何とわかりやすい。(・_・)
……と思って、そのときはもう一度寝た。だがその後も何度か「荷物が重いという夢」を見ることになった。今どきのギプスは、昔の石膏製とは違ってグラスファイバー製で軽いと説明されはするが、日がな一日装着していればやはり重い。しかも何日もの間ずっと着けているわけで、そのころには骨折にともなう炎症の痛みなのか、腕を同じ形にしているため、およびギプスの重さを支えているための筋肉痛なのか、何が何なのかわからなくなっていた。
受傷後1ヶ月を経過して、そういう「うなされる」ような状態もおさまってきたし、ギプスも取れた(最初は「お風呂に入るとき以外は着けていてください」だったのが、しばらくして回復が順調であることが確認された段階で「家の中にいるときは外して、日常動作の中で肘の曲げ伸ばしをしてください」となり、その次にはギプスなしで日常生活を送るようにと指示された←今ココ)。まだ手首の回転はしてはいけないし――人間の体の構造上、肘の関節内の骨折で、手首の回転ができなくなる――、肘に力が加わるような動作はできない(ずっしりくる荷物は持てないし、手をついて体重をかけるようなことは絶対にだめ)が、理学療法を受け、教えられたストレッチやマッサージをしていくうちに、徐々に関節の稼動域が回復しつつある。それでもまだ、90度くらいしか曲がらないので、「右肘を曲げて右手で右肩を触る」というような動作はできないし、右手で食事もほとんどできない。それでも、先週までは大きな(長い)フォーク&スプーンを使っても左手でしか食事できなかったのが、今週は(子供みたいな持ち方をして肘を高く持ち上げねばならないとはいえ)右手でも何とか食事できるようになったし、右手で鼻の頭を触るという動作もできるようになった(約1ヶ月ぶりに右手をそえて鼻をかめたときには「おお」と思った)。顔の角度を工夫しさえすれば、パウダーとブラシで眉毛も右手で描ける(既に、眉毛くらいは左手で書けるようになっているのだが)。当面の目標は右手でお箸を使い(もう1ヶ月以上、お箸で食事していない)、アイラインが引けるようになることだが、そこに到達するにはまだまだ時間がかかるだろう。
そう、前方不注意の自転車に思い切り衝突されて転ばされただけで、こんなにも長期にわたり、こんなにも不自由な生活を強いられる。
以下はそのディテールの記録である。単に「片手が使えない」というだけでは想像のつかないようなディテールだ。単に「一時的に片手(それも利き腕)が使えない状態になった」といっても、抽象的に何となく想像してみるのと、実際にそれを体験してみるのとでは全然違うというか、想像が及ばないところが生活動作の細部のあちこちにある。そういったことを記録しておこうと思う。
なお、私は20年ほど前に、重度の腱鞘炎をやっていて、右手の手首を完全に固定して2ヶ月ほど過ごした。親指を動かす動作に伴う腱鞘炎で、ヒトがヒトとして進化したときからヒトとして欠かせない動作のひとつとなっている「手のひらを親指の付け根を向かい合わせる」という動作を禁止されたため、右手では本当に何もできなくなった。その頃、何をどのようにして生活していたのかをどうにも思い出せなくて(「喉元すぎれば熱さ忘れる」だ)、そのため今回はこうして書いておこうと思った次第である。書いて公開しておけば、きっと誰かの役に立つだろう。あるいは自分の。
受傷して2週間以上経過した時点で骨折自体の痛みはなくなっていて、ギプスでの固定もうまくいっていて経過は順調で、キーボードも「打って打てなくはない」状態(左手だけで打っていた状態)から「まあまあ打てる」状態(両手が使える状態。まだキー操作が不自由なところがある)になってきた。動かせる部分は動かしていないとあとから動かなくなってしまうので、理学療法を受けながら、日常の中で無理がかからない程度に動かしていた。本稿はその段階で書き始めたものをベースにしている。
書き始めた段階での私のケガとその状態だが、ケガは右腕ひじの関節の中の骨折(俗に言う「ひび」だが)。ひじ上5センチほどの位置から手のひらの真ん中までの長さのギプスがあてがわれていて、手首は全く動かせないが指は普通に動かせるようになっていた。それでも、最初は指に負荷をかけると腕に痛みがあったのだが(例えばマウスの操作ができなかったので、しばらくは左手でマウスを扱っていた)、受傷して2週間後の時点ではそれも消えていた。ひじも、ギプスを当てたままで曲げ伸ばしができる範囲なら動かせる(角度にして5度か10度くらいだが、これができるとできないとでは大違い)。ただし手首を回転させる動きはギプスの限界内であっても厳禁なので、「右手でドアノブをつかんで回す(回そうとする)」ことはできない。骨折が精密検査ではっきりわかる前に、これをやろうとすると激痛が走るので、「自分のケガはただの打撲などではないな、腱を傷めてたらものすごく面倒だな」と思っていたのだが、幸い、腱には問題はない(だから指を動かしてもOK。その点、腱鞘炎よりは自由度が高い)。
「右手でドアノブをつかんで回す(回そうとする)」ことができないなら、左手でドアノブをつかんで回せばいいじゃない。その通り。受傷以降、私の日常はそのように左右反転し、家の中がいろいろと使い勝手が悪い。ノブがついていない扉もの、例えば冷蔵庫や電子レンジの類も使いづらい。左右関係なく使えるのはガス台くらいだ(魚焼きグリルにスキレットを入れて、村井さんのぎゅうぎゅう焼き的なものを作ると手軽でよい。私の場合、全部野菜と豆だけど)。
というわけでドアノブは、使い勝手が悪くはなるものの不自由はない。使いづらいのも2日もすれば慣れてしまう。しかし「ドアノブをつかんで回す」ことができなくなると、普段の生活の中ではなかなか意識しないような、同様の動作もすべてできなくなってしまい、これが不便だ。水道の蛇口は左手で操作すること自体は別に不便ではないのだが(普段もそのときどきの動きによって左手を使っている)、「蛇口の下に左手でやかんを持っていって、右手で蛇口をひねって水を出し、必要なだけ入れたら右手で蛇口をしめて、左手のやかんをガス台の上に置く」という動作をすべて左手でやると、「左手で蛇口をあけて水を出し、蛇口の下にやかんを持っていき、必要なだけ水が入ったらやかんをガス台の上に置き、それから蛇口をしめる」ということになるので、水がかなり無駄になっていると思う。
それから、瓶のふた(スクリューキャップ)を開けるということができなくなる。普段は右手でふたを持ち、左手で瓶本体を持って右手でひねっているのだが、実はこのとき、意識していなくても、左手にもひねりの力が加わっている(作用と反作用だ)。だから単にふたを持つのを左手に変えただけでは、どうせ右手をひねることになってしまい、厳禁されている動きをとることになる。500mlのペットボトルくらいのサイズがあれば、両膝の間に挟んで固定して左手だけで開けることができるし、わさびのチューブくらいの軽さ&小ささなら左手だけで開け閉めができるのだが、のりの佃煮が入っているような普通の瓶が開けられない。ケガが治るまでにマスタードの賞味期限が切れてしまうだろう。(´・_・`)
缶詰は、昔は缶切りが必要で片手では開けられなかったが、最近はありとあらゆる缶詰が「パッカン」スタイルになっているので、左手だけで行けそうな気がするだろう。私もそう思ったので、ひよこ豆の水煮缶をパッカンとやろうとしたのだが、まず、あのパッカンがなかなか硬くて左手だけでは開けづらい。スプーンの柄などを利用し、てこの原理で輪っかの部分を持ち上げて「パッカン」と開けるところまではスムーズに行けても、その先、ふたをめりめりとはがすところが片手ではできない。右手は指先は動かせるのだから缶を支えられそうなものだが、あのように「力を加えてふたを開ける」という動作に組み込まれると、右手の角度をどのように工夫しても必ずどこかで「ひねり」が加わるのだろう、激痛が走ってしまい、とてもじゃないが缶を押さえることなどできないし、缶のフチで手を切りそうだ。というわけで、左手だけで開けられるところまで開けて(2センチくらい)、ふたを持ち上げ、中身をボウルに空けるという方法をとった。
ひよこ豆の缶詰だからそれができたけど、例えばツナ缶のようなものだったら缶のふたをもっとたくさんあけないと中身が取り出せない。そのようなとき、片手で無理にあけようとすると手を切ってしまうだろう。しかもツナ缶(だけでなく、缶をあけたらすぐ食べられるような調理済みのもの)は油(や調味料)でつるつるしていて危険だ……そんなことは、実際にやってみないとわからない。「包丁が使えないから缶詰のおかずを食べよう」と考えて、パッカンと開けるところまでやって、先に進めず……ということはありふれていることだろう。
あけられないといえばプラスチックの密封容器(タッパーの類)があけられない(材質・形状によっては、あまり力をいれずにあけられるものもあるが)。これも地味に困る点で、うちは顆粒のだしのもとや、だしパックのようなものを個別に密封容器に入れてあるのだが、それらが使えないため、UMAMIを知らぬこのキッチンで、気分は果てしなくロンドナー♪……って、違う、そんなメシは不味い。というわけで、いわゆる「スティックタイプ」の顆粒だし(下記のタイプ)を買ってきた。これなら、スティック状の個別のパッケージは、右手で持って、無理な力を加えることなく左手で開封できる。投入量の調整も、利き手じゃなくても難しくない。
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ハサミは、普段使っているもの(右利き用)が左手で使える。ぎこちなくはなるし、切り口がナナメったりするが、パッケージをあける程度なら全然問題ない。
包丁は全然使えないわけではない。右手の指は普通に使えて力がかけられないだけなので、指でしっかり包丁を持って、左手で上から押さえつけて切るとか(キャベツや小松菜はこうやって切ればいい)、包丁を持っておいてまな板に置いた食材を動かすとか(トマト、キュウリのような切れやすいもの)。包丁で皮をむくような繊細な作業はできないが、4つに割ったリンゴの芯を、V字型に切れ込みを入れて取り除くくらいのことはできる(これも包丁を動かすのではなく、リンゴのほうを動かす)。ただし固い食材は調理ができない。レンコン、かぼちゃなどが食べたければ、野菜売り場ではなく惣菜売り場に行くことになる。ほうれん草は旬だからたっぷり食べたいのだが、洗って茹でてアク抜きをして……というプロセスを左手だけでできる気がしないので、冷凍野菜に頼っている。ほうれん草を買うついでにブロッコリーも買っている。今年は冷凍野菜のほうが安いから何もなくてもこういう生活だったかもしれない。小松菜は冷凍ものは美味しくないし、調理もそれほど手間ではないので(洗って切って炒めるなり、電子レンジで茹でるなりすればよい)生のを買っている。
調理のとき菜箸は左手ではあまり使えないので、スプーンやフォーク、へらを使うが、元々そんなに繊細な料理作りはしないので(盛り付けを問わなければ)できばえは変わらない。「菜箸を含め、箸っていうのは便利なものだなあ」と実感する日々だ。
肉は一切口にしないし、魚もほとんど食べないので、この程度包丁や菜箸が使えれば、食事の支度はまあまあできる。(私の場合、「肉を食わない」というのは大前提なので――チキンエキスやラードなど肉の形がないものもダメ。たまにそういうのが入ってるのを知らずに口にしてしまうと、半日ほど胸焼け・吐き気に苦しむことになる――、こういうふうにケガをしていても、「外で買ってきたお惣菜やお弁当、冷凍食品で済ませる」ということが基本的にできない。むろん、それが普通なので別に困ってない。)
問題は食べるとき。左手ではどうやってもお箸が使えず、全部フォークとスプーンだ。受傷して10日ほどは痛みのため右手は文字通り「箸より重いものは持てない」状態だったため、子供みたいに食器をテーブルに置いてフォーク&スプーンで食事していたが、2週間後には右手を食器に添えることくらいはできるようになった(でも手首の向きが変えられないので、食器が動かないように支えていることくらいしかできない)。左手を使ってフォークでスパゲッティをくるくる……くらいのことは元々簡単にできるので、こういう状態は不便だが、問題があるほどではない。そもそも家で食事するのだったら、手づかみで食べられるものが片手で作れる。サンドイッチとか、強引なおにぎらずだ(乾いたまな板の上にサランラップ……を引き出して切るという単純なことが片手ではほぼ無理なのでポリ袋をただ平らに置いてラップ代わりにして……海苔を置き、ご飯をのせて、その半分の部分に「しらす干し、水菜、ごま、マヨネーズ」みたいな感じでご飯に置いてから適当にあわせればいいような具を乗せて、ご飯on海苔を半分に折りたたみ、台の上に広げておいたポリ袋でくるんでなじませておけばよい)。
食器洗いには、300円均一の雑貨ショップ、3 Coinsで4つ入り300円で売ってるねこちゃんスポンジが使いやすかった。たまたま買ってあっただけで、こういうことは予想していなかったのだが、握力がなくてもスポンジを手に持っておける形状は、けが人だけではなく高齢者にも向いているに違いない。スポンジとしての性能もよいし、見た目もかわいい。別のメーカーから魚型の「おさかなスポンジ」も出ているが(うちの場合、近所のスーパーのキッチン用品売り場にある)、これもただの四角いスポンジとは違って、力を入れずとも手で持てる形状だ。
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私の場合、普段はスポンジを持った右手を、左手に持った食器の上を動かして食器を洗っているが、ケガをしたあとは、右手でスポンジを持ち、そのスポンジにあてがうように左手に持った食器を動かすようにして洗っていた。そうすると、元々握力が弱い左手で泡だらけの食器(割れ物)を持って、けっこう複雑な作業(食器洗いって、腕や手を複雑に使うんですよ)をこなすことになり、うっかり落として割ってしまったらこれに切り傷も加わってめっちゃ大変なことになるなと気づいたため、炊事用のゴム手袋も新たに調達した。掃除に使うゴワゴワガバガバしたタイプのではなく、薄手で手にフィットし、滑り止めがついているタイプの炊事用のゴム手袋が100円ショップで売られているのでそれを買ってきた。しばらくの間は痛い方の手には痛くて装着ができない(けっこうきつめなので)状態だったが、左手だけでもそれを使えば安定するのでよかったし、やがて痛みがおさまってからは右手にも装着するようにし、そうすることでギプスや包帯が濡れるのを防ぐこともできて快適になった。
それから、前の記事に書いたのだが、「靴下の左右を合わせて口ゴムのところをくるっとひっくり返す」といった日常動作ができなくなっていた。靴下に限らず、くるっとひっくり返す動作はできず、つまり台所仕事のときに袖をまくってあげておくことができなくなったので、単に肘の上まで袖を引っ張り上げておくしかなかった(輪ゴムも使えなかったので、ずるずると落ちてくるたびに引っ張り上げることになる)。そういうことがいちいち不便だったし、イラつきの原因にもなった。
で、洗濯した靴下を物干しから外したあと、そのまま置いておくと絶対にどこかに行ってしまうため、まとめておく必要が生じるわけだが、そこで使えるのが洗濯ばさみだった。上述のひどい腱鞘炎のときは、洗濯ばさみなんて右手では絶対に無理だったが(同様に事務用品のダブルクリップなども使えない)、今回の骨折では洗濯ばさみ程度は、一番痛みが強かった時期は別として、ギプスを装着したままでも何とか使えていた(ダブルクリップは、小さなものしか使えなかったが)。
意外なところでは、パンの袋の口を留めておくクリップも、右手では痛くて扱えない(&不器用な左手で扱おうとするとぴょーんと飛んでいってしまう)ため、パンの袋も洗濯ばさみで留めた。ジップロックのようなファスナーつきのビニール袋が一見便利そうに思えるが、実際にやってみると片手では開けづらいし閉めづらいので、それよりは普通の袋に洗濯ばさみのほうが都合がよい。
というわけで何でも何でもかんでも洗濯ばさみで留めていたら、家中の洗濯ばさみが出払ってしまった。補充しなきゃ、というわけで近所の100円ショップを見てみたら、40個も入って100円で売ってる。40個もいらないけど、どうせ経年劣化するものだしお得♪とよく見ずに買ってきたら、それが、洗濯ばさみの上のほう(使う時に指で押さえるところ)に滑り止めの溝がない。
普段ならともかく、今のようにケガをして力が入れられない状態では、滑り止めのない洗濯ばさみはつるつると指から逃げてしまって使いづらい。安いには安いなりの理由が…… (-_-;) と思いつつ、簡易的に、自分で滑り止めをつけることにした。やり方は単純で、洗濯ばさみの上の部分(手で持つ部分)に、事務用のカッターナイフを軽く当てて、隠し包丁のような切れ込みをごく浅く入れるだけ。これも、右手にカッターナイフを持ち、左手に持った洗濯ばさみのほうを動かして作業。切れ込みをあまりたくさん入れすぎるともろくなってしまうだろうから、ほどほどに(写真に撮ったのはたくさん入れすぎたもの)。
【左が今までうちにあった洗濯ばさみ。滑り止めつき。右が今回買った洗濯ばさみ(隠し包丁を入れたもの)】
ほか、日常生活で困ったのは、靴。靴ひもなんて当然結べないから、冬場によく履いてるハイカットのスニーカーは論外。かかとの部分に右手の指を入れて履く習慣がついてるスリッポンも、右手でその動作ができず、左手でそうしようとすると時間がかかるし、予想外に不便だ。というわけで、サイドファスナーの足首丈のブーツか、クロックス的なサンダルのどちらかだ。こないだ東京で大雪が降ったときは、もう基本的にギプスなしになっていたが、雨靴(足首までの丈のサイドゴア・ブーツ)は何だかんだ手で引っ張り上げないことには履けないので、履くのにいつもの倍以上の時間がかかった。
履くといえば冬には欠かせないレギンスやタイツの類。これが、受傷直後は履けなかった。「引っ張り上げる」という動作が基本的にできないためだ。丈の短いものなら、左手だけで何とかなるのだが、防寒のためのレギンスやタイツは長くて無理。そのため、ひざ上丈のものを新たに購入し、膝下はレッグウォーマーと足首丈のソックス(ハイソックスも引っ張り上げが必要なので、着用できなかった)にロングスカートという装備となった。ひざが覆われないので寒かった。 (;_;)
ここ数日の大寒波(東京都23区内でも軽く氷点下という日が続いている)に際しては、もう痛みがなくなってきてギプスも取れているので、丈の長いレギンスなどを着用できているが、一番寒い時期に痛みのある時期が重なっていたら、冷えから風邪を引くなどもしていただろう。
幸い、肩は無傷で肘から上は問題ないので、荷物を肩にかけて歩くといったことはほぼ普段どおりにできていた。肩が動かせなくなるようなケガだったら、不便さはこんなものではあるまい。
……と思っていたときに、右をカバーするために酷使していた左腕の上半分、特に肩のあたりが痛むようになった。今までに経験したことのないような痛みで、これでは両手が使えなくなってしまう (;_;) と途方にくれかけていたのだが、左腕は湿布を貼っておいたら1日で軽快した(湿布を貼るのが大変だったが……左手で左肩に湿布を貼ったのだ。今やろうとしても、湿布がふにゃふにゃしてまともに貼れないのだが、どのようにやったのだろう)。右腕が使えない分、全身のあちこちに負担がかかっているから、できる範囲でストレッチを行うなど、気をつけていないといけない(受傷してしばらく、ギプス装着+三角巾で腕を固定という状態にあったときは、腕を使えない分の負担が、背中や腰にかかっているのを感じた)。左手の指も酷使しているので、マッサージ、ストレッチやテーピングをしている。最近になって、右の肘を90度まで曲げた状態で肘から先を少し動かせるようになったので、お風呂に入ったときなど右手で左の肩のマッサージもできるようになったので、負担がかかった分のケアは前よりできていると思う。
あと、お風呂。右手首を使えないと、「石鹸を手にとって両手で泡立てる」とか、「シャンプーを泡立てて頭のてっぺんに手をやる」といった動作がうまく取れない。洗顔の泡立てネットもうまく使えない。一方、ポンプボトルも「左手を下に構えておいて、右手でポンプを押す」という動作ができないので、なかなか不便だ(上記の動作は全部左手だけ。洗顔に使っている固形石鹸は、石鹸置きに置いたままで左手でなでるようにし、左手をくしゅくしゅして泡立てている。いっそ石鹸をお地蔵さんの形にして、なでなでして泡立てて顔につけるようにすれば、何かご利益があるものとして売れるんじゃないかとか考えたりしている)。また、浴用タオルで背中を洗うということができないので、柄の長いボディブラシが必要になる。
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バスタオルは、普段は木綿のを使っているのだが、背中が「両手でタオルの両端を持ってごしごしする」ようにしないと拭けない。気温が高い時期なら何となくタオルをかけておいて自然にかわかせばよいのだが(上述した腱鞘炎のときはそうしていた)、今は真冬なので水気はすぐにふき取らないと風邪を引いてしまう。さて困った……と思ったところで思い出したのが、マイクロファイバー(ポリエステル)のバスタオルだ。一度使ってみようと思って近所のディスカウント屋で500円以下で買ったものの、使い心地が好きになれずほっといたのがあるので、それを引っ張り出してみた。マイクロファイバーのタオルは、木綿のタオルと違い、ゴシゴシしなくても肌に当てただけで水気を吸い取ってくれるので、背中にファサーっとかけて、左手で背中全体を適当にとんとんするだけで水気が残らずにふけていた。これはお風呂から出るなりそのまま裸で家の中を走り回る子供にまきつけておくのにもちょうどよいだろう。(マイクロファイバーは繊維が尖っているので、ごしごしすると肌を傷つけてしまう。ぽんぽん、とんとんと押さえるように使うのがよい。)
はさみは、大きなキッチンバサミも含め、左手でも不自由なく使えているし(パッケージ開封とか、湿布を2つに切るとかいった大雑把なことしかしないからだが……細かい作業となったら右手でないと無理だろう)、爪切りも大き目の、力をあまり使わずに使えるタイプのを使っているので不自由はない。髪は長くしてまとめていたのだが、ゴムやバレッタ、クリップなどを使って「髪の毛をまとめる」という日常動作が取れなくなったので、片手でケアできる長さにカットしてもらってきた。
と、そんな感じだ。右手が使えないとペンで文字を書くことが満足にできないし、カメラ(コンデジ)は普通の持ち方ではシャッターを切れないので上下逆にして、左手の親指でシャッターボタンを押すなどしないと操作ができないなどの不便な点もあるが、そういった動作は別にしなくても困らない。
以上、骨折のようなケガをした場合でも、あるいは麻痺の場合でも、単に「右手が使えない」というだけではなかなかわかりづらい部分の記録として。
追記: 思い出したこと。
【布巾】台所の調理台などを拭く布巾。いつもは普通に「濡らす→絞る→拭く→洗う→絞る」というサイクルを繰り返しているのだが、右手が使えないと「絞る」という動作ができなくなる。20年前の腱鞘炎のときはどうしていたのだろうと不思議に思うが、記憶していない。多分、布巾を水道の蛇口にかけて、左手でぐるぐるとねじるようにして絞っていたのではないかと思う。あるいは左手だけでぎゅううっと。普通の布巾の布(蚊帳生地など)なら左手だけでもわりと十分に絞れるが、日常生活全体で左手を酷使して左手を痛め気味になっていたので、今回は不本意ながらキッチンペーパーを使い捨てにする場面がわりと多かった。調理台の上の水を拭きとるくらいならセルロース素材の布巾が役立ったが、フライパンを使ったあとのガス台の油ハネなどはキッチンペーパーで拭いてポイ。
【目薬】ただでさえPCの画面を見っぱなしの時間帯が長く、常にドライアイ気味なのだが、空気の乾燥が激しい冬の時期はそれがいっそうつらくなる。蒸しタオル(濡らして絞ったタオルをレンジで30秒チン)を目に当てるとよいのだが、「濡らしたタオルを絞る」という動作ができず、左手だけで何とかしようとしてもびしょびしょの濡れタオルができるだけで難しかった。よって頼れるのは目薬のみ……ということになったのだが、左手だけで目薬をさすのは難しかった。でも私は先端恐怖はないので、ただ目を開けておいて左手で目薬の容器を持ち、目薬をさすということが(的を外すようなことはあっても)まあまあできていた。それができない人は、介護用品扱いでかなりお値段が高いのだけど、片麻痺の人が自力で生活するための道具として開発された片手で目薬をさせる器具がAmazonなど通販サイトにある。あるいは、介護用品店にあるかもしれない。うちの近くのドラッグストアには、そのような品物はなかった。
【洗顔】お風呂に入るときの洗顔は問題ないのだが、右手首が返せないと、洗面所で顔が洗えない。洗おうと思えばできたのかもしれないが、左手だけでは周囲を水浸しにしてしまう。というわけで、朝は水と石鹸を使った洗顔ではなく、ふき取り化粧水でふき取るという洗顔に切り替えることになった。元々冬期の乾燥した時期はそうすることが多い。基礎化粧品を使わない人で「ふきとり化粧水」も「化粧水」も区別がつかないという場合、困った時はドラッグストアで尋ねれば教えてくれると思う。ネットで検索するとSK-IIなどお高いブランドのものがたくさん出てくるが、「スキンケア」というより「洗顔」で使うなら安いもので大丈夫。おばあちゃんの家みたいな香りが気にならなければ資生堂のオイデルミン(取り扱いのあるドラッグストアが非常に少なくなっている)、香りがないほうがよければちふれのふき取り化粧水が入手しやすい。洗顔後に使う普通の化粧水(肌を整える用、保湿用)ではふき取りの役には立たないので注意。
【パソコン(キーボード、マウス)】上述したとおり、しばらくの間キーボードはほぼ左手だけで打っていた(右手はEnterのみという感じ)し、マウスも左手だったのだが、マウスを右手に戻した当初はギプスで固められている角度とマウスの操作のための角度があわず、痛みが出た。これを解消するために、マウスパッドの代わりに小箱を置いて、高さを上げて調整した。たまたま小箱があったのでそれを使ったのだが、なければCDケースや新書などを積み重ねて調整することになると思う。この台を使うようにして、マウス操作がかなり楽になった(が、ギプスで固めた手はむくんでしまうので、動かしづらいことは動かしづらい)。
【読書】本を広げてキープし、ページをめくるという動作がいかに手首に負担をかけるものなのか、思い知ることになった。こうなると電子書籍様様である。
右腕のケガは順調に回復途上にあるのですが、右の手首を動かしてはいけない状態のままなので、本を読むという動作が難しいんです。普段は意識しないと思いますが、本のページを開いて持ち、ページをめくるのって、手首をかなり使っているんですね。薄い新書でも分厚いハードカバーでも同じ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) January 20, 2018
そのため年末年始に読むつもりだった本が積読のままで、読んでるのは電子書籍です。例えばデボラ・リップシュタットのDenialの文庫本は紙で買ったのですが、かなり分厚いのでけがをした手ではページを開いて持っていられなくて途中まで読んだところでストップ。電子書籍で買っとけばよかった(´・_・`)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) January 20, 2018
【髪の毛】「とりあえずお団子にしておけば何とかなる」系だったものを短く切ったのだが、切っただけでは済まない。整髪料の類は好きではないのだが、何もしないと爆発頭になってしまう。美容師さんには「ヘアワックスは乾燥するからムースがいいよ」と言われたのだが、ムースはどうがんばっても片手では使えない。なので、うちにあったやわらかめのテクスチャーのヘアワックスを使ってみるが、片手ではほんとに難しい。もう少しやわらかくて伸びのよいものを求めてドラッグストアに行き、ヘアクリームを買ってきた。これなら片手でもわりと難なく使える。
ルシード・エル デザイニングチューブ モイストヘアクリーム 150g by G-Tools |
※この記事は
2018年01月29日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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