「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2024年06月28日

「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」展(東京・六本木、WAKO WORKS OF ART, 2024年)

ものすごく久しぶりにこちらのブログの管理画面を開いたのは、今から書こうとしていることは、はてなブログよりも、こちらのほうが適していると思うからだ。

「書く」というより「覚え書きを残しておく」というべきか。

2024年5月17日から6月29日の日程で、東京・六本木のWAKO WORKS OF ARTというギャラリーで、「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」という展覧会が開催されている。2023年12月に、ガザ市で、イスラエル軍の標的とされて爆殺された(すなわち「暗殺された」)ガザのイスラミック大学教授で詩人でもあったリフアト・アルアライール教授(以下「リフアト先生」)が、最後にTwitter/Xで一番上に表示されるようにピン留めしていった自作の詩に基いた、というかその詩にインスパイアされた企画である。会期も終わりが近づくころになってようやく、六本木まで足を運ぶことができ、このギャラリーでは「写真撮影可、非営利での利用可」となっているので、撮影してきた写真とその他の情報をここにまとめておこうと思う。

"If I must die" というリフアト先生の詩自体が、米国の「ハーレム・ルネッサンス」の幕開けを告げたクロード・マッケイによる "If we must die" を下敷きにしているという。そして、"If I must die, you must live to tell my story" と始まり、"If I must die, let it bring hope. Let it be a tale" と結ばれるリフアト先生の詩は、世界中の翻訳者によって数多くの言語に翻訳され、街角のミューラルに描かれ、パレスチナ連帯・ジェノサイド反対の抗議行動のプラカードに書かれ、俳優によって朗読され、俳優でない人々によっても朗読され、言葉ではない別の形での表現を触発し、多くの人々の手によって、本当に、taleになりつつある。再話され、アレンジされ、連綿と受け継がれていく物語になりつつある。

展覧会の概要は下記:
https://www.wako-art.jp/exhibitions/ifimustdieyoumustlive/
このたび、ワコウ・ワークス・オブ・アート(六本木)では、2024年5月17日(金)から6月29日(土)まで、オランダ出身の作家ヘンク・フィシュのキュレーションにより、パレスチナ出身の詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会『If I must die,you must live』を開催します。 本展のタイトルは、パレスチナの詩人リフアト・アルアライール(1979 年生まれ)が2011年に書いた詩の冒頭部分です。2023年の11月にこの詩をSNSに投稿した彼はその翌月、イスラエル軍の空爆により絶命しました。アルアライールが残したこの詩が、本展全体を通底するメッセージとなっています。
……
世代の異なる作家たちの想いや言葉が響き合う本展を通して、現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らすきっかけとなれば幸いです。フィシュの出品作のタイトルは私たちに問いかけます。 “Que sais-je?”(私は何を知っているのか?)と。 ぜひこの機会にご高覧いただきたく、ご案内申し上げます。


参加アーティストは、ヘンク・フィシュ、ムスアブ・アブートーハ、リフアト・アルアライール、スライマーン・マンスール、奈良美智。うち、詩人であるムスアブ・アブートーハは壁面の展示はなく、1人1部で配布されているブックレットに詩が掲載されていた(英日対訳)。このほか、書籍や地図も展覧会の一部となっていた。

ブックレットの表紙:
ブックレットの表紙
If I must die, you must live


ブックレットの目次:
ブックレットの目次
CONTENTS
目次

Introduction
Henk Visch
はじめに
ヘンク・フィシュ

6 poems
6つの詩
Mosab Abu Toha
ムスアブ・アブートーハ

Poetry of Resistance
レジスタンスの詩
Henk Visch, Irene Veenstra
ヘンク・フィシュ
イレーネ・フェーンストラ

If I must die
Refaat Alareer
私が死ななければならないのなら
リフアト・アルアライール
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2022年12月19日

アメリカのジャーナリストたちと一緒に、Twitterアカウントを凍結された件について、経緯を詳しく書いておく。

日本語圏でこんな目にあわされたのは、どうやら、私ひとりのようだ。

米国で、一流の仕事をしているジャーナリストたちが次々とTwitterアカウントをサスペンド(凍結)されていたとき、私も東京で同じ目にあわされていた。理由も、おそらくは同じだ――Twitterを手中に収めてやりたい放題のイーロン・マスクが所有するプライベート・ジェット機の居場所の公開情報を、Twitterにフィードしていたアカウント、「イーロンジェット」が、Twitterを追い出されたあとでMastodonに新設したアカウントのURLを、Twitterに貼ったこと。

私はジャーナリストではないのだが、Twitterではなぜか昔から(遅くとも2009年7月ごろから)「インフルエンサー」と位置付けられている(そのころにたくさんあった「あなたのTwitterを分析します」系のサイトのどれもが@nofrillsのアカウントをそう評価していた。当時はユーザーとユーザーのつながりに「価値」を見出すことが流行っていたので、何かの拍子で流れに乗ってしまったのだと思うが、実際、ベルファスト・テレグラフやエルサレム・ポストのような新聞のメインのアカウントと相互フォローだったりするしね)。今回、こういうことになったのも、おそらくそのことが影響しているのではないかと思う。

今日、2022年12月19日(月)に、イーロン・マスクがまさに朝令暮改というか、朝令昼改くらいのペースで気まぐれに出して気まぐれに撤回した「TwitterではMastodonなど他のソーシャル・ネットへの誘導は、これから禁止な!」というトンデモな方針を、日本語圏では「Twitterでほかのサービスを宣伝すること」の問題と受け止め、「スパムの抑制策」と解釈している人が、どうやら少なくないようだが、お前らの目は節穴ですかと、心底びっくりしている。先週の末、英語圏で何が起きていたか、まるっきり見てなかったのかと。

で、私は英語圏の人々と同じように、マスクの気まぐれに翻弄されてぐったりしてるのだが、今、これを書くためにエディターを立ち上げるほんの1時間くらい前までは、日本語圏でこういう目にあわされた人はほかにもいると信じていた。「信じていた」というより、疑いもしていなかった。「当然、私だけじゃないでしょ」と。

だって、マスクのプライベートジェットの位置情報まとめとか、みんな特に意味なく好きそうじゃん。フライトなんとかっていう追跡サイトもよく参照されてるでしょ、日本語圏でも。

だから、マスクのジェット機についての自動フィードに、「へー、こんなのが公開情報でわかるんだ」的に興味を惹かれ、それについて「Twitterでは見られなくなったようだけど、Mastodonにあるみたいだよ」という情報が流れてきたら、特に意味もなくURLをペタリ、とやった人は私の他にもいるだろうし、そうである以上、私と同じように、マスクのTwitterから締め出された人は他にもいるはずだ、と思っていた。

こういうのも「正常性バイアス」って言うんですかね。

そんなことはどうでもいいんだけど、ともあれ、ロッシェル・カップさんも、清義明さんも「他の例を知らない」とおっしゃっているし、私は日本語圏でおそらくただひとり、マスクの気まぐれに翻弄されることになったようである。ならば、なるべく詳しいことを書いておくのが公益のためになるだろうと思ったので、今、Twitterの自分の投稿のアーカイブをダウンロードしながら、エディターを立ち上げてキーをたたき始めた次第である。

以下、Twitterのことは知ってはいるがTwitterを使ってはいないという方にもお分かりいただけるよう、なるべく詳しく書いていくので、冗長に感じられるところもあるかと思うが、その点はあらかじめご了解いただきたい。

報道等での出典を明記しての引用はご自由にどうぞ。ただし文脈を無視した切り取り・切り貼りはしないでいただきたい。追加の質問がおありの場合、公開の場での質疑のやり取りなら応じますので(公開の場で起きたことですので公開の場でやります)、Mastodonまでお願いします(Twitterは見ないのでTwitterにご質問等いただいても気づかないと思います)。

※当記事の表示について: seesaaブログで、Twitterの埋め込みの表示が機能しなくなっているようです。過去記事のもうまく表示されていません。私が放置している間に何か機能が変更になったのかもしれませんが、ヘルプを見ても全然わからず、もう諦めました。スマホ版なら問題なく表示されているようなので、スマホやタブレットでご覧いただければと思います。お手数をおかけします。

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2021年07月27日

パンデミック下の東京都、「コロナ疑い例」ではないかと疑った私の記録(検査はすぐにはしてもらえない)

東京都の新型コロナウイルス感染対応 (COVID-19対応) は、都と各自治体(区・市など)と2つ窓口がある。何か症状があって、「ひょっとして……」と思ったときは、いきなり医療機関に行くのではなく、自分が住んでいる自治体のサイトを見て、相談窓口に電話をかけ、どうすればいいか相談することになっている。かかりつけ医がいる場合は、相談先はかかりつけ医でよいともいうが、かかりつけ医がいない人も多い。

この相談窓口の電話が、つながらないとか非常につながりにくいという話は、このウイルス禍が始まってからずっとどこかで言われている。私が実際にその当事者となったとき、本当にその通りだったので、それをちょこっとメモしておこうとTwitterに書いたら、なんだか自分にしてはすごいバズってしまって、広く心配をおかけしてしまった。

というわけで、個人的な記録のためと思ってTwitterに書くと140字に収まる範囲内で断片化されるし、断片のひとつだけがバズってしまうことが危惧されるので、大したことではないが、以下、ブログに書いておくことにした。ひとつの記録として見ていただければと思う。

tokyofeverconsultationcentre.png
※東京都の発熱相談センターへの相談件数のグラフ。このエントリを書き始めた2021年7月27日午前のキャプチャ。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-reports-to-tokyo-fever-consultation-center



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2021年07月26日

都教委のサイトと外務省のサイトで、イスラエルの首都がなぜか「エルサレム」ということにされている件。

イスラエルの首都はどこか、と聞かれたらどう答えるだろうか。私は「テルアビブ(テルアヴィヴ)」と答える。だが日本国政府はどうやらそうではないらしい。それに気づいたのは、先週木曜日、7月22日の夜のことだった。

順を追って書き記しておこう。この日、19時から21時の予定で、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に事務局が置かれている「イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究」によるオンライン研究会、「パレスチナのちいさないとなみ―写真と文学・映画から」が、Zoomを利用して、開催された。成蹊大学の嶺崎寛子准教授の司会で、前半は京都大学の岡真理教授による「パレスチナの人々―文学と映画から」、後半はパレスチナ現地を深く知る写真家の高橋美香さんによる「パレスチナのちいさないとなみ―写真から」という二部構成で、最後に参加者との質疑応答が行われたあと、東京外国語大学の黒木英充教授の締めの言葉、という流れだった。

岡教授のお話は、語ること・書くこと・伝えることと、それを受け取ることについて、今のこの状況(特に今年5月のガザ攻撃後という文脈)の中で何が行われ、どういうことが進行しているかを具体的に示し、一本の筋を通してくれるようなものだった。特に最後に紹介された "We Are Not Numbers" (私たちはただの数字ではない)というサイトの取り組みは、Twitterでのパレスチナ人たちの英語での発信と同様に、フォローしていきたい。語られなかったものが語られるようになったということの意義は、これから具体的に見えてくると期待したい。「期待」というより「希望」か。

高橋さんのお話は、西岸地区の人々、特に女性たちの等身大の姿――という常套句しか思いつかない自分の頭を殴りたいが、私の頭は昔のテレビではないし、殴ったらよりよくなるわけではないから殴らない――を生き生きと伝えるもので、日本でぼーっと過ごしている私たちの立場からいえば「声なき者」にしか見えない「現地の人々」に、私たち日本語話者に聞こえる「声」を与えるものだった(高橋さんの柔らかい、フレンドリーな語り口の役割は、とても大きいと思う)。特に「もうひとり、妻を持ってもいいんじゃないか」的な態度を取り始めた夫を家からたたき出したおかあちゃんの話は笑った。まるで往年の橋田寿賀子ドラマになりそうな話だ。

そのあとの質疑応答も、「Zoomの向こう側にいる人たちレベル高すぎ」と驚嘆するよりなかったのだが、何より驚いたのは、黒木教授が述べられたことにだった。





これがあまりに衝撃的だったので、Zoomのイベントが終わってすぐに、自分で調べてみた(→そのときのTwitterのスレッド)。そうしたら、この衝撃の「イスラエルの首都はエルサレム」説を唱えているのは、都教委(東京都教育委員会)だけではないことが確認できた。具体的には、日本国の外務省のサイトがそう言っているのだ。ほら、このとおり。

israel-parestine-maps-tokyo-jp-governments04c.png
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html#section1
(※画像はクリックで原寸大表示になります。以下同)

外務省のサイトは、イスラエルの首都をエルサレムとした記述に注釈をつけていて、その注釈で「日本を含め国際社会の大多数には認められていない」と書いている。つまり、日本国が認めていないことが、日本国政府外務省のサイトに既成事実として掲載されている、ということになる。

何を言っているかわからないと思うが、私もわからない。

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2021年03月30日

ファルージャ戦の娯楽素材化に反対の意思を示す請願文・署名のご案内 #イラク戦争 #ファルージャ

以下は、署名サイトchange.orgにアップされている下記の請願文の日本語化である。英語では請願文を読めないという方に、内容を把握するためのガイドとしてご参照いただければと思う。
Below is a Japanese translation of the following petition on the website change.org.

STOP HIGHWIRE GAMES AND VICTURA FROM NORMALIZING THE MASS MURDER OF IRAQIS
https://www.change.org/p/united-nations-stop-victura-and-highwire-games-from-normalizing-the-mass-murder-of-iraqis


【前置き Preface】
訳者(わたし)の解説みたいなものは本文の下につけておくが、その前に、ここで問題視されている2004年のファルージャ戦についてご存じない方もおられると思うので、訳者がかかわった過去の仕事へのリンクをはっておく。ファルージャ戦についてよく知らないという方には、それらをご参照いただきたく思う。
I am a co-translator of a book on the first battle in Fallujah in April 2004, made of on-the-ground reports by English-speaking journalists and humanitarian workers.

ファルージャ 2004年4月 - ラフール マハジャン, 賢, 益岡, よしこ, いけだ
ファルージャ 2004年4月 - ラフール マハジャン, 賢, 益岡, よしこ, いけだ

2004年のファルージャ戦は、上掲書で扱った4月と、同年11月から12月の二次にわたって行われたが、後者については当時、英語圏の報道等を見ながらほぼリアルタイムでブログで日本語で書いていた
Six months after the book was published, the US forces launched the second battle in (or they might have used "of" or even "for" instead of "in") the city, during which I along with my co-translator kept translating English news and analysis articles and posted them online.

では、以下本文。請願文のオリジナル(英文)と私の訳文(日本語文)を交互に示す「対訳」の形式をとるので、内容に関する疑問点などは原文をご参照の上、原文の著者さんにお問い合わせいただきたく思う。訳文の不備の指摘は私まで。
Enough of this preface thing. Below is the translation.


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2020年06月14日

アベノマスクが届いたので、糸をほどいて解体してみた。 #abenomask #abenomasks

5月下旬のある日、そろそろ一時のマスク不足も解消しつつあるかな、という感じが強まっていたころに、東京都23区内在住の私の家の郵便受けにも通称「アベノマスク」が届いていた。その前の週に「特別定額給付金」(例の10万円)の申込書類は届いていて、「もうアベノマスクは届かないのではないか」と思っていたのだが、届けられた。

要らないのに。

顔の下半分を全体的に覆える大きさもないような、ほぼ何のフィルターにもならない布でできた「給食マスク」は、単に物理的に役に立たないのだから、いらないのに。

国費から、何百億円だかかけた上に、追加検品で何億円だかかけて届けられた「やってる感」マスク。花粉症でマスクを着け慣れている人々が大半の巷からみれば、粗野で粗雑で奇妙で奇矯としか言いようのないマスク姿を衆目にさらしている政治家たちのコスプレでもしろというのだろうか。


how-to-wear-your-mask-like-a-pro.png


ともあれ、先日、その「アベノマスク」を、よく切れる糸切りばさみと顕微鏡を持っているすばらしい友人と一緒に解体し(糸をほどいて展開)、顕微鏡やルーペで観察した。本稿はその記録・報告を目的とするものである。

結論から言えば、虫は入っていなかったが、正体・出自不明の繊維片は、マスクの布の繊維に絡みつくようにして、入っていた。つまり俗に言う「ゴミノマスク」だった。注意深く見れば、目視でもわかるレベルの混入もあった(が、視力0.5の人が普通のオフィスや倉庫の照明のもとで作業していたら見えないかもしれない。視力1.0でも目が疲れていれば見えないかもしれない)。

「ゴミノマスク」なんていうと「大げさな」と非難されるかもしれない。確かに、タオルとかハンカチのような身に着けるものではないもの、あるいは身に着けるものでも完全に外用のもの(衣類やヘアゴムのようなもの)ならばああいう繊維片(ゴミ)の混入は全然問題にならないだろうが、マスクは衛生用品だ。Tシャツやヘアゴムと同等の基準でみるわけにはいかない。その繊維片が、縫製作業に当たった人の服の繊維なのか、縫製に使ったミシンについていたものなのか、縫製工場で空気中を舞っていたものなのか、床に落としてしまったのを拾い上げてパンパンとはたいたあとに残ったものなのか、梱包作業のときに混入したものなのか、そういったことは一切わからない。そういうものが、繊維の中に入り込んでいた。それは事実である。

以下、記録を目的とするので、とても長いということをお断りしておく。

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2020年04月25日

「漂白剤は飲んで効く奇跡の薬」と主張するアメリカのカルトまがいと、ドナルド・トランプ

今のこれは確かに「ウイルスとの戦い」だが、ウイルスは別に意図をもって攻めてきているわけではない。一方でウイルスから防御する側の私たち人間は、意図を持っている。そしてほとんどの人々は、第一に、「死ななくてもよい人を、これで死なせてはならない」と意図している。それが医療現場の最前線でCOVID-19の患者を人工呼吸器につないでいる医師や看護師や技師たちであれ、外出せずに自宅で過ごしている一般市民であれ、「リモート」で音楽ビデオを作るセレブたちやそのスタッフであれ、自分の会社に何かできることはないかと申し出たり模索したりする企業トップであれ、

しかし中には、全然別な方向に意図が向いている人もいる。その人たちは「死ななくてもよい人」のことなどカケラも考えていない。何の因果か、この未曽有の危機に際して米大統領という立場にあるドナルド・トランプも、そういう人のひとりだ。

最初にそれが明らかになったのは、記者会見で「マラリアの薬が効くそうですよ」みたいなことを言ったときだった。「どうせ利権(というか、より正確には株価)だろ」と思って眺めてたら、案の定そうだった。

そのときは私はほぼスルーした。あとから自分のTwitterログを見返せば確認はできるという程度にメモ的なことは書いたしいくつかニュース系のツイートをリツイートして記録はとったが、しっかり書くということはしなかった。そんな時間がもったいなかったし、そうすることで逆にドナルド・トランプのばら撒いているデマ(政治的な……というか政治および経済的な意図のある誤情報)を広めてしまうことになるのを懼れたからだ。実際にトランプが「薦めた」というその薬の名前は、日本語圏でカタカナで出回ってもいた。

ドナルド・トランプがアレな人物だということは、日本では意外なほど知られていない。日本のマスコミの報道を見ていても、トランプがとんでもない人物だということは何となくわかっても、どうとんでもないのかは多分わからない。具体的にとんでもないことは、例えば「金正恩と会談」「中国と対決」みたいなことのように詳しくは報じられないから(そして「金正恩と会談」「中国と対決」みたいなことは、鮮烈な印象を残すから)だ。記者会見などで見せるあのひどい言葉遣い(ひどい英語)も、英語がわからない人には何がひどいのかわからない。

日本ではひょっとしたら肯定的に、つまりそれが「よいこと」であるかのように受け取られているかもしれないが、ドナルド・トランプは陰謀論者だ。ロシア疑惑だのウクライナ疑惑だのといったガチもんの国際政治疑惑によって、語られるべきことの奥の方に押し流されていてもう誰も語っていないかもしれないが、「大統領」である以前に「陰謀論者」だ。もう知らない人も多いと思うが、「バラク・オバマは実はアメリカ合衆国で生まれていないので、大統領の資格はない。合衆国生まれだというなら出生証明書を見せろ」と主張した、いわゆる「バーサー Birther」の筆頭格がドナルド・トランプだったのだ。(ついでに言えば、この「バーサー」という用語の元となったのは、「2001年の9.11事件は米国政府が仕組んだ」などというトンデモ説を唱えることを「真相究明運動」と称した勢力が「トゥルーサー Truther」と呼ばれたことである。)

「自由の国」では(そうでなくても)陰謀論そのものは個人の思想信条の自由の範疇に入り、それに基づいた行為(例えば破壊行為や襲撃、金銭的詐欺など)が違法になることはあっても、思想そのものは何にも問われない。いかにトンデモでも、思想自体は違法にはならない。

陰謀論者は「今の世の中で当たり前とされていることは、本当に『当たり前』なのか」と問いかけることで社会の中に、あるいは個人の心の中に、足場を築く。

ドナルド・トランプはそこまで器用な人物ではないようだが、自分の立場を利用して何かをひそかに売り込む(宣伝する)といういわば「ステマ」屋としての技能はあるし、2016年以降、ステマ屋としてはこれ以上は望めないくらい高い地位にある。本当は「大統領のお墨付き、万病に効く命の水」くらいのことをやりたいのだろうし、アメリカ合衆国でなくもっと小さな国の大統領だったら実際にそうしていたのではないかと思うが(実際にそういうことをしている国家トップもいる)、それは想像の話、仮定法で語る話だ。

トランプ本人が上述のような一種巧妙な心理戦の能力を持つかどうかは別問題だが(私はあの人物にはそれは無理だと思う)、トランプに働きかける人物たちの中には、そういう心理戦のプロフェッショナルたちがいる。トランプを媒介として自分たちの言いたいことを世間に広めることで、自身に直接的な利益がある、という人々がいる。

そして、米国政治は「ロビー活動」に対してあまりに無防備で無頓着だ。

それを実感させられた話。

24日(金)、本気で、自分が英語読めなくなったのかと思うようなことがあった。正確に言えば、私が知ったのはそれが起きてから9時間ほど後のことだったのだが、金曜日はほとんどネットを見ておらず、Yahoo! Japanなどをちょこっと見ていただけで、そんなことがあったとは知らずに過ごしていたのだ。

Screenshot_2020-04-24-16-26-03.png


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2020年03月20日

「オーバーシュート overshoot」なる用語について(この用語で「爆発的な感染拡大」を言う英語の実例がほとんど確認できない件)

■3月23日追記■
以下で述べているのは、厚生労働省のサイトにアップされた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議: 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年3月19日)」 で用いられている用語についてである。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610566.pdf

本稿は最初にアップしたとき、事態のリアルタイム性を重視して「何があったか(何を見たか)を時系列でたどる」形式で書いたので、問題の用語の初出である上記文書へのリンクが記述の中に埋もれてしまっていたので、改めて上に掲示しておく次第である。また、これを加えた際に、ついでに本文に少し追記を加えた。内容は変えていない。より大きな追記はまたこのあとでおこなう予定である。

追記は以上。以下、アップロード時の文章。




3月17日(日本時間では18日早朝)のアイルランドでの首相の素晴らしいスピーチの余韻も冷めやらぬ中、今度は日本で、3月19日の夜、政府の専門家会議が新型コロナウイルス感染症について検討した結果を、記者会見で広く一般に伝える、ということが行われた。ネットで生中継されていたので私も何となくつけていたが、アイルランドに「言葉の力」をこれでもか、これでもかと見せられたあとで、日本では標準的なものではあるが、言葉に全然力のない、間延びした物言いを聞き続けているのは、正直、非常につらかった。それでもそこで語られていることは重要なことで、ちゃんと聞いておかないと……と思ってはいたのだが、英文法の本を読みながら聞いていて(全然ちゃんと聞いてない)、途中でトイレに行きたくなって、ついでにお茶を入れるなどしていたので、結局、ろくに聞かずに終わってしまった。

しばらく経ってから、会見の内容をまとめた記事がそろそろ出ているのではないかとYahoo! Japanのトップページを見てみると、Twitterで話題になっている語句を表示する「リアルタイム検索で話題のキーワード」の欄に、「オーバーシュート」という語が出ていた。この語と一緒に「つぶやかれているワード」から専門家会議の会見での言葉だということはすぐにわかった。私にはなじみのない言葉だが、会見で出てきていたか。どういう文脈で出てきてたんだっけ?

リアルタイム検索を見ると、「アウトブレイク、パンデミック、クラスター、などなど、カタカナ語ばかりでいやになる」という主旨の発言が並んでいた。「キャプテン翼か」みたいな発言もいっぱいあった(「それはオーバーヘッドシュートだろう」と突っ込むべし)。そういう中に、私が自民党の国会議員だと認識できる名前の方(どなただったかは覚えてない)が「オーバーシュート(爆発的感染拡大)」と記載しているツイートがあった。この記述は「オーバーシュートという専門用語があって、それは『爆発的感染拡大』という意味だ」ということを含意する記述である。(3月23日追記: あとから調べてみれば、この言葉は「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年3月19日)」で用いられていて、専門家会議の人たちによる記者会見でも当然口にされていたのであったが、リアルタイム検索の画面を見ていたときの私は、まだそこまでたどり着いていなかった。)

「オーバーシュート」ってovershootでしょ。「飛行機が着陸地点を通り越して飛んでいく(そして、場合によっては本来の着地点とは外れたところに着陸してしまう)」ことに使う語だが、「爆発的感染拡大」なんていう語義あったっけ? ……というのが最初の反応。

次にすることは、とりあえずネットで簡易的に辞書を引くことだ。はい、コリンズ:
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/overshoot

オクスフォード:
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/overshoot?q=overshoot

どちらもだいたい同じ。「自分が止まろうとしていた地点よりも遠くに行ってしまうこと」(先述の飛行機の例)、また「最初に考えていたよりも多くのお金を使ってしまうこと」。もう少しかみ砕いて考えると、「何かを物理的に飛び越してしまうこと」(overした状態にまでshootする)と、その意味を比喩的に展開して「何かを超過すること」。どちらも動詞だが、名詞としての用法もある。

「爆発的感染拡大」をもう少しヒラな感じ(文脈から切り離して一般化した感じ)にして、「何かが急激に増えること」と《翻訳》してみたところで、コリンズにもオクスフォードにも(さくっと確認できる範囲では)その語義は見られないということになる。

きっと辞書が貧弱なんだ。大辞典には載っているはず……と、2時間ドラマで凶器として使われそうなでかい辞書を取り出そうとしたが、だるかったのでやめた(3月23日追記: コリンズ・コウビルドにもオックゥフォードにも載っていないような語義なら、一般向けに使うべきではないか、「和製英語」的な何かでしかないということだし)。その前にウィキペディア(英語版)だ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Overshoot

ここからテキストだけコピペすると(ハイパーリンクはコピーしない):
Overshoot may refer to:
- Overshoot (population), when a population exceeds the environment's carrying capacity
- (書籍のタイトルなので略)
- Overshoot (signal), when a signal exceeds its steady state value
- Overshoot (microwave communication), unintended reception of microwave signals
- Overshoot (migration), when migratory birds end up further than intended
- Overshoot (typography) the degree to which a letter dips below the baseline, or exceeds the cap height
- Overshoot (combat aviation), a key concept in basic fighter maneuvers (BFM)
- In economics, the overshooting model for the volatility of exchange rates


というわけで、「何かが急激に増えること」は、あえていえば最後の "the volatility of exchange rates" に関する用語。株式や証券の相場に関する用語だ。

「爆発的感染拡大」とは、何か違くない?

でも実際の英語ではそういう転用が見られるのかもしれない。ということでGoogle検索を試したり、米語コーパスで調べてみたりしたのだが、やはり、「爆発的感染拡大」の意味でovershootの動詞・名詞が使われている例は見当たらない。エボラ出血熱やら豚インフルエンザやらMERSやらSARSやらの深刻な伝染病、あるいは家畜の伝染病の口蹄疫やら何やら、はたまたワクチン反対の陰謀論者のおかげで復活してきたという麻疹など、「爆発的感染拡大」が語られる事案はたくさんあるのだから、「爆発的感染拡大が生じた今回の新型コロナウイルスが出てきたのは最近すぎて、コーパスが扱えていないから、検索結果に出ないのだ」と考えるのもおかしい。WHO(世界保健機関)の用語集にもovershootは見当たらない。

と、リアルタイム検索を見ると、PubMedをチェックした方のツイートがあった。(そうだ、こういうときはPubMedだ。)

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2020年03月01日

学術的に確認はされていないことでも、報道はされていたということについてのメモ(新型コロナウイルスの「再感染」について)

※本稿の表題ですが、「報道があった」ことは「その事実がある」ことを必ずしも意味しないので、その点はよろしくお願いします。また本稿は、「報道があった」ことを盾に「その事実を認めよ」と迫るものではありません。むしろ逆で、「英デイリー・メイルなどタブロイドを鵜呑みにするな」と言いたくて書いたエントリです。

BuzzFeed Japanのこんな記事が話題になっている:
「新型コロナウイルスの再感染は致死的」医師の動画に批判、専門家「信用しないで」
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/iwata2


この見出しがあまりにわかりづらくて、私は最初にTwitterでこの見出しを見たとき、どこかのまとめサイトだろうと思ってスルーしてしまったのだが、そんなことは本質的なことではなく、記事自体は、現在のこの「何もかもが不安と不信」というムードの中でひとつの明確な指針となりそうなものだから、読んでおくといいと思う(見出しについては本稿の最後で具体的に指摘する)。

分かりにくい見出しを整理すると、「新型コロナウイルスの再感染は致死的」と主張するビデオを自身のYouTubeに上げている医師がいて、そのビデオについて(その医師とは別の)専門家が「信用しないで」と評価し、内容を批判している、ということである。また、その医師のビデオはネット上でかなり流行っているらしい。私は見たことなかったが、BuzzFeed記事に埋め込まれている当該のビデオのキャプチャ画像を見れば、多くの人が「あー、このビデオ見たわー」となるのだろう。

記事の冒頭には次のようにある。(太字も原文のままで引用してある)
「新型コロナウイルスの再感染は致死的」。そう説明する現役医師の動画がネット上で拡散されている。感染症の専門家で神戸大学教授の岩田健太郎医師は「そういう事例の報告はない」「引用論文が明示されていないものは信用しない方がいい」と注意を呼びかけている。
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/iwata2


そして記事の下の方には、岩田教授の発言として、次のようにある。
そもそも「2回感染した」という事例は、1度も確認されていない。検査で陰性になった後に陽性になったという人が、「2度目に感染したのか」はまだ謎なんです。

大阪の事例にしても、中国の事例にしても、陰性になったのは検査で見つけられなかっただけで、ずっと感染していただけなのではないか。再感染より「再燃」(いったん減少したウイルスが再び増加すること)の可能性の方が高いと考えています。

再感染が確認されていないということは、それが心不全を起こすということも当然確認されていない、ということです。


と、岩田教授は「1度も確認されていない」と言い切り、その後で陰性だった人が陽性になったのは「2度目の感染」なのかどうかは「まだ謎」、つまりまだ解明されていない(わかっていない)と述べている。これは非常にロジカルな言い方なのだが、「2度感染することがあると分かっていない以上、2度感染したという事例はこれまで確認されていない」というのは、やや人を食ったように感じられるかもしれない。要するに、「2度感染するなどということが本当にあるのかどうか、わかっていない」のである。

だから「2度の感染(再感染)」を前提として何かを語ることは、できないわけだ。

以下、BuzzFeedの神庭記者と岩田教授の話は、さらに別の側面へと発展していき、そのパートがなかなか読み応えがあるのだが、本稿ではそちらは扱わない。読めばわかるので、各自で、読んでいただきたいと思う。

本稿を書いているのは、ここで岩田教授によって批判されている医師のビデオにある「再感染で心不全」という話に、おやと思ったからだ。

私は医学は専門外だから、用語を正しく把握・記憶しているかどうかはわからないのだが、「再感染する」「心臓に影響が出る」といった話は、2月の間に何度か、Twitter上で英語で遭遇したことは確かだ。"infected again" とか "second infection" とか、"cardiac なんとか" といった単語でそういう内容のことが語られていた。それが気になったので、今回改めて検索して掘り出してみた。そういう報道があったということはこれで確認できると思う。

詳細を述べる前に念のために書いておくと、岩田教授がおっしゃる「確認されていない」は、医学的にそういう事実があるということが検証を経たうえで確認されていないということであり(つまり所定の手続きで確認されたと位置付けられる論文等が出ていない)、「メディアでの報道がない」ということは意味していない。だから、岩田教授の発言と、私が報道記事を見た(見つけた)ということは矛盾しない。「〜という事実がある」ことと「〜という報道がある」ことは必ずしもイコールではなく、「事実はあるが報道がない」ことも「事実はないが報道がある」ことも、ありふれている。「〜という報道があったのに、岩田先生はないと言っている」という疑問や不安を覚えている人には、何か発言する前に、まず前提として、このことを再確認していただきたいと思う。

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2020年02月25日

「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族も友人も守れるはず――善意で広まるあるチェーンメール

新型コロナウイルスに関してはいろんなことが言われていて、その一部はデタラメだ。個人的にウイルスの話など読んだり聞いたりしてもどのくらい正確に理解できるのか怪しいくらいの素養しかないのだが、それでも「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」で始まる日本語のメッセージを受け取ったときは、「これはデタラメだ」と即判断した。

なぜか。日本語がひどかったからだ。「ひどかった」というより「機械翻訳臭」に満ち満ちていたから。もっと言えば「失敗した機械翻訳臭」だ。(詳細後述)

そういうダメな翻訳の話は、今回の新型コロナウイルスに関するニュースのなかでもうひとつあるのだが、そちらについて書こうとしていたらなぜかドツボにはまってしまい、昔聞いていた『基礎英語』のテーマ曲が頭をぐるぐるし始めるというありさまで(その音楽が『基礎英語』のテーマだということは、あとから調べて確認しなければならなかったのだが……つまり、ぐるぐるしている間はずっと「これ何だっけ、これ何だっけ」と考えていた)、もう少しこなれるまでの時間が必要だということで、取り急ぎ、「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」の怪文書から。

そう、これは「怪文書」だ。

これは「怪文書」である

このメッセージを(幸いにも)受け取っていない人もおられるだろうから、下記に画像データで示しておく。(読み上げソフトをお使いの方には申し訳ありませんが、コピー&ペーストできるテキストの形で再掲することは、不確かな情報を記載した怪文書を、当ブログからまたコピペで拡散させてしまうことになるので、なにとぞご理解ください。)画像データには大量のウォーターマークを入れておくが、それはこれをこのまま悪意で再拡散・再利用させないためである。読みづらい点はお見逃しいただきたい。

基本的に送信されてきた文面をそのまま画像化したが、画像化に必要とされる改行を何か所か加えた(改行を加えた個所は、画像中に「☆」で示してある)。また、私にこの文面を送信してきた人(直接つながりのある人)の書いた部分もプライバシーの観点から一部を保護したが、その人にこのメッセージを送信したのがどういう立場の人かはわかるようにしてある。

あと微細なことだが、文中で半角のナカグロ(「・」の記号)が1か所使われているところがあったが、それはテキストデータにするときに全角に変換してしまった。(この手の怪文書で半角のナカグロが使われていることは、ちょっと気になるけど。)

cvdkbsh.png
※画像はクリックで原寸表示。

この文面は、Twitterで多発が報告されている文面(「耐熱性に乏しく、26-27度の温度で殺傷します」を特徴とする)とは若干異なっている。つまりこの「怪文書」の文面は1つではない。

書き出し最初の2行にある情報、つまり「ウイルスは熱に弱い」とか「温かい飲み物を飲もう」「ぬるま湯を持ち歩こう」とかいったことは、厳密ではないかもしれないが(「ぬるま湯」では持ち歩いてるうちに「常温の、つまり冷たい水」になってしまう)、別に変ではない。日本語も、「やたらと読点(、)が多いな」という程度で、特に変には見えない。日本語の文章を書き慣れていない人が、丁寧に書こうとして、やたらと読点だらけの文を書いてしまっているのだろうというのが第一印象で、だから私も元々は看護師さんからの転送メッセージだというこの文面を、読まずに捨てることはせずに読んでみたのだ。しかし、読み進んでいくうちにどんどん「?」となってくる。

まず「?」が浮かぶのは、5行目の「必ずたくさん伝達してください.」だ。チェーンメールの常套句ではないか。

チェーンメールは善意が回す

「チェーンメール」とは、人から人へと鎖状に(チェーンのように連鎖的に)転送させることを目的とするメールのこと。SNSやLINEのようなメッセンジャー・アプリが当たり前になった現在では「メール」という名称は時代遅れだが、言語的には「筆」ではなく「鉛筆」を入れているのに「筆箱」と呼び続けているような現象なので、そこは気にしないでいただきたい。

この「チェーンメール」について、日本データ通信協会は次のように説明している

チェーンメールとは、転送を呼びかけ、次々と鎖のように連鎖していくメールのことです。

チェーンメールは転送されることを目的としているため、受信者の恐怖心をあおるホラーな内容や幸せになれるおまじないなど、善悪様々な種類の内容で転送させようとします。

……こういったチェーンメールのほとんどはデタラメ(で)……軽はずみな転送は、悪質なデマの情報を不特定多数の人にまで広げてしまうことになります。


「必ずたくさん伝達してください.」という文言は、まさに定義通りの転送の呼びかけである。

チェーンメールの目的(なぜ多くの人に転送させたいのか)はケース・バイ・ケースで、中には本当に善行を目的としたものもあるのかもしれないが、インターネットといえばパソコンを使わないと利用できなかった時代からネットを使っている人々の多くは、「なるべく多くの人に転送してください」という不特定多数宛てのメッセージは無視する習慣が身についていると思う(メーリング・リストなどにうっかりチェーンメールを転送してしまうなどした日には、お叱りやら罵倒やら忠告やらアドバイスやらで大変なことになったものである)。

だが、現状、ネット利用者の多くがそういうわけのわからない情報空間に慣れていない人たちだ。FacebookであれLINEであれ何であれ、リアルの知り合い同士の安心できる情報交換や交流の場でしかなく、そういうところにネットの、いわば野良のチェーンメールが持ち込まれても、「無視する」というマナーが発動しないのだろうと思う。だから(私が受け取ったのとは少し違う文面だが、同内容の怪文書が)拡散してしまっているのではないかと思う。






ちなみに私が受け取った文面で、「必ずたくさん伝達してください.」の文末の句点は半角ピリオドである。文書全体にわたって、句点は全角のマル(。)で統一されているのだが、ここだけ、なぜか半角ピリオドだ。「あとから付け加えられた」臭が立ち込めている。

上述の半角のナカグロにしても、「あとから付け加えられた」部分で発生した誤変換かもしれない。(ナカグロに全角と半角があるということを知っている人はそれなりのスキルがある人で、パソコンなんかほとんど触ったこともない人たちがどんどんネットを使うようになっている現在、そこを統一するのが当たり前で統一されていなければおかしいと考える人は「異様に細かい人」扱いされるものだが、何が言いたいのかというとGoogleなり何なりに投げて得られる機械翻訳結果に半角ナカグロって含まれるものなんすかね、ということ。)

ここらあたりから、文面は一気に「不自然な日本語」っぽさを増していく。上述の「必ずたくさん伝達してください」という常套句にしても、日本語としては不自然だ。

しかし、「日本語として不自然」だからという理由だけで「転送すべきでない文書、怪文書の類なのではないか」と疑える人は、実はそんなに多くはない。だってこの文書には何かもっともらしいことがかいてありそうだから。

「何かもっともらしいこと」というのは下記の図をご参照いただきたい。


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2019年12月20日

数日、Twitterアカウントを鍵付きにすることにした理由(あるいは中に人がいるbot化宣言)

「こういうの、何度目だよ」と呆れられるかもしれませんし、自分でも呆れてますが、何度でも繰り返さねばならないようです。ネット上で何とか言質をとって炎上させようという人は次から次へと現れるようなので。

昨晩(というか今日未明)、Twitterで、これまで見たことのないアバター(アイコン)の、これまで見たことのないIDの人から、いきなり「それなら何も発言しなければいいと思います」と言われました。所謂「絡まれた」状態ですね。インターネット老人会に代々伝わる教えとしては、そういうときにまともに相手にすると自分が深手を負うので、関わらないのが一番です。「荒らしはスルー」という格言ですが、Twitterで遭遇するのは必ずしも「荒らし」の挙動とは限りません。ただ当方は個人的にネット内外で、「何とかこいつの言質を取ってやろう、都合の悪い発言を引き出してやろう」とふっかけてくる人には何度も遭遇していて、そういうのには、ねこがちゅ〜るに敏感なのと同程度に敏感になっています。(時には、ねこが人間が食べるゼリー的なものをちゅ〜るだと思い込んでしまうように、勘違いすることもあるかもしれません。)

今回「絡んで」きたのも、そういう人だろうと判断されました。たった140字のツイート内で論点をずらしていくタイプ(自分では「論点ずらし」だと気づかないタイプかもしれません)。そもそも前提がおかしい(こちらが言ってもいないことを言ったことにしていたり、共通の前提としていたりする)。そういう人とは、普通に面と向かって話をしていてもまともな対話にはなりません。ましてやネットではとても難しい。Twitterなんていう文脈も示せないような場では無理です。

そしてTwitterでは、そういう「対話」っつーか「会話」をしていれば、ギャラリーがわらわらと寄ってくるわけです。いったんギャラリーが寄り始めたら、ここはお江戸じゃねぇんだ、喧嘩は花じゃねぇ、見世物じゃねぇんだ、っつっても通じない。はてなブックマークで「もめごと」とかいうタグをつけられて晒されるのがオチです。

そうなったらハイウェイ・トゥ・ザ・「炎上」。この年末の忙しいときに。

そして、昨年から今年にかけてわかったことは、「ネット上のもめごと」や「ネット上の炎上」は、リアル世界での暴力と無縁ではないということ。ただでさえ脅されている身としては、これ以上のトラブルはごめんです。周りに延焼しでもしたら目も当てられないし。

というわけで、私のTwitterは、これからは「中の人がいるコピペbot」のようなものになります。メモしておきたい記事の見出しとURLをフィードし、抜粋をコピペするだけにします。

私はアクティビストじゃないし、所謂「Twitterアクティビズム」みたいなのは生温かく見てるだけですし(今回の英国の選挙でも見てるだけでとても疲れた)、元々ハッシュタグは情報共有and/orポインター(「ここ見てね」という意味で)のためにしか使ってないんですが、ハッシュタグを使うと「この人はアクティビズムの人だ!」と喜んで飛び掛かってくる無邪気なわんこみたいな人もいて、そういうタイプの人が「《なんとか》狩り」に興じているときは(今回はTERF狩りですね。私はTERFじゃないですよ。むしろ逆の立場。とか書くと「証拠を示せ」「私が納得するように説明しろ」とか言ってくるんだろうな……これまで何度もあったように。ログでも何でも勝手に掘ればいいじゃない、あるんだから)、「お前が《なんとか》でないことを俺が納得できるように証明できるまでは離さないぞ!」ということになるわけです。

関わりたくないです。

以下、一連の経緯の記録です。


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2019年11月11日

広告ブロッカーは広告以外の画像をブロックするのにも使えるよ、というお話

ここしばらくずっと話題になりっぱなしの日本赤十字社お気に入りのグロ絵(現実にはあり得ない形で強調された、こういう意味での「グロテスク」な絵)ポスターなどに関連して、「あの絵を見たくないので、あの絵がTwitter Cardなど勝手にフィードされる画像に表示されているブログ記事などは、どんなに中身がよくてもツイートできない」という人が、私の見る範囲ではけっこう少なくないのだが、そういうタイミングで、秋葉原であのグロ絵以上にひどい絵が建物の壁面にどーんと掲げられているという話題があり(現時点ではもう別の、穏当なものに差し替えらえているが)、そのグロ絵を擁護する声もネット上にはあふれ、ああいうグロ絵を見たくない・見せられたくない私たちには、マジで逃げ場がない。心底気持ちの悪い国だ、この日本という国は。

そのあまりにもひどすぎるグロ絵の看板が取り外されたのは、ある方が区(東京都千代田区。ちなみに皇居がある区ね)の条例に照らしておかしいのではないかという問い合わせをしてくださった後なのだが、その方がそれについて報告するツイートにもそのあまりにもひどすぎるグロ絵がばーんと掲示されているという地獄っぷり。いや、普通に「この件ですが」という意味で掲示することには、そりゃ、正当性はありますよ。でも、Twitterのシステム上、まったく無防備なところにああいう絵が流れてくる(こともかなり多くある)わけで、それはどうなのかと。

私、個人的にイスイス団の暴力見せびらかしの最盛期(2014年夏)にかなりメンタルやられまして……しかも、正当な理由があってそれらの画像を掲示しているジャーナリストのフィード経由で……いや、わかるんすよ、「知る権利」とか「事実の提示」とか。でも無防備なところに、イスイス団の残虐画像や、イスイス団が誇る「天国に行った勇敢な戦士たち」の亡骸の写真が繰り返し繰り返し表示されているうちに、さすがにこっちの頭もおかしくなってきた。

「そういう映像を見る」と心の準備をしているときはいいんです。でもそうでないときに「不意打ち」のようにグロい画像を見せられるのは、日本語でも「精神的ブラクラ」という表現がある通り、非常によくない。あの「自由」原理主義みたいな米国でも、2001年9月11日のNYCで高層ビルに飛行機が突入する映像が、事件後、TVニュースで繰り返し繰り返し「突然流される資料映像」的に使われたあとで問題視されるようになって、映像の使用が控えられるようになったという話もあるくらい。

というわけで、ああいう画像が表示される回数を減らせれば、減らした方がいい。手元でできるなら手元でそう設定すべき。

というときに(PCの場合)使えるのが、ブラウザのアドオン(エクステンション、拡張機能)の広告ブロッカー。

「広告ブロッカー」や「AdBlock」という名称ゆえ、広告*だけを*非表示にするものと思い込んでいる方もおられるが、あれは基本的に画像を非表示にするものなので、どんな画像でも非表示にすることができる。そのやり方を、AdBlockを使ったことのない方にもわかるように、説明してTwitterで連投した。

それを、先日こちらにも書いたが、ThreadReaderAppというウェブサービスを使って、一覧できるようにしてある。
https://threadreaderapp.com/thread/1193495868130746369.html

以下、この内容をまたコピペしておく。

今の時代、ひとりひとりが個別にフィルターを設定して自衛していかないと、グロ画像は歯止めなく流れていて、話題になったものは何度でもしつっこく表示され続ける。そのストレスを少しでも軽減するために、ひとりでも多くの方にお役立ていただけますように。

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2019年11月03日

Twitterで、自分の発言だけ連続投稿したものを、読みやすく、1ページで表示してくれる便利ツールのご紹介。

ここ数週間、ネット上の日本語圏、特にTwitter界隈でずーっと話題になりっぱなしの、とてもセンシティヴな案件があって、多くの人がたくさんの言葉を費やして考えていること、思っていることを語っている。そういった言葉を、ただTwitterに置いておくだけでは埋もれていってしまうし、誰かに「これを参照してください」と示すにも単独のツイートだと文脈が見てもらえないかもしれないという心配がある。

といって、日本語圏では、自分の発言をTogetterなどを使って「まとめ」れば、「セルフまとめ」などと呼ばれ、「自意識過剰だ」的な批判が湧いて出てくるのがデフォ。ましてやあのセンシティヴな案件について「セルフまとめ」など作ろうものなら、ギャング映画のごとく蜂の巣にしてやろうというキーボード・ウォリアー様たちが覚醒してわらわらと寄ってくるに違いない、という心配がある。

そういう場合に、日本語圏に特有の粘着質のイナゴのことなど気にせずに、自分の連続ツイート(スレッド)だけを淡々と一覧できるようにしてくれるツールが英語圏にはあるので、今日の昼間、それを紹介する連ツイをしてみた。

そしてその連ツイを、当該のツール(Thread Reader Appという)を使って1ページにまとめてみた。「スレッド」の作り方の注意点なども書き添えてある。下記からどうぞ。
https://threadreaderapp.com/thread/1190812074521219072.html

使い勝手や見え方を比較するため、同じ内容で、NAVERまとめを利用したページもこしらえてみた。こちらもよろしければご参照のほど。

Thread Reader App: 英語圏のシンプルで便利なツール(日本語も問題なく使える)
https://matome.naver.jp/odai/2157274949164167101

Thread Reader AppもNAVERまとめも、「どちらが絶対的によい」ということはなく、用途・内容に応じて使い分ければよいと思うが、自分の発言だけで構成されたスレッド(連ツイ)をさくっとまとめて表示させたいだけなら、Thread Reader Appが便利である。作業にかかる時間はほんの数秒(と数分の待ち時間)で、Twitterにログインしてさえいれば、実質、何もしなくてもよい(先方のサービスへのログインすら不要)。

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2019年10月05日

パリ警視庁での衝撃的な事件について、英語圏ネット上極右界隈で言われていることのメモ

10月3日(木)、フランス、パリのシテ島にあるパリ警視庁で職員とみられる男が刃物で4人の職員を刺殺、その後本人も警察官に射殺されるという衝撃的な事件があった。殺された3人は情報部門職員、1人は人事部職員とのことで、容疑者を射殺したのは着任してまだ数日にしかならない若いインターンだったという。

事件の前日、フランスでは警官たちが、いわゆる「ブラックな」労働環境に抗議してデモを行っていたが、3日の事件は、警察からの公式のステートメントがまだ出てなくてもろもろ不明だった段階でも、デモと関係があるということは言われていなかった。実際にデモとは無関係だったようだ。

衝撃的な事件の後、しばらくは(フランスの事件報道ではよくある)情報錯綜と情報統制の奇妙な共存が続いていたようだが、日本時間で土曜日になって、「予備捜査の結果、容疑者が過激思想に傾倒していた可能性があることが示された」という報道がなされている。このAFP以外の報道記事を見ると、仕事で過激派の情報に接していたということだ。一方で、自宅の捜索では過激化の兆候は一切見つからなかったという。職場で過激化されていたと仮定して、自宅には過激化を示すものは何もなかったとすると、自宅には職場のものは一切、情報の一片たりとも持ち帰っていなかったのだろう。

そういうこと(職場と自宅とは完全に別にすること)が要求される仕事だったのだろう。

――ここで私はおまじないのマニキュアを塗る。15歳女子を装ってネットでイスイス団の人員と接触し、彼らのリクルート(人員募集)活動がどのように行われるかを身体を張って報告したフランスのジャーナリスト、アンナ・エレル(仮名)の本にマニキュアのことが書いてあって(「15歳女子」を自分の元に来させようとするイスイス団の男は、Skypeの画面で彼女が爪を塗っていることに気づき、そのようなことはしてはならないというくだらない教義を言って聞かせる。ああいうくだらない教義は、カルト教団が声をかけた人物がその思想を本当に信じたかどうかを試す試金石として用いられるものとして典型的だ。日常の中のほんの小さな、くだらないことを変えさせることで「自分は生まれ変わった、別の人間になった」と思わせていく)、それを読んで以来、私はずっとそっち系の情報に接するとき(この指先でそのことについて書くとき)、発色のよいマニキュアを遠慮なく塗っている。あたかも指先にこれがあれば、ああいうのが浸透してくることが防げる、といわんばかりに遠慮なく。

ジハーディストのベールをかぶった私
ジハーディストのベールをかぶった私

さて、本題。パリでの事件について。


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2019年08月28日

もういいから、leave-left-leftも知らん奴は黙ってこのプリントやっとけ。あと、本屋の学参コーナーに行って、中学のまとめの問題集買ってきてやれ。

今日、下記の英語学習用のPDF(自宅学習・塾でも使えるオーソドックスなプリント)をseesaaのスペースにアップロードした。そもそも著作物ではないので著作権はない。各自、ご自由にダウンロードしてご利用いただければと思う。

内容はファイル名を見ればわかるだろうが、英語の不規則動詞の活用一覧である。

■単なる一覧表:
English-irregular-verbs-list.pdf

■そのまま穴埋めテストに使える空欄仕様:
English-irregular-verbs-test.pdf

2つのファイルは、空欄になっているかどうかだけで、中身は同じ。それぞれソートが4パターンある。
・1〜5ページ: 中学既習語・それ以外の語に分けたアルファベット順で最も初学者向け
・6〜10ページ: 活用型別のソート(cut-cut-cutのようなA-A-A型、make-made-madeのようなA-B-B型、give-gave-givenのようなA-B-C型……)
・11〜15ページ: 全部ごちゃまぜのアルファベット順
・16〜20ページ: 型別にソートして、その中をアルファベット順にソートしたもの


さて、なぜ唐突にこのようなものをアップロードしたのかというと、leave-left-leftという基本中の基本を理解も了解もしていない人たちがleaveの過去形・過去分詞形のleftを「左翼」と訳して盛り上がり、その間違いを指摘する人たちが盛り上がり、それを受けてもなお自説に固執する人たちがいて、最終的には「ハッシュタグ大喜利」という形でおおいに盛り上がる、ということがあったことを、盛り上がってから何時間も経過してから知ったことがきっかけである。(私は基本的にTwitterでは日本語圏は見てないので、このようなタイムラグが発生した。)

そのハッシュタグは、確かに失笑ものというか爆笑もので、私もリアルタイムで騒動を見ていたら「ハッシュタグ大喜利」のビッグウェーブに乗ってたかもしれない。いや、たぶん乗ってただろう。どういうものかというと、下記の曲のタイトルを「子供たちはみんな右翼」とやるようなものだから(alrightはall rightの略式表記)。ネタならいくらでも思いつくよ。



(もちろん、The kids are all rightは、直訳すれば「子供たちは大丈夫」だ。)

しかしいかに教養のカケラもない、愚かで無理やりな珍解釈であろうとも、誰かの間違いをTwitterのようなオープンすぎる場で「大喜利」にしてしまうことは、「よってたかって公然とあげつらい、小ばかにし、嘲笑すること」にもなる。少なくとも、ネタにされた当事者はそう感じるだろうし、そう感じることは特に理不尽なことではない。そのような「嘲笑」が、ネタにされた側にもたらすのは、恨み (grudge) だとかルサンチマンだとかいったものだ。それがもたらす分断は、あとから埋めるのは難しい。

そういった分断を、私はPCのモニターの中にだが、Brexitをめぐる英国の人々の中に見てきた。

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2019年08月22日

絶対に失敗できないイベントがここにはある。そしてお台場の下水と人糞は「部屋の中の象」となる。

日付が21日になったころ、はてなブックマーク(はてブ)を見てみたらこんな記事があった。

うんこミュージアムが開業
東京・台場に、8月から
2019/8/20 15:38 (JST)
https://this.kiji.is/536432057426887777
「うんこはカワイイ」という新たな価値観を発信する「うんこミュージアム TOKYO」が東京・台場の「ダイバーシティ東京 プラザ」にオープンした。国籍や年齢に関係なく楽しめる体験型施設。観光スポットとして注目を集めそうだ。

 横浜市でも同様の施設が9月までの期間限定で営業中で、3月の開業から4カ月半で女子高生など若い女性を中心に約20万人が訪れた。東京では外国人観光客もターゲットに含め、半年で35万人の入場を目指すという。


はてブでは、最初のブコメでいきなり「以下『虚構新聞かと思った』禁止」と宣言されていたが、こんなネタをはてブだけに置いておくのは忍びないと思った私は、下記のようにtweetした。


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2019年07月20日

卑劣で理不尽極まりなく、無差別的な、不意打ちの大量殺人であっても、それは必ずしも「テロ」ではない。

18日に起きた京都のアニメーション・スタジオへの放火事件、あまりにも凄惨で、失われたものがあまりにも大きく、本当に言葉もない。このような暴力で大切なご家族・ご友人・同僚を奪われた方々の心中はいかばかりか。34人もの尊い人命、その人々の人生と未来、その人々の持っていた技能やセンスばかりでなく、スタジオに蓄積されてきたこれまでの仕事の成果物も失われたと一夜明けた19日の会見でスタジオの社長が述べておられる(いかなる思いか)。

人々が普通に仕事してる仕事場が、持参したガソリン(それも大量のガソリン)を撒いていきなり火をつけてしまえるような人物に急襲され、完全に破壊された。その事実を前に、この件に関するどのような情報を目にしても、「…………」としか反応できない。(まだ逮捕されておらず「被疑者」になっていないにも関わらず放火したと考えられる人物の名前が警察から明らかにされ、マスコミ各社の「独自取材」っていうんでしたっけ、とにかくそういうので「近所の人の話」なども出てきているが。)

私はアニメは別に見ないし、このスタジオの作品も見たことがなく(ネットでよく言及されているから名前と絵柄だけ知ってるものはいくつかあるにせよ)、したがって個人的なショックというものはほとんどない。個人的につながりを感じないので、「一般のニュース」として「ひどい」と思っているが、自分の中で何かが壊れたというような感覚はない(そういう点では、2005年7月7日のロンドンでの公共交通機関爆破テロのほうがよほど個人的なショックが大きかった。ロンドンの地下鉄はなじみ深いものだし、爆破された30番のバスは使ってたことがあるのだ)。それでも、というかそれだからこそ、ある日、仕事場が突然ガソリン撒かれて火をつけられるなんて、それだけで、というかそれ自体、ひどすぎると思う。その仕事場が、世界的にも有名な映像スタジオであろうとも、他の何かであろうとも。

オフィスや店舗などにガソリンなどを撒いて火をつけるという事件は、ここ日本で何度か起きてきたということは、私はもちろん知っている。まだ消防隊が現場にいたころのNHKの報道記事では2000年の神戸のテレクラ放火(火炎瓶なので中身は灯油かもしれないしガソリンかもしれないし、ほかの燃料かもしれないが)や、2004年の埼玉県でのドンキ連続放火(これはガソリンよりは扱いやすい灯油が使われていた)、2008年の大阪での個室ビデオ放火(これは突然、手持ちの荷物の紙類を燃やし始めたということで、ガソリンなど燃料の準備はなかったようだが)と、出火原因がいまだに不明で、放火であるとの事実も確定していない事件だが2001年の東京・新宿歌舞伎町の雑居ビル火災への言及がある。

ひどい被害を出した放火事件といえば、ほかにも、2000年、栃木県宇都宮市の宝石店が放火された事件や、2001年、青森県弘前市の消費者金融オフィスが放火された事件や、2003年、名古屋の軽急便オフィスでの立てこもり・放火事件あたりがすぐに思いつく。これらの事件のときに、テレビのニュースなどではガソリン火災のすさまじさが報道されていたし、特に2003年の事件は社会に与えた衝撃が大きく、ガソリン販売のルールが少し(だけ)厳しくなった(ウィキペディアより引用すると、「この事件以降、ガソリンスタンドのポリ容器等でのガソリン販売の禁止が徹底され、法規制が強化された」)。

これらの事件は、きわめて陰惨な事件ではあったが、金品の強盗目的だったり(宇都宮、弘前)、会社のあこぎなやり方に怒りを抱えた配達ドライバーだったり(名古屋)と、なぜそこをガソリンのような強力なものを使って襲うのかということについて、納得できるかできないかは別の話として、かなりはっきりした理由があった。一応理屈は通っていたが、その上で「ひどいことをしやがる」という事件だった。

しかし、京都のアニメーション・スタジオの事件では、そこがどうにもわからない。「ひどいことを……またどうしてこんなひどいことを」と問うてみたところで、その「どうして」が、ネットで流通している憶測・噂で言われている内容は「は?」としか言いようのないもので、たとえその憶測が当たっていたとしても、そんなことでガソリンを撒いて火をつけるという行為に出るなんて信じられない。確定情報が出るのを待とうにも、当人も重いやけどで入院していて警察の取り調べは行われていないので「確定情報」が出ない。

あまりにもひどい事件だし、いわゆる「ネット民」にはとてもなじみ深い企業が標的にされたことでネットでの関心も極めて高く、そういう「人々の関心の高さ」をカネに変える仕組みがすっかり出来上がっているネットでは、関心を持った人がクリック/タップしたり、人に伝えたり(シェアしたり)したくなるような文(「記事」と呼びたくないし「文章」でさえないようなもの)を毎日脈絡なくアップロードしているたくさんのブログが、放火犯と思われる人物(法的にまだ「被疑者」ではないので、ここでは「容疑者」とは呼ばないが、要はその立場にある人物)の名前が19日に警察によって明らかにされるずっと前から、ネット上のどこかで誰かがどういう根拠で述べて(書いて)いるのかわからないようなことを(おそらく単にクリック目当てで)「まとめ」るなどしていて、すごいカオスになっていたそうだが、私は個人的にはそういうのは見ていない。ただ、Yahoo! Japanのトップページに出るようなヘッドラインは見ていたし、はてブのトップページも見ていて、放火犯と思われる人物は関東在住で、攻撃されたスタジオとの間には接点らしい接点がないようだ、ということはわかった(もしも接点があったのなら何よりまず「放火したのは元従業員」などといったような情報が出回っただろうが、逆に「元従業員ではない」という情報が出回っていた)。

関東地方在住の人物が、個人的に関係などない京都の会社に、ガソリン持ってカチコミに行くという時点で、全然わからない。

とはいえ、自身も大やけどを負って、現場の近隣住民の方に助けられ、その後警察に取り押さえられたというこの人物が、個人的に何か一方的な恨みを抱いていた(逆恨みしていた)ようなことを口走っていたということは、わりと早い段階でその住民の方が語っていた。ということは、いわゆる「通り魔」のようなことではなく、このスタジオを襲うと決めたうえで実行された放火であることは確かなのだろう。

しかし、噂されるその犯行理由(噂の段階のものを「理由」と呼ぶことは適切でないような気がしてならないのだが、ほかに言葉が見当たらない)は、「建物にガソリンを撒いて火をつける」という行動につながり得るとは思われず、これまでにあった「ガソリンを撒いて火をつける」という事件よりも、ずっとずっと、理不尽に感じられる。

この理不尽さは、死傷者が約70人(うち死者が34人)という被害の大きさ、それも全員が「非武装の民間人」どころか「いつものように職場で仕事をしていた映像制作者たち」というまったく無防備な人々であったこと、その人々が所属するスタジオが到底攻撃されるいわれなどなさそうな作品を作ってきたスタジオであったこと、そして攻撃が突然行われたことと重なって、今回の事件は「卑劣で理不尽極まりなく、無差別的な、不意打ちの大量殺人」として、私を含めて大勢の人々をショックで打ちのめす。

なぜこんなことが。

こんなことがあってよいはずがない。

そのショックは瞬時に「怒り」に結晶する。そしてオンラインで事件について何かを述べる(語る)人々は感情を高ぶらせていくし、高ぶらせた感情を「ネット上の誰か」たちと共有する。何かを述べることよりも、感情を共有することのほうが、この場合、目的になっているのだろう。

そして多くの人々が、この卑劣で理不尽極まりなく、無差別的な、不意打ちの大量殺人について言う。「これはテロだ」と。最大限に非難するつもりで。

しかし、現状分かっていることから判断して、これは「テロ」ではない。なぜならば、ある攻撃が「卑劣」であるかどうか、「理不尽」であるかどうか、「無差別的」であるかどうか、「不意打ち」であるかどうか、「大量殺人」であるかどうかは、「テロ」を決定づけないからだ。

「テロ」を決めるのは動機だ。攻撃手法ではない。「無差別的に一気に大勢殺すこと」でもない。動機があっての「テロ」だ。

確かに「テロ」の定義には統一されたものはなく、定義はいろいろありうるが、最大公約数的なものはある。その最大公約数的なものの一例として、英国の情報機関MI5のサイトに挙げられている「テロリズム」の定義を見てみよう。(なお、英国は2000年代以降に活発化したイスラム過激派のテロ、ここ数年警戒が強められている極右過激派のテロ以前に、1970年ごろからずっと北アイルランド関連のテロを自国内に抱えており、2001年9月11日を境にいきなりテロテロと騒ぎ出した米国とは国民の意識も異なる。)
https://www.mi5.gov.uk/terrorism


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2019年04月28日

2019年4月時点: Amazon Prime Videoで見られる映画にはどんなものがあるか(北アイルランド関連、シリア内戦関連など)



基本的に、洋書・電子書籍などAmazonでなければ手に入らないものでなければAmazonは使わないようにしているのだが、Amazon Primeは使っている。ここでしか見られないドキュメンタリー映画があるためだ。

以下、そのドキュメンタリーをはじめ、Amazon Prime Videoで見られる映像作品を、北アイルランド・英国関連、紛争関連のものを中心に列挙しておこう。連休で何かお探しの方に役立てていただければと思う。

目次:
■北アイルランド関連:
1. No Stone Unturned (ノー・ストーン・アンターンド)
https://amzn.to/2V24qvK

2. Shadow Dancer (シャドー・ダンサー)
https://amzn.to/2UN2Ed3

3. Five Minutes of Heaven (レクイエム)
https://amzn.to/2PBng6T

■ジョン・ル=カレ原作:
4. Tinker, Tailor, Soldier, Spy (裏切りのサーカス)
https://amzn.to/2Vy4Yce

5. Our Kind of Traitor (われらが背きし者)
https://amzn.to/2Vui7CV
※2019年5月1日まで!

6. A Most Wanted Man (誰よりも狙われた男)
https://amzn.to/2GPmY9L

7. The Night Manager (ナイト・マネジャー)
https://amzn.to/2GOdxHt
※連ドラだから長い。

■「テロとの戦い」関連:
8. Eye in the Sky (アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場)
https://amzn.to/2DD8ojF

9. Zero Dark Thirty (ゼロ・ダーク・サーティ)
https://amzn.to/2Lbby4j

10. Highway to Hell: The Battle for Mosul (地獄への道:モスルの戦い)
https://amzn.to/2GO1CJI

■シリア内戦:
11. City of Ghosts (ラッカは静かに虐殺されている)
https://amzn.to/2UJxlzN

12. Return to Homs (ホムスへの帰還)
https://amzn.to/2PyhqTK

■ほか……:
その他……


以下、詳細。

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2019年04月18日

彼女たちの地獄

たまたまタイミングが重なっただけだが、今日目にするニュースは若い女性たちの「地獄」の話がずらりと並んでいて気が滅入る。画面の中に、9歳の女子が自殺し、18歳の女子が自殺し、19歳の女子が焼き殺されたという文字情報が連なっている。

以下は相互に関連性のない3つの事件についてのメモである(相互の関連性を勝手に読み取って陰謀論を唱えたり、私がこれらが関連していると主張したりしていると解釈したりはしないでください)。

■アマル・アルシュテイウィさん(9歳)
9歳の女子はカナダのカルガリー市で自殺した。背景には学校でのいじめがあったと考えられ、保護者は学校の教諭に相談したというが、市教育委員会は「いじめを示すものは何もない」と述べ、警察も「捜査が行えるほどの証拠がない」と言っている――日本でもよくある話だ。

これに「ひどい」と憤ると、きっと弁護士先生が信じたがいような上から目線で「現地の法律を見たのですか?」とか「もっと勉強しましょう」などと言ってくださることだろう。

だがこのケースを「学校でのいじめって、どこも同じだね〜」で済ませないものにしているのは、自殺した9歳のアマル・アルシュテイウィさんは、難民だったということだ。3年前、彼女の一家はシリアの戦乱を逃れ、難民としてカナダに定住している。そしてアマルさんはクラスメイトたちから身体的暴力を受け、言葉での暴力も受けていたことを両親に相談していた。

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2019年04月02日

「新元号の隠されたメッセージ」的な陰謀論が出る日に備えた記録

今日2019年4月1日、新しい元号が決定され、発表された。個人的には、役所の書類の記入でしか使わないと思うが(しかも記入のたびにいちいち「今何年でしたっけ」とか「2018年って平成でいうと……?」とか尋ねることになるに違いないが)、「令和」という元号になったことやその出典が万葉集だということは忘れずにいられるだろう。

その様子を私はTwitterで自分が作成・管理しているNewsのリストで見ていた。このリストは英語圏の報道機関やジャーナリスト、学者が中心で、日本のアカウントも少しはいっているというもので、日本語圏が朝から大騒ぎになってることはここを見ててもわかったが、具体的にどう大騒ぎになってるのかはよくわからなかった。そもそもテレビないし、別に気にならないトピックだからどうでもいいと、ネットの大海に出て様子をうかがうこともしてなかった。

そういう次第で、発表されたあとの騒ぎのようなものも特に見かけていないのだが、ひとつ、秀逸なジョークが流れてきた。それは「令和」という文字の中に「アベ」を読み取るという荒業を見事に成し遂げたもので、座布団5枚くらいあげてもいいんじゃないかと思った。何なら、タモリ倶楽部のTシャツを添えてもいい。

その荒業は、ざっくり言えば、「神」という漢字の中に「ネコ」というカタカナを見て取るのと同じ流儀でなされている。それは、看板に書かれた「神」の字のつくりの一部が消えて「ネ」と「コ」が浮かび上がっている、という偶然の発見が元になっているらしい(本当にそんなふうにきれいに文字の一部が消えた看板が実在したのかどうかは私は知らないが)。実際、「ネコ」と読めはするが、「コ」の字の縦画の長さ(高さ)が足りていないので、とてもアンバランスな字面になっている。でもおもしろいからいい。言葉として意味もあるし、何よりかわいい。

nekotowakaiseyo.jpgこの「神」と「ネコ」はすっごい昔から「ネットのネタ」(英語圏でいうmeme)として有名なもので一種の「パロディ」と言えるものだ。特に有名なフレーズ(元になったフレーズ)が縦書きの「ネコと和解せよ」(より厳密には「ネコ」の部分を半角カタカナにする)で、私が最初に目にしたのはいつだったか、覚えていないが、RSSリーダーが登場する前のこと、つまりウェブサイトの更新を知るために毎日わざわざサイトをチェックするか、「アンテナ」的なものを使っていた時代だったように思う。むろんTwitterとかが出てくるずっと前、ブログとかmixiより前のこと(「Web 2.0」の前のこと)だったと思う。

そのくらい昔からあるから、うちらインターネット老人会の人々は「ネコと和解せよ」と、「コ」の字の高さが足りてなくない横書きのテクストを見ても、元の写真(変になってしまった看板)を思い浮かべることができるし、そもそもそんなルーツなどいわずもがなで、誰にも説明する必要などないことだと了解している。だが、説明が必要ないのは老人会の間でだけのことで、なおかつ「ネット上のネタ」は老人会の面々がかつてよく知っていた「雑誌の投稿コーナー」や「宝島のVOW」のような消え物では全然なく、ネットにアップされて人々の間を流通している限りは、常に「そこにある」状態になる。好事家が古本屋を回って探すようなものではなく、中学生が検索エンジンに適切なワードを放り込むだけですぐに出てくる。そして、20年前のネタが今日のネタのように流行するということも普通にあるし、その場合、そのネタのルーツなど誰も知らなくても、ネタそのものが意味が通っておもしろければ広く共有されていく。

実際、数年前(「数年」といっても老人の言うことなので10年くらいかもしれないが)にTwitterで「ネコと和解せよ」が爆発的に流行ったときには、多くの人が「ネコ」は「神」という文字の一部であるということを認識していないようだった。なぜなら「猫と和解せよ」や「ねこと和解せよ」といった表記も大量に流れていたからだ。解説サイトには横書きで、「コ」の文字も普通にバランスの取れた形で、元ネタの色だけを再現した「ネコと和解せよ」のフレーズが見られた。つまり「元ネタ」がほとんど全く意識されていない形。単にキーボードを「neko」と打鍵しただけで生じる文字列が、「神」という漢字の一部を塗りつぶすという手間のかかる方法で生成する「ネコ(に酷似した文字列)」と同列に並べられていた。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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