それでも、2017年3月3日、北アイルランド自治議会選挙の開票実況をゲラゲラ笑いながらTwitterで追っていたときに(選挙についてのブログはこのあとで書きます。まだ笑えるから困る)、アイルランド共和国から流れてきたニュースに出てくるその地名には、聞き覚えがあった。ゴールウェイ州だよな、とも思った。決して馴染み深い地名ではないのに。
実際、2014年6月7日、自分は下記のようにTwitterに投稿していたのだ。
自分の書きぶりからわかるが、このとき、このニュースを伝えるセンセーショナルな文言を、非常に多く見たのだろう。そういう中で、何とか「冷静な」ものを見ようとしていたことがうかがえる(「正常性バイアス」ってやつだろう)。そして私はアイリッシュ・タイムズは(特に宗教がらみのことではアイリッシュ・インディペンデントなどに比べて)信頼できるメディアだと思っていたし(今でもそう思っている)、そこにあるバイアスに気づいていなかったのだろう。
そう、2014年6月の私のバイアスに、2017年3月の私は気づかされている。
さっきから、「何のことだ」と思われているかもしれない。このことだ。
アイルランド、カトリック教会が運営していた児童施設の跡地から、大量の子供の遺体が見つかった。
https://matome.naver.jp/odai/2148855831728187001
2017年3月3日、北アイルランドのリストの画面と、ベルファスト・テレグラフやBBC Northern Irelandの開票速報の画面を開いて、ウィキペディアの選挙区ごとのページを見て前回の選挙のことなども確認しながら、北アイルランドの人々の「うはー」とか「うひょう」という声が響く中、単なる数字を見てゲラゲラ笑っていたときに、北アイルランドのリストに "Tuam" という地名を含むツイートがいくつも流れてきていた。
そのときは、選挙のことで頭がいっぱいだったし、「聞き覚えのある地名だ」と思いはしたものの、2014年のことはすぐには思い出せなかった。
ちょうど開票結果が出ない時間帯にさしかかっていて北アイルランドから特に進捗が入ってこなくなっていて、私は別のタブを開いてTuamの検索結果を表示させ、その中からいくつかRTをした。ほかにも、重要そうなツイートをブックマークし(Twitterの機能としては "like" ボタンを押した)、北アイルランドの選挙の開票結果がなかなか出てこない間に、「NAVERまとめ」にログインして、それらのツイートを記録し始めた。大臣の記者会見の実況ツイートやジャーナリストのまとまったツイートは、そのアカウントのツイートをある程度まとめて記録するという形でメモった。左目で北アイルランドの選挙速報をチェックしながら、右目でテュアムのことを「まとめ」ていたわけだ。こういう具合にリアルタイムで「マルチタスク」するには、ツイートの埋め込み用のコードを表示させてエディタにコピペし、ブログに投稿するよう整理していたのでは到底間に合わない。そして、そういう場合に非常に使い勝手がよいのが「NAVERまとめ」だ(個別のツイートに「コメント」をつけることができるので、対訳をつけたり訳注を入れたりすることが容易にできるし、単にツイートだけでなくGetty Imagesやロイターの報道写真も入れることができる、など。Togetterと違って編集作業は画面遷移なく非常に楽にできるし、本文を読みもせず、「コメント欄」とやらに何かを書くことだけが目的という連中を引き寄せることもない)。……などということをいちいち書かねばならないという強迫観念に、今の私はとらわれている(「インターネット・モブ」は、怖いからね。「叩く」「燃やす」といった行為を娯楽として楽しむ人々が、実数としてはどのくらいなのかわからないが、ネットでは相当数いて、相当な存在感を発揮しているわけで)。
そして北アイルランドの選挙の結果が出て、テュアムの件でのニュースが最初に流れてきてから24時間くらいしたときの私のツイート。3月4日(土)の夜だ。このときには「アイルランドで大量の遺体が発見された」という "ニュース" は、日本語でも報じられていた(Google Newsで見出しだけ見た。記事の中身は私は読んでない。英語だけで十分だ)。
さて、今日はあとNI自治議会選挙の件をブログに書いて、同時に作業してたアイルランドのTuamの母子施設(収容所)の人骨のニュースについてのページを完成させたい。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 4, 2017
Tuamの件、つらい。発端は映画『スタンド・バイ・ミー』のような子供の冒険で、その後続いたのは歴史家の緻密な検証。2014年に「あそこに大量の人骨がある」と指摘した人のブログに詳しい: https://t.co/Ansbk4m0Xd 母子施設に転用される前からの検証が行われている
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 4, 2017
5日(日)には、日本語圏でもかなりの関心を集めていることに気づいた。その夜、Tuamの件の「まとめ」を完成させようとNAVERにログインすると、マグダレン洗濯所(マグダレン修道院、マグダレン避難所)についてのページの閲覧数が爆増していた。
Tuamの件(あと30分くらいでアップします)は日本語圏でも話題になってるので、教会のいう「堕落した女」の収容施設・強制労働施設だったマグダレン洗濯所(日本では「マグダレン修道院」と言われているが不正確)の件の「まとめ」の閲覧が爆増している。 pic.twitter.com/V73dFAfvP0
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
Tuamの施設の地下から発見された人骨(子供の遺体)は、地下に埋められていたのではなく、地下に埋設されていた下水処理槽(浄化槽)の中なんです。問題の施設は、20世紀に母子施設となる前(19世紀)は救貧院で、そのころの下水設備の中に遺体が遺棄されていた。人間扱いしてなかったんです。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
こんなこと、ぽちぽちと書いてる暇にページを完成させるべきなので、そっちの作業に戻ります。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
そして、例によって予想以上に時間がかかったが、第一段階としてアップしたのが下記の時点だ。
アイルランド、カトリック教会が運営していた児童施設の跡地から、大量の子供の遺体が見つかった。 - NAVER まとめ https://t.co/VEeJE5wbC2 ※まだ仕上げ作業が残ってますが、大枠はできたのでアップしておきます。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
金曜日はこんなニュースが、北アイルランドの(超おもしろい)選挙開票ライヴと一緒に流れてきてたので、頭おかしくなりそうでした。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
「アイルランドにはすべてがある」(岡村昭彦)んですよ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
ヴェトナム戦争で報道カメラマンとして活動した岡村昭彦が「アイルランドにはすべてがある」と言ったのは、「英国の圧制を受け、抑圧され弾圧されてきたのもアイルランド人なら、ヴェトナム戦争をやってるのもアイルランド人(ジョン・F・ケネディ大統領)」という《流れ》を意識したことが発端にあった。最終的にはアイルランドに住み、(やはり「アイルランド人」の活動であった)ホスピス運動に行き着いた岡村は、ぐるぐると渦を巻くようにアイルランドから流れていってアイルランドに流れて帰り着くような人間の精神の営みを見ていたんじゃないかと思う。これについては、まだ私には書くことができない(書けるほど、十分に咀嚼できていない)。けれど確実なのは、その「すべて」には、「抑圧されてきた人々が、抑圧者になるということ」が含まれているということだ。(それを非常にたくみに物語の一要素として取り入れていたのが、ケン・ローチの映画、Jimmy's Hall――すいません、原題がすばらしすぎて、邦題がどうしても覚えられない。「野」がなんたら、「英雄」がなんたら……――である。)
ともあれ、そうして最初に「NAVERまとめ」のページをアップしたときには、この「まとめ」は5ページで終わっていた。
https://matome.naver.jp/odai/2148855831728187001?page=5
↑このページ↑で「ところで#TuamBabiesのハッシュタグはいつ作られたのか(いつから話題になっていたのか)」という見出しから下は、(最後の最後にあるSee alsoのセクションを除いて)いったんアップしたあとに付け足した部分だ。
この件、正確には「今見つかった」のではなく「ずっと前に見つかっていたものが、今、政府によって確認された」のです。 https://t.co/4uXX9uiA8g ハッシュタグ画像検索を一番下までさかのぼるとTuam babiesのハッシュタグがいつできたのか、大まかに確認できます
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
Tuam babiesのハッシュタグができたのは、遅くとも2014年5月です。https://t.co/4uXX9uiA8g ハッシュタグを画像検索して一番下まで行ったところ。 pic.twitter.com/bnupqf2BKH
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) March 5, 2017
↑このツイート↑には、下記の画像を添付してある。ブログでは画像をもっと大きく表示させられるので、ここでは別にしておくが、こういう画像だ。
上記「まとめ」の5ページ目以降は、こうしてさかのぼってみた「古いツイート」を集めた部分だ。
それをたどり直すことで、「カトリック教会の管理下にあった子供の遺体が大量に地下に遺棄されている」と指摘した人々がどんな目にあわされたか、少しは追体験ができる。
実に、ひどいものだ。
そしてうんざりさせられるのが、これが2014年のことで、2009年のライアン報告書(カトリック教会による児童の性虐待に関する報告書)の5年後であり、2013年のマグダレン洗濯所での人権侵害についての政府の謝罪の後でもある、という事実だ。
アイルランドにおいて、教会は既に影響力を失い、「存亡の危機」に立たされているような状態だ。そうした巨大組織が、組織防衛のために動くというのは、別に驚くようなことではないかもしれない。
そして、「子供たちが埋められている」ことを指摘した人々は、いわれのない中傷にさらされたのだ。
2014年に。21世紀に。
※まだ書き足す。
※この記事は
2017年03月07日
にアップロードしました。
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