「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2017年09月01日

暴力と憎悪の連鎖、そしてテロリズム……非主流派リパブリカンに武器・爆薬を流すなどしていた英軍兵士の件(UTVのドキュメンタリー)

前項「たった1人で北アイルランド和平をひっくり返していたかもしれないテロリストが英軍内に浸透していた件」の続き。

■判決から1ヶ月経過し、UTVがドキュメンタリー番組を制作
さて、判決が出てから1ヵ月後、8月31日に北アイルランドのTV局UTV(現在はITV傘下)の "Up Close" という番組枠で、キアラン・マックスウェルの事件と現在のディシデント・リパブリカンについてのドキュメンタリーが放映された。ウェブで誰でも見ることができる(英国内からの接続でなくてもOK。ただしBrightcoveなので要Flash)。長さは約45分。見終わるとぐったりするような内容だ。

「まるでスパイ小説のようですが、今日の番組でお伝えすることには、一切、フィクションの要素はありません」と導入部で述べるレポーターは、UTVのシャロン・オニール記者。アイリッシュ・ナショナリズムの研究者として有名なエイモン・フェニックス博士や、元軍人といった人々の解説も要所要所に入っている。

Up Close - Marine Maxwell the Traitor
http://www.itv.com/utvprogrammes/utv-up-close/up-close-marine-maxwell-the-traitor

最初の3分半は番組オープニングと導入部で、特に冒頭1分40秒までは「海兵隊とはどのような組織か」を説明するパート(映像は英軍のプロモビデオ)なので飛ばしてもよい。

本編はキアラン・マックスウェルの生い立ちの説明から始まるが、ここで驚いたのは、「カトリック」である彼のお父さんが英軍人だったという事実だ。

現在31歳の彼が生まれたのは、1985年か1986年、北アイルランド紛争のど真ん中で、「カトリック」のコミュニティにとって英軍は基本的に「敵対的勢力」であった時代だ。番組のナレーションは言う。「当時、カトリックが治安当局で働くことは通常ではなかった。しかしラーンにおいては事情が違っていた」。

「数」があること、「過半数」を取ることがストレートに「正しさ」を意味するかのような単純化された世界観が支配する土地の、圧倒的に「プロテスタント」ばかりの地域で、常に「少数派(マイノリティ)」である「カトリック」。労働者階級のカトリックにとっては、思想や理念より働き口が重要だ。そして2002年、16歳のキアラン・マックスウェルは、ロイヤリスト(UDA)のモブにぼこられ重傷を負い、心的外傷も受ける。そのとき、彼はシン・フェインの機関紙であるAn Phoblachtの取材を受けているが、その時代にはもうシン・フェインにとって暴力(フィジカル・フォース・リパブリカニズム)は過去のものとなっていたわけで、ここで彼がAnPの取材を受けていたことは、彼の暴力的な過激主義への道とは関係なかろう。

暴行事件のあと、キアランの両親は変化を求め、息子にカウンセリングを受けさせるなどした。そして暴行から7年後の2009年に息子が志願したとき、両親は息子は完全に立ち直ったと認識した。2010年、24歳で軍隊に入った彼は起訴訓練を終えてイングランド南西部サマーセット州トーントンを拠点とするようになる。この町は軍隊とのつながりが非常に強い町で、「父親も兄も弟もみな海軍」といった家も多くあるし、人々は軍を大切に思っている。そのような町を拠点とする軍人の1人が、英軍と敵対する暴力主義の組織(テロ法に指定された「テロ組織」でもある)のためにあのようなことを行なっていたという事実に、人々は驚愕と怒りを隠さない。

番組はここから、「キアラン・マックスウェルの2つの顔」に迫っていく(ここまでで10分)。

2011年に精鋭部隊である海兵隊に入った彼は、米国やキプロス、ブリテンに配属され、軍人としての前途は明るかった。しかし彼は、実際には、トーントンの英軍基地に来る前に既に、裏の顔を持つようになっていた。「マックスウェルは完璧なスリーパーだった」とナレーションは言い、北アイルランド警察のアシスタント・チーフ・コンスタブルであるスティーヴン・マーティン氏(判決後の報道記事でもよく見かける人)が捜査で判明した事実を語る。マックスウェルがいかに巧妙に活動していたか……。国防省で対テロのチーフを務めていた元軍人(北アイルランドでの最高位経験者)のチップ・チャップマン氏も、1人何役もこなせる能力を持った軍人が実はテロ組織のために働いていたということが持つ意味を語る。

海兵隊員であることはハンパなことではない。身体的にも精神的にも大変なタフさが要求される。そういうエリート部隊の一員、実直な軍人として高く評価されていたマックスウェルは、やがてトーントン近郊に婚約者とともに暮らすようになり、子供ももうけた。まさに前途洋々、立派な軍人として安定した未来がひらけていた。しかし、彼には同僚や友人、家族には決して見せない裏の顔があった。2015年にはマックスウェルは、ボムを製造し武器を蓄え、軍・警察・司法など攻撃の標的となりうる施設などについての情報を集めるというテロリストとしての活動を始めていた。集めたマニュアルなど文書類は、ラーンの祖母宅に持っていっていた。文書類ばかりか、ボムの部品も。

チャップマン氏は「軍の精鋭部隊の一員は自信にあふれている。マックスウェルはその自信をテロ活動に持ち込んだのだろう。軍人は何かをしても名前が出るわけでもないが、テロ活動でも同じように匿名の存在でいられると考えて」と語る。

そのまま誰にも気づかれずに活動を続けていられたはずだったが、2016年の春、マックスウェルが子供時代をすごした場所からさほど離れていない自然公園の林の中に埋めた武器類が、この林を訪れた人によって偶然発見される。地面から何かが突き出しているのに気づいたその発見者は、それが青いバレル型容器だとわかると、好奇心から中を確かめてみて腰を抜かした。中に入っていたのは作業用つなぎ、防塵マスク、デジタルタイマー……どう見てもボムメイカーの所持品だったのだ。警察が現場に急行し、証拠品を押さえた(その写真が細かく紹介されている)。

番組ではここで、発見された物品や組み立てられたパイプボムについて、元海兵隊員や元爆弾処理班の人の解説を入れている。要は、キアラン・マックスウェルが組み立てていた爆発物は、相応の知識があれば作るのは難しくはなく、おもちゃではない。彼がやろうとしていたのは、最近北アイルランドで見られるディシデンツのボムを大幅に上回る威力を持つ爆発物での攻撃で、それは最終的には、テロリズムの世界的な基準で見ても大規模な被害をもたらしえた。

発見された物品がマックスウェルにつながったのは、彼のDNAが残されていたからだった。何年も前に(暴行事件の被害者となったこととは別件で)刑事事件に関連して捜査対象となった彼のDNAは、警察のデータベースに残されていた。そのときは彼は不起訴となっているのだが、この事実は「なぜそういう人物が海兵隊に入れたのか」という新たな疑問を引き起こす。

さて、最初に林の中で爆弾製造に使われる物品が発見され、現場からマックスウェルのDNAが出てきたあと、マックスウェルは密かに監視対象となった。そして約2ヵ月後の2015年5月、さらに人里離れた丘陵地帯の森の中で、第2の武器庫が見つかった。これを発見したのは、この森の中で家族とキャンプを楽しもうとしていた軍人だった。アフガニスタンを経験しているこの軍人は、地面が何か不自然なことに気づいた。そこから発見されたのが、深く掘られた穴に埋められたバレル型の容器。そしてその中には……手製の装甲貫通弾(最初にイラクとアフガニスタンで確認された技術で作られている)や対人地雷のようなものが入っていた。こんな威力の高いものが人で混雑した市街地で使われたらどんなことになっていたか……。それだけではない。爆発物に仕込んで殺傷力を高めるためのボール・ベアリングも、プラスチックの容器にたっぷり入ったのが出てきた。今回もまたマックスウェルのDNAが発見され、見つかった弾薬類は彼の所属する基地から出ていることがわかった。

では海兵隊員にとってこういったものを盗むことは可能なのか。元海兵隊員のポールさんは「簡単にアクセスできるし、やろうと思えばできる」と言う。

このころには警察はマックスウェルを厳重な監視下に置き、MI5は北アイルランドのディシデント・リパブリカンによるブリテン島でのテロ警戒レベルを引き上げた。ラーンでの大量の武器発見とテロ警戒レベルの引き上げは、まあ、普通に考えればつながっているのだが、そういうことは公式筋ははっきり認めはしない。しかし番組では専門的知識のある人たちが「関連はあるでしょうね」といったことを語っている。

ここまでで23分半ほど(一度区切りが入る)。

2016年8月には、当局がマックスウェルの一挙手一投足を監視するようになってしばらく経過していた。彼が北アイルランドだけでなくイングランドの今暮らす地域にも武器庫を作っていることは明白になっていた。そして同年8月24日、基地で昇進の話を受けるはずだったマックスウェルは警察の尋問を受けた。その1時間半後にはまた武器庫が見つかった。

番組ではここでこの一件の重大性と衝撃について、ここまでコメントしてきた警察官や元軍人といった人々のコメントが入る。テロ活動に必要な道具を1人で全部セットで揃えていたという点で前例のないこの事件は、北アイルランド紛争史においても特異だが、特にトーントンの軍人コミュニティにとって、海兵隊員があのような二重生活を送っていたということは、心理的に大きなダメージを与えるような形でショッキングなことだということが生の言葉で語られる。同じ画面の別のタブでイエメンやシリアにおける空爆による破壊の光景を見ているこちらとしては、「人を吹き飛ばすボムを軍人が作るなんて……」といったコメントに若干皮肉な思いを抱かずにはいられないのだが、この人たちの言葉に嘘があるとは思わない。しかし、今も確実に存在し活動しているディシデント・リパブリカンは、ここに《欺瞞》を見るだろう。キアラン・マックスウェルの逮捕・起訴・禁固刑は、彼らの目には《弾圧》と映るだろう。キアラン・マックスウェルは彼らにとって、英軍と英当局に一泡ふかせた豪傑であるだろう。

番組は「余罪」について進む。マックスウェルが栽培していたカナビスは、ラーンで売りさばく目的だった。マックスウェルが盗んだ銀行カードやID、運転免許証の個人情報は、厳しい訓練をともに耐え抜き、信頼の絆で結ばれていたはずの同僚たちのものだった。この所業は、「人として最低」である。

番組ではまた、キアランの両親にも接触し、ステートメントを受け取っている。
The former Marine’s parents Teresa and John released this statement to Up Close condemning the actions of their son.

They said: "We utterly condemn what Ciaran has done. We are in deep shock and cannot comprehend it.

"We have only known Ciaran as a loving son and a loving father who had a very bright future ahead of him. This makes what he did so difficult to understand.

"We fully supported his decision to join the Royal Marines and were so proud when he achieved it.

"From an early age Ciaran was taught the difference between right and wrong and he crossed the line. The extent of his criminality is devastating and horrifying.

"We were completely in the dark about what Ciaran was doing and still ask ourselves why.

"Ciaran is our son but he is responsible for his own actions and he has been held accountable.”

http://www.itv.com/news/utv/2017-08-29/psni-confirms-new-ni-dissident-terror-group-after-up-close-investigation-into-ciaran-maxwell/


キアラン・マックスウェルは軍人として明るい未来が開けていた。そのキャリアを捨ててあのような行動に出たのはなぜかという点について、番組では29分辺りから扱っている。量刑申し渡しの法廷で判事は「証拠不十分なので断定はできない」としながら、「被告がディシデント・リパブリカンへの共感と、英国への憎悪によって動機付けられていたことには疑いはない」と述べた。つまり、ガチで思想的なコアのあるテロリストだということだ。

また、彼が「ローン・ウルフ」だという主張も、法廷では完全に崩れた。CIRAとマックスウェルの関係はどうやら間接的なもののようだが(両者にコンタクトのあるアソシエイトを通してつながっていたという)、マックスウェルに組織的背景がなかったという主張は成り立たなかった。

続いて番組が30分になったころに、画面に「2013年2月27日」と日付が入り、風光明媚な海辺で警察が現場を調べている映像が入る。場所はラーンだ。ここで言及されている人名が聞き取れなかったので日付と地名で検索してみたら、この記事が見つかった。
http://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-21621579
A 23-year-old man has been arrested in Larne in connection with dissident republican activity.

The arrest is linked to an ongoing security operation at Britannia Crescent in the town.

Army bomb experts were called to examine a suspicious object lying close to a row of houses at lunch-time on Thursday.

On Wednesday night, there was a small explosion outside a house nearby. A fence was damaged.

Police are examining the scene of the blast in Seacourt Road.

--- Larne explosion 'linked to dissident republicans'
28 February 2013
http://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-21621579


事件発生時は「ディシデントの暴力ではなく地元の人々のいさかいだ」という主張もあったのだが、最終的にはディシデントの暴力であるということが判明していたようだ。ただし、この事件で逮捕された人物の裁判の結果を報じるBBC記事(下記)には、「ディシデント」の文字も「リパブリカン」の文字もない。

A County Antrim man has been jailed for three years after police last year discovered explosives never before found in Northern Ireland.

Niall Lehd, 25, of Seahill Road, Larne, pleaded guilty to possession of explosives and having a firearm or ammunition in suspicious circumstances.

He was arrested after a bag of "sensitive high explosives" was found on a doorstep in Larne.

The judge said that the case was "bizarre" but also a "serious matter".

He told Lehd: "I do not consider you dangerous. There is more a risk to yourself than to others."

Belfast Crown Court heard that DDNP (Diazodinitrophenol) was among the material found in Lehd's possession.

The prosecution said DDNP had never before been recovered in Northern Ireland.

--- Larne man, Niall Lehd, jailed for three years for 'high explosives' find
1 July 2014
http://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-28115405


UTVの番組の映像で私が聞き取れなかった人名は、Niall Lehdであることで間違いない。この人物が所持しているところを現行犯で捕らえられた高性能爆薬は、上述のとおり、これまで北アイルランドでは見つかっていなかったDDNP(日本語ではジアゾジニトロフェノール)という爆薬で、この爆薬はキアラン・マックスウェルの武器庫からも出てきている。

この件について何も把握していなかったので調べてみたら、マックスウェルの判決が出た翌日、8月1日付でアイリッシュ・ニューズのアリソン・モリス記者が詳しく書いていた。(しかしNIの武装組織についてがっつり書いてるのって、最近目立つのが、紛争ど真ん中世代の大ベテランは別として、若い世代は女性記者ばっかりなんだよね。)
Larne man Niall Lehd, arrested in February 2013, after a bag of high explosives was found in the town, told police he had found the material stashed in a blue barrel in a field near his home. It included the explosive compound DDNP, which was the first time it had been found in Northern Ireland.

The short jail term Lehd received would indicate neither police nor the court classed him as a major player.

However, during Maxwell's Old Bailey trial, Lehd was painted as the mastermind behind the illegal stockpiling and claimed to be a man with connections to dissident republicans, something that doesn't bear out in reality.

Lehd, is not a high profile dissident, nor is he known as such.

The Continuity IRA, with whom the court were told Maxwell made contact, are a spent force, existing in name only and in small numbers in Limerick and Armagh.

If Maxwell intended to supply arms to a republican group who posed a risk to national security, his reach needed to go beyond the CIRA.

What contact Maxwell had made with other groups or individuals will no doubt be of interest to police on both sides of the channel.

And dissident groupings may not be so quick to boast about acquiring military grade weapons or bomb making technology, if it's suspected that technology was being acquired through collusion with a serving member of the British army.

--- Allison Morris: The story of former Royal Marine Ciaran Maxwell is bizarre, even by Northern Ireland standards
01 August, 2017 01:00
http://www.irishnews.com/news/2017/08/01/news/analysis-unusual-tale-of-commando-turned-terrorist-raises-questions-1097736/


つまり、2013年2月にDDNP所持で現行犯逮捕されたニーアル・レードは、持っていた爆薬は家の近くの野原で見つけた青いバレル型容器に入っているのを見つけただけだと供述し、裁判の結果、有罪にはなったものの量刑は短かった。このことは、警察も法廷もレードは小物だとみなしていたということを示唆していた。しかしそれが一変したのがマックスウェルの裁判だ。ここではレードは武器備蓄のマスターマインドとして描写され、ディシデント・リパブリカンとつながりのある人物だとされたが、現実にそんなことがありうるのかどうか。

そもそも、法廷では「キアラン・マックスウェルはCIRAとつながっていた」とされたが、CIRAという組織はもう過去の存在で、リマリックやアーマーに名前だけ、少数の集団として残っているだけだとアリソン・モリスは書いている(この人のこういう情報は信頼してよいと思う)。「もしマックスウェルが、国家の安全にとって危険なリパブリカンの集団に武器を供給する目的を有していたのなら、その行く先はCIRAでは全然足らなかっただろう」。

事実がそうである場合、判決後の報道記事で繰り返され強調されている「CIRAとのつながり」は、普通に考えてミスリードを目的とした情報操作だ。今回は武装勢力とつながっていたのがただのテロリストではなく現役の軍人なのだ。私たちが目にしている公開の場の情報は、国家安全保障に害を与えないように調整されたあとのもので、それはおそらく《真実》そのものではない(《嘘》ではないにしても)。

その点について調査を進めたのが、判決から1ヵ月後のUTVの番組だ。ビデオで30分から後の部分でその話になる。
Maxwell's dissident connections are no longer in doubt, but not everyone is convinced the Continuity IRA, which doesn't pose the threat that it once did, is the only player in this.

(ナレーションの文字起こし)


元国防省対テロのチーフも、爆発物処理のプロフェッショナルも、マックスウェルのケースの背後はCIRAなどよりもっと大きなものだと確信している。「ローン・ウルフなどというものは存在しない」、「たった1人でこの規模のことをやれるとは考えられない」。マックスウェルの武器庫は8つの地点に43箇所(バレル型容器が43個ということか)。

今明らかになっていることは、たぶんまだ、事件の全容ではないのだろう。2013年2月にラーンでつかまった男が、当時は「小物」と見られていたのに、実はそうではなかったらしいということが2017年の別の被告の裁判で明らかになったように、まだこれから、「あのときのあのテロリストは、実は……」というふうにわかってくることもあるのだろう。

※すいません、再度書きかけ。あとでアップします。

※書きました。2017年9月5日夜追加↓↓↓

マックスウェルは最終的には自分の罪を認めたが、最初から洗いざらい白状したわけではなかった。少しずつ認めていき、最終的には8地点43箇所もの武器類の隠し場所が判明したのだが、その事実が意味するのはこれらの隠し場所が「少なくともこれだけあった」ということだ。「これで全部」と考えてよいという根拠はない。当局によるディシデンツに対する監視や浸透作戦の手は、マックスウェル1人が有罪になったことで緩められるものではない。

当然のことだ。

近年、ネットとテロリストという点では、「イスイス団がTwitterやTelegramを使って組織の宣伝と人集めをしている」とかいったことが語られる(特に声の大きなアメリカの対テロ専門家のような人たちによって)が、ディシデント・リパブリカンはTwitterが規制をかける前のイスイス団より大っぴらにネットを使っている(それは北アイルランドでは別の側、つまりロイヤリスト側の武装組織・テロ組織でも基本的に同じ)。Twitterのように行動パターンがばればれなところではあまり見当たらないが、「Web 2.0」で喧伝されたブログや初期のSNS(MySpaceのほか、日本のMixiのようなものが世界各地で隆盛していた)、YouTubeのチャンネルといったものは普通に検索結果に引っかかって出てくる。それらは、大前提として、合法な活動(政治団体・政党としての活動や個人の自由な発言)での名義だが、合法・非合法の境目は、ネットでは(というか「発言」という形ではリアルとネットを問わず原則的に)さほど明確ではない。北アイルランド紛争関連のビデオを探してたどり着いたYouTubeのそれ系アカウントがアップしたビデオのコメント欄には、マックスウェルがWi-Fiのパスワードにしていたあの言葉が並んでいたりするが、その中にはその言葉が「単なる発言」ではないものもあるかもしれない。ディシデント・リパブリカンは、ローカルな脅威ではあるかもしれないが国際的脅威・グローバルな脅威ではなく、イスラム過激派のように声の大きな対テロ専門家やメディアによって騒がれはしないが、確実に存在はしている。

その「存在」を見せようとするかのように、彼らは北アイルランドの路上にパイプ・ボムを置いている。それらのパイプ・ボムの中には、現役の英軍人であるマックスウェルが作ったものがあった。そしてマックスウェルは逮捕され、ディシデンツは有能な調達係にしてボム・メイカーを失ったが、英軍の中に「マックスウェルだけなのだろうか」という疑念の種を撒くことに成功した。

このケースがいかにとんでもないことであるか。

UTVの番組でコメントしている爆発物処理専門家は、キアラン・マックスウェルが1人で集め、備蓄していた爆薬などについて「いかなるテロ組織にとっても大変に有用 extremely useful for any terrorist organisation」であり、彼は「誰にとっても、とても重要な資産 a massive asset to anyone」だと述べている。

Any. 確かに、どんなテロ集団も、このような人材は、のどから手が出るほど欲しいだろう。

番組はここでCMブレイクになり、このあとの10分ほどが最終パートだ。

トーントンの町で行なわれる軍隊パレードの映像に乗せて、「軍から武器弾薬類を盗み出していた海兵隊員はキアラン・マクスウェルが最初ではないが、リパブリカンで、しかもディシデントなのは彼が最初である」というナレーションが入る。単なる横流し目的の窃盗ではなく、軍を攻撃対象として計画をめぐらせる者たちの一員が、その目的のために窃盗を働いていたということだ。

そのことは事件発覚の当初からわかっていた。マックスウェルが逮捕されたときに、単に逮捕が報じられただけの段階では「売りさばく目的で武器類を盗み、窃盗罪で逮捕された」という可能性を第一に考えたが、すぐに「テロ法で逮捕された」ということがわかったので、「こりゃ横流し目的の窃盗犯じゃなくて、ガチじゃないっすか……」となったのだ。





だが、英国で「テロ法」が適用されたということは、「どのテロ組織とつながっているのか」という問いに直結する。「テロ法」は、基本的に、同法で定める「指定テロ組織 proscribed terrorist organisation」の活動を取り締まるもので、組織的な背景のない個人が「テロ法」で逮捕されることは、理論上、ない。2016年6月にジョー・コックス議員を刺殺したトマス・メアが「テロ法」ではなく普通に「殺人罪」で有罪判決を受けたのは、第一義的に、メアが「テロ法」で指定されているどの組織とも関係がなかったからだ(その当時は、英国では極右組織は一切、「テロ法」でテロ組織として指定されていなかった。その後、2016年12月末にNational Actionがプロスプライブされている)。逆に、人を殺傷するなどという重大なことをしていなくても、イスイス団メンバーである夫に送金していた妻が「テロ法」で有罪となる(「テロリスト」となる)のは、「テロ法」がイスイス団を「指定テロ組織」に入れてあるからだ。

番組の最終パートはその点に関する調査報道のまとめだ。

このパートの構成はなかなかに複雑だ。まず、リパブリカンの「攻撃対象とする英国という国家のカネを受け取りながら、英国によって軍事的な訓練を受ける」というプラグマティズムとでも言うべき態度について、歴史家のエイモン・フェニックス博士が解説している。いわく、そういうことはずっと以前から行なわれており、例えば1916年イースター蜂起指導者のジェイムズ・コノリーは元英軍人だった。また(ここでも「両側」の話をしなければならないというのがあまりにも北アイルランド的だが)、ロイヤリズムは英軍の伝統と深く重なっており、UVFであれUDAであれ、北アイルランドだけでリクルートされ、北アイルランドに配属される英軍部隊(UDR)と完全に混ざり合ってるようなこともあったし、そこにコリュージョン(英当局とロイヤリストの癒着・結託)という問題が生じていた(この文脈でパット・フィヌケン殺害事件に言及するフェニックス博士も、その発言を番組のオンエア版からカットしないUTVも、立派だと思う。こんなん、NHKが天皇のお言葉から「放射能」への言及を全カットしたときにマスコミ様の中の人たちが「どこがおかしいのかわからない」とTwitterで発言しまくっていた日本だったら、「自粛」するのが当たり前で、その発言がカットされたことについて疑問の声が上がったとしても、マスコミ様の中の人たちは「本筋と関係のない部分をカットするのは通常の編集だ」と正当化し、彼ら自身、その手法を何も疑わないだろう)。

そして、マックスウェル事件で法廷に示された証拠写真をみっしりと貼り付けた壁(先ほどから何度も画面に登場する)の前で、記者が「このマックスウェルはもう活動していないということは大きな安心材料です。しかしそもそも、なぜ彼は軍隊に入れたのか。なぜこんなに長期間、ブリテンと北アイルランドを行き来していても、何も発覚せずにいられたのかという問いが残ります。また、当局がイスラム過激派に注力するあまり、国内 (home-grown) のテロリストが見過ごされているのではないかという重大な疑問も生じます」。

「テロリスト」はイスラム過激派だけではないのにイスラム過激派の話ばかりになっていて、北アイルランドのテロ組織のことは忘却されている――これは北アイルランドの人や、北アイルランド研究者・元在住者のように同地に特別の関心を払っている人は普通に感じていることだろう。実際、キアラン・マックスウェルについて報じるニュース映像をYouTubeで見ると、コメント欄は「白人がテロリストだなんて!(棒読み)」といった、書いてる本人には感情の発露として有益なのだろうが、他人にとっては読んでもしょうがないような、情報量として完全にゼロの、手垢のつきまくった《皮肉》の言葉ばかりが並んでいる。

その皮肉は「有色人種は《テロリスト》と呼ばれ、白人は《精神に異常をきたした人物》と呼ばれる」といった9-11以降のアメリカン・スタンダードが世界に蔓延した結果、世界に広まった皮肉でもあるのだが(←リンク先は「イスラム教徒あるある」を題材として活動するフランスの漫画家のアメリカについての風刺漫画)、少なくとも2005年7月7日のときは、そのようなアメリカン・スタンダードは英国、特にイングランドでは冷笑をもって受け止められていた(記録してあるとおりだ)。しかしその7/7からももう12年が経過している。今では、「白人がボム作ってるテロリストだなんて!」という《皮肉》の言葉は、「IRAの爆弾テロ」という文脈を失った(あるいはそれが見えなくなった)空間で、《皮肉》であることすら忘れられている。

2001年9月11日にアメリカであんなことが起きるほんの何週間か前、ロンドンではパブがディシデント・リパブリカン(当時はそんな呼ばれ方はしておらず、直接的にReal IRAと組織名で呼ばれていたが)のボムの標的となっていたのだ。だがその攻撃は、誰も殺さず重傷者も出しておらず、それゆえ単に忘れられている。実際には、あの爆弾攻撃がもくろみどおりに行なわれていたら、実にとんでもないことになっていたと思われる。ただ、爆発物(ボム)が設置された場所が、週末の夜をパブで楽しんでいる人々を直撃する場所とはほんの少し離れていただけだ。その活動がおさまったのは、9-11があまりにインパクトが大きかったということや、9-11によって「テロ」というものが何をするのかを改めて見せ付けられたことでIRA系組織を支援することをやめたアメリカ人が多く出たということの影響で、彼らIRAを名乗る組織の側が自分たちの活動を諦めたわけではない。

それに、2001年までさかのぼらなくても、今もまだリアルタイムで、ディシデント・リパブリカンの活動によるボム事件や銃撃事件は、北アイルランドで毎週のように発生している。それらの多くは、かつてのように街中の繁華街ではなく、地元の人しかいないような住宅街で起きている。

そのため、北アイルランドの外では、そんな「テロリストたち」は不可視である。

MoDの対テロ部門の元トップ、チャップマン氏は、ブリテンと北アイルランドとでは温度差があり、軍隊の新兵採用で危険人物でないかどうかを確認するときにイスラム過激派の背景について洗うことはあるが……ということを語る。

元海兵隊員のポール・トリーナー氏は、「イスラミスト、ジハディストがこんなボムを作っていたら、数日間は新聞一面で大騒ぎになるでしょう。しかし、英国の(ブリティッシュ)一般の人々は、今もまだ北アイルランドではディシデント・リパブリカンの活動があるのだということは知りもしないのでは」と語る。

ロンドン警察コマンダーのディーン・ヘイデン氏は「決して軽視しているわけではない」と述べ、記者からの「まだ他に、キアラン・マックスウェルがいるという可能性は」との質問に、「組織内から腐ったリンゴを完全に排除することは現実的にできない」というような答えをする。

北アイルランド警察のアシスタント・チーフ・コンスタブルのスティーヴン・マーティン氏は、「今回の件は学ぶべき教訓の多いケースで、マックスウェル以外にも網をくぐり抜けた者がいるのではないかということは、unlikelyであってもpossibleである」という答え方をしている。

つまり、誰も明確に否定できないのだ。(この点について明確に否定することは、もちろん無責任なのだが。ディシデント・リパブリカンでなくても、例えばイスラム過激派だったり、極右過激派だったりといった可能性もあるのだから。)

もしこの人たちがイスラミストについてそんなことを言っていたら、デイリー・エクスプレスとかが大騒ぎするだろう。しかし、彼らが語っているのは、北アイルランドのディシデント・リパブリカンの脅威についてだ。ほんの数百人しかいない、もう終わってる集団のことなど、誰が気にするだろう。新聞がそんなことを書きたてたところで、(北アイルランドの外、あるいはアイルランド島の外で)誰がその新聞を買うだろう。

UTVはこの番組を制作するにあたり、国防省(MoD)にインタビューを申し込んだが断られたそうだ。代わりに受け取ったステートメントは下記のような内容で、つまり特に何も言っていない。

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また番組は、2013年にラーンで爆発物所持で逮捕され、そのときは「小物」扱いされたがキアラン・マックスウェルの法廷で重要証人となったNiall Lehdにも話を聞こうとしたが、断られたという。

マックスウェルがイングランドから北アイルランドに爆発物などを持ち込んでいたということで、北アイルランドではこれはまだ「終わった話」ではない。何も一件落着などしていない。北アイルランドでのディシデンツの脅威レベルは "severe", 2016年に5人が殺害され、2010年以降160件のテロ攻撃が行なわれている。4週間ごとに2件という計算になる。

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そしてそのような活動を続けるディシデンツの集団は、常に流動的だ。キアラン・マックスウェルを失ったことはディシデンツにとって打撃ではあるが、そうなったらまた別のソースを探すまで。そういう現実は、北アイルランド警察もロンドン警察(英国全体の「テロ」部門がここにある)も認識している。

爆発物処理専門家のガレス・パウエル氏は「こんなにすごい規模の武器庫は見たことがない」と重ねて強調し、「脅威はsevereであり、これが特定の武装集団のために用意されたのなら、その集団はすぐにも北アイルランドにおいてsubstantialな規模の破壊をもたらしうるということを意味する」と語る。

そして最後のパート。キアラン・マックスウェルの裁判では、コンティニュイティIRA(CIRA)にフォーカスが合わされたが、警察は「状況は流動的である」と見ている。ディシデンツは組織内部の権力闘争や内輪もめはしょっちゅうで、集合離散を繰り返している。ディシデント・リパブリカンの組織としては、CIRAのほか、いわゆるNew IRA(元Real IRAといくつかの小集団が再編)があるが、それに固定されているわけでもない。

考えてみれば、キアラン・マックスウェルが裁判で全てを明らかにしたわけでもなく、裁判で彼がCIRAのために働いていたと結論されたのは(「テロ法」で指定されている組織のいずれかとの関係を明確にする必要があってのこととはいえ)、事実に照らしてみたときには正確とは言いがたいことかもしれない。

番組の最後で、取材班が「これまで存在が明らかになっていなかった新たなディシデンツの集団」のことをつかんだ、ということが語られる。

この点について、この番組のことを紹介するUTVの記事(というか形式的にはITVの記事になるのだが)では、「新集団はキアラン・マックスウェルのケースとは別」と強調していた。しかし普通に論理的に考えれば、「集団は固定されていない」という事実と、「マックスウェルはCIRA」という法廷での結論との間には矛盾があり、あとはまあ大人の事情だということはわかる。

番組のこのあとの部分で語られること(映像もないし分量もない。シャロン・オニール記者の言葉だけ)は、UTVで記事化されているので、聞き取りができないという場合もそちらを読んでいただいた方がよいだろう。

PSNI confirms new NI dissident terror group after Up Close investigation
www.itv.com/news/utv/2017-08-29/psni-confirms-new-ni-dissident-terror-group-after-up-close-investigation-into-ciaran-maxwell/

ちなみに、ここまで何度も登場していた元MoD対テロ部門チーフのチップ・チャップマン氏はディシデント・リパブリカンがいかに進展してきたかについての専門家で、紛争期に北アイルランド駐留だったばかりではなく、1998年和平合意(グッドフライデー合意)後の英軍の撤退においてもキーとなる役割を果たした。「ディシデンツの脅威」について英軍の立場で精通しきった人である。そのチャップマン氏は「ブリテン(GB)の人は北アイルランドのディシデンツの脅威をほとんど知らない。未然に防がれた攻撃がいくつあるかといったことを知れば、みなびっくり仰天するだろう」と言う。

テロテロテロテロと大騒ぎするメディアは、北アイルランドにはもう関心は抱いていない。政治の世界だって北アイルランドなんかに関心を持っていない(だからテリーザ・メイの2016年総選挙後の愚かな方針が首相官邸内部での検討で留まらず現実化されたのだし、Brexit後のアイルランド共和国と北アイルランドのボーダーをどうするのかということについてデイヴィス大臣が「ハイテクを利用すれば検問所なんか作らなくても大丈夫」とかいう呑気なプランを口にしてみたりするのだ)。オリンピックでの "Team GB" など、「英国(UK)」の自称として最近流行っている「GB」という言い方自体に、「北アイルランド」への無視と無関心が含まれている(地理的に、GBにはNIは含まれない)。ブリテンの人たちのほとんどは、そのことにたぶん、気づいてすらいない。

だからこそ、ディシデンツは何かをしようと画策しているはずだ。自分たちの存在を誇示し、恐怖をばらまくために、北アイルランドのことが完全に忘れ去られている今の社会的ムードは、よいバックグラウンドになるだろう。

番組の締めくくりは、「テロリストに浸透されていた英軍」について、トーントンの元軍人たちがそれぞれに思いを語り(「私が所属部隊名を言えば、きっと、『ああ、あのディシデント・リパブリカンが浸透してたところですね』という反応が返ってくるでしょう」)、キアラン・マックスウェルが英軍内の「内なる敵」であったことを改めて確認して終わる。

見終わった私は、「キアラン・マックスウェルだけだろうか」という問いを噛み締める。人間が人間である以前に「プロテスタント」か「カトリック」かであるような北アイルランドのセクタリアニズムは、彼の上に身体的な暴力となって降りかかり、それが残した心的外傷はやがて憎悪となり、そしてこのような行動に結びついた。彼の作ったボムは、北アイルランドで人を殺傷していたかもしれない。そういう「テロリスト」は、明らかに、キアラン・マックスウェルだけではない。ではそういうバックグラウンドを持ちながら英軍に入り、密かに武器弾薬類を盗んで溜め込み、爆薬でボムを作るようなことをするテロリストは……?

それに、テロ組織はディシデント・リパブリカンの組織だけではない。イスラム過激派もいれば極右もいる。それに、「テロリスト」は、法的には「テロ組織」との関係がなければならないのかもしれないが、リアル世界では組織的背景云々など関係ない。北アイルランド紛争でも「フリーランスのガンマン」を名乗るテロリストはいた(マイケル・ストーン……彼の場合はUDAやUFFとのつながりがあったのだが)。イングランドでときどき摘発されてきた極右思想を持つ爆弾犯(未遂)は、組織的背景はないが、政治的暴力を画策していたという点では「テロリスト」だ。そういった人々はどうなのか。「政治的目的を達するため爆弾が必要で、爆弾に興味があるから、軍人になりたいと思った」ような人はいないのか。

キアラン・マックスウェルのケースは、そういった疑問を次々と提起する。ただし、情報統制・制御が行き届いていたこともあって、英国では「ヒステリックな大騒ぎ」にはならなかった。それだけのことだ。

マックスウェルは刑期を満了してもまだ40代だ。老眼も始まっていないくらいの年齢だろう。そのころまでに、名称はどうであれ、リーダーが誰であれ、フィジカルフォース・リパブリカニズムを信奉するディシデント・リパブリカンの集団が消えているとは考えづらい。

これがフィクションだったらいいのに、と思う。



以上、書きかけのものを仕上げる作業をしようかなと思っているところに、英軍内部で極右テロ組織NAのメンバー4人が逮捕されたという報道があった。そちらについてはまた別項で書くが、とりあえず、連ツイしたものは下記にぶら下げてある。
https://twitter.com/nofrills/status/905013375825977344

※この記事は

2017年09月01日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:00 | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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