「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2019年03月13日

Flickrの縮小

当ブログがファビコンにしている写真は、2008年5月に撮影した公共の花壇のナデシコだ。カメラを持った腕を目一杯下げて、ファインダーを見ずに適当にシャッターを押して歩いた結果の一枚で、Creative Commonsのライセンスで、写真共有サイトFlickrにアップしてある

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しばらく前から告知されていたように、Flickrが無料サービスを大幅に縮小する。この1月からは、Proアカウントを取得しないと(=無料ユーザーだと)全部で1000点までしかアップロードしておくことができなくなっていて、既に1000点を超えてアップロードしているユーザーはログインすると「Proアカウントに切り替えましょう」と促す画面が表示される。Proアカウントは、月払いだと$6.99/month, 年払いだと$4.99/month, つまり$59.88/yearとなる(Source)。ProアカウントではAdobe Creative Cloudが15%オフになるなど外部の優待も受けられる。

既にアップロードされている写真・ビデオで、1000点を超えている分については、3月12日(米国時間。つまり日本時間ではがっさりいって3月13日)以降、順次削除されていくことになる(当初は2月に削除開始予定だったのだが、データのダウンロードがうまくいかないなどしていてユーザーからの意見があり、1ヶ月延長された)。

ただし、Creative CommonsのライセンスやPublic Domainで公開されているなど「コモンズ」(広く共有されるべきもの)の一部としてFlickrで公開している写真・ビデオは、削除対象とはならない(この点、少し迷走したが、最新の2019年3月8日発表の方針では、CCライセンスにしたのがいつであるかは問わず、Flickr.com上にアップされたCCやPDの写真はすべて、削除対象外にする、と説明されている)。また、既に亡くなったユーザーのページはそのまま保全されるという(Flickrは基本的に「削除されない」という前提で利用されてきたサービスなので、現時点で既に世を去っているユーザーへの対応としては、正しい判断がなされたと思う)。

自分がアップロードした写真・ビデオは、削除が始まる前なら全部バックアップを取ることができる。3月13日に書いても「今さら」感があるかもしれないが、記録のために書いておくと、Flickrにログインした状態でAccount → 画面右下の "Your Flickr Data" の欄で青いボタンを押す、というシンプルな手続きでダウンロードできる(その場ではできず、DLの準備が整ったらメールでお知らせが来るという形……メール来てなかったけどw)。私の場合、写真は6000点を超えているのだが、1時間もかからずにDL準備ができていたようだ。複数の圧縮ファイルに分割してDLできるようになっているから、ファイルサイズが大きすぎてなかなかDLし終わらないというトラブルもかなり回避できるだろう。DLリンクは3週間有効になっている。

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各種ヘルプは、サポート・フォーラムの下記のスレッドの最初の投稿にまとまっている。
https://www.flickr.com/help/forum/en-us/72157676293604137/

なお、1000点以上の写真をアップするなら個人は有料でProアカウントを使わざるを得ないが、非営利団体なら無料でProアカウントが使える仕組みも用意されている。サイトから申し込むフォームではTax ID Numberが必須なので日本の団体が申し込めるかどうかはわからないのだが、気になる方は問い合わせてみるのがよいだろう(英語で)。

Flickrは元々2004年にスタートしたときは所謂「フリーミアム」のサービスで、無料アカウントなら200枚まではFlickr.comのサイトでいつでも閲覧できる形で公開され、それ以上の枚数をFlickr.com上で常時閲覧可能にしておきたい場合は有料アカウントを使うということになっていた(それと当時は有料アカウントでも月ごとのアップロード容量には上限があった)。枚数のほかに、有料アカウント(当時からProと呼ばれていた)には広告非表示や外部サービスの割引といった特典ももちろんあったが、無料アカウントでも表示の上限を超えた写真は削除はされず、URLさえあれば画像を表示させることができるという仕組みで、有料アカウントの更新を忘れていてもこれまで撮りためた写真が消されてしまうということはなかった。

その後、2005年にYahoo! に買収されてからもこの基本的なシステムは続いていたが、2008年には創業者がFlickrから離れ、2013年には大幅なアップデートがなされて、Proアカウントに登録せずに誰でも無料で1テラバイトの容量が与えられるということになった。(以上、年号のソースは英語版ウィキペディア。)

ここまで太っ腹なことが行なわれたのは、「写真共有サイトといえばFlickr」だった時代が終わってInstagramに取って代わられていたので巻き返しを図ったのだろうとか言われていたはずだ。一方で、このころはTech系メディアで「Yahoo! のサービスならとりあえずけなしておけ」みたいなことが横行していて、Flickrもけちょんけちょんに言われていた。プロ・アマ含めてガチのフォトグラファーが多くいるFlickrと、スマホでパシャリ&フィルターかけまくりが当たり前のInstagramとは客層が異なるのだが、「数字」でしかものをはからない世界では「インスタすげぇぇぇ」という感じですべてが動いていたのだろう。

ともあれ、2013年のその太っ腹な方針は、2018年11月には撤回され、今回の「無料ユーザーは1000点まで。それを超過した分は削除する」という方針に変わった。それが今回のドラスティックな変更となっている。

その背景にあるのは、経営者の交代というよくある事情だ。2005年に早くもスタートアップのFlickrを買収していたYahoo!は、その後不振に陥った挙句Verizonに買われ、今でも何とか生き延びているがかなりのスリムダウンを余儀なくされた。その中で、Flickrは2018年4月には画像ホスティングのSmugMug社に譲渡された。SmugMug社はYahoo!のような巨大企業ではなく、「誰でも無料で1テラバイト」というサービスは維持できなくなったわけだ。

実際、そんな雑なプランで集められるユーザーは雑な使い方しかしなかったようだ。今回の方針転換について、Flickrでは3つの理由があると説明している。かんで含めるように書かれた文章だが、ざっと概略をいうと、ひとつには、無料で1テラバイト使えるということで画像置き場として使うようなユーザーが増え、元々の「写真愛好家同士のコミュニティ」感が薄れたこと。2つ目としては、広告主に顧客のデータを売り、サービスを運営する(そのために顧客を大量に獲得する)というやり方はやめるべきと考えたこと。そして3つ目として、flickrはユーザーにとって対価を払う価値がないサービスではないということ。

1つ目の理由として挙げられていることには「スパム」という問題もある。実際、よくわかんないスパマーみたいなのはFlickrには昔からいた。Flickrには「グループ」という機能があって、テーマに沿った写真をみんなで投稿しあって楽しむということが国境も言語も超えて非常に広い範囲でできる。これは非常に楽しいのだが、例えば「花」のグループに「かっこいい車の写真」のようなものがアップされれば、その写真がいくらすばらしくても邪魔である(「俺様のすばらしい写真があるのでみんな見るべき」という承認欲求の塊のようなユーザーもいれば、単なるスパマーもいるし、盗んだ写真で人気取りみたいな人もいる)。で、グループの管理人はモデレーションに時間も精神力も吸い取られる。そういう「関係ない写真のグループへの投稿」はだいたい機械的に行なわれているし、そうでなくてもFlickrはユーザーが多いから管理すべき量がはんぱなくなる。そうなると場が荒れてしまう。(もちろん純粋に間違ってアップしてしまったというケースもあるのだが、そういうときはコメント欄で「この写真はうちのグループの方針には合致していません」と言えば、たいがいは「あっ、ごめんなさい」で話は終わる。)

FlickrではSmugMugによる買収にともなってYahoo! のアカウントでなくても登録できるようにしている。つまり登録できるメールアドレスの数だけFlickrアカウントを持つことができるようになり、スパマーとの戦いは終わらないような気がする。

ともあれ、Flickrの今回の方針転換について私も少し考えてきたのだが、意図には基本的に賛成できるものの、価格が高すぎる。年額約60ドルというと、普通の書籍で3冊分、やや高めの書籍2冊分である。そこを考えたときに自分には本気価格すぎてちょっと無理だなと思った。そもそも、ここ数年は思いついたときに花の写真をアップする程度で、他のユーザーさんの写真を見て回るということも激減した(そうする時間はTwitterに吸い取られた)。年額約60ドルを払ったところで、Flickrを使うかどうかわからないのだ。年間2000〜3000円くらいで「月にアップできるの20枚まで」みたいな制限のついた、既存アカウントを維持したい人向けのプランがあれば迷うこともなかっただろうが……。

2004年10月から使っていて、ユーザー歴だけは長いから写真は6000点超になっているのだが、ごくわずかな例外を除いてCreative Commonsのライセンス (CCL: 具体的にはCC BY-NC-SA 2.0, つまり「自分が撮ったかのように偽らず、非営利であれば再利用可。加工OKだが派生物はこの写真と同じ条件で再配布すること」という条件)で公開してあるため、私のアカウントの既存の写真は削除されないだろう。幸いにも私がCCLでアップした写真のいくつかは、国境や言語を超えて個人のサイト・ブログや自治体のパンフレットのような非営利な場で使っていただいていて、そういうのは本当に嬉しい驚きだった。文字を撮影したものが語学学習系のサイトで使われることがわりとよくあるのだが、特に、道路の速度表示の「50|50」の写真が、よりによって北アイルランドの宗派間平等の文脈でイメージ写真として使ってもらえたのは、あまりに嬉しくてブログに書いたほどだ。Flickrがなければそのような体験をすることもなかっただろう。

アカウントをどうするか考える間の間つなぎとして、今年の花の写真は別のアカウントを取ってCC BY-NC-SAでアップしたのだが、そちらのアカウントはほどなく消すだろう。新たにアップしたもので他のユーザーさんと交流したりする時間はやはりなかったので、やはり私はもうFlickrは使わないという判断になる。

なお、サポート・フォーラムを見ると国によってクレジットカード決済が通らないのかなと思われる報告もある。これまでさまざまな規制等にも負けず、その人たちの目に見える世界を切り取った写真をFlickrにアップしていた中国やイランなどのユーザーが、今後も使い続けることができるとよいのだが。

あと、Flickrといえば2004年に私が登録したときはカナダの会社で、写真をアップするとデフォルトでCreative Commonsのライセンスで公開されるようになっていた(All Rights Reservedにしたければ自分で変更する形)。つまり発端からかなりコアな「コモンズ」の思想が内包されていたのだが、ガチのフォトグラファーの人々にはそれでは煩雑だったりして、数年もしないうちにAll Rights Reservedがデフォルトになっていたが、みんなの写真を集めて派生物(モザイクなど)を作るのが前提で、CCLの写真じゃないと参加できないグループも今もある。正方形の画面に内接する円の写真を集めるSquaered Circleはその一例。昨今の「映え」とかに疲れた人が見ると、写真ってシンプルにおもしろいなと思えるんじゃないかというグループである。

現在Flickrを運営しているSmugMugも写真共有サービスだが、Flickrとは異なり、個別のユーザーのサイトを作るというサービス内容で、ユーザー同士のつながりを作るという設計にはなっていない。有料サービスで、ライトユーザーからプロまで、いくつかのコースから選べるようになっている。
https://www.smugmug.com/

Flickrってこうやって見ると、やはり「Web 2.0」の時代の設計だなと思う。スマホ以前の、タコツボ化していかない、ゆるい広がりを持つ可能性が高いインターネット上の人の流れがある。それも、今回の事実上の有料化で離脱するユーザーも多いだろうということを考えると、かなり変わってしまうだろうと思う。北米や西洋で問題なくクレジットカードが通る人たちにとっては何も変わらないかもしれないが、ロシアやイランのユーザーにはカードが通らないことが原因で離脱する人もいるだろう(Last.fmでそういう事例が多く報告されたことを思い出す。そして運営ではどうすることもできなかったのだ。国と国との関係のことだから……ビットコインなど暗号通貨はそういうところを打ち破る可能性があるものとして期待されたけど、「稼ぐ」だの「儲かる」だのという変な方向に行ってしまった)。

ちなみに-er語尾のeを取る表記は、2000年代初めに英語圏で流行ったもので、Flickrはflickerという単語が由来である。同様に、Tumblrはtumblerが由来。Twitterがスタートした2006年にもこの表記は流行っていたと思うが、Twittrにならなかったのはなぜだろう。

私がFlickrに上げているようなクリエイティヴ・コモンズ・ライセンスの写真の探し方については、ブログ「P2Pとかその辺のお話R」さんの2019年2月13日の記事に詳しい。
https://p2ptk.org/copyright/1604

ただしFlickrもときどき「ネットで拾った画像」を勝手にCCLでアップしている人もいるから要注意。やたらとクオリティの高い写真が出てきたら、必ずその人のphotostreamを見て、その人が撮ったと考えられるかどうかを判断することが必要。といっても本当にクオリティの高い写真を撮ってCCLで公開しているユーザーも多いから、「使わないほうがいい」というわけではない。

※この記事は

2019年03月13日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:00 | flickr | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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