「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年07月14日

テリーザ・メイ政権発足。私の閣僚人事の予想が的中した。



13日(水)、月曜日に保守党の党首となっていたテリーザ・メイが首相就任の手続き(国家元首による任命という形式をとる)をした。

メイさん、のっけからぶっとばしていた。

Brexitを支持した大衆紙The Sunが、Brexitに反対していたメイを最大限にdisるつもりだったのだろうと思うが、12日にこういう1面を作ってきた。




そして13日、女王のもとに赴き、首相として任命されるという儀式的な手続きに臨んだとき、メイの履いていた靴が……ぶほっ。




姐さん、パネェっす。(^^;)

日本時間で14日午前3時半ごろのBBC Newsのキャプチャ。











テリーザ・メイについて、ファッションなどのゴシップ的な面は別にどうでもいいとして、どういう政治家なのかがどのくらい日本で知られているか、私は把握していない。2010年のキャメロン政権発足以降、ずっと内務大臣をしてきた人で、近年の英国のイミグレのあれこれはだいたいこの人が大臣として仕切ってきた。たとえば、「移民」の数を減らすために留学を含む滞在ヴィザ発給の条件を厳しくしたり、難民申請者に対する態度を厳しくしたり(これまで英国では「人道的配慮」が必要とされた人、たとえば末期がん患者などは、送還せずに特別在留許可を出してきたのだが、今では容赦なく送り返している)、といったことだ。また、エドワード・スノーデンの暴露で威信・評判という点ではかなりぼろぼろになった米NSAとは対照的に、英GCHQはブイブイ言わせまくっているのだが、メイはスノーデンの暴露で問題とされたような「大規模監視」は推進する立場である。







第二次キャメロン内閣発足時に問題となっていたことに、EU離脱の可否を問うレファレンダムのほか、ECHR(欧州人権条約)と英国との関係、および英国独自のBill of Rightsの問題もあったが、メイはECHRには激しく敵対的な態度をとっている保守党政治家のひとりである。上でTwしたBT掲載の記事に次のようにある。



(((( ;゚Д゚)))

Twitterの140字に入らなかった前後を入れて引用すると:
“While in opposition she opposed the introduction of ID cards,” said Mr Kambo. “As Home Secretary she has reformed police stop and search powers and has strongly supported equal marriage. She has also recently indicated that she will not pursue earlier plans to pull out of the European Convention of Human Rights, admittedly only because the majority of Parliament opposes withdrawal, not because she does.”

http://www.belfasttelegraph.co.uk/technology/theresa-may-could-launch-huge-attack-on-privacy-and-internet-surveillance-protections-as-prime-minister-campaigners-warn-34881540.html


で、そんなメイ新首相は、13日に首相になってすぐに組閣に着手した。総選挙での政権交代による組閣の場合は、その前の「オフィシャル・オポジション(最大野党)」時代の「シャドウ・キャビネット(影の内閣)」の陣容がだいたいそのまま内閣になるが、今回のような突発的首相交代と、それに伴う組閣(内閣改造 reshuffleに近い)では、誰がどこに来るのか、誰も知らない。

このような組閣の際も、最初に決まるのが「政権ナンバー2」である財務大臣(ダウニング・ストリート11番地の住人)と内務大臣、外務大臣の重要ポストであるが、今回はそれに加えて、Brexit対応内閣として新設された「国際貿易大臣」というポストもある。

そして発表された陣容は、財務大臣がフィリップ・ハモンド現外務大臣(外務大臣の前は国防大臣だった)でキャメロン政権からの残留(メイにとっては同僚だった人)、内務大臣もやはりキャメロン政権からの残留で、アンバー・ラッド現エネルギー大臣(内務大臣はメイに続いて女性)。ここまでは、話題になるとしても「アンバー・ラッドって誰」程度だった。

問題は外務ポストだ。ただしこれ、私は7月1日の予想が的中したのだが。







この「予想」は、あてずっぽうに言ったわけではない。メイが保守党党首選に立候補したときに第一に掲げたのは「党内をひとつにまとめる」ということだった。メイはEUレファレンダムに際してはデイヴィッド・キャメロンを支持し「EU残留」の陣営にいた(が、目立った活動はしていなかった)。そのメイが「党内をひとつにまとめる」と言うということは、「EU離脱」陣営からも人を入れていくつもりだと述べている、ということだ。

保守党党首選立候補の段階では、まだボリス・ジョンソンが党首の座を争う「ライバル」になると思われていたので(ゴーヴがジョンソンの「背中を刺す」前)、内務大臣として、特にフランスのカレーからの「移民(難民を含む)」の流入に関するフランス側との交渉にあたった経験をアピールしたメイは、「欧州との交渉でボリス・ジョンソンが持ち帰ってきたのは放水車3台だった」と、ジョンソンの役立たずっぷりをあげつらって、スピーチを聞いていた人々(多くのジャーナリストを含む)の笑いを取っていた。

でもその程度のけなし合いは、特に関係を悪化させはしない。前提が「党首選でのライバル同士」なのだから。

実際には、ジョンソンは党首選には出馬せず、党首選ではアンドレア・レドサムを支持することを明らかにしていた。しかしそのレドサムがいきなりの舌禍でオウンゴールを決めてしまい、党首選から撤退したことで、いわば「フリー」というか、「だれ派でもない」状態になっていた。

仮にメイとレドサムの間で決選投票が行なわれていたとしても、確実にメイが勝つ見込みだったし、いずれにせよジョンソンは最終的には「フリー」になっていただろう。

そして、そうなったら、この「危機」を乗り切らねばならないメイ首相にとって、ジョンソンほどのキャラクターを身内に入れないという選択はないと判断するだろうと私は見ていたわけだ。何しろ、これから「欧州連合の一員」というステータスなしになる英国は、国外との各種交渉ごともすべて自国でやらねばならなくなるわけで、そのときに「対外的な『英国の顔』たる外務大臣が、すでに外国に顔が売れている」ことは、少なくともスタート時点では、とても大きな利点だ。

ともあれ、ボリス・ジョンソンが対外的な「英国の顔」となるというこの人事で、もうみなさん、椅子から落ちる、笑い転げて腹筋が痙攣する、しつこい油汚れが落ちる、彼氏・彼女ができる、廊下ですれ違った社長にほめられる、子供が100点を取るなどの大騒ぎである。

それはまた稿を改めよう。今は、なんかとても疲れた。ちなみに、アンドレア・レドサムも入閣している(。

先日、「機能するオポジション(反対勢力)のない民主主義は、独裁制とあんまり変わらない」という言葉を見かけてRTした(ツイート主は英国の風刺画家で、スピーチライターなど言葉を書く仕事をしているMartin Shovelさん)。Brexit決定後に、Brexitの呼びかけ人たちが次々と発言(約束)を撤回し、第一線から去っていくという保守党のぐだぐだ具合を好機として攻勢をかけるべきときに、オポジションである労働党は、「こんなのが党首なのはいやだ」という党内の揉め事にかまけていた。日本では参院選で閣僚が落選するという微妙な結果が出ているのに、英語圏でも「与党大勝利」のスピンがかけられ、東京都は公私の区別がつかない知事が退陣したあとをどうするのかというところで最終的に出てきた「野党統一候補」が、行政経験もなければ政策もなく、関心すらないのに立候補したとかいう話。早くも通りを走り出した共産党の選挙カーで大声を張り上げている女性が、「日本共産党は野党統一候補として……」でいったん言葉を切り、妙な間をあけてその候補者の名前を繰り返す。

めまぐるしく、めまぐるしく、あれもこれも崩壊し、劣化していく。

I don't believe illusions 'cause too much is real
So stop your cheap comment 'cause we know what we feel

※この記事は

2016年07月14日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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