「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2018年09月28日

注目され続ける極右活動家「トミー・ロビンソン」ことスティーヴン・レノンと、ネット上の支持者

tommyrobinsontt27sep.pngふとTwitterの画面を見たら、UKでTommy RobinsonがTrendsに入っている。「また何かやったのか」と見てみると、オールド・ベイリーに出廷したことがニュースになっている。そういえば確かおととい、「トミー・ロビンソンが出廷する日が迫り、大勢の支持者が詰め掛けることが予想されているので、その日は周辺のパブは臨時休業」というニュースを見かけた。おそらく商業の側の自主的な休業判断だろうが、経済的に実害と呼べるであろうものが出ているわけだ。ロンドンは大変に大きな都会なので同一視はできないが、ベルファストの「旗騒動」においては政治的示威行為で経済的に影響が出たという前例を、彼らイングランドの極右活動家たちも十分に踏まえてはいるだろう。その方向性で影響力をweaponiseするということにならなければよいが。

……などということを、しとしと降る雨でとても寒い東京(今日は17度で、明日は25度以上の予報)でぼんやりと考えつつ、Twitterの画面を見てみた。いつもと同じく、報道機関のアカウントからのフィードと、反極右・反レイシズムの調査団体Hope Not Hate (HNH) のフィードが並んでいる。

HNHの今日の最初のフィードは、活動名「トミー・ロビンソン」ことスティーヴン・レノン(スティーヴン・クリストファー・ヤクスレイ=レノンというのが本名)についてまとめられた記事だ。「ロビンソン」ことレノンの名前は、英国、特にイングランドで売れるようになってからもう10年ほどになるが、ここ数年は北米でも名前を定着させつつあるし、さらにここ数ヶ月はスティーヴ・バノンが欧州で極右の連携と連帯をさらにステップアップさせるために活動を活発化させる中で「ロビンソン」ことレノンが注目されている。「ロビンソン」ことレノンは、もはやイングランドの「ローカルな活動家」ではなく「グローバルな極右のシンボル」になりつつあるような印象を私も抱いている。

そういう展開に寄与した要因のひとつは、今年3月、Twitterがレノンを恒久的に出禁にしたことだろうし、さらに大きな要因は逮捕や起訴だ。2017年5月、彼は法廷内でカメラを使用したことにより「法廷侮辱罪」で有罪となった。その後、2018年5月には、判事により報道が規制されていた裁判(ロビンソンらが「ムスリムの連中がいたいけな子供たちを食い物にした」と糾弾している事件。なお、イングランドでは白人によっても同様の事件は引き起こされているが、彼らは加害者が白人の場合は「子供を守れ」的な言動はとっていない)について、法廷の建物の外でネットで実況中継を行い、「平安を乱した罪」で逮捕された。これが広く英語圏の極右の間で「トミー・ロビンソンを解放せよ」というハッシュタグ運動となって広まった

その経緯は、ウィキペディアでは次のように(ソースを細かく示しながら)記載されている。

In May 2017, Robinson was convicted of contempt of court for using a camera inside Canterbury Crown Court and received a suspended sentence. According to Judge Heather Norton, "this is not about free speech, not about the freedom of the press, nor about legitimate journalism, and not about political correctness. It is about justice and ensuring that a trial can be carried out justly and fairly, it's about being innocent until proven guilty. It is about preserving the integrity of the jury to continue without people being intimidated or being affected by irresponsible and inaccurate 'reporting', if that's what it was".

On 25 May 2018, Robinson was arrested for a breach of the peace while live streaming outside Leeds Crown Court during a trial on which reporting restrictions had been ordered by the judge.

Following Robinson's arrest, Judge Geoffrey Marson QC issued a further reporting restriction on Robinson's case, prohibiting any reporting of Robinson's case or the grooming trial until the latter case is complete. The jailing of Robinson drew condemnation from right-wing circles.
https://en.wikipedia.org/wiki/Tommy_Robinson_(activist)#Contempt_proceedings


こういう経緯で、「トミー・ロビンソン」という活動家は「言論の自由」を振りかざして(それとも「『言論の自由』棒を振り回す」と表現しようかw)「イスラムが我々の社会を破壊する」と叫び、偏見・憎悪煽動の言説(ヘイトスピーチ)を振りまいてその賛同者を増やそうとしている界隈で「殉教者」「悲劇の英雄」的なステータスを得た(万人のものである「言論の自由」を、あたかも自分たちだけのものであるかのように使うあの連中は、本当に邪魔臭い)。「弾圧」という「悲劇」が、《物語》上でいかに効果的であるかは説明するまでもなかろう。イングランドの「極右」界隈は、Brexitのごたごたもあって(UKIPがケツまくって逃げたあと)、どう見ても勢いを失ってきているのだが、「ポリコレ」などの仮想敵をでっちあげて派手なパフォーマンスをしている限りは、それなりに存在感を示すことができる。実際にはろくにありもしない「存在感」だって、TVニュースや新聞のニュースになれば、自然と湧いて出てくる。「トミー・ロビンソン」という活動家はそのことをよく知っていて、そしてそういう演出に長けた人物だ。

それに加えて、昨今の極右は「国際化」しているから、仮に英国では注目されていなくても国際的には大注目、ということもありうるし、そういう状況も作れる。上述したハッシュタグ運動は、内訳を見ると、英国の司法に関するトピックであるにも関わらず、英国からのツイートは40パーセントに過ぎず、35パーセントは米国から、残り5パーセントはオーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス、ニュージーランド、オランダからということがHNHの調査と分析でわかったとこの7月に報じられている。このハッシュタグ運動を盛り上げたTwitterアカウントのどのくらいが、中に人がいる普通のアカウントなのかという疑問もある。
The 17,000 accounts that have used the three hashtags are far more likely to follow US-based right-wing Twitter feeds than UK based – 65.7 per cent follow Donald Trump’s personal feed, 48.1 per cent follow the official president of the United States account and 43 per cent follow British far-right YouTuber and conspiracy theorist Paul Joseph Watson. US accounts like Sean Hannity and Donald Trump Jr follow, with the next British figure – Nigel Farage – coming in twelfth on the list.
https://www.wired.co.uk/article/tommy-robinson-free-tommy-twitter-data


というわけで、どのくらいが実体のあるもので、どのくらいが虚像なのかが判然としないのが「トミー・ロビンソン」という活動家とその影響力だ。

HNHがTwitterの本文で「トミー・ロビンソン」という活動家名(ルートンのフットボール・フーリガニズムからのし上がってきたレノンは、フットボール・フーリガン界隈で非常に有名なトミー・ロビンソンという人物の名前を自分の活動家名として、the English Defence Leagueを作った)をはがし、「スティーヴン・レノン」という本名で彼を呼んでいるのは、そういった「悲劇」から目をそらさせ、現実に注意をひくことを狙ってのことだろう。




紹介されているのはこの記事。
TOMMY ROBINSON IS NOT THE MESSIAH, HE’S A VIOLENT FAR RIGHT RACIST
https://www.hopenothate.org.uk/research/tommy-robinson-not-messiah-hes-violent-far-right-racist/

「トミー・ロビンソンは救世主ではない。暴力的な極右レイシストである」という見出しで、「ロビンソン」がこれまでどのようなことで逮捕されたり起訴されたり有罪になったりしてきたかを箇条書きにしたセクションをはさみつつ、彼の活動内容・発言内容を分析し評価した記事である。ちなみにHNHは「ロビンソン」について「ネオナチではないし、ファシストではないし、白人優越主義者ではない」と明解に述べている。つまり、「ロビンソン」のような今どきの「極右」は、「ネオナチ」「ファシスト」「白人優越主義」というある意味「便利なレッテル」では説明できないのだ。ネオナチでもファシストでも白人優越主義でもない彼は、「イスラモフォビア」をばらまく「極右」活動家である。

さて、HNHのこのフィードにはいくつかのリプライがついている。そのひとつに「おやおや」と思った。「ロビンソン」支持の内容で(そのこと自体は特に関心を引く要素ではない)、11件と(このトピックの基準では)たくさんのLikeがついているが、ツイート数は少ないし、フォロー数・フォロワー数も不自然に少ない。Botかとも思われるが、対立する意見を投稿している人にリプライを返していて、その文内容はbotじみたものではないので、「中の人」はいるのだろう。

tommyrobinsonsupporter.png
tommyrobinsonsupporter2.png

そのアカウントを見てみるとこんな感じ。

tommyrobinsonsupporter3.png

当該のHnHへのリプライは、11人がLikeしているが、どのアカウントもこういうような感じ。(でもbotとは言い切れない。しかしこれら11件について「中の人」がいるようなアカウントかどうかまではチェックしていない。)

tommyrobinsonsupporter4.png

これ以上見ていくと「深淵を覗き込む者は、自身もまた覗き込まれているのだ」の状態になりそうなので、さくさくっとメモって撤退。

なお、上でリンクしたWIREDの記事は、非常によい記事である。ご一読を。

This is the Twitter data that shows who's backing Tommy Robinson
Saturday 28 July 2018
https://www.wired.co.uk/article/tommy-robinson-free-tommy-twitter-data

“US funding and support for Tommy Robinson is no surprise,” says a spokesperson for Hope Not Hate. “[Robinson] has long-received support from notorious anti-Muslim extremists in the US. They have used social media manipulation to propel their aims and act as enablers of his message. This messaging is amplified in turn by an online troll army drawn from both the alt-right in the US as well as ‘identitarian’ spheres of the far right in Europe. We need to wake up to the threat posed by monied far-right figures determined to stoke conflict across Europe, using figures like [Robinson].”

As one of the campaign’s organisers, Kassam says he is happy with the international coalition of support. “Despite the historical unreliability of Hope Not Hate information, I am delighted we seem to have succeeded in internationalising the Free Tommy campaign, as the left often does with its global causes and heroes,” he explains. “Any claims that this is somehow a bad thing is surely nativist, jingoistic, and xenophobic by the left’s own standards.”

Concerns over international interference in national debates has mushroomed since the US Office of the Director of National Intelligence identified Russian involvement in the 2016 US presidential election. ...


この記事末尾のほうにある、今年行なわれたアイルランドでの妊娠中絶合法化(8条撤廃)のレファレンダムに際しての「8条撤廃反対」のネット上のキャンペーンに関する事実の羅列(ネット上で「8条撤廃反対」を唱えていた人たちの多くは、アイルランドに住んでいる人たちではなく、ハンガリーや英国、米国の人々だったということ)も、現在の「ネット上のキャンペーン」を見る上で興味深い。

そして極右の側がそれを「左翼のやりくちに学んだ」と認識しているということも。

※この記事は

2018年09月28日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 03:00 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼