「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年01月14日

BBCも「偽ニュース(デマ)」の検証に本気出していくとの由。でもそもそも「偽ニュース」って何だろね

前項は、本当はトリストラム・ハントの話は導入部にして、これからここに書くことを本題にしようとしていたのだが、書いている途中でだるくなってきたので切り上げて、ハントの辞職だけで読めるようにまとめたものだ。

というわけで本題。

10年ほど前に「ポスト・ロック post rock」という「音楽のジャンル」の命名によって新たなマーケットが開けたように、「ポスト事実(脱事実、事実以後) post-truth」という概念が広く共有されることで、この「恐ろしい美」(イエイツ)の時代に、新たな共有スペースができるかもしれない。「かもしれない」と書いたが、それはmayよりももっと薄く遠い可能性だ。それを濃い可能性にするために、やっていかねばならないこと(英語でいうjob)が山ほどあるというのが現状だろう。

6月の英国でのEUレファレンダム(Brexit)も、11月の米大統領選も、民主的手続きにのっとった投票によって勝った側は、デマや陰謀論をばらまきまくって感情を煽るという手法をとっていた。それも「裏でコソコソ小細工」とかいうレベルではなく、正面から堂々とやった。Brexitに至ってはありえないほどめちゃくちゃな嘘まで使われた(「EUに流れている巨額の金をNHSに回そう」論など。今思うと、日本での「霞ヶ関埋蔵金」とちょっと似てたかも)。「文明化された社会の理性ある人々(国民)」なら信用できると判断せず、投票先から外すはずのデマゴーグは、しかし、最終的に勝利を収めた。「文明化された」云々ってのは、たぶん想像の産物でしかなかったのだろう(2016年に関するベネディクト・アンダーソンの分析を読みたかった)。というか私の目には、「イラク戦争という大嘘を推進したエスタブリッシュメント(政治家であれメディアであれ)」に対する不信が大爆発して、ストーンズのPaint It Blackばりに「全部嘘で塗り尽くしてしまえ!」という感情的ムーヴメントが起きているように見える「どうせ全部嘘だったのだから」と。(イラク戦争は、そのくらい、深い傷となっている。そのことを誰がどのように認めるか……11月の米大統領選前の共和党の「重鎮たち」に関する報道を見て、めったなことでは死なないはずの希望が死んでいくのを私は感じたけどね。)

I look inside myself and see my heart is black
I see my red door, I must have it painted black

Maybe then I'll fade away and not have to face the facts
It's not easy facing up when your whole world is black


かくして、デマや陰謀論、裏づけのないただの印象論の類を「とりあうべきではない(とりあう必要はない)」と扱ってきた文明社会のエスタブリッシュメント(彼らは常に「歴史の正しい側」にいた。「過ち」をおかすのは、ナチス・ドイツであれソ連であれ、彼ら以外の誰かだった)が、その「フフン」という態度を一変させ、「デマ検証」のような(彼らにとっては)ハンパな仕事に乗り出している。1月12日にはついにBBCが本気出すってよということが伝えられた(詳細後述)。

factcheck-ggl.png元々、「デマ検証」というか「ファクトチェック」は、記事を人目にさらす前に内部で行なう工程のひとつであり、それ単体で表に出すようなものではなかったのだが(だから「ハンパな仕事」なのである)、ソーシャル・ネットというインフラが整備され定着して、「個人の日記」のようなものであっても大手新聞と変わらないように機能することがあるというのが日常的になったあとでは、「うちがうちの名前で出すものには、うちが責任を持つので、うちの内部でしっかりチェックする」的な「内部」は、解体されずにはいられない。「内部」だけ守っていても、それが立っているプラットフォームが侵食されてしまえば元も子もない。足元のプラットフォームを守るために、「内部」が外に出てくるのだ。今、Googleを fact check で検索すると、右の図のような結果が表示される。このフレーズで検索することはあまりないのではっきりとしたイメージがあるわけではないが、1年前なら、このように「ファクトチェッカーが乱立している」ような状況は見られなかっただろう(「デマ検証」は、Snopes.comやMuseum of Hoaxesのような「都市伝説や陰謀論、詐欺対策専門の情報サイト」がやってることで、一般的な報道機関が扱う場合は個別の記事でやっていたと思う)。

ソーシャル・ネット上では何年も前から「ファクトチェック」系のアカウントは存在していた。アイルランド共和国(まさかと思うような誤解が日本語圏でちょっと流行っているようなので一応書いておくが、アイルランド共和国はナショナリズムゆえにアイルランド語を掲げてはいるが、実際に日常の生活や政治の場で使われている言語は英語であり、アイルランドは英語圏である)の首都ダブリンで立ち上げられたベンチャーのStoryful(2013年12月によりによってNews Corpに買収されたが)は、特にTwitter上に流れている情報が事実であるかガセかについてのチェックを行なうなどするファクトチェック専門の会社で、「中の人」たちは(2000年代のアイルランドの不況で縮小された大手メディアを去った)ジャーナリストなど経験豊富な「裏取りの専門家」たちだ。クライアントは基本的に大手メディアで、Storyfulのおかげで「釣られずに済んだ」メディアも多くあるだろう(以前、何のときだったか、BBC NewsがStoryfulのチェックについて大きく書いてたことがあった……あれかな、欧州の活動家気取りのアーティストが「シリア内戦についてのニセ映像」を「意識啓発のため」とかいって流したときかな)。今はTwitterでは「今日のニュース」のフィードと、ほのぼの系動物映像などを流しているが(Storyfulはソーシャル・メディア・ユーザーの映像のライセンシングも行なっている)、以前はTwitterで直接debunkingを行なっていた時期もある。

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英国的な、あまりに英国的な(ヴィクトリア&アルバート博物館の新館長)

デマや陰謀論、および、よりマイルドなところでは「ただの印象論」によって行なわれる情報操作が、「文明化された社会 civilised societies」において急にリアルなものとして立ち現れて、「ポスト事実(脱事実、事実以後) post-truth」という言葉を与えられ、概念化したのが2016年だった。「総体としての人々(国民)は、常に理性的・合理的で賢く正しい選択をする」というそれまでの暗黙の前提を、唐突にひっくり返したのが、6月のBrexitだった。

それまでは、「デマ・誤情報・印象論による煽動」が「民主的な意思決定」の末の勝利につながるということは、少なくとも表向きは、現代の英国のような文明世界の盟主たる国で起きるようなことではなかった。フレデリック・フォーサイスなどの小説家が物語の舞台とする「アフリカの小国」(植民地主義的な見方でいえば「辺境」)や、政府が情報統制をがっつりしている社会主義人民共和国的な国でならば起きる、というようなことだった。

Brexitの英国の政治は、いちいち日本語になりゃしないようなニュースを見ていると、実にカオティックで非生産的で、何にもならないことを延々とやってきた。レファレンダムの結果が出た瞬間、保守党の政治家たちは内部分裂と権力闘争を開始し(ドラマ "House of Cards" そっくりと評された。現在では米国版が有名な作品だが、オリジナルは90年代の英国政界ドラマだ)、労働党の政治家たちは野党 (the Official Opposition) として「離脱派の嘘」を追究するどころか、「EU残留に全力を尽くさなかった党首」(彼は「トニー・ブレアのような勝利を収めることはできない」人物とみなされている。実際、そうだろうと思うが)を下ろすことに全力を傾け始め、労働党の党員たちはますます党首ジェレミー・コービンへの支持を固めて、9月の党首選挙ではコービンがバカ勝ちした。これを私は個人的に「労働党の自殺」と呼んで、そのようにTwitterには投稿している。

そういった非生産的な流れを、いかにも英国らしく静かにしめくくったのが、「コービン下ろし」で活発に動いていたトリストラム・ハント議員の華麗なる転職というニュース(1月13日)だろう。

彼は元々ケンブリッジ大学で歴史学を修め、ロンドンのクイーン・メアリ&ウエストフィールド大で教鞭をとっていた学者である(専門はヴィクトリア朝の社会史。そういう人がマイルエンドにある大学で教えるなんて、マンガか、というようなことだ)。学者時代から、BBCの歴史番組をやったり、大手メディアにコラムを書いたりしていた。親が労働党の人で、功績を認められて2000年にトニー・ブレアによって一代貴族に叙せられているのだが、その親も学者だし、トリストラム・ハント自身パブリック・スクール出のエリートである。若いころから労働党で活動してきたが、政界入りしたのは2010年の総選挙のとき。健康に問題があって引退する議員のあとを受ける労働党候補として、唐突にストーク・オン・トレントの選挙区から立候補した(このときの候補者選定の経緯にはいろいろありそうで、地元の元々の労働党の組織が「反発して対抗立候補」ということにまでなっている)。最近では、2014年の大学教員組合のストライキを破って講義を行なったこと(しかもテーマが「マルクス、エンゲルスとマルクス主義の成立」って、すごいジョーク)で批判にさらされ、大穴のコービンが当選した2015年の労働党党首選では、候補4人のうち最も強くトニー・ブレアの路線を継承していると見られたリズ・ケンドールを支持し、ネットで個人が何の遠慮もなく発言できる場では、トリストラム・ハントをめぐる批判は、私が見るに、「怨念」とか「瘴気」といった域に達していた(今のカジュアルな日本語では「ハントへのヘイトがすごい」などと表されるかもしれない)。

その彼が、このたび、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の館長となるため、議員をやめるそうだ。これは、お茶ふくのも忘れて真顔で「そうですか、それはようござんした」とカップの中のお茶を一口含んで熟考の間を取って反応せざるをえないくらい、英国的なニュースである。ヴィクトリア朝の研究者にとって、V&Aの館長は、まさに最高の仕事、dream jobだ。

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2016年12月31日

英国政府の機密文書、いわゆる「30年ルール」での機密指定解除により、今年公開されたのは……

年末恒例、今年も英国で「30年ルール」により、機密指定されている政府の文書がまとめて機密指定解除され、ナショナル・アーカイヴズ(国立公文書館)で公開されている。「30年ルール」というのは、「文書が作成された年から30年間は機密とする(30年経過したら機密指定を解除する)」という規定のことだが、その年限が「30年」から「20年」に短縮されることになり、ここ数年は変則的にごちゃごちゃ、ばたばたと文書が公開されている。今年2016年は、1989年から90年にかけての首相府・官邸の文書が公開された。

Prime Minister’s papers from 1989 and 1990 released
http://www.nationalarchives.gov.uk/about/news/prime-ministers-papers-from-1989-and-1990-released/


1989年から90年なんて、マニアにはたまらないじゃありませんか、ねえ。Poll taxですよ。サッチャー辞任ですよ。東西ドイツの再統一ですよ。冷戦終結ですよ。

でも、読んでるヒマがない。「ヒマ」の問題ではなく、エネルギーの問題かもしれない。

公開された文書のテーマ別一覧は:
http://www.nationalarchives.gov.uk/about/news/prime-ministers-papers-from-1989-and-1990-released/prime-ministers-office-files-prem-1989-90/

直接文書そのものを見るのは大変なので、報道機関がまとめてくれているのを見るのが早い。私はガーディアンで見ている。



いろいろとマニア心をくすぐられる見出しが並んでいるが、現時点で私が見たのは下記の記事のみ。というか、うっかり北アイルランド関連の文書を見始めてしまったので……生々しいなあ、これ。

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2016年12月29日

政治的なスタンスもブレなくはっきりさせてきたポップスターは、多くの人にとっての「あしながおじさん」だったことが、死後わかった。

クリスマスの時期は "season of goodwill" であり、英語圏では(というか私は個人的に英国の事情しか知らないようなものなので「英国では」と言うべきなのかもしれないが)新聞や雑誌などに「心あたたまる話」が「クリスマス・ストーリー」として掲載される。必ずしもクリスマスと関係する話でなくてもよいようで、「通りすがりの人の親切のおかげで命が救われた」とか、「カラスに優しくしたら、そのカラスが光る石を持ってきてくれた」といった、誰がどう読んでも心があたたまるような物語を、私もこれまでに何度か読んだことがある。Twitterではこの時期に現実に起こる「よい話」が大きな注目を集めることがあり、数年前にアイルランドで、誰かが落とした財布の持ち主を探すために、自分の時間を削って霙交じりの冷たい雨の降るダブリンの町を歩いて回っている若い女性のことがしきりにRTされていたと思う。そういえば昨年(2015年)は、このクリスマスの時期に、ガーディアンに掲載されたハーパー・リーの回想を読んだのだった。

だが今年は、そのような、この時期の風物詩たる「よい話」を読んでいない。気づかなかったのだ(コルム・トビーンによる文学論のような記事は読んだが)。今年は11月の米大統領選挙後は何もかもが無茶苦茶で、米国の新政権の人事の話だけでも報道機関のサイトは連日大騒ぎで、それに加えてシリアのアレッポ戦の最終局面で人道危機が発生していたり、南スーダンが本当に危険な状態になってきていたり、英国ではサッカー界で過去行なわれてきた未成年者に対する性犯罪(性的虐待)の実態が次々と明らかになったりと、ひどいニュース、深刻なニュースがたくさんあったので、単に私が見落としていたのかもしれない。それにそもそも、最近私はネットをあまり見ていない。どこを見てもひどい話ばかりであることに加え、どこを見ても陰謀論者ばかりでいろいろうんざりして(例えばアレッポのあの女の子を「プロパガンダ」呼ばわりすることに血道を上げてる人は、彼女のアカウントが仮にプロパガンダででっち上げられたものだったとして――そうだった場合、あの母子は、リビアの「レイプされた」女性のように、西洋諸国のどこかの保護下に入ることになるだろうが――、そのことがアレッポや他の都市でのアサド政権による自国民への無差別的暴力という根本的な問題に影響を及ぼすとでも思っているのだろうか。湾岸戦争のときに「プロパガンダ」があったのは事実だけど、だからといって誰かが「サダム・フセインの暴虐などというのは西側の宣伝に過ぎない」とか言い出したら、サハフ情報相が乗り移ったのかとツッコミ入れるよね)、ネットでものを読む時間を大幅に減らしていたのだ。

そんなわけで、今年はクリスマスのシーズンは「よい話」を読まずに過ぎてしまったのだが、クリスマスが明けてから、まさにクリスマスっぽい「人の善意」の話をたっぷり読んでいる。現実に起きたことに関連しての記事で。

その「現実に起きたこと」というのは、クリスマス・デイの朝、ひとりのスーパースターが自宅のベッドの中で冷たくなっていたこと。

そして「よい話」というのは、そのスーパースターがこれまで、困っている人、苦境にある人のために、どんなことをどのようにしてきたかということ。

日本語でも記事があるが、当然のことながら英語圏のほうが情報量が多いので、英語圏で見ておこうと思う。

ジョージ・マイケルという人がこういう人だったということを、私は今回、初めて知った。決して「派手な生活に慣れきったセレブ」ではなかったのだ。

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2016年12月27日

英国で非合法化された極右過激派集団、「ナショナル・アクション」について

英国に、National Action(ナショナル・アクション)という極右過激派集団がある。単に「極右過激派」と呼ぶだけでは不十分なくらいに過激な集団だ。どのくらい過激かというと、ただ反ユダヤ主義・人種主義を表に掲げるだけでなく「私たちはナチでございます」と高々と宣言し、街に「ナチ・ゾーン」というステッカーを貼って回る(後述)くらいに、である。

彼らはTwitterアカウントを持っているのだが、そのbio欄(プロフィール欄)には、何も臆することなく、"nationalist & socialist" と書いてある。つまり、定義通りの「ナチ」を標榜している。(なお、national actionといえば「全国行動」のことでもあり、米国の公民権運動の流れを汲むNational Action Networkという団体があるのだが、英国の極右過激派集団National Actionは、それとは関係ない。1920年代のナチ党の「全国行動」的な部分に共鳴しての名称である。)

twttrna.png

※このキャプチャ画像内でNational Actionのアカウントをフォローしているアカウントとして示されるダニエル・サンドフォード氏はBBCの記者。ウォッチャーであり、共感者ではない。

この集団の概略は、ウィキペディアでも調べられるが、より詳しいことは、反差別の活動を行なっているHope Not Hateによる潜入レポートがあるので、そちらを読んでいただくのがよいだろう。「BNPはオワコン」みたいなノリが生々しいのだが、この組織の始まりのあたりとか、もうね、「BBCのコメディ」と言われたら信じるようなクオリティでね。

From HOPE not hate magazine March / April 2015
National Action: Young, Nazi and Dangerous
http://www.hopenothate.org.uk/get-hope/issue18/young-nazi-and-dangerous/
The origins of the small but increasingly significant group lay in the ruins of the British National Party and in discussion clubs outside the party that came together to discuss the future of the British far right.

A forerunner to NA was the English National Resistance (ENR), led by former BNP youth leader Kieren Trent, with the help of another former BNP organiser, Matthew Tait.

The ENR was to be short-lived after Trent was beaten to a pulp by BNP activists before rather desperately and stupidly trying to join the IRA on the steps of Conway Hall in London.

At the same time, some of the self-defined “intellectuals” on the British far right, many of whom had been marginalised for many years, began to gather in London pubs to pontificate on the future direction of the movement.

The focal point for these discussions was to be the New Right, led by former BNP officer Jonathan Bowden and Troy Southgate. It was Southgate who formed the New Right in 2005 after being influenced by The “Manifesto for a European Renaissance”, which had been written by Frenchmen Alain de Benoist and Charles Champetier in 1999. The move was part of his own trek through the far right that saw him paying visits to the National Front, the International Third Position, Brown Anarchism and National Bolshevism.


(これ、BNPヲチャには懐かしい話だと思います。)

Hope Not Hateのこの記事は、こういった辺りから書き始められており、少し分量があるが、ナショナル・アクションに限らず英国におけるヘイトスピーチ・ヘイトクライム全般に関心がある人は、読んでおいて損はないと思う。

また、調査報道を主要な領域とするBBCのヴィクトリア・ダービーシャーの番組で昨年組まれた特集「急進派の人々 Radicals」で、組織の「スポークスマン」にインタビューしているものがある。これはBBC Newsのサイトで英国外からの接続でも見られるように公開されているので、関心がある方には、時間を作って見ていただきたいと思う。

この「Radicals」という特集は、イスラム過激派と反イスラム過激派という軸で企画されている。実際に英国の社会で過激な発言を行なっている活動家たちに直接インタビューした映像で構成されており、内容が非常に濃い(別な言い方をすれば「聞くにたえない」)。その特集の「目玉」として広報されたのは、それら過激派そのものから少し距離を置いた「イスラム過激主義にはまった若者と、彼を踏みとどまらせようとするコミュニティ・リーダー」に関する取材で、これは英国政府が行なっている反過激化プログラム、「プリヴェント (Prevent)」の当事者が初めて顔と名前をさらしてインタビューに応じているということで注目された。ただし、ここで取材されている「過激主義にはまった若者」は英国人ではなくポーランドから西欧に出てきた青年で、Preventプログラムが主な対象とする「ホーム・グロウン」なイスラム過激派とは異なる文脈での「過激化(急進化)」の例だ。番組が主に紹介したかったのは、同プログラムに参加し、若者を踏みとどまらせようと活動しているコミュニティ・リーダーのほうだろう。私は昨年既に、そのPreventプログラムの活動内容を紹介するパートについて「NAVERまとめ」を利用して書いていて、その中でこの「極右過激派集団、ナショナル・アクション」のパートにも言及はしている



さて、2016年12月半ば、この極右過激派集団National Action (以下「NA」)が「テロ法 the Terrorism Act」における「テロ組織・集団(特定団体)」のリストに入った(プロスクライブされた)というニュースがあった。プロスクライブされるということは、要は「非合法化」を意味する(これにより、資産を凍結することや、構成員や支持者を違法行為に問うことなどが可能になる)。英国で、極右過激派集団が「テロ法」の特定団体入りするのは、なんと、初めてのことである。極右の政治的暴力(テロ)は、計画・準備段階でパクられているものも含めて、実は英国では多発しているというのに(人種主義による身体的暴力や建物などの損壊もあるし、活動家が自宅でボム作ってたり、武器を溜め込んでたりということもときおり報じられている。1999年SOHOパブ爆破事件のような事件もあったし、2016年6月にはついに国会議員が暗殺された)。

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2016年12月26日

【訃報】ジョージ・マイケル

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guardian26dec2016t.png


実はあまりちゃんと聞いたことがない。好きなタイプの音楽、積極的に聞く音楽、買って聞く音楽をやっている人ではなく、ラジオをつけてれば流れてくる音楽の人、街を歩いていると聞こえてくる音楽の人だった。Wham! のころからそうで、レコード/CDは1枚も持ってない。友達どうしで回ってくるカセットに入っていたという記憶もない。

逆にいえば、シングル曲に関しては、わざわざ聞かなくても耳に入ってくるほど、大物のポップスターだった。

彼の作品を大切に聞いてきたファンの方にとっては、このエントリは腹立たしいものになるかもしれない。「ろくに知りもしないくせに、書くな」と思われるかもしれない。それでも、見かけた言葉を書き付けておきたい。「引用」だけで構成すると「引用の要件を満たしていませんよ?」などと絡んでこられると思うので、ファンの方にはきっとうざったいだろうが地の文も書く。うざいと感じられる方は読まずにそっと閉じていただければと思う。あるいは、ここで記録しているツイートの多くはRTしているので、Twitterのログ(Twilog)を見ていただければと思う。

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タグ:訃報
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2016年12月19日

英保守党政権は、「英国の(英国らしい)価値観」を守るということを、公務員に誓わせたいようだ。

britishvalues.pngいわゆる観測気球だろう。

18日深夜(日本時間)、UKのTwitterで、#BritishValuesがTrendsに入っていた。Trendsの項目に添えられている説明にいわく、 "Government calls for public officials to take 'British Values' oath", つまり「政府は、公務員に『ブリティッシュ・ヴァリューズ(英国の価値観)』に対する誓いを立てさせる方針を検討」(←正確な翻訳にはしてないです)とかいう感じ。

"British Values" とか "Britishness" とかいったことが、BNPなどの界隈や、UUPだとかDUPだとかいった界隈や、軍隊系の界隈の外でおおっぴらに取り沙汰されたのは、私の知る限りでは、2003年のイラク戦争後のことだ。誰がどう見たって間違っている (wrong)、違法な (illegal) な戦争を、屁理屈をこねて無理やり正当化して推し進めたのは、ほんの6年前の総選挙で大勝利を収め、「若き改革者が率いる久々の労働党政権」として華々しくスタートしたトニー・ブレアと彼の労働党(ニュー・レイバー)だった。そのことが英国の人々の心に与えた傷は、とても深かった。英国内では「でもブレアは選挙に勝った」とか「でもブレアは経済を上向かせた」とかいった言い訳を塗り重ねることでごまかそうという取り組みが全力で行なわれてきたが、有権者の「ニュー・レイバー離れ」は深刻だった。ただしその深刻さを労働党自体も認めているかどうかは、おおいに疑問だが(2016年のEUレファレンダムの後、労働党のブレアライトたちがまっさきにやったことは、EU離脱派のあからさまな嘘を批判することではなく、自分たちの党のトップを叩き、党内クーデターを画策することだった)。

ともあれ、2003年のイラク戦争と、そのあとのあまりにひどいぐだぐだのなかで、ブレアの労働党とスピンドクターたちは、ナショナリズムにすがろうとした。その旗振り役となったのが、当時財務大臣だったゴードン・ブラウンだ。当時の報道が下記(2005年3月14日のNewsnight……3月14日は、3月20日のイラク戦争開戦記念日のほぼ1週間前だ)。「帝国」論が沸騰していたあのころに、歴史学を修めた(PhD持ってる)ブラウンが自国の帝国主義をどう扱おうとしていたかなど、今読んでもきっと興味深いだろう。というか、2007年にトニー・ブレアが首相として英国が奴隷貿易において果たした役割について謝罪し、2010年にブラウンが首相として1920年代から60年代にかけて行なわれていたコモンウェルス加盟国への児童移民(映画『オレンジと太陽』参照)について謝罪したという、2005年以降の流れを知っていると、当時以上に興味深く読めるだろう。

Brown seeks out 'British values'
Last Updated: Monday, 14 March 2005, 15:46 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/newsnight/4347369.stm
"I think the days of Britain having to apologise for our history are over. I think we should move forward. I think we should celebrate much of our past rather than apologise for it and we should talk, rightly so, about British values.

"If you look at whole span of British history it's time to emphasise that that is at the core of our history, that's at the core of our Britishness and it's such a potential influence on our future that I believe we should be talking about it more not less."


ブラウンはスコットランドの人で、(ブレアとは異なり)「スコットランド人らしさ」を消さずにやってきた政治家である。そのブラウンが "Britishness" をこういうふうに語りだしたのは、私には意外だった。当時、ブログにそれを少しメモしてある(←リンク先の記事の末尾参照。UKIPにも言及してる)。

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2016年12月03日

「誰か、あの議員をジョー・コックスってよ」とツイートした人物は、どうやら本物のネオナチだ。

物事を単純にすることが大好きなメディアの世界で、米大統領選以後は「Facebookイコール偽ニュース (fake news)」という印象付けが盛んに行なわれるようになったが、それ以前からずっと続いているのが「Twitterイコール脅迫や暴言 (abuse)」という単純な印象付けだ。

Twitterが脅迫や暴言の場となってきたことは事実だが、脅迫や暴言だけの場であったわけではなく、普通にポジティヴで生産的な会話・対話がなされた回数の方が、脅迫・暴言の回数よりきっと多いだろう。だが、うちらの生きている世界は、「実際にどうであるか」よりも「どのようなイメージか」のほうが、多くの場合、重要だ。「広告」のために。「投資家」たちのために。そして「イメージ」を引き起こしたり定着させたりするため、情報が盛られたり歪められたりするのはごくごく当たり前のことで、そこではもはや「実際にどうであるか」など、ほとんど関心を向けられることもない。「ろくな話を聞かないなあ」、「粗暴な人ばかりが集まっているイメージがある」、etc etcで話は終了だ。かつては「独裁・専横国家での民主化推進のツール」のイメージだったのにね。

というわけで、Twitterについて「暴言や脅迫の場」というのは、多くの場合はただの「イメージ」に過ぎないのだが、それでも、実際にものすごい暴言や脅迫が行なわれることはある。私は、個人的な(&公開されている)やり取りの末に公然と脅されるという経験をしているが、いきなり知らない人から「○ね」と言われるような事例も多く報告されているし、直接 @ で名指しにされず、当人がいわゆる「エゴサ」(エゴサーチ)をして脅迫がなされていることを発見した、という事例もある(この場合、「ひとりごと」かもしれないが、そうであるかどうかを客観的に証明し、また判断することはほとんど無理だ。「話者の意味」はテクストには直接的には出てこない)。

(ただし、こういうことがあるのはTwitterに限ったことではない。投稿のしやすさなどは作用しているかもしれないが、「Twitterだからこそ、脅迫・暴言という問題が起きている」、「Twitterでなければそういう問題は起きない」のではない。)

んで、今日また、Twitterでのそういう「脅迫・暴言」の事例が報告されていた。これが、私の見た中でもとびきりひどい。

Police investigate tweet calling for someone to 'Jo Cox' MP Anna Soubry
Haroon Siddique, Friday 2 December 2016 16.39 GMT
https://www.theguardian.com/politics/2016/dec/02/police-investigate-tweet-jo-cox-mp-anna-soubry

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2016年11月27日

「メインストリームになるくらいなら燃やしてしまえ!」とおぼっちゃまが親から受け継いだ財産を燃やした件。

親から受け継いだ「私有財産」を豪快に燃やしてわはは、ということをやった人がいるというニュース。その人の名はジョゼフ・コーレ。父親はマルコム・マクラーレン(2010年没)、母親はヴィヴィアン・ウエストウッド。父親は「セックス・ピストルズを世に出した商売人」。母親の作る衣類は「パンクの魂」がなんちゃらと言われているが、冷静に見れば、クソ高くて普通のバイトをしてる学生や労働者には手が出せない高級デザイナー・ブランドで、「パンクの魂」はX万円ですと値札をつけて陳列されたものを、はいそうですか、とありがたがって買える人は実は「パンク」でも何でもなく、店頭でためつすがめつして試着して、「また今度」と店員に微笑みかけて店を出て、そして自宅にあるシーツやカーテンでさっき試着したのと似たようなものを自分で作るような人が「パンク」だ……なんてことは、私が気がついたときにはもう言われてたんだが。私が気がついたときってのは、80年代だ。当時、消費税はなかったが、今のように1000円台で服が買えるような時代ではなく、どんなに安い量販店でもだいたい3900円、そういう価格でタータンチェックのヒザ上丈のギャザー・スカートやティアード・スカートを買って、場合によってはあれこれくっつけたり改造したりして……というのが、雑誌に載ってるコムデギャルソンやヴィヴィアン・ウエストウッドなどのブランドものを買うという選択肢のない一般人の定石だった。(もちろん、そんな人たちだけではなく、ハマトラ系、ワンレンボディコンの人もいたが……というかそちらのほうがずっと多数だったが。)そして80年代が90年代になって、バギーパンツにTシャツが「ファッショナブル」ということになって、いろいろと解放されたよね。Tシャツは「ピタT」が出てきたし、定番ものの幅が広がった。そして、グローバライゼーションの時代、「安価な労働力」「コスト削減」とビジネスライクに表現される環境が当たり前になり、そういう「消費財」はどんどん安くなった。80年代に私が3900円出したようなスカートは、今は1900円で買えるだろう。北欧の有名ブランドの大きなお皿など、以前は確か5000円台だったはずのものが、今はメイド・イン・タイランドで3000円弱だ。

英国人で48歳だったら、そういうのをど真ん中で経験しているはずなのだが(英国の場合は「日本の不況でジャパン・マネーが撤退」、「欧州統一市場」、「英国企業の生産拠点が中国や東南アジアに移り、英国内の産業は空洞化」というのもある)、ジョゼフ・コーレ氏の場合はどうなんだろうね。マルコム・マクラーレンのロンドン・パンクってのは、根はシチュアショニストだし、そういう点についてのメッセージが出るかな、と思っていたのだが……(苦笑)

私、「(苦笑)」ってめったに使わないんですよ。でも使わざるを得ない。そのくらい「苦笑」してる。「爆苦笑」とか「激苦笑」と書きたいくらい。

機関誌『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』には冒頭部「『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』に発表されたすべてのテクストは、出典を明記しなくても、自由に転載、翻訳、翻案することができる」という表記があるが、これは旧来のブルジョワ的な私的所有を批判し、新しい価値を生み出そうと試みる、転用の思想を端的に表わしている。

シチュアシオニスト・インターナショナル/アンテルナシオナル・シチュアシオニスト | Artwords | Artscape


私的所有に対するアンチテーゼとしての財産の焼却というのなら、賛同する・しないは別として、まあそれなりの形式っすよね。でも今回のはそうじゃない。

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2016年11月22日

英国で、所謂Snooper's Charterが法律として成立した。国家に属する「国民」にとって、もう「プライバシー」は存在しないも同然。

さて、米大統領選挙の結果で全世界が騒然とし、「新政権の顔ぶれ決定」的なニュースがそれに続く中で顔面蒼白にならない理由を探すのが大変というような状況の一方で、英国でも大変に大きな動きがあった。だが、米国のニュースがすさまじいので、英国のとんでもないニュースはBBC Newsのトップページのような「全世界に知らされるニュース」ではとても影が薄かった。私も個人的にいろいろ疲れていて、ネットなんか見ないで本を読んでたりしたので単に見逃したのかもしれないが、それにしても影が薄かった。

といっても、英国があえて「トランプの当選」というすさまじいニュースにぶつけたわけではない。ことが決まったのは国会でのことで、国会での審議の日程はずっと前(米大統領選挙の前)に決められていただろうし、そもそも米大統領選は、結果が出るそのときまで、ほぼ間違いなく「米国初の女性大統領誕生」ということになると考えられていた。米大統領選から1週間も経過した時点で、英国で「民主的な法治国家」と個人のあり方を完全に変えてしまうような法律が成立すれば、「米国初の女性大統領」をトップニュースから落としていただろう。

それがそうならず、いつまで経っても「米国の大統領選挙」の話題がトップニュースに居座っているのは、ひとえに、結果がああだったからで、新たに大統領となる人物の側近・取り巻きが、そろいもそろってアレだからである。

というわけで、米大統領選が穏当な結果になっていたら、11月第3週に世界的トップニュースになっていたのではないかと思われる件。週が明けても、おそらく、少なくとも英国のメディアでは、各種論説記事などがごんごん出ていただろう。日本では2年前の「特定秘密情報保護法」のころのことを思い出せば、かなり近いのではないかと思う。

何だか棚ボタで首相になった感のあるテリーザ(テレサ)・メイが内相になったときからぶちあげていた「国家の権限の強化」という方針にのっとってまとめられた法案、Snooper's Charterが議会を通過し、法律になった。

snooperscharter.png


通称Snoopers' Charterこと、Draft Communications Data BillについてはWikipediaを参照するのが手っ取り早い:
https://en.wikipedia.org/wiki/Draft_Communications_Data_Bill


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2016年11月15日

ジョー・コックス議員殺害事件で起訴されたネオナチ共感者の裁判が開始された。

報道記事に出ている顔写真は「普通の人」に見える。凶悪そうな雰囲気は特にない。むしろ、「テレビドラマでよく知られた脇役俳優」と説明されたら疑わないだろうなと思わせる風貌だ。だが、実際には、この人物はネオナチ共感者で、殺人者だ。ただし本人は「殺人」を否認している(とBBC報道記事にあるが、具体的には、起訴されたあとに有罪もしくは無罪の申し立てをすることを拒んだので、手続き上、被告本人は容疑を否認、「無罪」を主張しているという扱いになるそうだ)。凶行の現場からすぐ近くで、武器を所持した状態で逮捕されているにもかかわらず、である。(裁判の進行としては、陪審団はまず、この殺人を行なったのがこの人物であるかどうかというところから見ていかねばならないことになる。)

この人物は、「標的」のスケジュールを調べて待ち伏せをし、「標的」が到来したところに襲い掛かり、15回も刺し、3回も撃ったとして起訴されている。法的根拠は単なる「刑法(での殺人罪)」ではなく「テロ法」だった。
At that hearing, on 23 June, a provisional trial date was scheduled for 14 November, with a preliminary hearing on 19 September and a plea hearing on 4 October. Saunders stated that the case would be handled as part of "the terrorism case management list" on which cases related to terrorism (as defined by the Terrorism Act 2000) are placed.

https://en.wikipedia.org/wiki/Killing_of_Jo_Cox


襲撃者が手にしていた武器(凶器: weapon)については、事件発生当時から断片的ではっきりしない目撃情報が伝えられていたが、今回法廷で陪審団に対し証拠として写真で示され、その写真が報道記事に出ている。見たことのない異様な形の銃は、事件当時「手製 homemade」と伝えられていたが、長い銃の銃身を切るなどして拳銃状に改造したものだという。

Jurors were shown pictures of the .22 Weihrauch bolt-action weapon with its stock and most of its barrel removed, leaving it just 12 inches long.

http://www.standard.co.uk/news/crime/jo-cox-trial-thomas-mair-used-homemade-gun-and-knife-to-murder-mp-a3395496.html




この事件は、日本語圏ではどの程度記憶されているだろうか。

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2016年11月05日

イギリスがおかしい。

「人民(国民)の敵」――デイリー・メイルの一面にそんな文言がどかーんと出ている。

誰かの発言の引用ではない。ジョークを意図したものでもない。

そして、その文言を添えられて顔写真を「さらされて」いるのは、スパイだとか政府の金を横領した人物だとかではなく、「仕事中」の服装をした判事である。

最初にこの画像を見たときは、「デイリー・メイルのこういう一面はまだですか」という主旨の風刺作品だろうと思った。しかし、ほんの10秒ほどで、風刺作品ではなく本物だということが確認できた。BBCで毎日「今日の新聞一面」を淡々とフィードする記者のアカウント(「事件記者」めいた「電話で真顔」のアバターの由来は、おそらく電話中の首相の真顔である)が、これを淡々とフィードしているのが確認できたからだ。

dailymail-enemiesofthepeople.png


「法の統治」という大原則を、デイリー・メイルのような歴史ある報道機関が知らないはずはない。しかしそれでも、高等法院の判事(裁判官)たちのことを引用符つきで 'out of touch' と断罪してみせているのは、これまでずーっと「負け」続けてきて今年の6月にごく僅差で「勝った」ためにやたらと勝ち誇り、「民主主義」をただの「多数決」にしようとしている「一般大衆 the people (と自認しているであろう人々)」の聞きたいことを言ってあげて売り上げとPVを稼ぎながら、彼らを煽動し、彼らを方向付けるためである。

あの英国で、まさかこんなことが起こるとは、誰が予想していただろう。いくらデイリー・メイルでも、である。

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2016年10月28日

LとRとHi-NRG/ユーロビート(訃報: ピート・バーンズ)

英語のLとRの聞き分けは難しかった。今でも難しい。語頭にある場合は文脈なくても聞き分けられると思うが (lidとrid, lightとrightなど)、語中にあるときは文脈を頼って判断していると思う(flyとfryなど)。でもずっと以前は、語頭にあるときも聞き分けなんてできなかった。聞き分けができないから書くときも間違えた。テストでくだらないところで失点する原因になると言われ、「受験地獄」の時代、私はあせった。スペルミスは1箇所で-1点なので、1点を争う入試などでは致命傷になりかねない。

今のように「ネイティヴがしゃべる英語」へのアクセスがほとんど無尽蔵にある時代とは違う。聞き取りの練習には、基本、英語教材か、ラジオの英語講座か、英語の映画(もちろん吹き替えではなく字幕)しかなかった。ただし、地理的条件が合えば、米軍のラジオ放送を「英語のシャワー」的にかけっぱなしにしておくという荒技も使えた。当時のFEN (the Far East Network: 現在はAFN, the American Forces Network) である。

FENは基本、DJがおしゃべりしながら音楽を流している局で、定時にはニュースがあり、大相撲の中継などもあったが(力士の名前が英語訛りで読まれ、"Push, push, push" などと絶叫で中継されるのは、おもしろかった)、基本的には「そのときどきのヒット曲や、オールディーズと呼ばれる曲が延々と流れている局」だ。実際には音楽目当てでかけっぱなしにしていても、「英語の聞き取りに役立つから」という名目があるから、親に「また『ながら勉強』なんかして!」と怒られずに済むという便利な局だった。かかる曲はテレビの「ベストヒットUSA」(これもまた「小林克也の英語が勉強になるから」という名目が立ち、「親に怒られずに毎週見ることができる番組」だった)と大差なかった。1980年代、商店街の店の多くは店頭でラジオか有線放送かカセットテープを流していて(今のように、著作権管理団体がうるさくなかった)、そこでもヒット曲が常に流れていた。八百屋ではおやじさんが「さかなはあぶったイカでいい」と有線に合わせて鼻歌を歌っていたし、こじゃれた雑貨屋はFENだったり「海外チャートもの」の有線放送で「洋楽」を流していた。もっと本格的に「音楽好き」の人は、それなりのリソースやアクセスがあれば、チャートもの以外の音楽を聞いていただろうが、「チャートもの」の音楽は、どこにいても必ず耳にした。

LとRの壁にぶち当たっていた私に光を投げかけてくれたのは、そういう「チャートもの」の曲のひとつだった。

You spin me right round, baby, right round
Like a record, baby, right round round round


発音記号もどきで書くと、 [rai], [rau], [lai], [re], [rai], [rau], [rau], [rau]. これだけのバリエーションが間髪いれずに流れてくる。それも、ものすごい美声で、しかもLとRの違いがはっきりわかる。


※全体の歌詞はこちら: http://www.metrolyrics.com/you-spin-me-round-lyrics-dead-or-alive.html

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2016年10月26日

英デイリー・テレグラフが伝えた言語的に意味不明の域に達するWHOの新方針+「またスプートニク(元ロシアの声)の誤訳か」=カオス

「ねとらぼ」さんの下記の記事。「なんぞこれは」としか言いようがない。

「性的パートナーがいない人は障がい者?」誤訳を元に波紋広がる 元記事は不妊の定義変更を取り上げたもの
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1610/22/news041.html

ざっと見て、なるほど、また例のメディアがデタラメを書いて、それを真に受けた日本語圏のネット界隈が盛り上がっちゃったんですね、という話ではあるようだが、この記事を読んでも意味がよくわからない。報じられている「不妊の定義変更」(WHOの基準が更新される)というものが、内容面で、言語的に意味不明の域に達しているからだ。かつて、知人が「メールマガジンの無料購読という日本語がわからない」と言っていたことがある。「購読」の「購」の貝へんは「貨幣」を表し、「購読」という漢字はすなわち「対価を払って読むこと」を意味しているはずだから、「無料で購読する」というのは意味不明のオキシモロンだ、というのだ。確かに言われてみればそうかもしれないが、実際には「言葉は生き物」であり、「購読」はメールマガジン以前から、有償・無償を問わず用いられていた(無料で配布されている企業のPR誌についても「定期購読」という言い方はなされていた。「本誌は無料配布ですが、定期購読をご希望の方は郵送代金分の切手を添えてお申し込みください」といった形で)。今回のWHOの「不妊 infertile」の定義変更には、「お金を払わないのに*購読*って言うのはおかしい」という感覚に近い違和感を覚える。数十年後の植物の研究者などは、一般人との感覚のずれに頭を悩ませることになるのではないか。

ともあれ、「ねとらぼ」さんの記事を、まずは参照しよう。この記事は、日本語圏でこの話題が(例によって)「まとめサイト」のセンセーショナリズムによって、間違った、歪んだ形でバイラルしたことを中心のトピックとしている。

では、その「まとめサイト」の曲解はどこから生じたのか、という点について、「騒動の発端は海外紙を引用して報じられた『性的パートナーを見つけることができない人は障害者扱いに』とするSputnikの誤訳記事」と述べ、「スプートニク」(旧称「ロシアの声」)の記事のスクリーンショットを掲載している。そのスプートニクの記事は:
Sputnikの記事は海外紙「The Telegraph」の記事をもとに、“世界保健機関(WHO)が不妊を障害とみなしつつ、性的パートナーを見つけられない人を障がい者と同一視することになった”とする内容となっていますが、元記事の「disability」を狭義での「障害」としているなど、正確な翻訳とはいえないものとなっています。


……ええと、「ねとらぼ」さんの地の文の意味がわからない。「保健 health」という文脈におけるdisabilityの「障害」という語義に、狭義も広義もないのでは。
http://www.dictionary.com/browse/disability

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2016年10月25日

ホメオパシーがまた話題になったので、「英国でのホメオパシー」について約6年前のことを振り返り、最新状況も見てみよう。

「ホメオパシー」がまた「ネットで話題」になっている。というか、「はてブを使っている人と、それを見ている人の間で話題になり、機動力に優れたBuzzFeed Japanが記事にしたことで、さらに話題になっている」。ただしここで「話題」にしている人々は、かなりの程度まで、同じ人々だろう。ホメオパシー(およびそれを含む「ニセ科学」)については、「新しくネタが出ると話題にする界隈」があり、基本、その界隈の外では話はほとんど広がらないか、一過性で終わってしまう。ざっくり言えば、ホメオパシーについて頻繁に話題にしているのは、信奉者か批判者のいずれかということになるだろう。

ホメオパシーについては、大手一般紙が記事にし、広く人々の目にその「話題」が触れることもときどきある。前回ホメオパシーが広範囲で「話題になった」のは、記録を見返すと2010年のことだ。前年の2009年に、ある助産師が乳児に必要なビタミンKの代わりにホメオパシーの「レメディ」を与え、乳児が死んでしまうというあまりにひどいことが起こっており、その件での裁判について大手新聞が報道を行なったときである。(その後、同年8月には「日本学術会議の金沢一郎会長が『ホメオパシー』と呼ばれる代替医療の効果を否定する談話を発表」し、「代替医療推進」の立場だった当時の鈴木寛副文部科学相もその談話を受け入れるという形で、ホメオパシーの効果は公的に否定されている。このときの顛末は、「碧猫」さん [RIP] の当時のブクマに詳しい)。

報道がなされた場合、この問題にある程度の関心を払ってきた人は注目し、話題にもするだろうが、そうではない多くの人々、とりわけそれまで「ホメオパシー」なるものを知らなかった人は、ニュースを見て、「ホメオパシーっていうのがあるらしいけど、何か怪しいっぽい」という漠然とした印象を抱いて、次の話題に関心を移してしまうだろう。その「何か怪しいっぽい」という印象が残っていれば、誰かから薦められることがあってもその人は手を出さずにいるだろうということを期待したいし、それが期待されて然るべきだが、もしも私がホメオパシー商材の販売を仕事にしていたら(&売れればいいというスタンスだったら)確実に、その「何か怪しいっぽい」という漠然とした印象を利用するだろう。「何か怪しいっぽいっていう印象があるじゃないですかー。私もそう思っていたんですよ。でも……」という話法でターゲットを説き伏せるのだ。

この話法は、「ニセ科学」に限らず詐欺商法でもカルトでもよく使われる。「怪しいという印象がありますよね」と語りかけられたターゲットが「そうですね」と反応すると、薦める人は言葉巧みに(というか、「人と人の会話として極めて自然な流れを作って」)ターゲットが何をどの程度知っていて、どう考えているのかを探る。そして、「私がこれからあなたに紹介する "これ" は、あなたがネガティヴな印象を抱いている "それ" とは同じでありながら別のものだ」という誘導を行なう。例えば、「○○商法って、昔ニュースになって、逮捕者が出たじゃないですか。今はその時代とは違って、あのときのことを十分に反省して、システムを変えたので……」云々というふうに話を進めるわけだ(←今書いているこの例は架空のもの。私がこれを書きながら適当にでっちあげたものであり、万が一現実と呼応したりしていても、それはただの偶然である)。あるいは、「私も怪しいと思ってたんですよ。でも怪しいと言い切るのもおかしいかなと思って、いろいろ勉強して、自分なりに納得できたんです。そして、やってみたらとてもよいものだったので、多くの人にそのよさを知ってもらいたくて……」云々。

「私も、かつてはあなたと同じように、『それ』についてこういう態度だった(が、今はそうではない)」というのは、英語圏で「ex-なんとか」を冠した運動(という日本語は変かも。movement)などで使われる定番の話法である。根本的には「同性愛は治療できるので治療すべき」という主張である「ex-gay」ムーヴメント(2013年に中心的団体が欺瞞を謝罪し、崩壊)はかなり組織的にそういう話法を使っていた。そこまで組織的でなくより個人的な語りとしても、「ex-信仰者」(信仰にはイスラム教、キリスト教などがあり、「無神論者」になった人もいれば「改宗者」となった人もいる)などは、そういう語りを完全に組み込んでいる(興味のある方はアヤーン・ヒルシ・アリなどを見てみるとよい)。

そういう語りが広く採用されるのは、それが効果的だからだ。うちらの日常にも(無害な)例はたくさんある。「銀杏は食わず嫌いだったが、食べてみたらおいしかった」とかいう類のものだ。また、そういうのが、物を売ろうとするときの広告に使われることもある。「クセの強さに苦手意識を抱いている人が多いパクチー。実はこんなうまみ成分があって、それを適切に引き出す調理法が……」(←適当に考えた架空の例です。パクチーにうまみ成分があるのかどうか、私は知りません)とか、「ばい菌に雑菌……『菌』にはネガティヴなイメージがありますね。しかし古来日本人は……」(←同上)とかいった語り口は、いかにも広告くさく聞こえるだろう。

話が広がってしまったが、今回、2016年10月に、またぞろホメオパシーが「ネットで話題」になったのは、ある有名ブロガーが、上記のような「○○には、ネガティブなイメージがあるが……」の系統の語り口を使って、ホメオパシーについてブログに書いたことが発端だった。(ただしその「有名ブロガー」が話題になっているのは、私は全く関心を持っていない界隈で、私はその人の名前と漠然とした風貌と、東京からどこかに移住したという程度のことしか知らない。彼の書いたものを読んだこともほとんどなく、何を書いてるのかも知らないし、どのくらい「ビッグな」存在なのかもわからない。)

【魚拓】【ホメオパシー】ムカデや蜂に刺されたときは「エイピス」を飲むと治るらしい。 : まだ東京で消耗してるの?
http://b.hatena.ne.jp/entry/megalodon.jp/2016-1011-1430-25/www.ikedahayato.com/20161011/66275429.html

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2016年10月10日

#CableStreet80: 1936年の「奴らを通すな (They Shall Not Pass)」と、街と人々の「歴史」

cablestreet80.png10月9日は、「アイルランドの息子」でもある革命家、チェ・ゲバラが処刑された日(1967年なので、来年は「没後50年」)だが、ロンドンでは#cablestreet80が上位に来ている。1936年10月4日に、「イーストエンドの移民たち」(すなわちジューイッシュとアイリッシュ)と左翼の人々を中心として行なわれた反ファシスト運動の大規模な、今で言う「カウンター・デモ」から80年となることを記念する行事が行なわれている。このような行事は週末に行なわれるのが常だが(そして、この件では主要な参加者の多くがユダヤ人なので、安息日の土曜日は避けて日曜日となったのだろう)、カレンダーを見ると10月4日に一番近い日曜日は2日。何らかの都合・事情で、2日ではなく9日になったのだろうが、どういう事情なのかはわからない。

ともあれ、80年前のその「カウンター・デモ」は、Battle of Cable Street (ケーブル・ストリートの闘い)と呼ばれるものである。当時のニュース映像がYouTubeにアップされている。ここに集まっている大勢の人々は、この地域に暮らすジューイッシュやアイリッシュ、また左翼活動家に加え(イーストエンドは貧民街であったがゆえに救貧活動も活発な土地柄で、またテムズ川のドックで働く肉体労働者の組合活動も活発という文脈がある)、「奴らを通すな (!No pasarán!: They Shall Not Pass)」のスローガンのもと、各地から参集した人々だ。



ケーブル・ストリートは、ロンドン塔のから少し東に行ったところ(ホワイトチャペルの南の端)からまっすぐ東へと伸びる長い通りだ。現在はDLRの高架がかかっており、通りの全長はDLRでほぼ2駅分となっている。Google Street Viewで見ると、この一帯は「真新しい」と呼んでよいような建物がかなり多くあり、21世紀になってからずいぶん再開発が進んだことが一目でわかる(むろん、ドックランズの再開発にともなうものだ)。そのような中にも、ヴィクトリアンの一般的なレンガの建物が残っていたりもする。このトピックとは関係ないが、ケーブル・ストリートの西の端の区画には、「切り裂きジャック博物館」もある。

1936年10月4日、そういうエリアに、「ファシスト」たちが示威・挑発を目的として乗り込もうとしていた(「ファシズム」は大陸仕込みで「非英国的」というイメージがあるかもしれないが、それは誤ったイメージである。またナチスの人種主義・反ユダヤ主義はドイツに移住した英国人思想家の影響を強く受けている)。それに反対する人々が「奴らを通すな」と集結し、ホワイトチャペルのハイ・ストリートにバリケードと「人間の壁」を築き、道をふさいだ。ロンドン警察は、ファシストのデモ隊をケーブル・ストリートへと通そうとし、カウンター・デモの人々もそちらへ移動。そこで警察がカウンター・デモを散らそうとしたことで大勢の負傷者が出たが、ファシストのデモ隊はUターンした(以上、参考記事に基づく)。その一連の経緯の記録映像を短くまとめて解説をつけたものが、上にエンベッドしたニュース映像だ。(当時はこのようなニュース映像は映画館で作品の上映の前に流していた。この映像はどこの映画館で、どんな映画と一緒に人々に見せられたのだろう。「あ、あれ俺! 俺!」なんてこともあったに違いない。事実の細部への興味は尽きない。)

デモを行なったのは、1936年当時、政治的に意味のある勢力になろうとあがいていた「英ファシスト連合」である。1930年代を通じて「第三極」的な期待を集めた大衆政党からいわゆる「泡沫政党」的レベルにまで落ち込んでいたファシスト連合は、リーダーのオズワルド・モズレー(モズリー)を先頭に、軍服的制服に身を包んで「ユダヤ人の街」に乗り込んでやる、と鼻息を荒くしていた。予定では、制服姿の「リーダー」はイーストエンドを練り歩き、そのまま飛行機に乗ってドイツに向かい、ゲッベルスの家で、ヒトラーを来賓に迎え、当時話題の女性セレブ、「ミットフォード姉妹」のひとりのダイアナと結婚式を執り行う、という大掛かりなパフォーマンスを決行するはずだったという(参考記事。なお、「ロンドンを練り歩いて飛行機で……」は失敗してパフォーマンスは出鼻を叩き潰されてザマァ、ということになったものの、結婚のイベントは予定通りに行なわれている)。

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2016年09月25日

テリー・ジョーンズが言葉を失いつつあるという。

モンティ・パイソンの一員、「裸のオルガン弾き」、「スパム」スケッチのウェイトレス、「哲学的フットボール」のカール・マルクス、「ザ・ビショップ」の町でブイブイ言わしてる司教、「スペインの異端審問」の大ボケ枢機卿…… Er, nobody, er, expects, er...



そのテリー・ジョーンズが「もうインタビューには応じることができない」状態であることが、BAFTAカムリ(ウェールズ)の特別貢献賞受賞という機会に明かされた。認知症の診断を受けているという。最初の告知はモンティ・パイソンのサイトで行われたようだが、その後、各報道機関がどっと報じている。そのうちのひとつ、ガーディアン掲載のPA記事。

Monty Python star Terry Jones reveals dementia diagnosis
Friday 23 September 2016 12.05 BST
https://www.theguardian.com/culture/2016/sep/23/terry-jones-monty-python-star-dementia-diagnosis-bafta-cymru

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2016年09月01日

それは、ハッシュタグになりすらしない〜ハーロウ、少年グループによる「東欧人狩り」事件

夕刻、Yahoo! Japanのトップページを見たら、「英の少年6人が移民殺害 逮捕」というヘッドラインが「ニュース」のところに来ていた。


※キャプチャは18:30ごろ取得。Kwout.comに直接Yahoo! JapanのURLを打ち込んで取得したため、実際にブラウザでアクセスしたのとは見た目が異なっている。

「ニュース」のところだけのキャプチャ。



Yahoo! Japanで配信されているのは、毎日新聞の下記記事である。

<英国>少年6人、移民殺害 東欧出身者へ攻撃増
毎日新聞 9月1日(木)11時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160901-00000034-mai-int
※毎日新聞のサイトで読むにはこちら。(→アーカイヴ

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2016年08月31日

今日でreported.lyが終わる。

https://reported.ly/

Twitterをはじめとするソーシャル・メディアに投稿された情報を「ソース」としたニュース・サイト、という取り組み、Reported.ly が、8月31日で終了する。Reported.ly は、「ジャーナリズムにおけるTwitterの活用」という点で誰よりも早く真剣な試みをおこなった(そして「ジャーナリズムとは何か」をめぐる熱い議論を引き起こした)アンディ・カーヴィン(当時はNPR所属のジャーナリスト)を中心に、ギリシャ、イタリアなど英語以外の言語が使われているところで起きていることをTwitterで英語で書き、また翻訳し、報告しているジャーナリスト数人のチームで運営されてきた。多くの信頼できるソースをフォローし、必要に応じてRTという形で情報を「まとめ」つつ「拡散」するというスタイルで、毎日のニュースを伝えていた。いわゆる「キュレーション・メディア」として、ここは最もhigh profileなオンライン媒体だったのではないかと思う。

その取り組みが終わる(可能性が極めて高い)ということがアンディ・カーヴィンによって告知されたのは、今月8日のことだ。なぜそういうことになったのかは、ご本人の告知でご確認いただきたい。ちなみに彼の説明文にあるFirst Look Media (FL) というのは、「ウィキリークス」や「アラブの春」などに刺激を受けた大富豪、ピエール・オミダイアが出資してネット上に立ち上げたメディア企業で、グレン・グリーンウォルドとジェレミー・スケイヒルらのThe InterceptもFL傘下である。そのFLが、立ち上げから何年もしないうちにアレなことになっている事情は、ウェブ検索すればわかるので(英語でね)、興味のある方は各自検索していただきたい(キーワードは「マット・タイッビ」)。

A note to our readers
Reported.ly to suspend operations August 31
https://medium.com/reportedly/a-note-to-our-readers-18786235f29#.sf57n9j0d

そして今日がその「最後の」日である。今日を迎えるまでは「ひょっとしたら存続の可能性もあるのでは」と思ってはいたし、「新しいオーナーが決まりました」という告知が出るのではないかとも思っていたが、そうはならなかった。
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2016年08月20日

ロンドン、地下鉄24時間運行開始(ただし部分的なおかつ段階的に)

8月19日(金)、ロンドン地下鉄の金曜・土曜の24時間運行が開始された。ロンドン地下鉄の愛称 "Tube" に「夜」をつけて、The Night Tubeと呼ばれるこの新たな取り組みについての詳細は、ロンドン交通 (Transport for London: TfL) のサイトに詳しく出ている。
https://tfl.gov.uk/campaign/tube-improvements/what-we-are-doing/night-tube

導入当夜の様子をAFPがまとめた映像。オックスフォード・サーカス駅が、駅名表示も「ナイト」仕様になっている。(ほかの駅でもこうなっているそうだが。)



「労働者」の発想とは思いがたいこのプランは、前の市長(保守党のボリス・ジョンソン)のもとで計画され、本来は2015年(昨年)開始の予定だった(が、結局ジョンソンは、ぶち上げるだけぶち上げておいて、最後までやり通さなかった。尻拭いをさせられるのは周囲と後継者である)。結局は開始予定は1年ずれ込み、導入も全部で11ある路線のうち2路線(東西を結ぶセントラル・ラインと南北を結ぶヴィクトリア・ライン)のみとなった。(Source: the Guardian)

サービス開始告知アナウンスを吹き込むサディク・カーン市長(労働党)。




「ナイト・チューブ(テューブ)」は、既発表分では、運行間隔は10〜15分と昼間並み。今はセントラルとヴィクトリアの2路線のみだが、この秋にはジュビリー・ライン、ノーザン・ライン、ピカディリー・ラインに拡大され、その後は「(設備の)現代化計画が完了し次第」環状線を走る複数の路線(サークル・ラインなど)も24時間化される予定。ロンドン地下鉄は路線の枝分かれ(支線)が複雑なので例外はあるようだが、ロンドン交通のゾーン1〜6全体が、金曜・土曜は「眠らない都市」になることになる。運賃も、「夜なので倍額」といったことはなく、通常のオフ・ピークの運賃 (standard off-peak fares) が適用される。トラヴェルカードももちろんそのまま使えるが、旅行者が使うことが多いと思われるワン・デイのカードは、買った日の翌日の朝4:29に出発する旅程までしか使えないことに注意。つまり、1日有効のデイ・トラヴェルカードで金曜日の昼間に観光して、夜にブリクストンのクラブに遊びに行った場合、翌朝4:29までにヴィクトリア・ラインの地下鉄に乗ればOK、それより遅くなるならまた買いなおさなければならないということになる。

TfLのサイトにも書いてあるが、ロンドンはもうずっと前から「24時間化」されていた。ゾーン1にあるクラブに行ってても、ゾーン6にある友人の家に遊びに行ってても、夜中の3時にゾーン3にある自宅に帰れるのが「眠らない都市、ロンドン」ではデフォだ。ナイト・バス (Night bus) があるからだ。なんと1913年にはもう開始されていたというこのサービスは、第二次世界大戦中こそ休止したものの、常にロンドンの活動の一部となっていた。1980年代に適用路線が拡大されて以降、ナイト・バスはどんどん導入が進められ、1990年代には、市内に細かく張り巡らされたバス路線網は、郊外部に行けば別だが、夜間でも昼間とほとんど変わりなく機能していた(夜間は本数は断然少ないとはいえ、昼間もどうせ、バスは「10分ごとに1台」のはずが「30分ごとに3台団子になってやって来る」ものだし)。普段地下鉄で移動している経路をバスで行くと時間はかかるが、少なくとも動きは取れる。列車で30分の距離を移動するために、始発まで2時間待つより、ナイト・バスで1時間かけて帰ってくればいい、というのは、もうとっくに当たり前になっている。

それに加えて、週末は地下鉄も「10〜15分に1本」の頻度で運行されるということになったわけだ。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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