「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年08月13日

いわゆる "slow news day" なのかもしれない。それにしても……(ああ、「国際関係」は生臭い)

※以下は「BBC Newsへの批判」ではない。「流れが変わった」ことについての記録を意図したものである。

先ほど、BBC Newsのトップページをチェックしたら、トップニュースが「シリアの戦闘地域で結合双生児が生まれた」というものだった。

少しあとになってしまったので、二番手、三番手のニュースが変わってきているが、下記のキャプチャのようになっていた。



このヘッドラインと写真を見たとき、私はBBCお得意の「BBC独占」で救急車に密着取材したのかな、と思った。しかし、常識的に考えてそれはありえないので(アサド政権がそういう取材を許すとは思えない)、病院を取材した記事なのだろうと思い、それはぜひ読みたい記事だと期待感を高まらせてクリックした。

だが、その先にあった記事は、「こんなのがなぜトップニュースなのか」と驚くべき内容、驚くべきクオリティだった。

いわゆる "slow news day" なのかもしれない。ほかにトップニュースになるようなトピックがないのかもしれない。が、それにしたってこれがトップというのは理解できない、という中身だ。

だって、自分たちで取材していないのだから。「独自入手」した映像などもないのだから。ネットに書かれていることをまとめただけの記事なのだから。そこらへんのネット媒体のようなこと、あるいは個人でもある程度の能力があればできるようなことを、あのBBC Newsがやっているのだから。

上掲のキャプチャからも飛べるが、記事はこれ。

Conjoined twins born in Syria war zone
By Kerry Alexandra
BBC News
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-37058411
(→一応、改版の可能性を考え、私が見ている版のアーカイヴ: http://archive.is/3JtTA

記事の書き出しは普通だ。「シリアでも最も戦闘が激しい地域のひとつであるドゥーマ(ドウマ)で、7月、ある母親がナウラスとモアズという結合双生児を出産した。彼らは現在既に、ダマスカスの小児病院に救急車で安全に搬送されている」

この書き出しに続くのは、多分、「病院のドクターの話によると……」という取材内容の記述だ。赤ちゃんの健康状態はどうか、手術はいつ行なわれるか、医療上、どういった問題があるのか、など。

そのように予期して記事を読み進める……のだが。

記事はその後、第三パラグラフ(第三文)で、「シリアの医師たちは、この結合双生児は手術を受けられなければ生命に危険が生じるとしてWHOに支援を要請していた」と述べる。

普通に英文リーディングのつもりで読んでると「いきなり何の話だ」と思うかもしれないが、パラグラフ・ライティングというものを無視し、一文ごとに改行・改段落して「断片を並べる」だけのBBC Newsの記事のスタイルでは、このように「いきなり話が変わる」とか「唐突に新要素が出てくる」ことも珍しくない。

読者としては、「ではこの次のパラグラフ(文)では、WHOに支援を要請した医師の発言が引用符にくくられて出てくるのだろう」と想定して、記事の文面の先(いつくしむように双子を抱いた赤新月社の制服の救急隊員の写真がはさまれた先)へと読み進む。

だが、そこにあるのは「医師の言葉」ではない。

というか、この記事全体、最後まで目を通しても、どこにも「BBC記者が直接話をした医師の言葉」は出てこない。

そういう場合、BBCは "The BBC can not independently verify the story" といった注意書きを入れているはずで、それはこのような「心温まる人助けの美談」系の話だけでなく、「病院が爆撃されて入院患者や医師・看護士が死亡」といったシリアスなニュースでも同じだ。

が、この記事にはその注意書きすらもない。

というか、この記事、何が言いたいんだ?



記事には最後まで「医師の発言」は出てこない。ドゥーマの人の発言もない。

その代わり、安っぽい「バイラル・メディア」のように、「結合双生児について知っておくべき5つのポイント」みたいなのが添えられている。

そして、最後まで記事を見たら、
Produced by The BBC's UGC and Social News team

なんてことが末尾にクレジットされている。

そういう記事があってもいいよ。でも、なんでそれが「トップニュース」?

というか、「ネット上の話題」を集めて記事にするチーム (UGC and Social News team) が書く記事としては、これは標準的なものだ。この記事がそういうコーナー(BBCではBBC Trendingという特設コーナーがある)のトップにあるのなら、何も違和感はない。

しかし、これがBBC News全体のトップニュースにおかれているということはどういうことか。BBC Newsのウェブの編集が、これを(BBC Newsとしてクオリティ的に大いに疑問のある体裁の記事を)「特筆すべき何か」であると扱っていることを示すのではないか。

ぶっちゃけ、「アサド政権側だって、悪いことばかりじゃ、ないんですよ」と主張しているのではないか、というように見える。というか、よく訓練されたニュース読みなら、そのように読むだろう。

2011年、2012年の時点であの報道を展開していたBBC、2014年にジェイムズ・フォーリーの斬首というものすごくひどい形で「ジャーナリストは来るな」という警告が発せられる前まではがんがん現地入りして、アサド政権が自国民の上に落としている爆弾について、爆弾を落とされる側から伝えていたBBCが、こういうものをトップニュースにしている。

何が起きているんだろう。

このような「BBC Newsのトーンの変調」は、2014年のガザ攻撃に際しての「変調」を思い出させるが(2009年、2012年の報道との連続性が、記者の異動という形で、断ち切られた)、何というか、最近の「国際ニュース」を見ていると、それ以上の何かではないかという気がする。

すなわち、liberal internationalism (←専門用語。要リンク先参照)の終焉が、宣伝(プロパガンダ)されているのではないかと。

ひとつのものが終焉するとき、御伽噺や小説ならぬ現実世界では、ただそれが終焉するわけではない。必ず、「その後」があるし、多くの場合、「その後」は準備されている。

今、何が準備されているのか、っていう。



以上のことについての連ツイ:










※この記事は

2016年08月13日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 19:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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