「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年08月14日

The Sunの煽動がものすごくて、Twitterがブーメラン・ストリートになっている。

ふと見たらScotland YardがTrendsに入っていたので見てみたら、すごい光景だった。

Trends入りする程度にツイート数が増えているのは、スコットランド・ヤード(つまりロンドン警察。ざっくりと、日本でいう「警視庁」に相当)が新たに、「インターネット・トロール」取り締まり部門を設ける、という方針を出した、とかいう話があるためだ。

というか、この方針が本当なら、「トロール」として「取り締まり」の対象になる可能性が高い側の人々が、感情的にわめきたて、扇情的な発言を投下している。つまり、ブーメラン・ストリート化していて、きっとあなたは戻ってくるだろう。

と、最初からわかったかのように書いているが、Trendsから入った画面を見たときには、何が原因でTrendsに入っているのか、わからなかった。スティーヴン・ローレンス殺害事件についての9日付のガーディアンのフィードがあるが、こんな「数日前のニュース」でTrends入りしたわけではないし、その上にある「トップ・ニュース」のところは、明らかに「まともなニュース」のフィードではない。だって添えられている画像のサディク・カーン市長は、警察とは直接は関係ないのだから。それに、「思想警察」なんて強烈な言葉を、わざわざ引用符でくくって「いわば思想警察」的にヘッドラインに持ってくるなんて、「まともなニュース」ではない。

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この「トップニュース」の投稿者情報を表示させるとこうなる:

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プロフィール欄は空白、被フォロー数もフォロワー数も40にも満たず、ツイート数は膨大。古くからのユーザーなのだろう。で、そういう人がツイートしているよっていうことで「トップニュース」に表示されてしまう理由はわからない(右隣に大手メディアであるEvening Standardがあるのに)。Twitterの謎のアルゴリズムである。

ともあれ、この人のタイムラインを見て、どういうことなのかを確認してみた。「思想警察」云々のヘッドラインは、どうせデイリー・エクスプレスだろうと思ったが、もっとひどかった。




「思想警察」云々と煽動していたのは、The Sunである。(ちなみにこれをツイートしたユーザーさんは、五輪の自転車競技の女子代表チームに対する「トロール」のコメントを読むまでは、このニュースはスルーしていた、と述べている。)

あとで確認すると、「思想警察」の文言を使って煽動している媒体はほかにもある。

デイリー・メイル。



デイリー・エクスプレス。この三流新聞が「ハッカー」と「トロール」の区別などどうでもいいと思っていることを示す画像の選択も、香ばしくてよい。



というわけで、サン、メイル、エクスプレスの「右翼煽動タブロイド御三家」がそろい踏みで「思想警察」とカギカッコつきでわめきたてている。「巨額の予算を割いて『思想警察』を設立!」というスタイルで。

(「巨額の予算」をかけるのでなければ「思想警察」は問題とされないのか、あるいは「思想警察」が問題で、「しかも、巨額の予算」ということなのかはヘッドラインでは不明。なお、£2mを「巨額の予算」と見るかどうかはいろいろあると思うが、ヘッドラインの流儀上、「巨額の」ということで訴求していることは確かだ)

三紙それぞれ、Twitterカードに表示させている写真もヘッドラインと同じく「煽動」系であるが、サンほどあからさまな煽動をやっているメディアはほかにない。この媒体は、本当に「恥」というものを知らない、煽動とセンセーショナリズム第一の媒体だが、最近(特にEUレファレンダム以降)、その煽動がますますあからさまになってきている。恐ろしいのは、その煽動が「Twitterでヘッドラインだけ見てニュースをチェックする(した気になる)人」にも向けられていることだ。

一方、イヴニング・スタンダードは、「保守系」は保守系で、労働党への憎悪はみっともないほど激しいメディアではあるが(ロシアのメディア富豪が買うまでは、この媒体はデイリー・メイルの系列だった)、「思想警察」とかいう煽動的な文言は使わず、Twiterカードの写真も「見慣れた資料写真」である:



イヴニング・スタンダードが「中立的でまともな報道」に見えるほど、ほかがひどいということかもしれないが、Twitterの検索結果を見る私にはそう見えている。

で、ざっと見たところ、右翼タブロイド御三家がヘッドラインで使っている「思想警察」という煽動的文言に異論を唱えているツイートは、下記の1件だけだった。



「思想警察」云々で煽っているのはおかしいと考えるような人が、現地時間(日本との時差8時間)で日曜の朝から右翼タブロイド御三家のフィードなど見ている人にはあまりいないということかもしれないが。

さて、これがTrendsに入るくらいのツイート件数になったのは、単に8月の日曜の朝で人が少ないからかもしれない。見たところ、単に記事の見出しとURLをフィードしているだけのツイートが多く(Botかもしれない)、自分の言葉を書いている人が多いので盛り上がっている、ということではない。

(「ツイートの件数」で何かをはかろうとする場合、これは見落とせないポイントであるはずだが、しかとされてることも多いと思う)

「自分の意見」を書いているものとしては、下記の2例が代表的と思われた。(うち、1件のアカウントについては、アカウント名がアレなので、プロフィールを表示させたものもキャプチャ画像を連結させてある。ヘッダ画像からみると、非常に手馴れたプロパガンダ・アカウントのようですね……「ユーラビア脅威論」の)
sydtw3.png


このように、「ユーザー個人個人でブロックすればいいだけの話」っていう反応は、オンライン・アビューズに関する話題では必ず見る。それも多く。

そういう人たちは、なぜこれがこんな「問題」になっているのかがまったくわかっていない。特にTwitterでは、一度嫌がらせの対象となってしまうと、嫌がらせのリプライが個人個人でのブロックで対応しきれない数にのぼることも多いし、ブロックするためにはその「嫌がらせ」のコメントをいちいち見なければならない。相手をブロックするためだけに、自分に向けられたひどい言葉(「○ね」だの何だの)を何十何百と見なければならない。とてもじゃないが、対応できない。

「トロール」、「オンライン・アビューズ」は、まともな「対話」に発展する可能性はゼロであることがほとんどだ。

で、「意見の相違」なら「対話」によって互いに何かが得られるのが普通なのだが、Twitterという場では「対話」はほぼ不可能だ。AさんとBさんが対話しているところに、まったくその対話に関わっていない、多くの場合は文脈を共有してもいないCさんが突然「Aさんはバカな発言をしている」などと言って入ってくることもある(現実世界での「議論」では、そういうことはあまり想定されていないだろう)。もともとの知り合い同士で話をするのならまだ成立するかもしれないが、「誰かがRTしてきたのでたまたま見た」程度の関係性では無理だ。リアル世界でも、「電車の中で聞こえてきた知らない人同士の対話」のようなものに、いきなり「絡んで」いったりはしないだろう。

「トロール」行為をする側は、多くの場合、そういうことはよくわかっている。その上で、そうしている。「トロール」行為そのものが目的化しているのではないか、というくらい、特に意味のない「絡み」方をしている場合もある。

それをどうするか、というときに、「ブロックすればいいじゃん」というのは、何の解決策も提示しない。

ましてや、「スコットランド・ヤードの『思想警察』じみた新方針」という記事を、スコットランド・ヤードのその方針とはおそらく直接的な関係を持たないロンドン市長の写真で代表させるというトロールじみた行為を、「報道の自由」の名の下に、堂々と行なうメディアがあるときには。

……と書きながら、この「思想警察」に便乗して「イスラムに甘いスコットランド・ヤード」という情宣をぶちかましているユーラビア脅威論者(&「EUのないヨーロッパが好きなだけなんだよ」的な人種論者でもありそう)のアカウントをブロックしている。



ところで、Scotland YardというワードがTrendsしたときに、Twitterで「アカウント」として表示されるのが、リアル世界のスコットランド・ヤード、つまり@metpoliceukではなく、2009年に何件かツイートしたっきりの個人アカウントでしかない@scotland_yardひとつだけ、というのは、仕事が雑すぎませんかね。

あと、まさかTwitterがScotland Yardを「スコットランドの警察」と思っているとは思わないけど、それが「ロンドン警察」の呼び名であることを知らない人もけっこういるんですよね。(Scotland Yardは地名。東京の警視庁が「桜田門」と呼ばれることがあるのと同じ。)

※この記事は

2016年08月14日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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