北アイルランド政治が、「なぜそんなことで膠着状態に陥るのか」ということで膠着状態に陥るのは単に「デフォ」だが、今また味わい深いことになっているのは「いつものこと」とはちょっと違う。「いつも」とは違う結果になる可能性が高い。つまり「ただの膠着状態」では終わらなさそうだ。
存在していて、同時に存在していないあの組織が存在していることが、あったりまえだのくらっかー的なことというか、「部屋の中の象」的なものではなく、(紛糾している状態を維持することは得意な政治家たちによって)「何か明確な反応を示すべき問題」となっている。UUPがストーモントの自治政府から離脱するのだ。(といっても、UUPは閣僚ポストは1つしか持っていない。)
党としての意思は既に決定されているが、正式な手続きが済むのは土曜日(8月29日)の予定で、そのための会合がもうすぐという段階のBBC News NIのトップページはこうなっている。(下記画像はクリッカブル。記事が上書きされると思うので現時点のもの→
https://archive.is/Wofs3 )
UUP党首、マイク・ネスビットの舵取りについて、アレックス・ケインさんがBTに書いている記事が非常に興味深い。(記事自体はネスビットの人となりを説明する部分がとても長いので、読むのには時間がかかるかもしれない。お茶いれてどうぞ)
http://www.belfasttelegraph.co.uk/opinion/debateni/uup-leader-mike-nesbitt-is-taking-his-biggest-gamble-yet-31486114.htmlRemoving the UUP from the Executive is the biggest risk he has taken. It will, almost certainly, lead to the collapse of the Executive in the next couple of weeks and nobody can be sure what happens afterwards. He is clearly up for an early election, reckoning that Robinson and the DUP are weaker than they were, yet not so weak that Sinn Fein could sneak into the First Minister's Office - an outcome that would damage Nesbitt.
But if there isn't an early election and if the DUP decides to play rough with him - and it's worth remembering that the DUP is at its most ruthlessly effective when its back is to the wall - then there could be a very unpleasant war between the two big unionist brands.
Nesbitt is also going to need to nail down a coherent, credible response to the question, "under what conditions would you return to an Executive that includes Sinn Fein"? He cannot go into an election without that answer.
The next election will be the most important election for the UUP since the 1998 Assembly election: which is when the first signs of decline were obvious. Nesbitt has raised the stakes by setting an agenda the DUP is not comfortable with. There are enormous risks for him, of course, but also enormous possible rewards. ...
ネスビットは元々政治畑の人ではなかった。リネン工場を経営する実業家の家に生まれたが、工場が1973年にボムられて家業が途絶え、ケンブリッジ大を経てベルファストのクイーンズ大学の修士課程にいるときにスポーツ・ニュースの分野でBBCで仕事を始め、その後UTVに移ってニュースキャスターとして活躍し、Victims Commissionを2年ほど率いたあと、2010年にUUPで政治活動を開始。そして、早くも2012年にUUP党首となって以降は、2000年代に一度は溶け去ってしまったかに見えたUUPが党勢を回復しつつある(と見られている)。そこで思い切った策に出た、というのがケインさんの解説だ。
そんなUUPの態度に、当初は否定的なことを発言していたDUPも、結局はUUPと同じように行動するしかないらしく、今度こそは本当に「あなた、ストーモントちゃんが、息をしていないの!」だ。
そのへんの流れは、タイムラインにて。
http://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-34083430このあとがどうなるかはわからない。
これを引き起こしたきっかけというのが、IRA内部での殺し合いの発生と「IRA (Provisional IRA) がまだ存在している」ということで、そんなわかりきった、あったりまえのことで、今更何を……と思うのだが、そこはそれ、ほれ、例の「政治的駆け引き」ってことのようで、正直、何が何やら。
おかげで
ジェリー・アダムズの「根拠のよくわからない全否定」がまた見られるなど、マニアにはたまらない展開ではあるんですけどね。。。
というわけで、今回のこの事態の発端となった「IRA内部での殺し合い」について、少し書いておきます。
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