英国のEU離脱 (Brexit) をどのようにやるかについての交渉で「最後の5%」が決まらないということは日本語でも報じられているが(リンク先参照。「5%」について「定量的になんちゃらかんちゃら」と言いたい人は、私にではなくリンク先の記事元であるNHKにどうぞ)、動きがあったのはその「5%」の部分だ。つまりthe Irish borderがかかわる部分。
「アイルランドのボーダー」については先日、ざっくりと書いてある(が、「ざっくり」なので、厳密な正確性についてはあまり期待しないでいただきたい。正確なことは各自本を読むなりしてご確認のほど)。それがBrexitの交渉のボトルネックとなっているということは、「関税同盟と英国」で説明したがる日本語圏ではあまり知られていないかもしれないが、英語圏(というかUK語圏)では常識だ。この数ヶ月ずっと、どのメディアを見てもthe Irish borderが焦点となっている。(私はBrexitが決まったすぐ後に「アイルランドどうなるの」と気になりだしたクチだから私の感覚では当てにならないと思われるかもしれないが、その場合、実際に英メディアの記事を見ていただければ、それが事実だという確認が取れるはずだ。)
「アイルランドのボーダー」に関する話し合いは、Brexitに関するほかの分野・項目の話し合いとは異なり、英国とEUだけで行なわれるわけではない。そもそもアイルランド島に「ボーダー」が存在している原因である北アイルランドの代表者(といっても、今は民主的な手続きで成立しているはずの北アイルランド自治議会が機能を停止しているので、法的には非常に曖昧な立場の「代表者」だ)も、アイルランドの代表者も加わる。そのシステムのベースにあるのが1998年のベルファスト合意(グッドフライデー合意、以下その略称を使って「GFA」と表記する)である。
GFAは「北アイルランド紛争を終わらせた」と武力・軍事面で語られることがほとんどだが、実はそれと同様に重要なのは、北アイルランドの問題を北アイルランドだけの問題とすることをやめた(がっさり言うと成立時には北アイルランドは「自治領」で、独自のパーラメントを持っていた。それについても以前書いているが、北アイルランドというのはそういう存在なのだ。じゃあ独立すればと思わずにはいられないのだが、北部6州を他の26州から切り離した人々は「独立国家」になることには興味はなく「英国の一部」であることを求めた――でもロンドンの支配は受けないという)だけでなく、英国政府とアイルランド政府が協議するという手続きを確立したという点だ。つまり、北アイルランドは当面(つまり、帰属について住民の意思を問うレファレンダムが行なわれるまで)「英領」ではあるが、英国の一存で動かせることばかりではない、ということになった。
だからBrexitという「英国とEUの問題」に、必然的に「北アイルランドの問題」もついてきて、それに関してアイルランドが当事者として関わっているのである。
さらに言えば、アイルランドは憲法を普通に明文化していて、だから1998年のGFAのときに「島全体でひとつの国」とする条項、すなわち北アイルランドの領有権を主張する条項を消すということができたのだが、一方で、英国は明文化された憲法を持たない。北アイルランドの帰属の問題は英語ではconstitutional problemと言うが、そのconstitutionが、英国の場合、どこにあるどういうものなのかがよくわからないと言ってもよいような存在で、つまり交渉のときに「だってほら、ここにこう書いてあるじゃないですか」と詰め寄る、的なことができない。
そういう中で、「残り5%」は、いつまでたっても「残り5%」のまま固まっていて動かないのだが、とにもかくにも何とかしなければならないので、北アイルランドの国技である「エクストリーム交渉」が、北アイルランド、アイルランド、英国、EUを巻き込んで続いている、というのが現在の状況である。
しかしそれがようやく動くか、という報道があったのが、アイルランドのお祭り、ハロウィーンが過ぎたあとのことだった。
ハロウィーンの当日は、こんなふうだった。
https://t.co/PUt2DkzeId 本場、アイルランドのハロウィーンをどうぞ。 #HappyHalloween
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
I'll be coming live from Derry's quay on @bbc5live at 4.20pm and @BBCevex after 6pm as the city gets ready for the biggest night of the year - #Halloween.
— Dean McLaughlin (@Dean_Journalist) October 31, 2018
Read more here: Derry Halloween festival 'like a scene from a movie' https://t.co/BNiWBcssdU pic.twitter.com/N9l4VHX3er
ハロウィーンの日は「バカ騒ぎできる楽しい仮装祭り」の日ではありません。ケルトの「お盆」です。死者を思うのであれば、北アイルランド紛争の死者のことも。>1993年10月、シャンキル・ロードからグレイスティールへ、暴力は連鎖した。 https://t.co/LsmuN80IJJ 今年は25年、4半世紀の節目
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
ハロウィーンの日、本場アイルランドについて、今熱い「ボーダー(境界線)」について、改めてまとめてみる https://t.co/3rWAJ0Cjnj ※ブログ更新(フィードが自動で飛んでいなかったので、手動で飛ばしています)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
そして、アイルランドとアメリカがハロウィーンで盛り上がるころ、英国では戦没軍人たちを追悼する赤いポピーの季節を迎える(英国では伝統的にハロウィーンはやらない)。続いて11月5日はガイ・フォークスのクーデター計画が摘発されて未遂に終わり、英国の安寧が保たれたことを記念するお祭りで、伝統的には「反カトリック」感情が高まる時期である(ガイ・フォークスら謀反人はカトリックだった)。
そして、毎年この時期になると、「彼」が赤いポピーをつけないことがニュースになる。毎年見てなくたっていいのに、なぜかみんな見てやんややんやとはやし立てたがる。
⚡️ “Annual argument around Stoke's James McClean refusing to wear a poppy has begun” https://t.co/PaEJ1mmiFe 'Annual argument'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
毎年恒例。夏時間終了→TVに出てる人がレッドポピーを着けるようになる→マクリーン→ハロウィーン→リメンバー・リメンバー・ザ・フィフス・オヴ・ノーヴェンバー→ウィ・シャル・リメンバー・ゼム……という流れ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
今年は、プレミアリーグで赤いポピーを着けることを拒否したのは、ジェイムズ・マクリーン(デリー出身)だけではない。(ピクシーのアンダーシャツを思い出すね……)
We should all respect Nemanja Matic's decision not to wear a poppy after Britain bombed Serbia in 1999. James McClean too after the "Troubles" in Northern Ireland https://t.co/7q7unx4RGA
— Kevin Maguire (@Kevin_Maguire) November 5, 2018
"It is only a reminder of an attack that I felt personally as a young, frightened 12-year old boy living in Sabac".
— BBC Sport (@BBCSport) November 5, 2018
Nemanja Matic has explained why he will not wear a poppy.
More: https://t.co/EWTZTFOXuK pic.twitter.com/WeAjdnh0ad
https://t.co/4IH0Cg0GAO セルビア人がポピーをつけることを拒否してOKなら、アイルランド人もそうしてよいだろう。しかもデリーの人だ。英軍の暴力(白色テロ)で何人もが殺され視力を奪われ身体の自由を奪われたデリーの人だ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
あ、あと、1910年代終わりのアイルランドで、ナショナリストを弾圧していた英国人の武装集団、「ブラック&タンズ」は、第一次世界大戦から帰ってきたはいいが職がなく、社会の中に居場所のなくなってしまった元兵士たちの受け皿だった。「戦争帰り」がアイルランドで植民地主義の手先となって、暴力の加害者になっていたわけだ。だから、基本的に、アイルランド人にとって第一次世界大戦での英軍兵士たちは「われらの自由のために戦ってくれた英雄たち」であるとは言えない。
というわけでマクリーンの「ポピー着用拒否」は毎年のことなのだが、今年は少しこじれた。試合のときにスタジアムの一角から「ポピーをつけないのはけしからん」とする集団の激しい反発にあったことで、マクリーンはInstagramで(ポピーを身につけないことに理解を示してくれる大多数のファンに感謝しつつ)その集団を「教育を受けていない原始人」呼ばわりし、それが問題となってFAが動くということになった。一方で、彼は「フィニアン」呼ばわりされているわけで(そして「そうだよ、俺はフィニアンだよ、悪かったな」的な応じ方をしているのだが)、これは不毛というか、そういう言い合いだ。
James McClean abused for not wearing poppy - footballer attacks 'uneducated cavemen' quoting Bobby Sands https://t.co/JYymCBtBOt エスカレートして「上等!」モードに。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
https://t.co/eQO9ZX1TOR 「上等!」モードの行き着いた先はこれ。不毛だ。それに「ケイヴマン」呼ばわりじゃなくてさらに進んで「ダイナソー」呼ばわりだったらどうだったのかとか、どこまでがセットフレーズとして許容されるのかという点で興味深くさえある。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
エクストリーム・セットフレーズ。セットフレーズのチキンレース。そういう感じ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
James McClean accuses FA of 'turning a blind eye' to sectarian abuse after they launched a probe into poppy row https://t.co/fjnsVGgXDI pic.twitter.com/zzec1dg6sF
— Independent Sport (@IndoSport) November 5, 2018
https://t.co/vlFqsuAzd3 今年はこじれたね。そろそろBrexitのスレッドと統合せにゃならんかもだ。ブログか。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
マクリーンは、その「騒動」と同時に、北アイルランドとBrexitに関する書簡をアイルランド首相に送るという文化人などの運動にも参加している。
Signatories include Republic of Ireland international footballer James McClean, actors Adrian Dunbar and Ciaran McMenamin, and film director Jim Sheridan https://t.co/B3Sufnw7dl
— RTÉ News (@rtenews) November 5, 2018
マクリーンやジム・シェリダンといったアイリッシュ・ナショナリストたちがそのような動きをとる前、Brexitをめぐるエクストリーム交渉では、次のようなことが報じられていた。(なお、Brexitに関しては私は主にロイターを見ている。それが一番バランスが取れていると判断するようになったので。)
EU floats new Irish border compromise in tentative Brexit plan - FT https://t.co/xsOVBM24wx 'The biggest obstacle to a Brexit deal has been Britain's wish to keep the border of its province of NI w/ Ireland open, while leaving the EU's single market and customs union' これが前提
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
The biggest obstacle to a Brexit deal has been Britain’s wish to keep the border of its province of Northern Ireland with Ireland open, preserving frictionless trade and a 1998 peace deal that ended sectarian violence while leaving the EU’s single market and customs union to forge its own trade deals.
With just over five months until Britain is scheduled to leave the EU talks have stalled over the issue.
EU diplomats familiar with the latest briefing by negotiators this week said that the EU proposals did not appear to have changed significantly from that October offer.
Northern Ireland would remain in a deep customs union with the bloc, applying the union’s full “customs code” and following single market regulations for goods and agri-food products, the FT reported.
Meanwhile, the UK would be in a more “bare-bones” customs arrangement with the EU, in which it would apply a common external tariff on imports from outside the union and rules of origin, the FT reported, saying the plan had been presented to EU ambassadors on Wednesday and floated with UK officials.
The paper said May’s negotiating team would give an indication next week on whether Britain was open to the compromise which would be a crucial decision on whether the EU will hold a special summit to discuss a potential deal this month.
Such a compromise plan is likely to face opposition from Brexit supporters in May’s government and party who do not want Britain to be tied into an open-ended customs union with the bloc until a UK-EU trade deal was agreed.
The FT said the plan contained many proposals which London had rejected last month.
https://uk.reuters.com/article/uk-britain-eu-ireland/eu-floats-new-irish-border-compromise-in-tentative-brexit-plan-ft-idUKKCN1N65VM
この次に出たのがこれ。私が完全には信用していない様が笑える。
Northern Ireland's DUP leader says hopes UK and EU close to a deal https://t.co/JYwOWzD9Og “Goodness, we hv bn here on a number of occasions & I hope we are close a deal that will work for NI, that is what we want.” この写真のアーリーン(10月15日撮影)、髪染めてるヒマがなかったか
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
このロイター記事、最初はshe thinks... だったのが she hopes... に訂正されているというのが、まさにまさに「北アイルランドあるある」 でなあ。その匙かげんがわからないと振り回されることになる。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
そしてこのあと、イケイケ調になった。BGMはDavid Guettaだ。
EU suggests post-Brexit customs backstop could offer something for... https://t.co/MnNuyYOhHA ’The key idea would be that GB and NI would remain a single customs territory under WTO rules, linked in a customs union with Ireland and the rest of the EU, diplomats told Reuters.’
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
'However, the mainland could, if it wished, apply somewhat different rules without breaking the WTO regulations on international trade.'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
'“That is the idea,” said one senior EU diplomat briefed on the latest negotiations. “Now we have to see if May buys it.”'
前回交渉(3週間前)で 'a new customs arrangement wd be set out in the legally binding w/drawal treaty itself, bending an EU “red line... May rejected that as creating new barriers btwn NI and GB. Brussels rejected her plan to let GB, too, enjoy special access to the EU market...'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
'... but the two sides have since come closer on a possible plan.'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
うつくしいなあ (;▽;)
'it was still unclear whether May cd get parliamentary support for the tweaked “two-tier” backstop as it wd still restrict British freedom to set trade terms. London has also pushed to set some cut-off date on the application of the backstop − sth Ireland & the EU have rejected.'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
何という「三歩進んで二歩下がる」感。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018
このあたりはまだ慎重なのだが、だんだん盛り上がってくる。ちなみにNHKの記事についてるロンドンの写真には「北アイルランド」が入り込んでいる――ロンドンの現行の2階建てバスの設計・製造は北アイルランドで行なわれているのだ。
英EU離脱 いまどうなってる?これからどうなる?|NHK NEWS WEB https://t.co/uuJC1IDjl0 '最後の“5%”が決まらない!' エクストリーム交渉あるある
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
'イギリスは国土の一部がEUの管轄下になることに強く反発し、イギリス全体を一時的に関税同盟に残す案を提示します。' それにEUがうんといわないことがネックになっているだけではなく、英国内がメイのその案で一本化されているわけではない(メイに対する保守党内の反発がある)ことが大きい。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
でも今日かなり大きい進展が報じられてはいる。次のtweet参照。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
Dublin, London, DUP talk up chances of Brexit deal https://t.co/UV8S76SoEC ロンドンとダブリンとベルファストの見解がまとまった!Once in a life time... hope and history rhyme,
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
このロイター記事の最後にあるが、ブリテン島とアイルランド島の間では動物の検疫が行われている。ブリテン島ではBSEがまた発生したが、「英国内」だからといって北アイルランドに動物をチェックなしで持ち込んでいたら、アイルランド島全体にリスクが及ぶことになる。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
この時点では「ついにDUPがYesと言った!」でパーティ・アンセムがかかってフロアは大盛り上がり、の状態だったのだが、翌日、いきなりパーティーは終わった。
Irish PM says Brexit has undermined Good Friday Agreement https://t.co/igL0S2eknn
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
ここにきてこの波乱なの?
マジで?(・_・)
戦線が移動したか。Brexit云々、ボーダー云々から、いよいよ英ユニオニズムとアイルランド・ナショナリズムという「アイルランド問題」へ。FGがこれやるのか。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
Brexit: Relations 'fraying' between Ireland and Britain https://t.co/12hBS94dAE BBC Radio 4ではこの局面でオーウェン・パターソン。あとデイヴィッド・トリンブルの発言は完全にいつものあれだ。「包囲の心理」はさらに強められるだろう。ダブリン(アイルランド)だけじゃなくてEUが、って。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 3, 2018
ここで何があったのかな……と思っていたのだが、その謎は週明けに明らかになった(3日は土曜日)。後述。
アイルランド首相が上記のように「GFA」を持ち出してきたとき、英国首相は希望的なムードを冷まそうとしていた。
All-UK customs Brexit deal report is 'speculation': PM May's office https://t.co/phs7q0u81c 出た、Sワード。週明けに保守党内で反乱が起きていませんように。どうでもいいけどこの写真のメイのジャケットの記事、「ブリテン」をぎんぎらぎんにさりげなく主張しまくっててすごい。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
DUP(今日は日曜日なので反応は出ないはず)が「Yes」と言ってるのだから、ほぼ確定であることは間違いない。しかしここに来てダブリンの動きがあれなので、やはり予測不能。不安定化要因はロイヤリストの「心情」。自分たちが「マイノリティ」になることに耐えられない人々の「心情」。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
「心情 sentiment」が何をどう(どの程度)不安定化させるかわからないということは、昨今の東アジア情勢を見てるだけに、何というか……。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
私、今まで「エクストリーム交渉」になるのはシン・フェインがいるからだと思ってたんだけど、今回、シン・フェインは(少なくとも表では)一切絡んでなくてこれなので、シン・フェインがいようといまいとこうなるという認識に改めなければならないのだと思っている。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
対照実験として、今度はDUP抜きでやってみてほしいところだが、それは1998年にやってたんだった(グッドフライデー合意にDUPは賛同せず、蚊帳の外で「NEVER!」と吠えていた。そして合意は成立し、数年後に立ち行かなくなり、さらに数年後にDUPが「Yes」と言うことで展開が見られた)。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
そしてアイルランド側からも「お祭りムード」とは程遠い反応が出てきた。
Report of secret Brexit deal 'unhelpful commentary,' says Simon Coveney https://t.co/avh7IgotYx 'Mr Coveney was speaking after The Sunday Times reported on Prime Theresa May's "secret plan" to secure a Brexit deal, which would get support from Remain and Brexit MPs.'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
'The article also quoted a "senior Whitehall source" as saying "Ireland is f*****" in a new deal which the newspaper claims May will be unveiling soon, and is confident can attract support from parliament. Mr Coveney said the article was written with a British audience in mind'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
'The Times' article states the EU will write an all-UK customs deal into the legally binding withdrawal agreement from the EU. If this happens, the backstop - designed by the EU and which treats Northern Ireland as different from the rest of the UK - will no longer be required.'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
日曜日にこのサンデー・タイムズの記事を読んで、月曜日に何かをしようとするのはBrexit強硬派だよね。そしてそれと同じタイミングで、アントリムでボムが3つも、放置されたような状態で見つかった。悪い予感しかない。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2018
そして、ここで何が起きていたのかが明らかになったのは、月曜日(5日)だった。「英国の二枚舌」が発動されていたのだ。
Raab wants right to scrap Irish backstop after three months - media https://t.co/9orZ2EqXNo 来たぞ、どんでん返し。出たぞ、英国伝統の二枚舌。週末にアイルランド首相がGFA持ち出したときに何か妙な感じがあったが、先週火曜日にこんなふうなことが……。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
詳細は記事全体を見ていただきたいのだが、このロイター記事にあるテレグラフ報道が事実であるとすれば、そりゃアイルランド側が防御的になるのも当然のことだ。
そして、このロイター記事にあるテレグラフ報道内容は事実であるということが、他紙の報道によって確定した。
May to face cabinet after Varadkar stands firm on Brexit backstop https://t.co/vSi6Lr10nc まず、昨日ロイターで報じられていた「テレグラフによるとドミニク・ラアブは…」の件は事実。'The PM rang her opposite number after it emerged that Dominic Raab had alarmed the Irish last week...
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
'... by demanding in a “robust meeting” with Simon Coveney that _any backstop last only for three months_.' これがあったのでレオ様(アイルランド首相)がGFA持ち出して公然と語ったんだ。https://t.co/5QdXL4H7yl GFAにより、英国が一方的に物事を決める立場にはないことが明文化されている。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
'In an indication of the febrile atmosphere surrounding the talks, sources close to Raab were forced to respond on Monday to Westminster rumours by saying that the Brexit secretary had no intention of resigning over the duration of the backstop.' ラアブのやっちまった感。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
でもラアブはトカゲの尻尾に過ぎない(げきおこのアイリッシュをなだめるためにクビにしたって構わないポスト。ただしアイルランド側がそんなことでごまかされるはずがないのだけど……今の保守党、そこがわかっていそうにないのがアレ。「問題はIRA」ってほんとに信じていそう)。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
記事最後の 'Cabinet members were shown a 15-page-long draft at a meeting two weeks ago, which one person said was _sufficiently broadly drafted that it could be interpreted_ as abandoning the Chequers insistence... that is hated by the Tory right.' が、事の本質でしょ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
https://t.co/vSi6Lr10nc ここ。 pic.twitter.com/UvZhC7QqtB
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
およびその少し上にある 'Varadkar’s office released a statement shortly after May had called him on Monday morning, which said that while Ireland was open to the possibility of “a review mechanism”..., “the outcome of any such review could not involve a unilateral decision...'
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
レオ様(アイルランド首相)のステートメントにある "a review mechanism" というのが、GFAにあるような二国間でのものであり(https://t.co/B9BXsgNLYQ を参照)、英国の一存で(ユニラテラルに)決定されるものではない。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
GFAは労働党(ブレア政権)で成立したものだから、保守党の右派は(特に今のコービンとシン・フェインの関係などを取り上げて)「ろうどうとうがぁぁぁ」とやり出すだろうが、二国間で決めていく/一方的に決めないというのは1985年のアングロ・アイリッシュ合意からの路線で、1985年合意は保守党。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
ここで、1985年の合意について簡単にウィキペディアで読み直していたら、今目の前で報じられているいくつかのニュースがすっとつながった。自分の主張は強くしているが、アイルランド側に交渉をぶち壊す意図はない、ということがどこかで示されているはず(それがアイルランドと英国の二国間の駆け引きの常)……と思っていたのだが、おそらく「アングロ・アイリッシュ合意以降のメカニズム」について念を押すと同時に、「同合意のころから続いている二国間の友好関係」の確認ということが行なわれている。
あ、つながった。1985年アングロ・アイリッシュ合意のときのアイルランド首相はFGのギャレット・フィッツジェラルドで、"His government had also passed the Extradition Act of 1987" via https://t.co/rRuzEPZswv 今まさに、これの確認が行なわれてるじゃん。1972年の軍人(UDR)殺害事件について。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
「the Extradition Act of 1987の確認」とは、これのことだ。ジョン・ダウニーはアイルランド共和国在住で、共和国で共和国警察が逮捕し、北アイルランドへ身柄が移送される。つまり、the Extradition Act of 1987が改めて確認されているのだ。
John Downey arrested in connection with 1972 murder of two UDR officershttps://t.co/ijM5wxHkiH pic.twitter.com/9TolhkOwwh
— Belfast Telegraph (@BelTel) November 5, 2018
https://t.co/hTN8DXk0tr ハイドパーク爆弾事件では起訴されえないジョン・ダウニー。1972年に起きたUDR (Ulster Defence Regiment: 英軍の一部) の将校2人の殺害で逮捕。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
https://t.co/wQpPbjSF8A "Downey is one of 187 IRA suspects who received secret on-the-run letters guaranteeing them unofficial immunity from prosecution." で、なんで今、別の殺人で逮捕? 何が起きてるんだろう。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
'Detective Chief Inspector John Caldwell: “The PSNI has been liaising closely with An Garda Siochana and today’s arrest demonstrates the benefits of joint working between police forces and other national partner agencies. The PSNI investigation into these murders remains active.”
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
1982年のハイドパーク爆弾事件はOTRレターでカバーされてて、1972年のこっちはそうではないということ? いずれにせよGFAの「紛争中の暴力に関しては訴追されない」に該当してない? ひょっとしてメインランドと北アイルランドとでは扱いが異なる(そういう穴があったことにPSNIが気付いた)とか?
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
北アイルランドの紛争処理/紛争転換/紛争解決は、本当に難しい。(たぶん、「コモンロー、恐るべし」案件で、能力的に私の理解力では無理なことが起きているのではないかと。)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 5, 2018
「コモンロー、恐るべし」案件というより、「二国間関係、恐るべし」案件だろう。
Ireland says UK cannot unilaterally scrap border backstop https://t.co/lj8xNi0CFb ロイター。こっちのほうがガーディアンよりわかりやすいかも(記述がはっきりしている)。(と、あたかもガーディアンよりロイターのほうが読みやすいことが特記事項であるかのように……)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
ロイターのこの記事を読むと、「DUPがYesと言ったあとに出てきたラスボスは二枚舌を持つ英国だった」感がすごい(「言ってることとやろうとしてることが違うじゃないっすか」っていうのはよくあることだが、英国の場合「伝統」で裏打ちされているので強い)。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
というわけで、ここまで何とかブログにした。まだまだ続くよ。「エクストリーム交渉」は終わらないから。
これブログに書かずに何書くのって感じだからブログに書く。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 6, 2018
現時点でまだちょっとあるんだけど(下記)、今は時間も気力もないのでここまで。
Loyalists urge Irish government to stop ‘Brit-bashing’ on Brexit https://t.co/no7Y5G78Ek ぱねぇな。ガーディアン独占。これはブログで書く。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 31, 2018
ガーディアンのアイルランド担当を下りて小説家になるはずのヘンリー・マクドナルド(ロイヤリストと太いパイプのあるベテラン・ジャーナリスト)が、今のアイルランド担当のロリー・キャロルと連名で書いてる記事。すごいネタだねぇ……。
ちなみに、アイルランドはGFAで憲法の条文からは「アイルランド全島でひとつの国」というのを削ったが、政府が使う地図では「全島でひとつ」の扱いは変わっていない。
こういうときに「アイルランド」が地図的にどう示されているかを見ると、あのborderが「国の境(国境)」ではないということがはっきり見えるのではないかと。 https://t.co/w4QZcLVon0
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 2, 2018

図説 アイルランドの歴史 (ふくろうの本)
アイルランドに対し、英国が何をしたかということは、木畑先生の下記の新書でも短く、わかりやすく書かれてます。急いでる人はこちらがおすすめ。

二〇世紀の歴史 (岩波新書)
※この記事は
2018年11月07日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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