、7月22日という日付を)。

「犯人は『アッラー・アクバル』と叫んでいた」という目撃者の話がCNNで報道された。銃を持っている犯人を撮影した映像の中で、「犯人は『俺はドイツ生まれのドイツ人だ』と叫んでいる」という報告が相次いだ。

「情報が混乱しているな」、「どっちなんだ」と多くの人が思っただろう。「どちらかは、誤認か聞き間違いだろう」と思った人も少なくなかっただろう。

正直、私は「情報が混乱している」と思った。犯人が単独でしゃべっている映像で「俺はドイツ生まれのドイツ人だ」と言っているのなら、「アッラー・アクバル」は銃撃に巻き込まれた群集の中から上がった叫びではないのか(英語なら「オーマイガッ」だ)。

違っていた。「俺はドイツ生まれのドイツ人だ」も、「アッラー・アクバル」も、銃撃犯の言葉だった――ということだろう。



ドイツのミュンヘンで痛ましい事件が起きた。警察は当初「テロ」と宣言していた。しかしそれは間違っていた。初期の混乱した状況の中で、混乱した目撃者の証言を元に事態を最大限に深刻に見積もっていたので、まったく見当はずれの見立てをしていたのである。それは人命を最優先にしたためなので、批判されることはないだろう。私もそのこと自体に、批判すべき点があるとは思わない。

でも警察が「テロだ」と言っていたあいだ、ずっと、Twitterのような個人の発言の場では、イスラモフォビアがぶちまけられていた。「イスラムに決まってるだろ」というろくに根拠のない決め付け(根拠となりうるのは、CNNだけが報道している「目撃者証言」のみ)が横行していた。(→キャプチャ1キャプチャ2

全体の経緯は下記に記録をとってある(英語情報だけだが)。

ミュンヘン銃撃事件、情報はどう流れたか(現地2016年7月22日)※最終的に「テロ」ではないとの結論
http://matome.naver.jp/odai/2146923417885619401


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2016年07月21日

バングラデシュの過激主義に関するニュースのメモ

Twitterでメモを取ってたんですが、閲覧数、RT数が多いので、一箇所にまとめておきます。その前に前置き。

バングラデシュは「わが国ではイスイス団やアルカイダの活動はない」といい続けてきました。「わが国で活動している武装組織は、ナショナリストの野党勢力である」と(あと、実際、バングラデシュには以前から活動している武装勢力はあります)。同国内でのイスイス団の活動を指摘したアメリカのテロ専門家には、誹謗中傷が殺到していました。ダッカのカフェ襲撃事件が起きてもしばらくは――イスイス団が犯行声明的なものを出しても――「国内の武装勢力の犯行である」といっていました。2日後には「イスイス団の可能性も視野に入れて捜査」とかいうことになっていたのですが、ダッカの事件ではイタリア人と日本人が大勢殺害されており、特に根拠はありませんが、両国の外務省などからツッコミがあったのではないかとも思います。インド亜大陸でのアルカイダやイスイス団の活動の伸張については、すでにかなり広く知られていたことでもあり、バングラデシュ政府だけがstate of denialの状態でいるわけにもいかなくなってきたのでしょう。

ダッカの事件は、日本の人々の認識・態度も変えたようです。つまり「日本人なら安全」という《神話》が崩壊した――そんな神話、エジプトのルクソールでの銃乱射(1997年……20年近く前!)のときに崩壊してたんじゃないですかね、と私は思うんですが、何か基準的なものが違うのでしょう。

それと、「日本人だからといって見逃されない」ということは、「日本人だから標的にされた」ということを意味するわけではありません。

以下、メモの本体。

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2016年07月18日

今度はバトンルージュ(米ルイジアナ州)で警官が銃撃され、右翼は勝手にBLMと関連付けて騒ぎ立てている。

1つ前のエントリと同じ書き出しだが、すさまじい勢いで次から次へと大変なことが起きていて、何一つ追いついていない。今日はこうなっている。



17日(日)の朝、アメリカで警官が銃撃され、3人が死亡。事件があったのはルイジアナ州バトン・ルージュだ。当初、銃撃犯は3人いて、1人が死亡し2人が逃げていると報じられていたが、最終的には銃撃犯は1人であったと結論された。

下記は、active situationが続いていたときのUSA Todayによる解説のスライドショー。



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2016年07月16日

ニースの大量殺戮事件とソーシャル・ネット、および誤情報・デマ

すさまじい勢いで次から次へと大変なことが起きていて、何一つ追いついていないのだが(今日はトルコでクーデターがあって、失敗した)、7月14日(フランスの革命記念日、バスティーユ・デイ)に南仏ニースで発生した、毎年恒例で行なわれる花火大会の群集を標的にしたトラックによる無差別殺戮については、主に「ソーシャル・メディアでの情報」という観点から下記に「まとめ」てある。

ニースでの無差別攻撃と、ソーシャルメディア(Twitterがすばやく問題アカウントを凍結)
http://matome.naver.jp/odai/2146854765250800301


84人もの人が殺されたあの攻撃では、今日(16日)になってからイスイス団の(実質的)犯行声明が出て、それについても上記に書き加えてあるのだが、発生当初から、ソーシャル・ネットではイスイス団支持者が盛り上がっていた。

いまどきのジハディ支持者は、TwitterやFacebookよりむしろ、Telegramを好んで使っているのだが、今回は、発生当初の「恐怖のばらまき」の段階でTwitterがよく使われたようだ。Twitterは今回いつになく迅速に対応し、それらのアカウントはすばやくサスペンドされていたという。上記「まとめ」には、過激派に対抗する英語圏のアカウントがTwitterにメンションを飛ばしながら、発見した過激派のアカウントについて注意を喚起しているときのログもとってある。

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2016年07月11日

選挙について、書いてはいませんが、投票は行ってきました。

10july2016.jpg


ネット、特にソーシャルネットという場で日本の選挙について読むのも書くのもほとんどやめていましたが、10日は投票所に行って、投票用紙に「この人に国会という場にいてほしい」と自分なりに考えた人の名前を書いて投票箱に入れてきました。投票済証は、投票所を出る手前の机に座っていた係員さんに「投票済みの証明書をいただきたいのですが」とお願いしたら、その方が担当者さん(庶務の方、と呼んでいました)を呼んでくれました。つまり、いつもと同じです。

投票所は地元の小学校なのですが、校門を入ってから投票所として利用されている建物までの数メートルの空間の片隅に、犬のリードを持って待っている人が2人ほどいました。お1人はちょうど、投票を終えて出てくるご家族と交替で投票に行くタイミングだったようです。「投票所の犬たち」がハッシュタグになるのは英国だけで、犬を連れた方はずいぶん気を使っていらっしゃるように見えました。

投票所内は、私が行ったときはすべてのブースに人がいるけれど、並んで待ちはしない程度に混雑していて、親御さんにぴったりくっついて選挙区、比例と進んでいく小学生くらいの子供も何人かいました。普段、この学校に通っている子にとっては、いつも見慣れた場所がいつもとは違う用途で、いつもいない人々でいっぱいになっている光景は、おもしろく見えることでしょう。

「ネット選挙(選挙運動)」が解禁され、いろいろと様変わりした選挙だったのかもしれませんが、個人的にネット(特にソーシャルネット)にはうんざりしているので、大手報道の記事はポータルサイト経由でいくらか読んだけど、特にソーシャルネットで流れる候補者の選挙運動の様子や「みんなの意見」的なものは見ないようにしていました。はてブの「お気に入り」で見かけたのが選挙ネタというより「デマ屋」ネタ(ですよね)のこれと、人々が相手にせずにほっといたら、タコツボの中で一定範囲の人々の間で元気の素になってしまってるらしい「陰謀論」のとても詳しい検証(おつかれさまですとしか言いようがない)。その「陰謀論」は、ネット(特にソーシャルネット)で注目されているある候補者さんが信じているらしいのですが、その候補者さんがなぜ注目されているのかも、注意を払ってこなかったので知りません。過去(今回の参議院選挙のずーっと前)に2度ほど、その候補者さんについてどう思うかを尋ねられたことがあると思うのですが、どう思うかも何も、「それって、誰ですか?」でした。私はその人については確かに聞いたことはあったのですが、別に興味を引かれる点はなく、Twitterでもブログでもその人について言及したことはなく、RTなどもしていないと思います。それでも、その人についてどう思うかを別な人が尋ねてくるということがあった程度には、よく知られた人だったのでしょう。

そうやって、「ネットの有名人」は誕生するんでしょうね。上記の「陰謀論」のほか、「ニセ科学」でも問題視されているという指摘を、登録しているpaper.liのページで見かけましたが……ええと、ヒマなときなら読んでたかもしれません。(でもあいにく、ヒマじゃないんですよ。まだBrexit後のごたごたは続いてるし、Euro 2016でのフーリガンのことからチルコット報告書のことまで、書きかけのものがたくさんある。ダラスの警官銃撃事件は犯人像がまだ完全にはわかっていないし。)

あ、あと、もう少しだけ今回の選挙に言及したものがあります。

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2016年07月10日

「英海軍からイスイス団に入った」と(多少盛りすぎの記述で)説明される人物が、イスイス団とアサドについて、クウェートでの取り調べでしゃべってるらしい。

後述のオートン氏のツイートを見るまで知らなかったのだが、「英海軍からイスイス団に入った人」がいるそうだ(報道記事を読むと、そのように紹介することは「盛りすぎ」「釣り」に思えるが)。その人物の名前でウェブ検索すると、検索結果の1ページ目は無関係かもしれない個人のFBやLinkedInのようなページばかりなのだが、2ページ目に今年5月のMetro(デイリー・メイルと同じ会社が運営)の記事が出てきた。元はメイル・オン・サンデー(デイリー・メイルの日曜)の報道である。

UK navy officer ‘joins Isis’ as experts warn of attacks on ships
Sunday 8 May 2016 10:00 pm
http://metro.co.uk/2016/05/08/uk-navy-officer-joins-isis-as-experts-warn-of-attacks-on-ships-5869138/

この記事に当該の人物の名前の別の綴りが出ていて、それで検索するとMetro以外にも報道記事が出てきた。といっても、内容はMetroの記事とさほど変わらない。

UK-trained navy officer 'joins the Islamic State'
8 May 2016 • 10:50am
http://www.telegraph.co.uk/news/2016/05/08/pic--pub-uk-trained-navy-officer-joins-the-islamic-state/

メイルは記述の厳密性に疑問があるところが多く、それを忍耐力のない人でも読めるくらいに短くしたメトロはなおさら危なっかしいので、テレグラフを合わせて参照するのがよいと思うが、これらの報道によると、クウェート出身のアリ・アルオサイミという28歳の人物が、2011年からイングランド北部のサウスシールズにある英海軍の施設でマーチャント・ネイヴィーのコースで訓練を受けていたが、3年間の予定の過程を終える前に過激思想にかぶれてシリアに行ってしまったという。アルオサイミは英海軍のこのコースを受ける前はクウェートで国営企業で石油タンカーの仕事をしており、その仕事での技能をさらに高めるために英国で研修を受けたようだ。メイルやテレグラフの記事は、そのような「英国のすばらしい知識」を学んだ「海の男」がイスイス団に入ったことで、近隣海域で商船や石油タンカーが襲撃される可能性が懸念される、というトーンだが、その可能性がどの程度現実的なものなのかはわからない。

これら5月上旬の報道は、同月報じられたいわゆる「ISISリーク」で明らかになったイスイス団戦闘員の登録書類を調べてみてわかったことについてのものだが(アルオサイミは2014年4月にシリア入りしているとそれらの書類にあった)、この文書漏洩については次のようなことが言われていた。
The existence of the documents was revealed by the Munich-based Süddeutsche Zeitung paper and German broadcasters WDR and NDR on Monday evening. Zaman al-Wasl, a pro-opposition Syrian news website, published examples of the questionnaires on Tuesday.

Sky News claimed on Tuesday that it too has obtained copies of what appeared to be the same documents, containing about 22,000 names. It said the they were passed on a memory stick stolen from Isis internal security police by a former Free Syrian Army convert who later became disillusioned with Isis.

The documents held by the German authorities seem to have been collected at the end of 2013. ...

https://www.theguardian.com/world/2016/mar/09/isis-document-leak-reportedly-reveals-identities-syria-22000-fighters


「理想に燃えて、イスイス団に入ってはみたものの、実態がひどすぎるので幻滅した」という人がいるという話は、非常に頻繁に聞こえてくる(イスイス団全体から見れば少数なのだろうけれども)。9日(土)にアップした離脱者のインタビュー内容をまとめたページを見ると、その「幻滅」の具体的な内容がどういうものか、わかるだろう。人々は本当に「すばらしいユートピア」「地上の楽園」的なイメージを抱いてイスイス団に入り、シリア/イラクに行く。そしてそこでの現実が、聞かされていた(あるいはイメージしていた)「ユートピア」とはかけ離れた流血と残虐の世界であることを知り、「これは自分の求めていたものではない」と気づく。しかしそれは、「ユートピア」を求めている自分を変えはしない。

多くの志願者と同じように「理想の世界」を求めていたのであろうクウェートの「海の男」が、英海軍で知識と技能に磨きをかけていたときに「過激化」し(そのきっかけは、19歳の弟がシリア・イラクで過激派に加わって戦い、死んだことだとメイルの記事でおじが語っている)、シリアに行ってイスイス団に入って、それからどうなったのかは、5月の「ISISリーク」の時点ではわかっていなかった。

それがわかったのが、本エントリ冒頭で言及したオートン氏のツイートである。

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2016年07月09日

米国では、複数の「黒人」が警察に殺された今週を締めくくるのは、ダラスでの警官銃撃・殺害という流血だ。

もう、あまりに流血ばかりだ。

米テキサス州ダラスで、大変なことが起きた。ダラスでは1年前、2015年の6月にも警察署をガンマンが襲撃し、車で逃げ回り、最終的には警察の銃撃で死亡するということがあったが、今回の事件はそんな無茶苦茶な事件をも軽くしのいでいる。

8日(金)、カルト集団イスイス団を脱会した人のインタビューを日本語化して連続投稿していたときに、画面上に #Dallas というハッシュタグを見かけた。連続投稿の作業が終わってからそのハッシュタグを見てみると、すでに3人が死亡していた。




死者はその後も増加し、24時間後には5人が死亡している。負傷者は7人。銃撃者が撃ったのは警官で、負傷者の中には一般人が1人いるが(子供をかばって覆いかぶさった女性。脚に被弾したが命に別状はない)、生命を奪われたのはみな、警官である。

すでに大きく報じられている通り、銃撃者は警官を殺すことを目的としていた(詳細後述)。

この日、全米の各都市で、米国で今週連続して起きた「警察による黒人殺し」への抗議行動が行われていた。ダラスでも行われたそのデモに、いわば便乗するようにして、銃撃者は警官を標的とした。

ここではっきりさせておかなければならないのは、警官に対する銃撃は、抗議デモの中から行われたのでは*ない*ということだ。特に日本語では、ひとつには最初の情報が(微妙に)変わってもそのまま使われ続ける傾向があるために、また文字数制限に合わせるための編集作業(文の書き換えの作業)で、その作業の担当者が英語を参照しない場合やそもそも理解しない場合には元の英語の情報とは離れた文意になってしまうことがあるために、情報が微妙に正しくなくなってしまうことがままある。ただ、今回のダラスのケースでは、私も最初のころは英語圏のツイートで「デモ(隊の中)から銃撃」という調子のものを見たので、英語でも最初期の情報が不正確だったのだろう。

その点については、非常に早い段階で、現場にいた人が状況をはっきりさせるための説明をFacebookに投稿していた(それがキャプチャ画像としてTwitterにも流れてきていた)。

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2016年06月29日

2015年11月に「なぜパリのことばかり騒ぐのかー」って言ってた人たちは、その後、「パリ」以外のことに関心を持つようになったのでしょうか。

標題の件。私にはそうは思えませんが。

イスタンブール、アタテュルク空港で襲撃者3人が銃撃の上、自爆。死傷者多数
http://matome.naver.jp/odai/2146716440285603101


日本時間で29日の午前4時台に発生した攻撃。正午ごろにアップした「まとめ」を、9時間後の午後9時にチェックしたら、こんなview数でした。

164views.png


この件、書くべきと思ったことは全部「まとめ」のページに書いてあるので、そちらで。

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2016年06月20日

#世界難民の日 に、前から作ろうと思っていたFreericeについての「まとめ」を作成した。

今日、6月20日は「世界難民の日」で、そのトピックでのツイートをいくつかRTしたあとに、英語のボキャビルをして食料を寄付できるサイト、Freericeについてツイートしたら、60件以上もRTしていただくなどしたので、この機会に、前から作成しようと思っていた「まとめ」のページを作成した。

英単語などのクイズに答えるだけで、難民に食料支援できるサイトがある(国連・世界食糧計画系)
http://matome.naver.jp/odai/2146641794185149801


本ブログでも、右肩にリンクを置いてある。ちょっとした空き時間ができたとき、Candy Crushなどで遊ぶのもよいが、Freericeで英単語クイズをして言語野を活性化させるのもよいものである。

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2016年06月13日

米フロリダ州オーランドで、歌手が撃ち殺された翌日に、(それとは無関係に)クラブが襲撃され、50人も殺された。

Euro 2016が始まって、イングランドとロシアの(それぞれにとって最初の)試合が行なわれるマルセイユが荒れるなどしていて、それについて書こうとしていたときに、とんでもないことが起きてしまった。(それをTwitterでフォローしていて、うっかりLikeの頻度の制限を超過したようで、@nofrillsのアカウントが現在使えない。やることはやったので、数日様子を見るが、Twitterでのアップデートはしていない。)

その「とんでもないこと」が起きたのは、米フロリダ州のオーランドという都市である。といっても私はアメリカについては何も知らないので、その都市についても検索しないと基本情報もわからない。ウィキペディアを参照すると「フロリダ州中央部、オレンジ郡の郡庁所在地であり、全米屈指の観光・保養都市として知られる」、「市近郊にはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、ユニバーサル・オーランド・リゾート、シーワールドなど幾つものテーマパーク・遊園地を有している。またゴルフ場も100ヶ所以上を数える。豪華なリゾートホテルが林立し、郊外には幾つものショッピングセンターやアウトレットモールがある」、「手つかずの自然も多く残り、自然保護区が多数指定されている。デイトナビーチなど近郊の海岸にはビーチリゾートが発展しており、世界中から多くの観光客が訪れる」という。要するに、非常にメジャーな都市だ。

その都市名は、その「とんでもないこと」が起きる前日にすでに、大ニュースになっていた。日本でも東京・小金井のライヴハウス(小金井は東京でも郊外で、あんなところにライヴハウスなんてあるんだ、っていうような場所)で若い女性歌手がストーカーに刺されて瀕死の重傷を負うという事件があったが、フロリダ州オーランドでも、若い女性歌手がライヴハウスで何者かに銃撃されるということが起きた。私はその事件を、TwitterのTrendsにいきなりトップで出てきたハッシュタグ、#PrayForChristinaで知った。




小金井での事件の被害者の女性歌手は、刺されて意識不明になっていたが、何日もしてから意識を回復したと報じられている(本当によかったと思う)。オーランドで撃たれたクリスティーナ・グリミーにも、彼女と同様に持ちこたえてほしいと願っていた。クリスティーナは、私はまったく見たことも聞いたこともない歌手だが、22歳で、これからがんばっていこうという人だ。スターであるセレーナ・ゴメスのチームの一員として活動したこともあったそうで、セレーナ・ゴメスのファンの間で回復を祈る言葉が行き交っていた。本人のTwitterのアカウントでは、少し前に、スターであるクリスティーナ・アギレラと会ったときのことが楽しげにツイートされていた。芸能界にようやく足がかりを得たところだったのだろう。Twitterでは「彼女が好きで、The Voice(オーディション番組)のあのシーズンを最後まで見てた」という人もいた。クリスティーナ自身の過去のツイートから、「神」に関する言葉を画像にしてRTしている人もいた(彼女は非常にしっかりとした信仰を持っていたようだ)。みなが祈っていた。

しかし、彼女は持ちこたえられなかった。映像を見ると、非常に広い音域のある、強く印象に残る声の持ち主だ。その声でこれから成し遂げようとしていたことがあっただろうに、気の毒でならない。

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2016年06月09日

「暴力の連鎖」の継続を正当化するもの

テルアビブ(テルアヴィヴ)で銃乱射、4人も殺されたと伝えられている。日本語圏も含め、複数の大手メディア報道が出ている。現場は「ショッピングモール」と表現されているが、複合型商業施設の1階のレストラン/カフェ・バーだ。この店内にいた「スーツ姿の2人組の客」が立ち上がると銃を持っていて、それを店内で乱射したという。2人とも警察に拘束されており、1人は病院だそうだ(何らかの理由で負傷した)。1日の終わりにまったりとくつろいでいる会社員みたいな一般市民を標的としたこのような攻撃は、一般市民の住宅街を標的に砲撃・爆撃を加えるのと同じく、「卑劣な」攻撃である。



Twitterで検索すると、報道は日本時間で今朝の6時台からある。

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2016年05月31日

「現在、イエメンの文筆家や詩人、画家たちは、想像力を発揮する道具を置き、その代わりに武器を手に取っている」

2015年3月25日の午後。イエメンの首都サヌアの中心部、ハッダー地区にあるぼくの家で、ヤヒヤとハシェムとぼくは、いつものようにミーティングをしていた。ぼくら3人のいるこの国は崩壊しつつあった。アリ・アブドゥラ・サレハ前大統領と組んだフーシー派の武装集団が首都を制圧し、憲法を停止して戒厳令を敷いてから、もう数ヶ月が経とうとしており、現職のアブド=ラブ・マンスール・ハディ(暫定)大統領が避難している南部の都市アデンの大統領宮殿を爆撃するようになっていた。

国の外の関心をイエメンにひきつけておくにはどうしたらよいかについて、ぼくら3人は、うちの今の窓から見えるアッタン山に日が沈みかけるまで、話し合った(アッタン山のあたりは、その後、1年にわたって最も激しい空爆にさらされることになる)。

その日は結局、基本のフォーマットを維持してやっていこうという結論に達して、散会した。ヤヒヤはカメラを使い、世界が知らなければならないことを記録する。ハシェムはその映像と、ぼくらが共同制作する報告を、ソーシャル・メディアにがんがん流す。そしてぼくは世界各国・各地の報道機関へのつてを使い、ぼくらのまとめた報告をニュースのサイクルの中に留めておくようにする。

じゃあまた会って話をしよう、最終的にどういうふうにしていくかはそのときに詰めよう、ということにして、その日はそれで分かれた。そしてその後、ぼくら3人は顔を合わせていない。


これは、ファレア・アル=ムスリミさん(Farea Al-Muslimi)が5月27日付でアルジャジーラ・イングリッシュに寄稿した文章の書き出しの部分を訳出したものである。

ファレア・アル=ムスリミさんは、イエメンのカーネギー国際平和基金(財団)が2006年11月に設立したカーネギー中東センター(レバノン、ベイルート)の客員研究員(→同センターのページ)。大学はベイルートのアメリカン大学を出ているそうだ。年齢はまだ若いが(ウィキペディア英語版では彼の「若さ」が強調されている)、ジャーナリストとして活動しながらイエメンでシンクタンクを立ち上げるなどしてきた人で、2013年4月には米議会上院の憲法・市民権および人権に関する司法小委員会(the Senate Judiciary Subcommittee on the Constitution, Civil Rights and Human Rights)に招かれて、米国によるドローン戦争の実相を証言した(ご記憶の方も多いだろう)。

「わずか6日前のことですが、私の出身地の村が、アメリカのドローンによって攻撃されました。素朴で貧しい農民たちが震え上がっています」と彼は語っている(→Huff Poに少し、文字起こしがある)。


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2016年05月27日

現職の米大統領が初めて「被爆地」を訪問した。被爆者を抱きしめもした。

オバマ大統領がその場で何を言うかではなく、「原爆投下」について何がどのように語られているかということに関心が高い人向けになったかもしれません。そのつもりで編集したわけではなく、そのタイミングでそこにあったものを全部一ヶ所に集めてみたら、結果的にそうなった、ということですが。

米オバマ大統領の広島訪問のニュースを、英語圏で見る。
http://matome.naver.jp/odai/2146434576602055601


個人的には、Foreign Policy誌に掲載されたジェフリー・ルイスさんの記事が非常に興味深かったです。まさに「史観」そのもの。原因は常に外にある(「奴らが俺にそうさせる」)ってのがアメリカらしい。

今日のこの「歴史的」な日を前に、英語圏のメディアでは、被爆米兵(12人が原爆で死んでいる)のための活動をしてきた森重昭さんという男性(ご自身も被爆者)にインタビューしたり、森さんの活動を記録・紹介するドキュメンタリー映画を紹介するなどしていましたが、今日のオバマ大統領のスピーチ後の感動的な写真として世界中に広く流れた「米大統領が被爆者を抱擁」の写真は、森さんを抱擁しているところです。(森さんについては、26日にBBCで紹介されていたのを連続ツイートしました。それも上記「まとめ」に入れてあります。)

森重昭さんたちの活動についてのドキュメンタリー映画、Paper Lanternsのトレイラー:

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2016年05月24日

イスイス団: 「ビートルズ」と呼ばれた拷問・殺人集団の全員の身元がわかったらしい。4人とも西ロンドン出身だ。

あの集団の個々の構成員については、無視しておくのが一番だと思ってはいるのだが、殺害された湯川さんや後藤さんにも関係することなので、ブログに書くことにした。

西洋人のジャーナリストや支援ワーカーを拘束してきた「イスラム国」を自称する勢力(ISIS, ISIL, またはIS。ネットスラングで「イスイス団」)で、人質の監禁・拘禁・拷問や、フォーリーさん、ソトロフさん、ヘインズさん、ヘニングさん、カッシグさん、湯川さん、後藤さんの殺害とプロパガンダへの利用において最も直接的な役割を果たしていた「イギリスのしゃべり方をする4人の男たち」(「イギリス訛り」ゆえに、「ビートルズ」とあだ名されていた)の全員の身元がわかったそうだ。全員が、西ロンドンからシリアに行った者たちだった。

イスイス団のこの「ブリティッシュ・アクセントの4人」を区別するために、人質の間でつけたあだ名(記号)がジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人だった(ザ・ビートルズにはいい迷惑かもしれないが、「イギリス人で4人」といえばザ・ビートルズ、と誰もが納得する存在だということは確かだ)。

■「ジョン」
4人の中で最も有名になったのが、人質殺害ビデオでイスイス団の残虐性を見せ付けていた「ジハーディ・ジョン」で、これは幼少時に家族ともどもカタール(←すみません、間違えて書いてました)クウェートから英国に移住し、西ロンドンで育ち、かなりまともに教育を受けていた(つまり「社会からの落伍者」ではない)モハメド・エムワジという人物(26歳か27歳)だった。この人物については既に相当量、書いているのでそちらをご参照いただきたい。なお、モハメド・エムワジは2015年11月12日、シリアのラッカにおける米ドローン攻撃で標的とされ、死亡した(偶然のタイミングだが、11月13日夜にフランスのパリで行なわれた同時多発攻撃の直前のことだった)。

■「リンゴ」と思われる人物
次に身元が判明したのが「リンゴ」と思われる人物だった。2016年2月7日付のワシントン・ポスト報道(同日付で記事を出しているバズフィードとの合同調査)によると、アレクサンダ・コーティという32歳の人物で、エムワジと同じく西ロンドンの出身だ。エムワジと大きく違うのは、コーティは改宗してイスラム教徒となったという点である(20代はじめにイスラム教徒の女性と知り合ったときに改宗した。子供を2人作ったあとで別れたそうだが)。ちなみに民族的バックグラウンドとしては、父親(本人が物心つかぬうちに死去)がガーナ系で、母親がギリシャ系キプロス人だという(ガーディアン報道によると、コーティ本人のもともとの宗教はギリシャ正教)。なお、これは米国の情報当局がそう述べているということで、英国側はノー・コメント、コーティの家族もノー・コメントだとWaPo記事は伝えている。

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2016年05月21日

BBCの記者さん、北朝鮮でlost in translationの結果、10時間拘束の件

4月下旬、ピョンヤンで北朝鮮労働党(労働者党)の党大会が開かれた。私は北朝鮮には別に興味はないのでBBCでヘッドラインとリード文を見ただけで詳しく知らないのだが、何でも、北朝鮮労働党の党大会というのは珍しいらしい。

そういう「珍しい」機会を設けるのは、国内的にも「引き締め」などの意味はあるのだろうが、対外的に「宣伝」したいこと、伝えたいことがあるという意味もあろう。北朝鮮は英国とは国交があり、BBCは何度か取材に行っている(2013年に、ちょっとアレなことがあったが)。APは支局を置いている。特別の機会には、他のメディアも来させる。そういった国際メディアに党大会を取材させ、自分たちの見せたい姿を外に見せるわけだ。2014年には平壌科学技術大学にBBCのカメラが入り、学生にインタビューをしていた。一般のツーリストにも、ガイド(という名目の監視役)がついて、「すばらしい北朝鮮」を見せていることは広く知られている通りだ。

で、BBCは東京特派員のRupert Wingfield-Hayesさんたち取材班がピョンヤンに行った。そして、5月9日に「報道をめぐり、国外退去処分となった」という報道があった。このときは党大会を取材にいったBBC取材班が人々の生活に焦点を当てた取材をしたら国外退去に、という流れが説明されていた

そして5月20日付で、北朝鮮で何があったのかをRupert Wingfield-Hayesさん自身が詳しく説明する記事が出た。これが、分量が相当あるので読むのに時間はかかるが、必読の記事だ。

Detained and interrogated for 10 hours in North Korea
http://www.bbc.com/news/magazine-36200530


この記事を読むと、人それぞれ、うっとくる「ツボ」があると思うが、私の場合はあれだ、lost in translationの部分。

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2016年05月14日

失われた笑いどころを求めて(今年のユーロヴィジョン)

数時間後にはいよいよ、「広域欧州国別対抗歌合戦」ことユーロヴィジョン・ソング・コンテストの決勝である。CET (中央欧州時間)の夏時間で14日21時から、日本時間にすると、15日の4時(朝の4時)からのスタートである。世界のどこにいても、ネットで下記から生中継を見ることができる(Octoshape のソフトウェア・ブラウザ拡張アプリのDLが必要となる)。
http://www.eurovision.tv/page/webtv

YouTubeでも見られると思う。
https://www.youtube.com/channel/UCRpjHHu8ivVWs73uxHlWwFA

ユーロヴィジョンは、究極的には放送網の広域同時中継の国際的実験で、昨年、60回目の大会のゲストとして参加したオセアニアのオーストラリアが今年は正式なメンバーとして参加しており、もはや「ユーロ(ヨーロッパ)」では全然なくなっている。アメリカ合衆国の野球大会が「ワールド・シリーズ」を名乗るのだから、こっちも「ワールド」を名乗っていいと思う。

どうでもいいかもしれないが、「ユーロ」を冠したこの大会に参加する国々の、1990年代以降の広がり方を見ると(ウィキペディア英語版に一覧表になっている)、「冷戦」を教科書の中でしか知らない世代の人であっても、「ヨーロッパ」の概念が当の欧州において(欧州連合以前に)どう拡大してきたかがよくわかり、その前の時代に構築された「欧米」という概念について「ハンガリーはヨーロッパじゃないっていうんですか、キーッ」などと腹を立てずにすむだろうし、昨今、元々「西欧の先進国」と扱われていた国々が、旧共産圏諸国について「欧州の価値観を共有する仲間」呼ばわりする場合、意図されているのは「われわれの価値観を受け入れ、われわれに仲間入りしたはずの君たち」という、一種の「あてこすり」だということもわかるだろう。

http://www.eurovision.tv/page/timeline#Finalさて、ユーロヴィジョンである。大会は毎年、前年の優勝国で開催される。今年は昨年の優勝国であるスウェーデンのストックホルムでの開催だ。キャッチフレーズは "Come Together"(RemainとLeaveで熱くなっている英国系としてはお茶をふかずにはいられない)。今週、既に「予選ステージ」(「準決勝」と呼ばれている)が行なわれており、フィンランド、ギリシャ、モルドヴァ、サンマリノ、エストニア、モンテネグロ、アイスランド、ボスニア&ヘルツェゴヴィナ、スイス、あたしのアイルランド、ベラルーシ、マケドニア(あっちのほう)、スロヴェニア、デンマーク、ノルウェー、アルバニアが今日の「決勝」大会を前に姿を消した。それと今年はルーマニアがこれまで延滞してきたお金を支払えず(支払わず?)大会出場ができなくなっている。ともあれ、こうして予選(「準決勝」)で残った国と、「ビッグ5」と呼ばれる西欧5カ国、および開催国のスウェーデンを含めた26のアーティストによって競われるのが、数時間後に始まる「決勝」である(キャプチャ via kwout)。「決勝」に残れなかった代表の曲なども、ユーロヴィジョンのサイトから見られるようになっているので、ヒマな人は見てみると楽しいかもしれない。曲解説や歌詞もある。

ちなみにあたしのアイルランドは、「いかにもユーロヴィジョン」の形式的というか様式美的なポップソングで、ニール・ハノンとトマス・ウォルシュが2010年にセンセーションを巻き起こした「新国歌」で「われらが国の誇り」と讃えられたボーイバンド、Westlifeのメンバーだった美男がやる気なさげな歌唱を披露していた。Upside downと歌うところがダブリン訛りでいかしている。あと、it's now or neverってところで客席で英国旗が揺れてるのが重なるので、現実に引き戻されると思う。



というわけであたしのアイルランドが消えてしまい、(´・_・`) という顔で画面を見ることになるのだろうか……と思いつつYouTubeのユーロヴィジョン公式のページで各種サムネイル画像などを見ると、さすがユーロヴィジョン、キッチュで大げさで、安心のクオリティではあるようだ。

しかし、今年の大会は、あたしのアイルランドがいようといまいと、笑いどころがなさそうなところがすごい。笑ったまま顔が固まるレベルなのだ。

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2016年05月08日

サディク・カーンのロンドン市長当選を祝ったパキスタン人人権活動家が、殺された。

1つ前で「『暗殺』とか、シャレになんないんっすけど」と書いたが、まさにそういう話。

ロンドン市長になったサディク・カーンは、パキスタンから英国に移住した家の子で、彼自身はロンドン生まれ・ロンドン育ちのロンドナーで英国人だが、パキスタンに関する発言や活動も行なっている。セキュラー(世俗主義)で「リベラル」な立場からの発言だ。

そして、これは、パキスタン国内のナショナリスト(国粋主義者)や保守派にはがまんならないことかもしれない。そのことは、マララさんについて「あんなガキは撃たれて当然」という方向のものすごくひどい言説が、「現地の声」としてそれなりにもてはやされてきた日本語圏では、たぶん説明不要だろう。

パキスタンのカラチで、サディク・カーン市長の誕生を喜ぶ発言をFacebookに投稿した人権活動家が、友人たちとお茶を飲んでいるところを銃を持った何者かに襲われ、撃ち殺されるということが発生した。FBの投稿からわずか数時間後の襲撃だった。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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