「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年07月12日

英国、次の首相がテリーザ・メイに決まった顛末(レドサムの撤退について)

日曜日にブログを書いて
レドサムのことを説明した
テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ
テュリャテュリャテュリャテューリャーリャー
月曜日にレドサム降りた
あたしの作業は無駄だった
テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ
テュリャテュリャテュリャテューリャーリャー

「政治においては、24時間はとても長い時間である 24 hours is a long time in politics」ってよく言うんですけど、この決まり文句の元って労働党のハロルド・ウィルソンなんですよねー。ただし元ネタは "24 hours" ではなく "A week" だったけど。情報化社会が進展して、通信・伝達の速度が速くなって、かつて「1週間」が単位だったものが「24時間(1日)」になり、「リアルタイム・ニュース」が普及した最近では「数時間」になりつつある。

……という、私が高校生のころに「現代文」の問題集などでたんまりと読んだ「現代社会を憂える論説文」のような話なのかどうかは知らないが、えらく古風(←婉曲表現)な思想を持ち、「草の根保守」の支持を集めていた保守党党首候補のアンドレア・レドサム議員が、当方が「この人、こんな人なんですよ」ということを書いてから24時間たたないうちに、党首選から撤退した。

EUレファレンダムでの「EU離脱」という結果を受けて辞任することになったデイヴィッド・キャメロンの後をうける保守党党首(&自動的に英国首相)を決める保守党内での党首選は、10日ほど前に立候補届けが締め切られ、1週間前、先週の火曜日(5日)に最初の投票で5人の立候補者の1人が脱落し、もう1人が撤退を表明、続いて木曜日(7日)に2度目の投票が行われてさらに1人(ボリス・ジョンソンを「背中から刺した」マイケル・ゴーヴ)が脱落し、アンドレア・レドサムとテリーザ(テリーサ、テレサ)・メイの決選投票になるということが確定していた。最終的な投票は夏休みを挟んで9月上旬に締め切られ、「新首相」が確定するのは9月上旬という予定だった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Conservative_Party_%28UK%29_leadership_election,_2016

英国のEU離脱について、EUの側は「とっとと出て行け」という態度を明確にしているのだが、離脱の交渉を率いる首相になる人物を選ぶ保守党の党首選は、ずいぶんとじっくり時間をかけるのだなあ(←婉曲話法)と思っていた矢先に、2人の候補の1人が辞めてしまったので、自動的に(無投票で)次の党首はメイに決定した。

2007年に労働党が同じように、任期途中で首相(党首)が退陣し、それに代わる新党首が自動的に首相になったのだが(トニー・ブレアからゴードン・ブラウンへ)、「選挙で選ばれていない」ゴードン・ブラウン首相への反発はじわじわと増幅されて、ついに2010年に行われた総選挙ではそれが爆発し……という《物語》を描けたら気持ちいいんだけど、そうならなかったんだよね、当時の保守党が弱すぎて。2010年の総選挙は、周知の通り、「だれも勝者(単独過半数)がいない」形で決着し(hung parliament)、一番たくさんの議員を出した保守党と、3番目のLDが連立政権を作った(英国では非常に珍しい)。労働党は少なくとも「信任を得られなかった」ことは動かしがたい事実なのに、なかなかそれを認めようとせず、選挙結果が出て24時間くらいは「うちもLDと連立すれば過半数になるぞ」ということでいろいろと画策していた。そのことは当時のブログに書いているが、英国の有権者が労働党にうんざりしてしまった理由には、そのような、有権者ほったらかしでウエストミンスターだけで数合わせをやっているような態度を党が平気で見せていることも入っているだろう。

ともあれ、保守党は2010年は冴えなかったけれど、2015年はバカ勝ちした。2005年に党首になったときには「線の細いおぼっちゃん」キャラで、エコ・フレンドリーな姿勢をカメラに撮らせるなど「若者にアピールする現代的な保守党」を描いてみせ、「伝統的」なゴリゴリ系保守党員にはイマイチ受けてなかったデイヴィッド・キャメロンは、2010年の選挙では「あの不人気なゴードン・ブラウンが相手でもスッキリ勝てない党首」だったが、その後いろいろあって、2015年にはガッツリと勝ったわけだ。その「いろいろあって」の中に、党内でキャメロンの路線に反発する人々の要求を受け入れる、というのもあった。その最大のものが、「EUメンバーシップについてのレファレンダムを行なう」という公約で、2015年の総選挙で勝利したキャメロンは、そのレファレンダムを実施して、そして、こうなった。もうね、アホかバカかと……ということはあちこちでさんざん書かれている通りだ。

その「レファレンダム要求派」が、ざっくりと、後の「EU離脱賛成派」で、保守党ではVoteLeaveという運動体を組織して(あれこれデタラメを主張して)キャンペーンを行なった。VoteLeaveのリーダーは、サプライズで「離脱」陣営に加わったボリス・ジョンソンと、元教育大臣でキャメロンによって閣僚から外されたマイケル・ゴーヴだったが、レファレンダム後に実際に英国のEU離脱という難事(ソフトランディングしなければならない)をやらねばならないという段になったら、ジョンソンはゴーヴに「刺され」て党首選不出馬、ゴーヴは(あんなことをした以上は当然の帰結だが)保守党内で支持を得られず脱落してしまい、ジョンソンとゴーヴのドラマが展開されているときに、いわば「彗星のごとく」現れたレドサムが「離脱」陣営の候補者となって決選投票までこぎつけていた。

対するメイは、キャメロン政権で2010年からずっと内務大臣を務めており、EUレファレンダムに際しては「残留」派だった。経済政策はどうかわからないが、政治的にはキャメロンよりは全然右の強硬派であることはすでに知られている。英政界随一のファッショニスタで、キトゥン・ヒールを履いてみたりド派手な服で公式の場に現れたりしてはデイリー・メイルのネタになるような人だが、党首選に出ることを表明した記者会見では白のブラウスにタータンチェックのジャケットというなりでスコットランドに無言の熱いメッセージを送っていて、「さすがすぎる」とうなってしまった。



ともあれ、こうして、今週の水曜日(明日、13日)からはテリーザ・メイが英国の首相となる。とりあえず、欧州人権条約とBill of Rightsの件は、キャメロンが何とか止めた時点まで逆戻りして、そして……うわぁぁぁ、ということになるだろうと思っている。あと「移民の追い出し」ね。内務省が必死に推進している「移民削減のための数合わせ」のために、すでに、非EU圏出身で英国人と結婚して配偶者として在留許可を得ている人の追い出しは行なわれている(新たにEU外で結婚した人が配偶者を連れて英国に戻ってくることのハードルをものすごく高くするだけでなく、住んでいる人の在留許可を認めないということも行なわれている)。悲観的すぎるかもしれないが、メイが「EUレファレンダムで二分した党をひとつにまとめていく」ということが何を意味するのか、内務大臣としてこの人がやってきたことを考えると、到底、明るい気持ちで見ることはできない。

メイが「次の首相」と決まったときのBBCのLive.
http://www.bbc.com/news/live/uk-politics-36570120

12日の各紙一面は、もちろん、その話でもちきり。The Sunは「残留派など信頼できるか」とばかりに、例のヒョウ柄キトゥン・ヒールのアップの写真を一面にしている。
http://www.bbc.com/news/blogs-the-papers-36770288

当面、英国の政治の話題は「解散総選挙」をめぐるものになるだろう。キャメロンがレファレンダムに負けて退陣したことで、キャメロンの政策・公約はすべて問い直される必要がある、というのが解散総選挙を求める人々の主張だ。(これはUKIP、およびBritain Firstなど極右を含めたLeave陣営全般の要求でもあり、また、EUレファレンダムとは直接関係なく、労働党で「コービン政権」というユニコーンが存在すると信じている人々の要求でもある。なお、日本語圏でも「コービン期待age」的な現実離れした言説はかなり多いのでご注意を)

しかし、「離脱」の側はもう誰も残っていないじゃないか……と思うのは素人考えで、ジョンソンもゴーヴもいわゆる「政治的ゾンビ」なので、この先はどうなるかわからない。

一方、メイはこういうふうだそうだ。ゴードン・ブラウンに関しては「選挙で選ばれてもいないのに首相になった」と非難していたが、「わたくしは違うんです」と。(この人、一人称は「わたくし」だろうな……ヒラリー・クリントンは「あたくし」。)




今の時点で解散総選挙なんかしたら、労働党は(コービンを支持するかどうかには関係なく)「保守党を追撃すべきタイミングで、党内クーデターにうつつを抜かすアホ集団」ということで、国政を任せられる政党とはみなされないだろう。そもそもコービンは、広く大衆の支持を集めてなどいない。(コービンについて、日本語圏ではずいぶんミスリードがあるが、労働党で事態を決定するほどの数を有することと、英国全体で総選挙という場で事態を決定するほどの数を有することとは、まるで違う。かといって労働党で誰か、広範な支持を受けうる政治家がいるかというと……だが。エド・ミリバンドが獲得票数を増やしながら選挙でボロ負けするという形で退陣を余儀なくされたときに、労働党は「たしかな野党」になったのだと思う。)








労組によるコービンの評価:




英国で「総選挙で選ばれていない首相」は、この100年間でこれだけいる。(任期が4〜5年以上の人は、その後の総選挙で一度勝ってる。)




予定より相当早くダウニング・ストリートを去ることになったデイヴィッド・キャメロンは、10番地の向かいのマスコミ詰め所みたいなところでインタビューに応じて官邸に戻るときに、楽しげなハミングをしていたのがとらえられている。(マイクつけたままだったのね……ゴードン・ブラウンの「bigoted woman発言」と同じ不注意だけど、鼻歌だったからほとんど無害。)







さて、11日の月曜日にこういう急展開を見せたのは、ひとえに、レドサムが党首選から撤退したためである。ではレドサムはなぜ撤退したのかというと、タイムズでのインタビューでうっかり本音をしゃべってしまい、そのことでの対応がまずすぎたためだ。より正確にいうと、タイムズに掲載された自分の発言は不正確であるとタイムズを勇ましく非難したまではよかったが、実際には取材時の録音テープにその発言が記録されており、タイムズの記者がそのテープを公開したことで、レドサムに対する世間の信頼というものはほぼゼロになってしまった。

発言内容が問題だった(すでに書いた通り、「子供のいる私は、子供のいないメイより優れている」という内容のことを述べている)ということも大きいが、それ以上に、これからいろいろと難しくなるときに、ジャーナリスト相手にどういう発言をすべきかを考えることもできない・しないし、いざ自分に不利なように展開したときのダメージ・コントロールでさらに墓穴を掘るような人に首相になられても困る、ということがより大きいだろう。

その辺の話をいくつか。











ピアース・モーガンはTwitterで堂々とLeave陣営に媚売ってたくせに、よく言うよ、と思うけど、この人の仕事は「誠実さ」や「信頼」の上に成り立ってるものではないのかもしれない。


















タイムズのインタビューの件:





















確かに今は、Leave陣営の主張のデタラメさが露見したばかりで、政治的主張における「嘘」の許容量はとても低いかもしれない。でも、レドサムが「嘘つき」なのは、この「子供のいる私は子供のいないメイより優れている」という発言をめぐるドタバタ以前に、「履歴書で経歴を盛る」ということをやっていたことがわかった時点で、十二分に広く知らされていた。そのときは「党首選から撤退する」という話にはなっていなかった。

「嘘」なんか、それ自体は問題にならない。それがpost-truthの時代の現実。













そして、「草の根保守」がそろって推していたレドサムが、タイムズのインタビューで失脚したことについて、「草の根保守」が激怒している件。






ちょっと番外編として、この人たち、相貌失認か何かなの? あるいは「50代〜60代の女性」は全部同じ「おばさん」として見てしまうタイプ?





あまりのばかばかしさに、ついついお笑い方面に注意が向いてしまうのはよくわかる。






※時間が経過すると「蛾」っていうのがわからなくなると思うので(2016年欧州選手権決勝):









最も「うはあ」と思ったのはアリソン・モイエのこれ。




というわけで、ニュースがあったのでさかのぼって見てて、数日前のAnPのツイートを目にして、「この不確かな世の中に、安定の北から目線」と声に出してつぶやいたのだった。



一体誰が、北アイルランドからの声について「安定の」などと口にすることになると考えていただろうか。(^^;)



天才風刺画家スティーヴ・ベル大先生の作品。Twitterカードは全景のごく一部なので、リンク先で全体像をご確認ください。ヒョウ柄が……


※この記事は

2016年07月12日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 11:00 | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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テリーザ・メイ政権発足。私の閣僚人事の予想が的中した。
Excerpt: 13日(水)、月曜日に保守党の党首となっていたテリーザ・メイが首相就任の手続き(国家元首による任命という形式をとる)をした。 メイさん、のっけからぶっとばしていた。 Brexitを支持した大衆..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2016-07-16 05:11

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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