「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2018年12月06日

ナイジェル、UKIP辞めたってよ。

2016年6月のEU離脱可否を問うレファレンダムで「離脱」陣営の(非公式の)顔としてすさまじい存在感を(メディアのおかげで)発揮しておきながら、レファレンダムから10日ほど後にはUKIP党首という責任ある立場を辞めていたナイジェル・ファラージが、このたび、UKIPをすっぱり辞めたという。

その「辞めた」という宣言を、テリーザ・メイがEUとの間でやっとのことで合意し、英国会に持ち帰った離脱プランに関する討議の初日(予想されていた以上の、すさまじい荒れ具合を見せている)にぶつけてくるあたり、おぬしもワルよのう……なんだけど、ナイジェル・ファラージがどんなことを画策してきたところで、今さら驚くには値しない。ああ、そうですか、という程度だ。

しかし、UKIPと手を切ることにした理由が、UKIPの現在のリーダーシップが、「トミー・ロビンソン」という活動家名で知られるEDL創設者(実名はスティーヴン・ヤクスレイ=レノン)を党に招じ入れ、彼の「反イスラム」のレトリックを党のレトリックとしようとしていることだ、という辺り、「驚く」とかじゃなくて何というか、ただ呆れて言葉を失うよりなくなってしまい、逆に言葉が大量に噴出するという感覚だ。

ともあれ、この件を私が知ったのはロイターの速報で、そのあとでガーディアンの記事を読んだのだが、ロイター記事とガーディアン記事が「ナイジェル・ファラージとは誰か」という点においてまるで違うので、それをここに書きとめておこうと思う。


なお、英国の報道機関は「保守党支持」とか「労働党支持」といった政治的なスタンスがはっきりしているのが常で、「中立」というか「不偏不党」の立場からの報道といえばBBC、というのがお約束であるが、ことBrexitに関しては、BBCは完全に「Brexit支持」のスタンスで、とうてい「中立」とは言えない。

ロイターなど経済系のメディア・通信社は「EU離脱しないほうがいい」という基調はあるにせよ(ビジネス界と同様に)、BBCよりはよほど「中立」の視点に近いと感じられる。

だが、そのロイター、ナイジェル・ファラージが欧州議会議員(MEP)であることを完全にスルーしている。それどころか「活動家」扱いで、いやあ、ここまで思い切ってしまっていいのなかと不安になるほどだ(不安になるのは、私が英メディア全体的に見られる異様な「ファラージ上げ」に慣れすぎているからだろう)。

Brexit campaigner Nigel Farage quits UK Independence Party
DECEMBER 5, 2018 / 3:15 AM
https://uk.reuters.com/article/uk-britain-eu-farage/brexit-campaigner-nigel-farage-quits-uk-independence-party-idUKKBN1O32D0
Brexit campaigner Nigel Farage said on Tuesday he was leaving the United Kingdom Independence Party which he used to pressure the ruling Conservative Party into gambling on a Brexit referendum.

Farage, as UKIP leader, put pressure on former Prime Minister David Cameron to promise an EU referendum and then helped lead the successful campaign to leave the bloc.

But after stepping down as UKIP leader following the referendum, Farage has been critical of the party which he cast as disorganised and poorly led.

“I am leaving UKIP today,” Farage said. “There is a huge space for a Brexit party in British politics, but it wont be filled by UKIP.”

Farage criticised a decision by the current leader, Gerard Batten, to appoint far-right activist Tommy Robinson as an adviser. ...


デイヴィッド・キャメロンが(愚かにも)EU離脱可否を問うレファレンダムを実施するということを2015年総選挙で公約に掲げた経緯は私は記憶していないが(2015年当時、その報道は見たことは確かだが、「あの英国人がEU離脱などというドラスティックな変化を選択するはずがない」と思っていたので、読んだだけでほとんど注意は払っていなかった)、UKIPという党とナイジェル・ファラージのような人物が保守党の外からプレッシャーをかけたせいというより、保守党内部のEU懐疑派をキャメロンは無視できなかったからではなかったか。その点、ロイター記事のこのナラティヴには、ひっかかりを覚える。

それに、ファラージがMEPであることをここまですっぱりと無視してよいとは思えない。

ロイター記事を一読してそういう「感想」を頭の中で整理し終えたときに読んだのが、ガーディアンの記事だ。

Nigel Farage quits Ukip over its anti-Muslim 'fixation'
Tue 4 Dec 2018 18.48 GMT
https://www.theguardian.com/politics/2018/dec/04/nigel-farage-quits-ukip-over-fixation-anti-muslim-policies
Nigel Farage has quit Ukip after 25 years, saying the party he led to its greatest election successes was now unrecognisable because of the “fixation” with the anti-Muslim policies of its leader, Gerard Batten.

Farage, who took Ukip to third place by number of votes in the 2015 election and significantly shaped the ground for the Brexit referendum, said he was dismayed by Batten’s policies and his decision to appoint the far-right campaigner Tommy Robinson as an adviser.

Writing in the Daily Telegraph, Farage condemned Batten’s decision to throw Ukip’s support behind an anti-Brexit demonstration in London on Sunday organised by Robinson and his associates, saying it was likely to “inspire violence and thuggish behaviour”.

“My heart sinks as I reflect on the idea that they may be seen by some as representative of the cause for which I have campaigned for so much of my adult life,” wrote Farage, who regularly contributes a column to the newspaper. “The very idea of Tommy Robinson being at the centre of the Brexit debate is too awful to contemplate.

“And so, with a heavy heart, and after all my years of devotion to the party, I am leaving Ukip today. There is a huge space for a Brexit party in British politics, but it won’t be filled by Ukip.”


このような導入部(ガーディアン記事原文には細かくリンクが入ってるので、記事原文をご参照ください)に続き、ガーディアン記事では、英語記事ライティングの流儀としてはしごくまっとうな関係詞節による挿入を駆使しつつ、ファラージが「下院議員に7回立候補して7回落選している」とか、「いまだにMEPを続けている」とかいったことを述べ、UKIPが「反イスラム」という毒薬を美味しく食ってることを説明している。

UKIPの「反イスラム」性なんて、何を今さら、という話だけどね。

UKIPは、2016年7月にファラージが党首を辞めたあとは凋落の一途をたどり、ごく短期間の間に党首が何度も変わっているが、その有為転変のなか、「反イスラム」の活動家のなかでも最も過激な部類に入るアン・マリー・ウォーターズが党首選に立候補したこともあった(落選はしたが)。UKIPの党員の中には、そういう思想を抱いている人々が無視できないくらいに多くいるということだ。

現在のUKIP党首であるクリス・バッテンという人は、「反イスラム」を党に受け入れることにためらいがないようだが、ガーディアンの記事では、今回のこの流れでUKIPを離脱する党員がそれなりにいるだろうという感触だ。

UKIPを離れたファラージは、「Brexitで必要とされている党」を自身で立ち上げるんだろうか……ということについては、ガーディアン記事では触れられていない。UKIPからの分派というと、ロバート・キルロイ=シルクのVeritasというのがあった(短命に終わった)。TwitterではUKIPpersは「クリス・バッテンが党首になってUKIPは党勢を回復している」と主張しているのを見るが、それってガチの極右(BNPとかNFとかEDLとかEDとか)からの流入がそれなりの規模で起きているってことっすよね。

いずれにせよHe must be happy, he must be happy...





なお、本稿、対訳をつけていないことで「不親切」との言説がまたばらまかれるかもしれませんが、無視します。なお、ファラージがUKIP党首を辞めたときの記録に関し、下記のようなことを言われましたが、「翻訳なし」というのは事実無根です。




こういうのに貼りつかれるかと思えば、どっかで知らない弁護士が「無断翻訳がぁぁぁ」と吠えている。さて、うちらはどうすりゃいいんでしょうね。

※この記事は

2018年12月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 08:00 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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