「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年04月19日

「私たちの求めるウェブ」のために。

先日、Twitterが「最初のツイートから10年」ということで少し話題になったが、記事の「コメント欄」やSNSが定着し、「当たり前化」したのは、ここ10年内のことだ。

「ウェブログ」と呼ばれていたものが「ブログ」というより短い名称で定着した「Web 2.0」の時代、英語圏では(日本語圏のことは私はよく知らない)、新聞社のサイトの各記事のページにも、一般に広く使われている「ブログ」(当時は英語圏ではBlogger, WordPress, Live Journalなどが広く使われていたし、MySpaceも「ブログ」として使うことはできた)と同じような「コメント欄」が設置されるようになった。記事を書いた人に、記事を読んだ人が直接、簡単に「感想(反応)」の言葉を(公開した形で)送信できるようになったことで、「編集」を介さず即時的な情報共有が行なわれ、「集合知」(および、もう少しあとの時代に「クラウドソース」と呼ばれていくもの)により、ただ単に新聞社の記事がそこにあるだけより、全体として、よりよいものができていくのではないか、という期待が、2000年代半ばにはとても高かったし、実際に「コメント欄」で有益な情報を得るという体験は、私も多くしていた。北アイルランドに関してはSlugger O'Tooleのコメント欄では、それがなかったら知ることができなかったであろうことをたくさん知った(「紛争地」のウェブ媒体では、「誰彼構わず、おまえの言っていることが気に食わないと殴りかかっていく」ようなスタイルを取る人はまずいなかったし、議論がヒートアップしたときに「プレイヤーではなくボールに行け」とイエロー・カードやレッド・カードを出す管理者のモデレーションがすばらしかった)。

あのころは、そのような「充実した情報空間」がそのまま維持され、定着し、発展していくと思われていた。私もそう思っていた。いわゆる "civil" な態度(日本の感覚でいうと「適切に丁寧語・敬語を使う」といったこと)は、知らない人と話をする場合にはリアルであれネットであれ大前提だったし、ときどき現れる「荒らし」は「相手にしない」という鉄則でたいがいは対応できた(自分のブログにも「荒らし」は出現して、げんなりするようなことはあったけれども)。「荒らし」のようなのは例外だ、ということは広く了解され、共有されていたと思う。

しかし実際にはどうだったか。

その点について、先週から英ガーディアンが意欲的なシリーズを始めている。

The Web We Want
https://www.theguardian.com/technology/series/the-web-we-want


www-gdn.png


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2016年04月18日

「英国らしいユーモアのセンス」と、「船田船左衛門」的な何か。(高濃度Britishnessに注意)

何か新しいものやことについて、名称やアイディアを「ネットで公募」なんてことをすると、カオスになる――最近日本でも政党の名前について「大喜利」状態になった(個人的には「大喜利」などという上品なものとは思わなかったが)ことがあるが、少し前には、ニュージーランドの国旗の新しいデザイン案が世界的にネットをにぎわせた。これは、最終的には今年3月のレファレンダムで「現状維持(変更しない)」という結論が出たのだが、その結論の報道があったときにまで、何ヶ月も前に「ネットで公募」されたときにネットだけで話題となった「デザイン」にもなっていないような明々白々たるおふざけ画像を「これがよかったなあ」などと言ってしつこくツイートするなどしている人がいて(それも複数)、おまえらが小学生じゃないんならそろそろやめておけ、という気分にさせられ、辟易したものだ。

そう、ああいう「おふざけ」は、最初に見たときはそれなりに笑えても、いつまでもしつこくやられると、イライラする。

これもそうなるのだろうか。

なぜか、これはそうならないような気がするけど。 (・_・)

英国で、"Non-Departmental Government Body" と呼ばれる公的な機関の中に、Natural Environment Research Council (NERC) というものがある(日本語にすれば「自然環境調査評議会」とでもなるのだろうが、「定訳」は調べていない)。具体的にどのようなことをしているかは個別にご確認いただきたいのだが、ここが建造中の新たな極地(南極)観測船の名前を「ネットで公募」した。自分で考えたのを投稿してもいいし、他人が考えたものに投票してもいいという形の、わりと限定的な範囲からの提案を想定した、ゆるくオープンなものだ。

地味といえば地味な話題である。こういう場合、きっと、その分野で大きな功績を残した偉人の名前がつけられたり、何かゆかりの土地の名前がつけられたりする。ペンギン崇拝頻繁にみられる英国のことだから、南極観測の分野に関心の高い人は大勢いるだろうが、サッカーとかテレビのオーディション番組のように広範な関心をひくようなトピックではない……はずだった。そう、たった1人のネットユーザーが、思いつきを書き込むまでは。

その「1人のネットユーザーの思いつき」のことが大きなニュースになったのは、3月のことだった。

Experts could overrule 'Boaty McBoatface' name choice for polar ship
21 March 2016
http://www.bbc.com/news/uk-35861444

The name of a new polar research vessel will be chosen by a panel of experts, even if the public overwhelmingly votes to call it Boaty McBoatface.

Lord West, ex-First Sea Lord, said he was rather proud "silly names" had been suggested but hoped none were chosen.


新たに建造されている南極調査船の名前は、ネット公募では "Boaty McBoatface" が圧倒的な得票数であっても、最終的には専門家のパネルによって選ばれる、という記事である。この "Boaty McBoatface" という、あえて日本語にすれば「船田船左衛門」的な「ばかばかしい名前」が提案されたことについて、元海軍トップが "rather proud" と言っていることなども、もう意味がわからないのだが、誰かが何気なく書き込んだ「ばかばかしい名前」が大受けして、サイトにアクセスする人が急増し、サイトが落ちるなど大変な騒ぎになった。そういったドタバタが、メディアで取り上げられてはまた人々の関心を集めた。Twitterのような「どうでもいい一過性の話題」に人々が気の利いた一言を付け加えて盛り上がっていくような場では、関心の高さはなおさらである。

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2016年04月16日

ロンドン、オリンピック・スタジアムがめっちゃ安い値段でウエストハムに貸し出される件

気になっている人は大変に気になっているのではないかと思うが、2012年のロンドン・オリンピックで建設されたスタジアムの件。今年2016年から東ロンドンを拠点とするサッカー・クラブのひとつ、ウエスト・ハム・ユナイテッド(WHU)が借用権を得て、ホームとして使用することになっていて、WHUの長年の拠点のアプトン・パークではリーグ戦やカップ戦の「最後の試合」が行なわれつつある。

そんな中、WHUとオリンピック・スタジアムとの契約の詳細を開示せよという要求があったのが、ようやく実を結んで、つい先日、契約の中身が開示された。

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2016年04月08日

【パナマ文書】当初英メディアがまるで注目していなかったキャメロン首相の父親のオフショア信託の件が「炎上」的状態になるまで

表題の件、下記リンク先をご確認ください。キーとなった質問をしたファイサル・イスラム(元Channel 4, 現Sky News)と、最終的に確定のインタビューを取ったロバート・ペストン(元BBC, 現ITV, メガネ男子)のツイートをさかのぼって、「騒ぎ」となった経緯をたどっています(リーク報道初日は、「パナマ文書」より「タタ製鉄」と「EUレファレンダム」が大きなニュースでした。あと「ジュニア・ドクターズ」)。今日は全国紙はデイリー・スターを除いてすべてがこの話が一面にでかでかと出ている状態です。

#パナマ文書: 英キャメロン首相の「父のオフショア信託」の件を現地報道で #PanamaPapers
http://matome.naver.jp/odai/2146009272337045801


本ブログにはこの件については何も書きません。ブックマークなども上記リンク先にお願いします。

ただ、これ↓↓を見ずにはいられない気分であるということだけは、ここに書いておきます(「NAVERまとめ」のページには書いていません)。


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2016年04月07日

【パナマ文書】「日本では報道されていない」? 提携媒体は共同通信と朝日新聞です。(付: 英国での報道)

いわゆるPanama Papers, 日本語では「パナマ文書」(当ブログでは関連記事はタグで一覧できるようにした)について、日本では報道が小さい・薄いという話を見聞きする。私は東京にいるがテレビは見ないし、新聞もとっておらず駅売店やコンビニで通りすがりに見る程度なので、どのくらい報道されているか・報道されていないかはまるでわからない。今回のこの件では、日本で報道されているかどうかはとりたてて気にもならない(過去のOffshore Leaks, Swiss Leaksのときなどと同様)。ニュースに日本人の名前が出てくるかどうかが気になって仕方がないという人は気になっているかもしれない(朝日新聞報道によると、日本人の名前も出てきている。ただし、パナマの法律事務所を利用していろいろやってることは、「違法」行為ではない。なお、「違法ではない」ことは「問題ではない」ことを意味しない)。

いずれにせよ、1つ前で述べたように、「パナマ文書」は「リーク主から文書の提供を受けたドイツのSZ→ICIJ→世界各国のメディア」という流れで、世界各国・各地の100を超える報道機関(パートナー・メディア)によって調査・報道が行なわれている。フランスではルモンド、英国ではBBCとガーディアン、ロシアではノヴァヤガゼータ……というようになっている。

日本では共同通信と朝日新聞だ。初日に「NAVERまとめ」を利用して作成した英国での報道(BBCとガーディアン)と、Twitterでの情報の広がりを記録したページには、2ページ目に共同通信の担当記者、澤康臣さんのツイートを入れさせていただいている。ただし、朝日新聞のURLを含むツイートは「NAVERまとめ」でははじかれてしまうので(「共有」されたくないのだろう)入れていない。共同通信は各報道機関に記事を配信しているが、「パナマ文書」については(東京では)東京新聞に出ているという。一方、朝日新聞は、ウェブ版で見る限り初日は、記事は存在するのに、トップページでは記事が見当たらない状態だった。

一方、英国でのパートナー・メディアのBBCとガーディアン(いずれもウェブ版)は、今週日曜夜(日本時間では月曜になってから)に報道が解禁されたあとはずっと、「特報」の体制ででかでかと扱っている。以下、そのメモを列挙しておこう。

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2016年04月06日

【パナマ文書】2.6TB分もの文書は、どのようにして今のように報道されるに至ったか。

租税回避地(タックス・ヘイヴン)のパナマにある法律事務所が、何十万件というペーパーカンパニーを関与させ、何百人という世界各国の政治トップや国家元首、要職にある政治家や公務員、ほか芸能・スポーツ分野の著名人(3日目の今日は英ガーディアンが英国の芸能人などについて報じている)などの蓄財(本国の税務当局に申告しない財産)をおこなっていたことを示す大量の(2.6テラバイト分の)文書が暴露された件、いったい誰がどのようにしてそんな大量の文書を……という点について、当の法律事務所からの発言があった。

Panama Papers: Leak firm Mossack Fonseca says it is 'victim of hack'
http://www.bbc.com/news/world-latin-america-35975503

A partner at Mossack Fonseca, the Panamanian law firm at the centre of a huge leak of confidential financial data, says it was the victim of a hack.

Ramon Fonseca said the leak was not an "inside job" - the company had been hacked by servers based abroad.

It had filed a complaint with the Panamanian attorney general's office.


つまり、「モサック・フォンセカ法律事務所」の設立者の一方であるフォンセカ氏が、今回のリークは「内部からのもの」ではなく、国外のサーバーからハッキングされていたと述べた。同事務所は既に、パナマの司法当局に届出をしている。

届け出ているということは、何らかの証拠が残っていたのだろう。この点は、今後パナマの当局が動くことになると思われるが、その結論が出るまでは、何を詮索しても意味はなかろう。ただ、この時点で単にニュースを読んでるだけのうちらにも関係するのは、この「リーク」は「内部告発」とは言えないかもしれない(というか、当の事務所は「内部告発ではなく、外部からの侵入だ」と述べている)ということだ。

ともあれ、これらの2.6TBもの文書を誰がどのようにして持ち出したかは、今は単に「わからない」としかいえないのだが、それがどのようにして今のように報道されるに至ったかは、英語圏ではかなりたっぷり説明されている(日本語圏でも、パートナー・メディアである共同通信と朝日新聞で何か書かれているかもしれないが、私は単に未確認)。自分が2,3見たなかでわかりやすかったMashableの記事:
400 reporters kept the Panama Papers secret for a year. Here's how they pulled it off.
http://mashable.com/2016/04/04/panama-papers-media/


今回の「パナマ文書 #PanamaPapers」の報道は、全世界で100を超える報道機関の連携作業となった。関わったジャーナリストは約400人(それだけの人数が関係してて、このプロジェクトのことが「解禁日」まで外部に出なかったんだからすごい)。全体を仕切ったICIJ (the International Consortium of Investigative Journalists) が「勝手のわからない外国のことは、その地の報道機関・ジャーナリストに任せよう」という方針でこの「特大リーク」に臨んだのだという。

なお、ICIJはこれまでにも「隠し資産」関連の大型リークを何件か手がけている。Swiss LeaksやLuxemburg Leaks, Offshore Leaksと呼ばれたプロジェクトだ(後述)。2010年のWikileaksの華々しい活動以降、うちら末端のニュースの受け手にも明確に「見える」ようになった「リーク」の中には、何者かがガセネタをばらまいたケース(例えば、昨年末のAnonymousのOpKKKを騙った、無関係の人名リストの公表……あれは誰がやったんだろうなあ)や、公表後にいろいろあったのか、元の「リークされた情報」が閲覧できなくなってしまったケース(ネオナチ集団の会員名簿とされるもののリークなど)もあるが、ICIJのこれまでの大型リークは、ICIJのサイトで問題なく閲覧できるようになっている。下記URLからどうぞ。
https://www.icij.org/projects



今回のリーク主が最初に接触したのは、ICIJではなく、ドイツの「南ドイツ新聞 SZ」(ミュンヘン)だった。その経緯について、SZが作成してサイトに埋め込んでいる映像がある



接触時のやり取りとしてSZが伝えているのは、次のようなことだ(要約はされていると思う)。

リーク主「こんにちは、ジョン・ドウ(名無し)といいます。データを持っているんですが興味おありですか」

SZ「非常に興味あります」

リーク主「条件がいくつかあります。私の生命が危ないので。話をするのは暗号化されたファイルでのみとさせてください。実際に対面することは絶対にお断りします。何を記事にするかはお任せしますので」

SZ「なぜこんなことをなさるのでしょうか」

リーク主「これらの犯罪を公にしたいんです」


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2016年04月05日

【パナマ文書】名前が出てきた世界各国の政治トップや政治家・官僚について。(含: 英首相の海外資産問題とメディアの当初の沈黙)

#PanamaPapers (パナマ文書) は、全部で2.6テラバイト分の文書で、関係するペーパーカンパニーは何十万のオーダー、出てくる人は何百人単位で過去何十年分ものものである……と、規模が大きすぎて想像することもできないのだが、内部告発者から託されたその文書の山は、全世界で400人のジャーナリストが1年にわたって調査をおこない、その結果が世界で一斉に公表されたのが、日本時間で昨日、4月4日だった。

panamapapers-heads.jpgそんな大量の文書が表に出てきたということだけでも単に「量」としてニュースになりそうなものだが、もちろん「リーク文書」についてそんなことで単独ニュースにするわけにはいかず、初日はどかんと「世界各国の政治トップや国家元首が、租税回避地(タックス・ヘイヴン: tax haven)で蓄財に励んでいた」ということがトップニュースとして扱われた。ICIJのサイトに、それらの人々を似顔絵で一覧にしたページがある(←リンク先では、それぞれの似顔絵をクリックすると詳細が表示される)。

そこに名前が出てきたのは、アルゼンチン大統領、アイスランド首相、サウジアラビア国王、UAE大統領、ウクライナ大統領、ジョージア(グルジア)、イラク、ヨルダン、カタール、ウクライナの元/前首相、スーダンの元大統領、カタールの元/前エミール。(後述のとおり、親族名義の人たちもいるが、この人たちは本人の名前が出てきている。)

同じページでタブを切り替えることで(下図参照)「政治家や高級官僚」のセクションも閲覧できるが、こちらもすごい。

output_RZsBJN.gif


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2016年04月03日

【訃報】ザハ・ハディド(この方は、イラクのモスルのことをどう見ていただろう)

もうずっと前のことのように感じられるが、3月31日に建築家のザハ・ハディドさんが急死したとのニュースがあった。私はTwitterを見て知った。Zaha Hadidという名前がUKのTrendsに入っていて、また何か受賞したか、あるいはテレビでドキュメンタリー番組でもしているか、あるいはカタールの2022年ワールドカップのスタジアム建設(強制労働の疑いがある)について何か発言したのだろうと思ったら、人々が「思い出話」をしていた。

私は建築のことは何もわからない。東京オリンピックは、基本的に興味がないので(と書くとまた「反日」と殴りかかってくる人がいるかもしれないので長々と書くが、オリンピック全般について興味がない。ただし2012年は好きな都市で開催されたので、開会式・閉会式は楽しく見た)、東京五輪関連のニュースも特に熱心には追っていない。だから私には、東京オリンピックとザハ・ハディドについての知識が著しく欠けている。あのニュースを熱心に追っていたら、この訃報も見え方・聞こえ方が違ったのかもしれない。

私がちょっとだけ見聞きしたことがあるザハ・ハディドは、「白人男性の世界である建築業界で、イラク人(つまりアラブ人)の女性として活躍した人」である(「東京五輪のスタジアムの人」ではなく)。

……と書くと「『アンビルト unbuilt の女王』だ、活躍なんかしてない」云々という苦言を生じせしめるかもしれないが、ザハ・ハディドはプリッカー賞をとった最初の女性建築家である。

英語圏で見ると、ザハ・ハディドという人のそういう面を、(東京五輪に関係なく)ストレートに見ることができるような文章などが多い。



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2016年04月01日

お魚の山に対峙しつつ、真顔をキープするという課題をこなす。淡々と。

当方、ガーディアンのUK版で魚を1匹捕獲したことは既にお伝えしたとおりである。その後も毎年恒例エミレーツ・スタジアムからのボンジュールなど見たのだが、Twitterからログアウトしていたのでツイートもしなかった。

こんな私でも、年に一度の魚釣り大会に参加することもできたのかもしれないが、いちいち自分で捕獲するより、誰かが捕獲したのをまとめて売ってるお店に行けばいいじゃない……というわけで「まとめ」的な記事を見た。お手軽にTwitterでApril fool's dayのハッシュタグを見たら一番上に表示されていたMashableの記事である。これがどんぴしゃ、ど真ん中で、非常に真顔である。

The ultimate roundup of British April Fools' Day 2016 pranks
http://mashable.com/2016/04/01/uk-april-fools-day-pranks-2016/


さあ、みなさん、準備はよくって? お茶を用意して、絶対にお茶をふいてはならないひと時の始まりですわよ。
(・_・)

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4月の魚、ガーディアンにて1匹捕獲。(これから自分で探す人は、このエントリは読まないでください)

というわけで毎年恒例のお魚の日である。つまり、魚を食べると頭がよくなるのでみんなで魚を食べようという日である。
(・_・)

aprilfishcards.jpg


画像はフランスのアンティークのポストカード。出典は、上の「よく釣れますか」はこちらのブログで、下の「幸運、健康運、金運」はこちらのブログ(いずれも100年ほど前のもので、著作権保護期間からは外れている)。Googleでapril fish postcardといった検索ワードで画像検索すると、これらのほかにもたくさん、いかしたアンティークのポストカードが見られるのでトレビアンのことよ。

というわけで、英国のニュースを見る上では、今年もまた「見るものをすべて疑ってかかる12時間」(英国では正午までに終わらせるという習慣である)がやってきて、私は東京でびくびくしながらガーディアンのサイトにアクセスした。正直、目に映るものすべてがうさんくさく見える。ネタが大きければ大きいほど疑わしい……この「わしがメキシコの(超イケメン)大統領を当選させた」説はどうだろう……と見ると、署名があるのは(April Foolのアナグラムででっち上げた名前ではなく)ジョンさんだし、3月31日付だし、つまりこれは4月1日のお魚記事ではない。けど、下のほうに何か、「あれ」という気がするものがある。

aprilfoolsdoubt01.png


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2016年03月30日

The Sunの印象操作について、IPSOが「報道の正確性」の点で問題ありと結論。

つい最近のことだと思っていたが、けっこう前、昨年11月のことだった。

芸能やスポーツや「三面記事」のようなわかりやすいトピックばかりでなく、奥深い洞察や分析、慎重な言葉遣いを必要とするトピックまで、政治的な意図をもって、わかりやすく単純な世界観を一面で提供し、拡散していることで知られるタブロイドのThe Sunが、「ムスリムはジハディストを支持している」という方向の印象操作を行なった。その10日ほど前に爆殺されたとの報道があったため再びニュースに登場していた「ジハディ・ジョン」の大きな写真に重ねて、「5人に1人の英国のムスリムは、ジハディストに共感」という見出しを打ち、「パリ攻撃(2015年11月13日)があった今、目を覚ますときだ」といった論説の見出しを脇に添えた。

YouTubeにアップされている当該の記事の解説ビデオ:


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「自爆ベルト」を装着した男が自分の乗ってる飛行機を乗っ取ったら、あなたならどうしますか。

表題の件、「民族性ステレオタイプ・ジョーク」にでもなりそうだが、「この英国人は記念撮影したそうです」……というお話。

より正確に言えば、「自爆ベルト」を装着した男が自分の乗ってる飛行機を乗っ取って、予定していた目的地とは全然違う場所に連れて行かれ、多くの乗客は解放されているのに「おまえは残れ」と言われて残された少人数のグループに含まれたときに、あなたならどうしますか。

(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)アメリカ人なら、チームワークで男を組み伏せるかもしれない。

(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)フランス人なら、「もうおしまいだ」と観念して、機内に積まれているワインを飲み干すかもしれない。

(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)イタリア人なら、「もうおしまいだ」と観念して、客室乗務員を口説き始めるかもしれない。

(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)日本人なら、とりあえず本社にFAXして支持をあおぐかもしれない。

(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)イギリス人なら、"Keep calm and carry on" 精神を発揮して、「せっかくの機会だから、自爆ベルトを観察させてもらおう」とするかもしれない。

……え、「(ステレオタイプ・ジョークに出てくる)イギリス人」ではなく、現実にイギリス人がそうした、と。

Mr Innes told The Sun he "just threw caution to the wind while trying to stay cheerful in the face of adversity".

"I figured if his bomb was real I'd nothing lose anyway, so took a chance to get a closer look at it," he told the newspaper.

"I got one of the cabin crew to translate for me and asked him if I could do a selfie with him.

"He just shrugged OK so I stood by him and smiled for the camera while a stewardess did the snap. It has to be the best selfie ever."

http://news.sky.com/story/1669149/grinning-brit-posed-with-plane-hijacker


自爆ベルトが本物だったら「どのみちおしまいなのだから、この機会にじっくり見てみたいと思った」のだというイネスさん。ハイジャッカーは、客室乗務員の一人の女性の説得に応じ、乗客(人質)と話をしてもいいという態度だったので、イネスさんは乗務員に通訳してもらって、写真お願いできますかと頼んでみた。その結果が、新聞の一面。

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2016年03月23日

ベルギーの首都にしてEUの中枢、ブリュッセルがテロリストの爆弾攻撃を受けた件でのネット上の誤情報についてのメモ

22日(火)、現地で朝のラッシュの時間帯に、ベルギーの首都であり欧州連合(EU)の中枢であるブリュッセルで、相次いで爆弾攻撃が行なわれ、多くの人命が失われた。実に言葉もない。また、このため、水曜日の出張が中止になったというドイツ在住の方の報告もあり、欧州全体に影響は広まっていると思われる。

最初の爆発は現地朝8時ごろ、ブリュッセル国際空港(ザベンテム空港という呼び名もあり、ハッシュタグは #Zaventem)のターミナル内、出発ロビーの中で2度起きた。時間が経過してからはっきりしたのだが、この爆発は荷物の爆発と自爆で、さらにあとで空港内からは不発だった爆発物とか未使用の自爆ベルトが見つかっている。この爆破攻撃でブリュッセル着を予定していた飛行機はすべて目的地変更となり、出発便は出発見合わせとなった。

Twitterでそのニュースが一巡して、英語圏(英国)の「反EU(EU離脱推進派)」のよくわからない演説(欧州のイスラム過激派が組織化されたルーツは英国にあるんで、今EUを離脱したところで、英国にイスラム過激派の拠点があることは変わらないし……ほんと、あの人たちはこういうときに「反EU」の演説をして、何をしたいんですかね)なんかが目立ってきたころ、現地の朝9時ごろに、今度は地下鉄のMaalbeek(マルベーク)駅で爆発が起きた。これは3両編成の列車が停車中に真ん中の車両で爆発が起きたとのことで、自爆ではないという。

2ヶ所の爆弾攻撃で30人以上が殺され、100人以上が負傷した。負傷の多くは爆発物(ボム)に仕込まれていたネイルによるものと報告されている。人で込み合っている空港や地下鉄にネイルボムというのは殺す気満々すぎるが、あの連中ならデフォであろう。

そう、「あの連中」だ。犯行声明は比較的早く出た。イスイス団である。

そこらへん、Twitterでぐわっとかき集めておいた。ニュース系のフィードから、カウンター・テロ方面専門家の分析、「連帯」を表明する個人の言葉、あるいは「なぜ欧州でこういうことがあるとこんな騒ぎになるのか」という不満の声など。

ベルギー、ブリュッセルの空港と地下鉄駅で爆発、死傷者多数(2016年3月22日)
http://matome.naver.jp/odai/2145864061724916901


フランスでは、エッフェル塔がベルギーのトリコロールの色(黒、黄、赤)にライトアップされている。2015年11月13日のパリ攻撃の実行グループの唯一の生き残り、サラ・アブデスラムがブリュッセルで逮捕されたのが18日(金)だが、そのブリュッセルで、中3日でこんな大掛かりな攻撃が起きてしまった。Sinisterすぎて、こちらの感情が消えてしまうほどだ。

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2016年03月22日

「ウエストミンスター・ペドファイル・リング」についての警察の捜査は、証言者が1人しか現れず、何も立証できずに終結。

1970年代から80年代にかけて、ロンドンの南西部、リッチモンド・アポン・テムズにあった「エルム・ゲスト・ハウス」という施設で、子供たちが性的に虐待され、搾取されていた。虐待し、搾取した側には、政界や芸能界の名士も含まれていると告発された。
https://en.wikipedia.org/wiki/Elm_Guest_House_child_abuse_scandal

当時、英国はマーガレット・サッチャーを首相とする保守党政権だったが、その閣僚や要職者を含む人々が組織的に、子供たちにおぞましい犯罪行為を加えていたという疑いはリアルなもので、ここ数年……BBCの子供番組のパーソナリティだったジミー・サヴィルの真の顔が、サヴィルが病没して1年後に明らかにされた後になってようやく、だが……警察が捜査を行なってきた。最初に2012年の終わりに、「オペレーション・フェアバンク Operation Fairbank」が開始された。これは事態の全容についての見極めを行なうことが目的で、本格的な刑事捜査は、翌2013年2月の「オペレーション・ファーンブリッジ Operation Fernbridge」で開始された。そして2014年11月、一連の児童虐待事件で人殺しまで行なわれていたという嫌疑をめぐって立ち上げられたのが、「オペレーション・ミッドランド Operation Midland」だった。(以上、ウィキペディアの解説の導入部より、要旨・抜粋。)

この一連の児童虐待疑惑の加害者たちは、"Westminster paedophile ring" として言及される。児童性虐待というとロッチデールロザラムを指して「イスラムがぁぁぁ」とヒステリックに騒ぎ立てる(一方で、「白人の音楽学校教師」の事件などはスルーする)人々には、「ウエストミンスター・ペドファイル・リング」に関しては「証拠がない」「立証されていない」という態度を取る人もいる。

「証拠がない」「立証されていない」というのは事実で、それゆえに、証拠を集め、立証するための警察の捜査が、虐待が行なわれていた時期から30年ほども経過してようやく始まったのだが、それが難航しまくっている。80年代に保守党のジェフリー・ディケンズ議員がまとめた文書は、当時のレオン・ブリタン内務大臣(2015年1月病死)に提出されたあと、紛失された。これについて追究する動きは、行き止まりに突き当たり、進展しない。

「ウエストミンスター・ペドファイル・リング」は規模も大きく複雑で、しかも「芸能界の端っこで起きていたこと」などではなく、英国という国を動かす中枢部で起きていた。エルム・ゲストハウスでの児童を食い物のするパーティーに出席していたと言われているのは、大物の国会議員や高級官僚、軍人である(ソ連のスパイのアントニー・ブラントの名前もあるけれど)。30年以上前のことで、名前が出ている当事者はもうほぼ全員が死亡しているが、このような疑惑をこじ開けるのは、ロッチデールやロザラムの犯罪の真相を解明することとは、比べ物にならないほど大変なことだ。

一方で、あまりにスキャンダラスであまりにひどいこの犯罪については、人々の義憤も好奇心も容易に向けられるわけで、いろいろな「うわさ話」もあり、それらの「うわさ話」を「〜という説もある」と、 allegedly という語を書き添えるような形で拡散するということも行なわれている。インターネットは、何が「根拠のないうわさ、流言」で何が「ある程度根拠のある説」なのか、何が「紛失された書類において、実際に行なわれていた指摘」なのかといったことが判然としない、「霧 fog」の状態になって情報の断片があれこれただよっている状態だ。

そういうところで、警察が「刑事犯罪として本格的に捜査を開始」したときには、「警察が立件に向けて動き出した」ことが広く歓迎された。

しかし。



Operation Midland: inquiry into alleged VIP paedophile ring collapses
Sandra Laville and Rajeev Syal
Monday 21 March 2016 14.45 GMT
http://www.theguardian.com/uk-news/2016/mar/21/last-living-suspect-harvey-proctor-vip-paedophile-ring-inquiry-will-face-no-charges

先に述べたとおり、ウエストミンスター・ペドファイル・リングの当事者という疑いのある人々はほぼ全員が死亡している。現在、政界での唯一の生存者が元保守党議員のハーヴェイ・プロクター(1947年生まれ、現在69歳)なのだが、その訴追が断念されたという報道である。

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2016年03月21日

「思いやりある保守主義」、IDSの辞任、英国での「福祉」の削減(おまけ:みんな大好き経歴詐称ネタ)

19日・20日の週末の英国政治ニュースといえば、イアン・ダンカン・スミス(IDS)が労働・年金大臣を辞したことだ。理由は、デイヴィッド・キャメロンとジョージ・オズボーンが進めようとしている障碍者手当て削減には賛成できないということだそうだ。

Iain Duncan Smith quits over planned disability benefit changes
http://www.bbc.com/news/uk-politics-35848687


しかし、IDSといえば、Universal Creditに関して、「貧困」についてトチ狂った感覚(それは「パン一斤の小売価格を知らない」とかいった「浮世離れ」とは次元が違う)を露呈して開き直っていた政治家である。詳細は下記参照。
https://en.wikipedia.org/wiki/Iain_Duncan_Smith#Universal_Credit

それが今さら、「弱者の味方」、「政府トップの横暴に黙っていられない良心の持ち主」というわけですか……ということでメディアも裏を読みまくり、「英国の欧州連合残留or離脱」に関する事情があるのでは、などといった報道がどっと出た(IDSは「離脱」派)。

そこに至るまでの、キャメロン&オズボーンの「福祉(の削減)」政策について、十分にニュースで情報を得ていたらわけがわからなくなることもなかったのかもしれないが、私はそこまでニュースを追っているわけではなく、IDSの突然の「弱者の味方」っぷりには、「なにこれ、わけわかんないんですけど」と思うよりなく、「福祉は建前で、本音としてはEUだよ」といった説明にも、釈然としないものを覚えていた。保守党にとっては部外者のメディアであるガーディアンの報道は、「言われていることを全部1ヶ所にまとめておきました」的なトーンのBBCの記事よりはわかりやすかったが、それでもよくわからなかった。




今日月曜日、週末を挟んで英国の政治ニュースが動き出し、識者が「なんだかよくわからないことが起きていますね」的に解説しているのを読んで、ようやく少し腑に落ちてきた。IDSに特に関心はないのだが、そのことをメモっておこう。

キーワードは「思いやりある保守主義 compassionate conservatism」だ。

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2016年03月16日

#withSyria 5年目を迎えたウェブ上の光景を少し。

1つ前のエントリで、「シリアの『革命/蜂起』」と#Mar15というハッシュタグについて少し振り返った。日本では東日本大震災(2011年3月11日)の直後で、中東の「アラブの春」に関心を向けていた人はごく少なかったのだろうと思うが、シリアの「ハッシュタグ革命」は3月15日から始まっていた。だから、この3月15日が5周年だった。

※関連する新しいツイート:







そして1つ前のエントリでは、WithSyria.comというサイトについても少し書いた。WithSyria.comは、Save the Children, Oxfam, Amnesty International, International Rescueなどの「欧米」の人道組織はもとより、IHHなどイスラム圏の人道組織や、国連の世界食糧計画、イングランド国教会など非常に広範な範囲の組織・機関が参加している、シリア(の人々)を支援するための連合体である。こういう取り組みについても「それらの情報はすべてCIAが洗浄済みだよ」などというわけのわからない陰謀論を叫んで絡んでくるような人はいるのだろうし、日本語圏ではそういう人たちの影響力がバカにできないくらいに大きいというのが現実なのだが(まあ、「影響力」というか……こんなふうにいきなりどやしつけられれば、たいがいの人はびびって発言しなくなるよね、ということだが)。

ともあれ、そのWithSyria.comでは2014年以降毎年、3月15日のためのキャンペーン・ビデオを出している。2014年のは、既に1つ前のエントリにツイートを埋め込んだが、Banksyの「風船少女」をモチーフにElbowの曲を使い、俳優のイドリス・エルバがナレーションを担当したビデオだ。



この「風船少女」は、バンクシーの初期(2000年代前半)のモチーフを「シリアの少女」にアレンジしたステンシル・アートが元で、WithSyria.comのサイトのfavionにもなっている。




2014年には、WithSyria.com参加団体のひとつであるSave the Childrenが出したビデオも多くの人が見て、考えたと思う。イギリスに暮らすある少女の1日を1秒で表し、1年分のストーリーをつむいだビデオだ。ただしこの「イギリス」は、「もし、イギリスでシリア内戦と同じことが起きていたら」という仮想のイギリスである。子供が子供らしい毎日を送る背景で、徐々に情勢が緊迫していく。大人が見ているニュースはBBC(と思われる)、大人が読んでいる新聞はガーディアン(の旧デザイン)……と細部の作りこみも丁寧で、リアリティがあると評判になっていた。

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2016年03月11日

「女王がEU離脱を支持」とかいうThe Sunのガセネタの件

9日、英エリザベス女王が「EU離脱を支持」しているとかいうガセネタをThe Sunが一面でぶっとばし、即日バッキンガム宮殿からIndependent Press Standards Organisation (IPSO) に対する申し立てが行なわれるということが起きている。

そもそもThe Sunだし、The Sunであろうとなかろうと女王が公開の場でそんな発言をすることは「まずありえないこと」なので、「はいはい、The Sunのトバシ、The Sunのトバシ」と見ておくのが常識的な対応だったのではないかと思う。実際、ちょっと見たところ「おお!」的にであれ「えっ?」的にであれ、真に受けたような反応をしていたのは、UKIPのナイジェル・ファラージなどが中心となってやってる「EU離脱キャンペーン」の支持者(であることをアバターなどで明示した)アカウントばかりに見えた。

また、バッキンガム宮殿からの動きが報じられる前に、既に、女王のその発言があったとThe Sunが述べている会食の場にいたニック・クレッグ副首相(当時)が「そのような事実はなかった」とコメントを出しており(それゆえにTwitterでNick Cleggの名前がTrendsし、「一方的に裏切られた」感だけを抱えている政治的方向音痴な人たちがまた例によって「ニック・クレッグってまだ生きてたんだ」などの暴言をツイートしていたのだが)、「まともなニュース」として《拡散》されていた形跡はなかった。

日本語圏を除いては。

日本語圏では、時事通信が「女王がEU離脱支持?=王室は『政治的中立』強調」という見出しを打っていて、それがYahoo! ニュースのトップページに配信されているのを、私は見た。この見出しが「元の報道を真に受けたもの」であるかどうかは議論の余地があるかもしれないが、「真に受けていないもの」ではないということには議論の余地はない(「真に受けていない」のなら、そもそも記事にしないのだから)。「マユツバかもしれないけど、一応、拡散しておきますねー」程度に「真に受けた」ものだと言ってよかろう。



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2016年03月09日

【訃報】うちらが普通に耳にしている「ポピュラー音楽」を形作った人たちのひとり、ジョージ・マーティン死去。

ビートルズ(の音源)を聞いて「いいな」と思うようになったのは、実のところ、35歳を過ぎてからである。英語圏でよく「シェイクスピアはすごいすごいと言われるので戯曲集を読んでみたが、クリシェ(常套句)が満載でたいしたことないと思った、などと言う無知な人」が笑い話になるが(シェイクスピアが戯曲の中で使ったのがウケて、定着して、現在では「クリシェ」になっているものが非常にたくさんある)、私にとってのビートルズもそれと同じようなもので、あらかじめ「スタンダード」だったのだ。これは「世代」的なことではなく、あくまで個人的なことである(同い年や1〜2歳違いの人たちに、熱いビートルズ・ファンは何人もいる)。若いころ、「ビートルズは別に……」と言うと、年長者からも同年代の人たちからも、すべてを否定されるようなくさされ方をしたこともあったが(「何もわからない」、「耳がない」など)、それがよけいに私をこのバンドから遠ざけた。同世代でそういう感じで、何となくビートルズと疎遠だった人は、けっこう多いのではないかと思っている(根拠は、Oasisが大ブレイクしたときに「あれって、どうなんすかね」、「うーん……」という会話になった人が、少なからずいたこと)。

それに、自分が「洋楽」を聞き始めたときはニューウェイヴの時期で、そのころに「尊敬すべき先輩たち」だったパンクの人たちは(演技、ネタで)先行世代をけなしまくっていた。ジョージ・ハリスンやキース・リチャーズがレスペクトされていることは、私はロンドンで実際に音楽やってる(だいたいが同世代の)人たちと話をして知った。音楽雑誌がどんだけ持ち上げていようと、インタビューに応じているミュージシャンがけなしていようと、信じちゃいけないんだということを身を持って知った。

そんな話はどうでもいい。

【訃報】ジョージ・マーティン(今のポピュラー音楽を形づくった人。ザ・ビートルズなどのプロデューサー)
http://matome.naver.jp/odai/2145750427896475601


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2016年03月08日

例の「デス・ノートめいたネット上のネタ」について、少し調べてみた。

ネットで不特定多数の人々と何となく共有できる「気軽なネタ」にはいろいろある。その中には「ネタとしての都市伝説」のようなものもある。本気の「都市伝説」(例: 「呪いのビデオを見ると不吉なことが起きる」)ではなく、冗談(ネタ)であることがもっとわかりやすいようなものだ。

そういう「気軽なネタ」は、言ってる側は「無害な世間話」と扱っているかもしれないが、そこで「ネタ」にされている側は、内心穏やかではないかもしれないし、うんざりしているかもしれない。そういう事例について聞かれたので、発端を改めて調べてみた。

「アーロン・ラムジーがゴールを決めると……」(都市伝説じみた「ネタ」)
http://matome.naver.jp/odai/2145733695168210901


アーロン・ラムジーというのはこの人(サッカーに興味がない人は、がっさりと「有名なサッカー選手」と思っておいていただければと):



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ヒンクリー・ポイントの新規原発建設計画への投資判断を前に、EDFの重役が辞職

tt7mar16.png表題の件、ヒンクリー・ポイントについては関心をもってフォローしている方が多いと思うので、クリッピングです。

Twitterにはニュースのフィードがたくさん来ています。Twitterで検索するといろいろ拾えると思いますが、ニュースを見たいだけなら普通にGoogle Newsなどで検索したほうが早いかも。Twitterだと、記者の人のコメントなどがあります。

BBCの記事はEDF finance chief quits ahead of Hinkley Point decision. 最も大きく取り上げているメディアはFTのようです。



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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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