「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2019年03月04日

「モモ・チャレンジ」は、心配のあまり、大人たちの反応が過剰になった事案。「フェイクニュース」ではなく。

この2月末、一度見たら目に焼きついてしまうような奇怪な顔写真のついた報道記事のフィードが、Twitterで私の見ている画面にいくつか流れてきた。往年の「口裂け女」と貞子を合体させたような顔写真で、フィードされている記事はガーディアンのものだった(ガーディアン記事のTwitter Cardで表示される写真が、その奇怪な顔のものだった)。「うげ、何じゃこりゃ」とは思って記事URLをクリックして読んだ記事の内容を、いくつかのツイートに分割して投稿し始めた私は、それを途中で中断して投稿したツイートを全部消した。この件については、連続したツイートの一部だけが拡散されても困ると思ったからだ。

というわけで、さくっとツイッターに流して終わるということにはできなかったのだが、かといってブログに書くこともしなかった。「書くほどのことではない」というより、正直、「書くにしても、どこに重心を置けばいいのか」ということがわからなかったからだ。メディアが別のメディアを批判したりしている声がでかかったし、過去に類例があったのを思い出してその記事の外でネット検索で調べてみたがはっきりしないことが多くて、何というか、全体像をつかみかねてしまっていた。

が、この騒動の発端近くにいたのが北アイルランド警察だった(そして「ねとらぼ」に北アイルランド警察のFBのキャプチャが載っていた! PSNIの「ねとらぼ」デビューなんて、想定外すぎる)という奇遇も手伝って、全体を見渡してみることができた。

下記に書いてある。

「こんな怖い話を聞いたんですけど……」で始まったネット上の "都市伝説": 「モモ・チャレンジ」とは
https://matome.naver.jp/odai/2155168676005142901


問題の奇怪な顔写真は使わないように編集してある(画像を非表示にしてある)ので、そういうのがいやな人が見ても大丈夫だ。私個人はそういう編集はあまりしたくないのだが、ああいう「衝撃画像」的なインパクトのある写真を何度も何度も繰り返し目にすることが精神衛生上よくないということは自分の体験からもわかっているので(イスイス団の暴力の最盛期に本当に懲りた)、「検閲」と批判されるかもしれないが、画像を非表示にした。英国のメディアはそういうところは配慮せず、がんがん奇怪な写真を使ってくるので、けっこう消耗する。(元々、例えば米国のメディアより、何というか、センスがアレだし。)

要は、以前ネットで子供たちの間で流行ったものが、今ごろになって親の耳目に触れ、FBから地域メディアを経て無責任な全国メディア(タブロイド)のクリック稼ぎ記事の濫造につながり、ますます「モラル・パニック」が……ということが起きたようだ。PSNIはその情報の広がりにおいて、重要な役割を果たしてしまうことになったが、警察としては普通に「いつもの注意喚起」をしただけにすぎないようで、それがコントロール不能なほど拡散されてしまったわけだ。その要因は、ほぼ確実に、インパクトがめちゃ強いあの奇怪な顔写真だっただろう。あの写真がなければ、ここまで拡散されるような話じゃなかったのではないかと思う。それだけ恐ろしさを感じさせる……というか「子供がこんなのを見たら大変」という感覚を引き起こすだろうなというような写真だった。

なお、その奇怪な顔写真は、日本人の特殊効果アーティストが作った立体作品のもので(道理で「べたっとした黒髪」の質感が理屈以前の気持ち悪さを感じさせたはずだと納得した)、数年前にネット上の一角で話題になっていたらしい。その写真が「モモ・チャレンジ」というゲームで「モモ」として勝手に使われていたとのことで、「DL違法化でキャプチャ画像もアウト」とかいうのが現実になったらどうなるのかな、とちらっと思うなどしている。ゲームに取り込んだのが日本とは縁のない外国人である場合、そのゲームのキャプチャを日本人がブログで紹介したら、元の作者さんの著作権を侵したということになるのかな。

いずれにせよ、「モモ・チャレンジ」なるものの脅威の実在は確認できていないということで、恐怖を煽る言説について、自殺防止の活動をしている団体の人などが「フェイクニュースだ」と述べているということがねとらぼさんの記事でもその言葉のままで紹介されていたが、ここで団体の人が「フェイクニュース」という言葉を使うセンスが私には信じられないというか、あまりに『1984』的でくらくらしてしまった(自殺防止団体には「自殺さえしなければなんでもいい」的なところがあるからね……あんまりものを考えていないというか、考えないことが美徳になっていそうなところがあるのは、サマリタンズの監視アプリ騒動のときによくわかった)。

今回の「モモ」のことは「フェイクニュース」ではなく「根拠のない噂」だ。それも「もしも子供が危険な目にあったらどうしよう」という大人の心配が高じて過剰に反応してしまうことから来た「騒動」だ。

「モモ・チャレンジ」というゲーム(遊び)自体は実際に存在しているのであり、それは「フェイクニュース」ではない。ただそれについての過大評価がパニックを引き起こした、というだけの話だ。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

※この記事は

2019年03月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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