「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年07月03日

2003年、英国は「ヨーロッパ」として語ることを拒絶していた。

EURO 2016のベスト16に「アイルランド」が2つも入ってたために空気中にホコリより多くのアイルランド成分が舞っていた日々の余韻も冷めやらぬなか、東京では映画『ブルックリン』の公開が始まった。アイルランド出身で、現在は米コロンビア大学と英マンチェスター大学の教授をつとめるコルム・トビーン (Colm Tóibín) の小説を、サーシャ(シアーシャ)・ローナン主演で映画化した作品で、1950年代にアイルランドの小さな町から米国の大都会、ニューヨークに渡ったひとりの若い女性のドラマである。予告編の開始1秒から成分が漂い出す(日本版のは吐息を響かせる系の甘ったるい女性のナレーションといかにもな映画音楽のせいで元の作品のコアの部分が伝わらないため、英語版のを貼っておく)。



映画の原作の小説は、日本でも翻訳出版されている。
ブルックリン (エクス・リブリス)ブルックリン (エクス・リブリス)
コルム トビーン 栩木 伸明

Brooklyn マリアが語り遺したこと (新潮クレスト・ブックス) 異国の出来事 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション) キャロル (河出文庫) ワンダー Wonder

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さて、東京でも35度を超えた日曜日の午後、何気なくamazonのページで「コルム・トビーン」のほかの本を確認してみると、『ブルックリン』と『マリアが語り遺したこと』の2冊しかない。ほかにもあるんじゃないかと図書館横断検索などして見つけたのが、下記の本である。

4862651488ヨーロッパは書く
ウルズラ ケラー
鳥影社ロゴス企画 2008-08

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2008年に出されたこの翻訳書(学術書)の「内容」欄には、次のようにある。
拡大するEU、グローバル化、ヨーロッパの文学は今、いかなる状況にさらされているのか。33カ国の作家たちがそれぞれの立場で論じる。


この「33カ国の作家たち」に、アイルランドのコルム・トビーンも入っているわけだ。英国があんなことになった直後に見ると痛みすら覚えるが、おもしろそうな本だ。それにしても「33カ国」とは多い。現在のEurovision Song Contestよりは少ないかもしれないが、EU(欧州連合)よりは多い。2008年に学術書として翻訳出版されているということは、原著は2005年ごろのもので(実際には2003年であることがあとで判明した)、そのころの「ヨーロッパ」で、EUは「拡大」していたばかりでなく、「統合(インテグレーション)」を強めようとしていた。具体的には(最終的にはポシャって、代わりに「リスボン条約」という形になった)EU憲法の時期だ。今回の英国でのEUレファレンダムに際して「離脱」派が「国家の主権を侵害する超国家(スーパーステイト)に反対する!」と絶叫していたが(下記に例をいくつか)、彼らの言っていることは基本的に、10年以上前の「EU憲法条約」の批准手続きをめぐり、代議制に頼らず、加盟国の国民による直接投票で決定すべきと要求していた人々(英国やフランスでその声は大きかった)の言っていたことと同じであり、6月23日以降、何となくぼんやりと2000年代半ばのことを思い出したりしている……。

superstate.png


などということがたぶん1秒もかからずに頭をよぎり、この本の目次が見てみたい、いや、見なければ、と画面に目を走らせていた。次の瞬間には、amazonで「なか見検索」ができるようになっていることに気づいた。

「33カ国」には当然英国は含まれているだろう。誰が出ているのだろう。カズオ・イシグロだったりするかな――そう思って、わくわくしながら「なか見検索」で目次を見た。

文章のタイトルと、作家の名前と、「33カ国」の国名が並んでいる。アイスランド、ロシア、オランダ、ルーマニア、ポーランド、スロヴェニア、フィンランド、イタリア、スペイン、デンマーク……

あ、あれ? (・_・)

もう一度見る。

「イギリス」という文字列を探すのではなく、「英国」や「連合王国」で探さねばならないのかもしれない。まさか「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」と表記しているわけではないだろう(もしその表記だったら、即座に見つけられる)。

目を皿にして、真剣に画面を見る。 (o_o)

……あ、あれ? (^^;)

私が知りたかったことは、「なか見検索」で読めるpp. 7-8の「ドイツ語版の序文」に書かれていた。Amazonにログインしていなくても読めるので、EUであれ、地理的概念としてのそれであれ、「ヨーロッパ」に関心がある人は、ぜひ読んでみていただきたい。当時(2003年以降の数年間)の「世界の中のヨーロッパ」を、ニュースに出てきたものとしてでも記憶しておられる方は、いろいろなことを思い出すだろう。

ラム爺ビ〜〜〜ム!

(とか言ってると「不謹慎だ!」と怒られるんだよね)






冒頭に微妙に戻る。そもそも本稿はアイルランドについて書いていたのだ。




下記は、EURO 2016進行中にふと立ち寄った100円ショップ「ダイソー」で見て、次の瞬間には手にとってレジに並んでいた「成分」乱舞の手ぬぐい。現在、PCの電源を落としたあとのキーボードの防塵担当として活躍してもらっている。

shamlock.jpg

※この記事は

2016年07月03日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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