だが、逆に考えて、17年半も経過していれば、あのトンデモな陰謀論が「今までになかった新たな説明」みたいに見える人も、それなりに多くいるだろう。ちょうどうちら世代の人々が「アポロは月に行っていない説」など、教科書で事実として扱われていることに「疑問」を「突きつける」言説に新鮮味を覚えたのと同じように。そういうトンデモ言説の中には、南京虐殺否定論のように、一部のトンデモ界隈の外に出て書店の棚をそれなりに埋めるほどにメインストリーム化しているものもある。ホロコースト否定論をぶちかます医療関係者の発言力は、ここ数年で強まりこそすれ弱まってる気配はない(ホロコースト否定論をぶちかましても、「信頼される発言主」というステータスは揺らいでいない)。
トンデモであることは、その言説や思想が社会的に広く共有されることを、全然妨げない。
それだけに余計に、この陰謀論については、それが「トンデモ」だということを知っている者が書いておくべきだろうと思う。たとえその言説や思想そのものをストップすることができなくても(ましてや「潰す」ことなど絶対にできやしない)、それに近づいてしまった人にとって、「そっちは危険だよ」と注意を促すことくらいは、少しはできるだろう。
というわけで、先日のTwitterでの発言をここにまとめておく。
なんと、とりんちさんに直接911陰謀論の映像ぶつけたアホがいたのか。いかにも無責任なユーザーネームでデフォルトのアバターで。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
「とりんちさん」=@TrinityNYCさん。在米35年で元バンクアナリストという方だ。
発端はこれ。
米メディアで流れた911のフェイク映像。嘘動画を作らされた人が証拠を残すため細工したのでしょう。https://t.co/n0Ob5yyXvb
— 山田山男 (@yamadaymao) 2019年2月28日
CNNロゴ入り同映像(1分半頃)https://t.co/uKrQOgpK4W
ここでは映像はエンベッドしないように設定してあるが(当ブログを入り口に陰謀論にはまる人を出したくないので)、ここで「山田山男」なるTwitterユーザーがとりんちさんに見せているのは、YouTubeにアップされた「911陰謀論」を唱える、うんざりするほど多くある映像のひとつで、「科学的証拠」「飛行機などなかった」と銘打たれている。(呆)

YouTubeのページを参照したところ、この映像は2013年にアップロードされている(こんな映像でもこんなに再生数はあるし、チャンネル登録数もこんなにあるのだから、いやになるよね)。アップロード主は、チャンネルの「概要」を見てもよくわからないのだが、宗教系の人のようだ。キリスト教の何かの映像がトップに置かれていて、過去にアップロードされたビデオでは「悪魔がなんちゃら」とか「地球が侵略される」とか「惑星の配列が」とかいうものがごろごろ出てくるのと、災害や異常気象について何かわめいているらしいことが確認できるが、私が個人的に毒電波を浴びていられる時間は3分なので、ろくに見ないまま切り上げた。

このアップ主が映像の中の人(映像でしゃべってる人)と同じなのかどうかはわからないのだが(同じならそう名乗るだろうから、たぶんどっかで「拾ってきた」映像を第三者が勝手にアップしているのだと思うが)、映像の左肩に示されている文字列(URL)を手がかりに映像の中の人のところに行ってみると、要するに「個人放送局」状態になっていて「国家による隠蔽」だとか「捏造されたテロ」だとか「ニュー・ワールド・オーダー」だとか「UFO」だとか、まあそういう感じ。ちなみにアメリカの人じゃなくてイギリスの人だから、Brexitの話なんかもしてるみたい。殺されたジョー・コックス議員が引き合いに出されたりしているのがすごいいや。
で、その「個人放送局」のカテゴリのひとつになってる「9/11」のページを見てみるとこんなふうになってる(「バーミンガム6」をこの文脈で見せられると頭が痛くなってくる):

※画像は一部加工してある。
ここでフッターに入ってる広告はトップページにも入ってて、これがもうお約束の「代替医療」系の販売業者。その業者のページを見てみると、ウェールズの会社だ。この会社と映像製作者の関係はわからない。ただの広告主なのかもしれないし、もっと深い関係があるのかもしれないが、そこまでは調べていない。
まあそんな感じのサイト。何か特別な知見がありそうな感じはしない。そういうところが作ってる「911陰謀論」のビデオ(既存の映像を継ぎ合わせて自分の主張を述べるようなビデオ)を、こんなカジュアルに人に伝えちゃったりしちゃったりする?
それも、それを送りつけてる相手は、当時ニューヨークの金融街で働いてた人だよ?
こういうことについての配慮というか感覚のなさが、「911陰謀論」を信じている「ネットde真実」派、英語でいうTruther(←リンク先注意。ウィキペディアだけど)の特徴といえば特徴だけど、それにしたって、あんまりじゃないか。
とりんちさんは、ファーストハンドであのテロを体験させられたニューヨーカーのひとりだ。
わたしは自宅の窓からタワーが飛行機がぶつかるとともに爆発して燃えるところをこの目で見て、わたしの夫はタワー崩壊の瞬間に真下にいて死にかけた当事者だ。こんなクソみたいなものを送ってきやがって。テメーみたいな他人の苦痛や不幸を楽しむクソがこの世でサイテーだって覚えとけよクソ。 https://t.co/u7w2mruaOx
— TrinityNYC (@TrinityNYC) February 28, 2019
この後メディアも本もたくさん出て読み漁ったけど、実際目の当たりにした自分が1番の信じられた。旦那はこの時住んでたコネチカットまでボロボロになって歩いて帰ってきた。顔見たら涙出た。電話繋がらなかったからね。
— Atsuko K (@atsuko11109) February 28, 2019
Trinityさんが言う通り知らない周りがぐちゃぐちゃ言うな。
うちの夫も、全身真っ白になって帰ってきたんです。生きてる姿見て、アパートのロビーで泣き崩れましたよ。今あのときのことを思い出しても、涙滲んでくるぐらいです。あの場にいたものはみんなそうだよね。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) February 28, 2019
こういうところに、何ら悪意なく、彼らTruthersは彼らの信じる「真実」(つまり「あなたがたの言っているようなことは起きていなかった」という「否定論」)をぶっこんでいく。それを体験し、それを生き、生き抜いた人々に対して!
少しは考えたらどうなのかと思うが、そういうことを考えるという発想がないのだろう。
「陰謀論」を信じる、または楽しむ人々の間でそういうことを言い合うのならよい……いや、「よい」というより、誰にも口出しする権利はないだろう。しかしその界隈の外では、それは「とてもセンシティブなこと」なのだということくらいは了解し、その上で行動すべきではないか。
(この「とてもセンシティブなこと」についての無遠慮さというものは、女の子が変に紅潮してとろんとした顔をし、はちきれんばかりのブラウスなどで異様な形状の乳房が強調されたマンガなどの絵についての「表現規制反対」みたいなものにも当てはまる。どんだけ狭い世界しか見てないんだろうと思うけどね。)
もう、あの日のことは何年経っても忘れられないです。その後、続いた混乱も。何がフェイクだ。何が陰謀だ。犯人の中の1人は友人と同じアパートの住人でした。毎日のように顔合わせてた人が犯人って、それがどれだけ恐怖か...
— Caz (@kAzuee) February 28, 2019
うちの夫はその後何年もPTSDで大変でした。あれを体験した者は何年経とうが誰も忘れることなんてできないよね。当時NY州の上院議員だったヒラリーが、「ニューヨーカー一人一人に、それぞれストーリーがある」と言ってて、その通りだと思いました。何がフェイクだ!
— TrinityNYC (@TrinityNYC) February 28, 2019
そうだったんですね。側で支えられてたとりんちさんも大変だったでしょう。もう約20年経つというのに新聞に犯人の顔写真が公開された時、友人がこの人と指差して凍りついていたのもハッキリ覚えてます。多くの犠牲者が出て、多くの人が心にも身体にも傷を負った。その事実は全く変わらないのに...
— Caz (@kAzuee) February 28, 2019
私自身はアメリカには縁がなく、2001年9月11日は東京の自宅で夜のNHKニュースを見ていて、目の前で展開していることにあっけに取られ、90年代のロンドンなどでのIRAのテロを思い出し、また1995年の東京でのオウム真理教による地下鉄サリン事件を思い出しなどして、WTCに職場があった知人の安否を心配していたくらいで(その知人はオフィスに不在で難を逃れたと、数日後に彼女が運営していた個人サイトで告知していた)、直接の経験はない。そして、誰かに宛てたわけではない文章(当時自分が運営していた個人サイト内)で「大変なことが起きたが、これでようやく、IRAを支援してきた米東海岸も『テロ』というものがどういうものか、わかっただろう」というような、冷淡できついことを書いていた(この感情は、イングランドではかなりの範囲で共有されていたものだ。個人的に話をした人々の言葉にリンクすることはできないが、当時のBBC記事にはリンクできるのでしておこう)。
だが、繰り返すが、それは私の個人的な感興ではあっても、誰か個人に宛てた言葉ではない。アメリカの人と直接やり取りをするときには、何よりもまず、"Hope your family and friends are all well" だ。そしてその気持ちは、何年経っても変わらない――実際に言語化するかどうかは別として、特にあのときにニューヨークにいた人には常に、その気持ちを抱き続けている。彼ら・彼女らが「あの日あの時どこにいて何をしていたか、決して忘れることはない」と語るとき、うちら外部の人間はそれをただの言葉として聞いているわけではないし、それは米同時多発テロに際してのアメリカの人々にだけ当てはまるのではなく、1972年1月30日のデリーの人々にも、2015年11月13日のパリの人々にも当てはまる。もちろん、2011年3月11日の私たちにも。
相手が2011年9月11日にニューヨークにいたことなど知らない? ではその場合、相手がどういう人なのかもわからないのに、あなたは陰謀論を投げつけるのだろうか。少なくとも、陰謀論が「特殊なもの」だってことくらいは、わかってるのではないか? それなのに?
いや、たぶん本人はそういうことは(本当の意味では)わかっていない。だから当事者に否定論を投げつけるなどという無遠慮なことができるのだ。
そういうことをする本人に対し、外部から何かできることがあるかというと、たぶんないだろう。でも、そうやってまき散らかされた陰謀論の言説にかぶれてしまう可能性がある人たちに、注意を喚起することはできるはずだ。
というか、そのくらいしかできることはない。
だから、「911陰謀論」の最盛期から盛りをすぎたころ、ネット上に存在した「陰謀論に対する反論(ツッコミ)」を、2019年の今、また再掲しておこう。
まずはハンドル「msq」氏のサイト。ウェブ・アーカイブでしか見られないが:
あの陰謀論が最盛期のころ、非常に多くの人に見られて多くの人を陰謀論沼に引きずりこんだ「陰謀だ陰謀だ」と騒ぐデマ・ビデオについて嘘を指摘していたサイト(アーカイヴ): https://t.co/KxMkZ6zmt7 "資料を意図的に選んで「判断は任せます」はないでしょう"
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
今どきのネットユーザーはこういう作りのサイトの見方がわからないかもしれないが、下線が引かれてリンクになっているところをクリック(タップ)して奥へと読み進め、読み終わったら「戻る」ボタンで元の目次に戻ってくればよい。
どこから読んだらいいのかわからない人は、このサイトで最初にアップされた文章、「『911 IN PLANE SITE』について」を読めばよい。2004年初出だからもう15年近く前だが、ここで否定されているようなことが今でももっともらしく流通しているということがわかるだろう。
続いて、2007年に書かれた、マット・タイッビによる論考(というかかなりのおちゃらけ)の日本語訳(どっかの弁護士がTwitterでわめいていた言葉を使うと「無断翻訳」)。
https://t.co/In8nHIhxmb "マット・タイッビ「9/11陰謀論の望みゼロのバカさ加減」"、ダメ元でアクセスしてみたらはてなダイアリーがまだ閲覧できるので、みんな、今のうちに読んでおくんだ。(その上、ミアシャイマー&ウォルトの本の日本語訳についての文も、読むと日本語圏のアレさがわかると思う)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
タイッビはここで、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官という当時の政権トップによる「密談」を想像し(今読むと、この中ではブッシュがまともに見えるというのはどういうことw)、それを引き取って次のように続けている。
何を言いたいかわかったろう。こういうたわごとはまったく意味を成さないのだ。独裁的権力を握る言い訳が必要なだけなら、なぜシャンクスヴィルの飛行機墜落を偽装する? 爆弾を使うなら、なぜハイジャックを偽装する? なぜリモートコントロールされた飛行機を使う? もし政府機関全部が悪巧みに加担しているなら、なんでいちいちこんなひどい手間をかける? 1年後、この攻撃に責任があると(誤った)非難すらされていない国と戦争するためにか? 〈9/11の真実〉の言い伝えでこうした点が探られているのを自分は見たことがない。というのも、彼らが描く“陰謀”は何から何までありえなさすぎて、ザッカー兄弟の映画でもなければ不可能だからだ。思いつきとしては信じがたいほどバカげており、無意味にこみ入っていて、細部はやりすぎなのに、完璧に実行され、具体的な証拠は何一つ残らず、数万の人間が彼らの役割について秘密を永遠に守る、なんてのは。
https://web.archive.org/web/20190303143415/http://d.hatena.ne.jp/Gomadintime/20070920
id:Gomadintime氏がタイッビの文章を訳された2007年から08年くらいにかけて何度か「今さら911陰謀論ですか……」という言葉を人と交わした記憶があるのだが、紙ベースでなくネットで情報が行きかう現在、ああいうのはいつまでたっても「今さら」にならないところが厄介で、定期的な注意喚起が必要。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
そう、マットのいう通りで、彼らは実際、Hopelessly Ridiculous で、これでもかこれでもかと自分らのアホ信仰を真顔でぶつけてきては Dumbing Down するんですわ。ビルに飛行機がぶつかったにしては「破片が少ない」とか言い出して。破片て😳😳 https://t.co/DSiKhGU4rA
— TrinityNYC (@TrinityNYC) March 1, 2019
破片ね。。。110階建のビルが2棟まるまる崩れた現場で「破片」とか。わたしが当時勤めてたビルはジェットエンジンの「破片」が丸ごとすぐ脇にズドーンと着地して、ビルごと使えなくなりましたわ。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) March 1, 2019
多くの場合、あの方々にはridiculousという自覚がなく真剣に「科学的な疑問」があり、その「疑問」は一般の報道では答えられておらず、ネットやトークラジオには「真実」があると思っていて、それだけにhopelessなんですよね……アレックス・ジョーンズに釣られること以上にridiculousなことはないのに
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 2, 2019
ワールドトレードセンターのテロは実はアメリカ政府の自作自演のヤラセだった可能性ある、とかさ。コネチカットの小学校の銃乱射事件はサヨクのヤラセで子供は全員役者でプロ小学生、とかさ。そういう話をマジメに信じている人たち、ちょっと滝にでも当たって、そのウジ湧いた頭、冷やしておいでよ。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) February 28, 2019
仮に、仮にですよ、東日本震災は自作自演で本当は震度2ぐらいだったけど画像処理で実際より強い震度のように見せて海外に配信した、とか、津波で亡くなったはずの人はプロ被害者で本当は生きている、などと言いふらして陰謀論で【遊んでる】クズを見かけたら日本人の多くはどう感じるでしょうか。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) March 1, 2019
https://t.co/io8y9vFGce 「ネタとしての陰謀論」「エンタメとして楽しむ陰謀論」とはどういうものかというと、これに尽きると思う。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
拙: 「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。 https://t.co/glNrEgWaCm 2014年11月22日
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
1) 「911陰謀論」は「アポロの月面着陸」などをめぐる陰謀論とは違い、「そのような出来事はなかった」と言ってるわけではない。また、後の時代のサンディ・フック小学校事件やボストン・マラソン爆弾事件でのそれとも異なり、「役者」云々と主張しているわけでもない。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
2) そうではなく、「911陰謀論」(の中で最もメジャーなもの)は「テロ攻撃ではなく米国政府の自作自演である」と主張している。ビルの倒壊は航空機が突入したことが原因ではなく前もって密かに仕掛けられていた爆薬が……云々というもの。とんでもなさすぎるのだが、大真面目にそういう主張がなされた
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
3) そういうとんでもない主張をしていた人物のうち最も有名になったのがかのアレックス・ジョーンズで、この男は後に「サンディフック小学校では誰も死んでない」説などをでっち上げるなどしているとんでもない人物だが、要は「政府が信用できない時代、自衛すべし」という主旨でのグッズ等販売が目的
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 1, 2019
アレックス・ジョーンズについては、日本でもネットと人間についての論考などが広く読まれているジョン・ロンソンの下記の電子書籍の最初の数ページを読むといい。Kindle Unlimitedに入っているが、単独で買っても200円だし、その価値は十分にある。英語としては別に難しくない。というか特に集中しなくても読めるし単語も難しくない。
アレックス・ジョーンズはアメリカでは「サバイバリスト」の潮流の中に位置づけられるが、この人物が喧伝しているような陰謀論(「911陰謀論」を含む)は、日本では別の文脈で受け入れられている。というか、「911陰謀論」は単独で存在しているのではなく、より広範な「陰謀論」のネットワークにつながっている。
https://t.co/oElASWGtuQ ワクチン接種後、3度も副反応で発熱した子供。不安を抱いた母親がちょっとインスタを見てみたら反ワクチン言説ばかり。"帰ってきた旦那に「やっぱりワクチンは危険なんだって!……もう打つのやめる」って言ったら「俺も調べてみるからちょっと待って、落ち着いて」と。"
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 11, 2019
"旦那は私の意見を真っ向から否定しなかった(まず私の話を全部聞いてくれた)/「(君)がそう思うならそうすれば」と人任せじゃなく、一緒に調べて一緒に考えてくれた"。そして夫婦で病院に行き、医師から丁寧な説明を受けた。こういったことで反ワクチン思想に取り込まれずに済んだ、という人の手記
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 11, 2019
ちなみに千葉県で父親による虐待で子供が殺された事件に関連して via https://t.co/dRUsu1rj3b で、"「児童相談所 誘拐」「児童相談所 奪還」「児相 連れて行かれた」どれでもいいから検索してほしい。" っていうの、Googleで検索すると実際すごいことになってて、その界隈も「反ワクチン」と密接。続
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 11, 2019
続)キャプチャ画像はGoogleで承前の最初の検索ワードで検索した結果から。矢印をつけたものは、誰がどう見ても「あっ……!」の案件だが、このサイトの運営者は反ワクチンなどそれもんの分野で声のでかい活動家(医師でもある)。サイトで参照してるのはアレックス・ジョーンズとか。 pic.twitter.com/ZKoN0ZqgSU
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 11, 2019
つまり「反ワクチン」は「反ワクチン」だけで止まってないんです。だからインスタのハッシュタグなどで「反ワクチン」言説にさらされてしまい、不安でたまらなくなっている人がいたら、先のTogetterまとめの「きゅん」さんのお話を参考に、支えながらあちらに行かないように誘導してほしいと思います。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 11, 2019
なお、ネット上の日本語圏というところは、私の経験則によると↓↓こういう↓↓ところ。つまり、ジョーンズの言説を「陰謀論」と位置づけると反感を買う。
さて、アレックス・ジョーンズという名と陰謀論という言葉を一緒にツイートするとフォロワー数が減るのが常なのですが、今回はどうでしょ……WLの件(なのかタイミングが同じTuamの件なのか不明だけど)でフォローしてくださる方が増えたのですが「陰謀論」云々がお嫌な方はどうぞお外しください
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 10, 2017
逆に言えばジョーンズの主張に引かれてしまう人は、異論・反論のない世界に囲い込まれちゃうのだろうと思う。マルチ商法のセミナーみたいな感じで……すごい危険。巻き込まれないように。特にすごいカジュアルな感じで「でもさ、ほんとは飛行機が突入して倒壊したんじゃなかったんだよ」などと言ってくる人とは、なるべく関わらないほうがいい。こういうのは、どんなに自分は大丈夫と思っていても、取り込まれるときはあっという間に取り込まれ、どんどん遠くに行ってしまう。
Study blames YouTube for rise in number of Flat Earthers https://t.co/RkskjJVtxA アメリカとロシアが一緒に宇宙開発に携わるようになって何年も経ってるのに、「地球は球体じゃない論」の信奉者が増加って、意味がわからない。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
笑い事じゃなくて、これ、すごい怖い話。研究チームは米国で開催されている「地球は平らだ」説のイベントに参加した人たち30人に、どういう経緯で「平ら」説を信じるようになったか聞き取り調査を行なったところ、30人中29人が、2年前までは「地球は平ら」とは考えていなかったが、YouTubeで……
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
…陰謀論(複数形)を喧伝するビデオを見たあとで考えが変わったと述べている。残る1人は、本人はそう回答しなかったものの、同行していた娘と義理の息子(娘の夫かな)がYouTubeで「平ら」説を知り、それについて父親に話していたのだと。つまり30人中30人ともYouTube経由でフラット・アース論に接近
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
フラット・アースでこれなら、創造論やヤング・アース論はどうなのかとか、考えるだにぞっとする。創造論やヤング・アース論は宗教(主にキリスト教根本主義だが他の宗教にもある)なので、基本的に閉じた場で広まっていくし……。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
この話、怖いのはこの先。YouTube経由で「地球は平ら」論にはまった人々のほとんどは、911陰謀論やサンディ・フック小学校銃撃事件の陰謀論、「NASAは月に行ってない」説などのビデオを見て、その次にYouTubeが自動で提示したことをきっかけに「地球は平ら」論のビデオを見た。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
その人たちが911陰謀論などのビデオを見た動機は記事には書かれていないが、日本語圏では恐ろしいことに、YouTubeのビデオを見るまでもなく、Google検索で上の方に表示される検索結果がそういう陰謀論のブログなどだったりするので(その大きな理由は、報道機関の記事が検索結果に出てこないため)。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
例えば、Googleで「サンディフック小学校」と入力すると、こういうふうにサジェストされる。 pic.twitter.com/TofsaeGuxz
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
検索結果は、以前よりはかなりまともになったが(3件目に拙まとめが入ってる。NAVERのページランクが高いこともあるだろうが、書いておいてよかったと思う)、それでもまだ陰謀論が1ページ目に出てきてる(キャプチャ画像内、一部加工したもの)。ちなみにキャプチャはGoogleに未ログインの状態のもの pic.twitter.com/1DaESyuUDF
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
で、ガーディアン記事によると、そういう陰謀論を入り口にフラット・アース論にはまってしまった人のなかには、ツッコミを入れてやろうとして陰謀論ビデオを見て、逆に陰謀論を信じるようになってしまったという。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
https://t.co/GtnLMhJH3u "複雑なものを理解するためには多くの努力と忍耐を費やさなければなりません。そんななか、陰謀論は手っ取り早く物事を理解したいという誰もが持つ人間の心理に付けこむところがあるわけです。" "パッと見たときに常識を覆す論には知的興奮を伴う驚きがある"(呉座勇一さん)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
https://t.co/RkskjJVtxA “There’s a lot of helpful information on YouTube but also a lot of misinformation,” Landrum said. “Their algorithms make it easy to end up going down the rabbit hole, by presenting information to people who are going to be more susceptible to it.”
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 18, 2019
「陰謀論」というものは消えるものではない。潰せるものでもない。アメリカ合衆国にとって「陰謀論」は常にそこにあり、国の歴史の一部となってきたものだと、田中聡『陰謀論の正体!』(幻冬舎新書)は説明している。
20世紀初めのアメリカで、巨大シンジケートが、毎年、何千人もの白人女性を集めては性奴隷にしているという噂が拡がっていたという。シカゴ検察局の創設者が、その組織のことを、「見えない政府」と言えるほどの力を持っていて、町々はもちろん、政府をも背後から見えない力でコントロールしている、と著書に書いた。
もちろん実際には、そんなに大規模で強力な組織など存在しなかった。しかし、この本の影響は議会にも及び、1910年のマン法の成立をうながす。州境を超えての売春を連邦犯罪とする法律で、正式名を「白色奴隷取引法」といった。
その二年前にはFBIの前身となる捜査機関が誕生していたが、この法律ができたことで、一気に予算と権限とが拡大する。……
……
幻の売春シンジケートをめぐる陰謀論が、FBIを大きくし、変質もさせたのである。FBIが次に大発展の機会を得たのは、ポン引きの陰謀から共産主義者の陰謀に対する捜査へと職域を拡げたときだった。
つまりFBIは、陰謀論を糧に成長してきた組織だった。
多くの論者が指摘しているが、アメリカ合衆国そのものが、入植時代からずっと、たえず何者かを陰謀を企む敵とみなすことで、人々がまとまって行動をしてきた国だった。敵は、先住民やイギリス王室、イルミナティ、フリーメーソン、カトリック、共産主義者などさまざまだ。
……
陰謀論は権力者の側にとって価値あるものだった。陰謀を怖れるのも陰謀するのも、そして陰謀論を怖れるのも利用するのも、おおむねは力を持っている側の人間だった。
――田中聡『陰謀論の正体!』(幻冬舎新書、2014年)
なお、アレックス・ジョーンズとは別の筋で「サンディフック小学校銃撃事件などなかった」説を唱え、事件で殺された人々のご遺族に嫌がらせを続けている人物については下記参照。
【過去記事】サンディ・フック小学校銃撃事件をめぐる陰謀論者が、事件被害者ご遺族にネットで嫌がらせを続けている。 https://t.co/YBcYBnclUm (2015年3月作成) "問題のサイトは「すべては政府仕込の壮大なやらせ」などと主張。「中の人」の背景は代替医療。"
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) February 19, 2019
※この記事は
2019年03月04日
にアップロードしました。
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