「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2019年02月26日

Twitterが自動で表示してくれる「重要なツイート」が、なかなかポイントを押さえている件

Twitterでは基本的にHomeはlatest Tweetsを表示させるようにしてあるのだが、しばらくHomeを見ずにいると勝手にリセットされて、top Tweetsが表示されていることがある(スマホのアプリの場合)。

Top tweetsというのは、自分が見ていなかった間(ログインしていなかった間、アプリを立ち上げていなかった間)、自分がフォローしている人たちがツイートしたりリツイートしたりしたものの中で、システムが「重要」と判断したもののことだ。私の場合、私が寝てた間とか仕事してた8時間くらいの間になされた米英のジャーナリストや学者、活動家の発言のうち、その日の主要なトピックに関連したものが表示されていることが多い。

定番としては英国ではBrexitの話(私がTwitter見ていられる時間にうんざりするほどフォローしてるんだけど、それでもまだ見落とされるツイートが大量にある)、米国では、少し前になるが連邦政府機関閉鎖の話や国境の話が目立っていた。ほか、アフリカ特派員がツイートしているDRCなどの情勢など、ガーディアンやロイター、BBCのウェブサイトをチェックしてても目にしないようなトピック(それも6時間前にツイートされたもの)が流れてきていたりしてて、機械的処理にしては精度が高く、なかなか実用的だ。私がフォローしている人のなかには、例えば「アメリカ人の軍事系ジャーナリストで、ツイートの半分くらいは雑談やスポーツの話」という人もいるのだが、雑談やスポーツの話がtop Tweetsとして表示されることはまずなくて、そのアカウントからは地政学や国際関係についての話がtop Tweetsとして表示されている。

というわけで、(日本語で見たときにはどうなのかわからないが)英語で見る限り、Twitterはなかなかがんばっているという印象を抱いていたのだが、昨日は「なかなかがんばっている」どころか、「有能な秘書がついている」ような感覚になった。

個人的にBrexit関連に気を取られているので、米国、というか米大陸の話題はあまりよく見ていないのだが、ここ数週間でベネズエラ情勢がかなり緊迫してきていて、この数日はいよいよアレな感じになってきていることは把握している。これについてTwitterのような場で下手に発言するとロックオンされたり「CNNを信じているアホ」と罵倒されたりすることになるから、自分からツイートはほとんどしていないが、見出し程度は見ているし、ツイートされてきた報道記事のURLをクリックしたりもしてはいる。だからTwitterでは、「@nofrillsのアカウントの中の人は、ベネズエラ情勢について少しは関心がある」というくらいには把握していることだろう。私がTwitterに渡している情報(閲覧履歴など)で十分解析できる範囲で把握できることだ。

そうやってウェブサービスの運営側に自分の情報を渡した場合、少し前まではフィードバックといえば「表示される広告が『あなたの関心にあったもの』になります」とかいう程度だったのだが(しかし私のネットでの調べものは、例えば翻訳の作業で「人体の部位の名称を調べる」とかいうことがほとんどだから、それに基づいて「関心」を判断されて「膝のサポーター」のようなものの広告がガンガン表示されても、個人的な関心とは関係ないというオチがついている)、Twitterのような場ではもっとダイレクトに「自分のフィルターバブルの中に入ってくる情報で、なおかつ自分が見落としているもの」になってきている。私はFacebookは使っていないからFBのことはわからないが、FBではTwitterと同様かそれ以上に、この感じで物事が動いているだろう(しかもかなりエグいものがバンバン飛び交っていることだろう……日本語圏でも「ダ○○クト出版」なる広告主がGoogleの広告でやたらと出てきて、その陰謀論めいた文言にはうんざりさせられているのだが、FBではああいうのが普通に飛び交っているはずだ)。

ともあれ、私が「有能な秘書がついている」ような感覚になったのは、下記キャプチャにあるような一連のツイートが表示されていたことによる。Twitterでは「親ツイート」に対する反応を簡易的にまとめたような画面で表示してくれるのだが、その「親ツイート」は私にとっては観測範囲外、米共和党のマルコ・ルビオ議員の発言だ。

その発言は、現在のニュースとしてはベネズエラ情勢の文脈にあるのだが、テクストではそれが明示されていない。というか、ルビオ議員は写真をツイートしただけだ。そしてその写真に対し、私がフォローしている人たちが反応している。そこに、通例コンピューターの自動処理にはあまり期待できないような「文脈」があったので、感心してしまった。

下記画面を見たあとで確認してみたところ、ルビオ議員は、2枚の写真をツイートしていた。1枚は「リビアの独裁者」。もう1枚は「民衆にボコられるリビアの独裁者」。ルビオ議員が言葉を使わずに言わんとしたことは、「ベネズエラの独裁者もこうなる」ということだ。25年前ならルーマニアのチャウシェスクが持ち出されていただろう。

これに対し、私がフォローしているジャーナリストたちが一斉にツッコミを入れているのが、Top Tweetsとして表示されていた。これによって、私が見ていないところでどういう潮流になっているのか、どういう感じで物事が進められようとしている(と人々が認識している)のかが感知できた。

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ダン・コーエンは、現在はロシアのRTの記者だが、私がフォローしたときはパレスチナのために活動していた。グレッグ・カールストロムは2011年の所謂「アラブの春」を伝えたジャーナリストのひとり。ダン・マーフィーも中東に詳しいジャーナリスト(ボストンのメディアの記者)。スペンサー・アッカーマンは軍事系に強いジャーナリストで、「アラブの春」のときは分析記事を書いていた。ジュリア・C・ハーレーも中東専門家。彼らは8年前(2011年)の今ごろは、リビア情勢について多くを語っていた人々だ(ただしダン・コーエンは例外かもしれない。彼は当時パレスチナにいてパレスチナの情勢をツイートしていたはずだ)。

Twitterは過去何年分もの彼らの発言と私の行動(閲覧履歴など)をデータとして持っているから、こういう表示ができるのだろう。

ソーシャルメディアでは、こうやって表示されるものが偏っていたら、その偏りがそのまま見える世界を規定してしまうから、これだけを情報源とするのではなく、ロイターやブルームバーグといった通信社や、ガーディアンやBBCのような報道機関も併せて見るようにして、自分で手動(人力)で変な偏りがあれば修正していくようにする必要はあるだろうが、それを考えたって、こういう形で情報を得ることができるということは、便利でよいことだと思う。

ただし問題は、その「偏り」は、基本的に、私に見える世界をあまりにも狭めすぎているということだ。それについてどこまで自覚的でいられるか。(Twitter上での「偏り」に懐疑を抱かず無批判でいたら、なおかつTwitterだけで情勢を把握しているつもりになってたら、私はきっと今頃、「Brexitは中止になるに違いない」と考えているだろう。Brexitに関してはそのくらい、Twitter上で私に見える世界は偏っている。)





ベネズエラ情勢について言えば、ジュリア・C・ハーレーが述べているように、「米国が支援するレジーム・チェンジはうまく行かない」ことを前提としなければならない(熱に浮かされて「人道支援だ」と叫んで介入することは避けねばならない)。同時に、マルコ・ルビオのように「米国が介入し、リビアは独裁者を除去することができました。めでたしめでたし」で話が終わっている人がかなりたくさんいるのだろう(その人たちはその人たちのフィルターバブルの中で生きているからそういう認識になる)ということも知っておかねばならないのだろう。




何かを語るとき、語らねばならない立場に置かれたときに、それについて詳しく(正確に)知ろうとする必要性を感じない人々というのはいるものだし、それ以前に人間には「思い込み」というものもある――ただ、他国に介入しようとしている政治家が、リビアを成功例と認識しているというのは「思い込み」では済まされないような、恐るべき怠慢だが。




(10年ほど前の「麻生支持熱」は、典型的なポピュリズムでしたよね。「マンガ好き」とか持ち上げられて、秋葉原で演説して、マスコミが批判すればネットでわっと擁護の声が沸き起こり、批判者には「左翼」のレッテルが貼り付けられる……Brexitのときのナイジェル・「伝統的エールとパブ大好き」・ファラージに通じるものがある)

それと、ベネズエラについて言えば、「アメリカの介入を支持しないならば、マドゥロを支持すべきである」という阿呆な二分法が横行していて、それは完全に5年ほど前のHands Off Syria運動(英国ではStop the War Coalitionが主導)のコピーにしか見えないのだけど、その点、下記も参照。





【追記@3月11日】
上で「Twitterが自動で表示する重要な話題は、米国の話題に偏っている(かもしれない)」というニュアンスのことを書いているが、今日2019年3月11日にそこで表示されていたのは英国の話題だった。Brexit支持陣営というかBrexit過激派の国会議員がまいているデマ(悪意ある誤情報)について、ジャーナリストがツッコミを入れている。

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このデマ、実にひどい。あまりに雑すぎる。でも「EU残留派のエリートがBrexitの邪魔をしている」と憤慨していて、ネットで流れてくる話についていちいちファクトチェックなんかしない人たちの間では、かなり広まるだろう。こういうツッコミが表示されるのは、元々そういう話について懐疑的なスタンスの人に限られているだろうし。




「フェイクニュース」以前に、高度に情報化された今の世の中はpost-truthなのだ。「情報化社会」云々が輝いて聞こえていた時代はこんなことになるとは予想もされていなかっただろうけれども。



※この記事は

2019年02月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 01:20 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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