「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2019年02月20日

根拠のない楽観論を吹き飛ばしたはずのホンダのスウィンドン工場閉鎖が、よりいっそうのプロパガンダの機会となっている件。

自動車メーカーのホンダ(本田技研)が、欧州唯一の生産拠点である英スウィンドンの工場を2021年に/2022年までに閉鎖するということが、おとといSky Newsなどで報道され、昨日、ホンダの正式なステートメントで確定された



スウィンドンはイングランド南部、ウィルトシャーにある都市で(ただし「シティ」の格は持っていない)、人口は2011年のセンサスで18万人程度。お手軽にウィキペディアによるとホンダのほか、ミニ(BMV)の工場があり、さらにドルビーやインテルといった企業が拠点を有しており、金融機関やエネルギー企業の英国本部が置かれていたりする。

2016年6月のEU離脱についてのレファレンダムでは、スウィンドンは54.7%が「離脱」に投票していた

「離脱」という選択の背景には、「エリートたちにお灸を据えてやろう」という動機が大きかったこと(「離脱」に投票した人が必ずしも本気で「離脱」するなんて思ってたわけではないということ)や、UKIPがずっと前から喧伝していたような右翼的ファンタジーによる「(彼らの言う)主権回復」という《物語》(あるいは《神話》)があったことは確かであるにせよ、実際に票を投じる人々が「国がEUから離脱しても、自分たちや子供たちの生活には影響はないか、あるいはもっとよくなる」と楽観していなければ、「離脱」に投票するという行動にはつながらなかっただろう。

実際、スウィンドンの「EU離脱」派は、その雇用を支える重要な一部となっているホンダの工場が閉鎖されるなどということは、想定していなかった。それは、投票結果を報じるBBC News記事にも出てくる「EU離脱」派の国会議員の発言にも見て取れる(同記事には「EU残留」派の議員の発言も引用されている)。

Pro-Brexit Swindon MP Justin Tomlinson, said it was a "surprisingly big margin" while Remain campaigner MP Robert Buckland said he was "disappointed".
Mr Tomlinson said he had a "sneaking feeling" that the Leave campaign would win in his constituency.

"That's what it felt like when I talked to people - but not by this margin.

"Some people wanted to embrace the global economy, some people felt that what they had voted for in the 70s now wasn't what was there today.

"The country has an appetite for change."

https://www.bbc.com/news/uk-politics-eu-referendum-36616088
※ちなみにウィルトシャーは保守党の安全区で、トムリンソン議員もバックランド議員も保守党である。


このように、2016年6月の開票当時は、言葉の表面上では「変化」を歓迎していたトムリンソン議員だが、その「『変化』の歓迎」は、「うちの地元では状況が変わらないこと」を前提とした歓迎だった。「スウィンドンの雇用は安泰なまま、BrexitでEUのくびきから解き放たれ、もっと真価を発揮できるようになる英国は、経済発展し放題」みたいなばら色の未来予想図を描いていたわけだ。




「閉鎖」のニュースがある前日のスウィンドンのLeave派のアカウントの発言。「ホンダはどこにも行かない。80年代初めからスウィンドンを拠点としているのだし、英国で自社の車を売り続けたいと考えているのなら、出て行きはしない。そんなことをすればビジネス上の自殺行為だ」


実際にはホンダは*英国で*売る車をスウィンドンで作っていたわけではない。*欧州で*売る車を作っていたのだ。しかしBrexit支持者はそんなことも知らなかったらしい。Brexitに反対する若者の団体をやっているFemiさんは、次のようにツッコんでいる。




もっと前には、ものすごい楽観論が支配的だったらしい。2018年9月と7月のBrexit支持者の発言を、デイヴィッド・スナイダーさんがツッコミを目的に画像で再掲しているのを参照。楽観論もここまで来ると「お花畑」だ。これが新自由主義というか、非正規雇用、ギグ・エコノミー、ゼロ・アワー・コントラクトなどに見られる苛烈な資本主義の総本山、英国での言論かと思うと苦笑いするしかない。あなたがたが世界中に広めた新自由主義のもとでは、工場であれ商店であれ、経営判断によってはいきなり閉鎖されることがあるっていう前提じゃないの? 実際、英国はそれをいやというほど経験してきたはず。それともそういうことが起きるのはイングランドでは「特に北部の貧しい地域」だけのことだったのか? ウィルトシャーのような豊かな地域では起こりえないような?



だから、ここにきて――Article 50によるBrexitの期日である3月29日まで1ヶ月強という時点になって――、スウィンドンの雇用の大きな受け皿であるホンダが工場を閉鎖するというニュースは、パニックのようなものを引き起こしている。




これまでだって、特に2019年に入った後で、「Brexitの見通しがわけわからん」というメッセージとしか読み取れない報道と並んで、企業が拠点を英国外に移すという報道が流れることは何度かあった。つい先日、日産のサンダーランド工場が、予定されていた車種(エクストレイル)の生産を取りやめる(日本に工場を集約する)というニュースがあって、かなりの騒ぎになったばかりだ。だがホンダのスウィンドン工場閉鎖のニュースは、日産のサンダーランド工場のニュース以上に大きな衝撃を広げている。そりゃそうだ、サンダーランドの工場は(少なくとも今のところは)閉鎖されるという話にはなっていないが、スウィンドンの工場は閉鎖されるのだから。

Ch4ニュースが流したスウィンドンの工場で働いて24年になるという人のインタビューが、この日、バイラルしていた。"This is idiocy of epic proportions" という言葉が、多くの人の共感を呼んだようだ。


自動車工場が閉鎖されれば、その工場で働く人だけでなく、全国に散らばる下請け各社にも影響が及ぶ。工場のある地域の各種産業(食堂だとかスーパーマーケットだとか)ももちろん無縁ではいられない。ウェールズだけでも12の下請け業者に影響が及ぶという報道が出ているが、この点について、欧州や中東に進出する日本企業に異文化間コミュニケーションの研修を行なう活動をしている団体のPernille Rudlinさんが連ツイした詳しい解説を貼り付けておこう。










さて、Twitterという空間では、このように「パニック状態」のなかであれこれ情報が飛び交っているのだが、その中に、「ホンダの決定はBrexitとは関係ない」論がある。こないだ「日産の決定はBrexitとは関係ない」と言っていたのと同じ人々がそう主張している。もっとさかのぼれば「ダイソン本社の英国外移転は(以下略)」などがあり、つまりそういうことなのだが、要するに「企業の経営判断はBrexitが原因でなされるものではない」論、というか、複雑な背景のあることをゼロかイチかで説明しようとする極論が英語圏をひたひたに浸している。それもTwitterのような個人の発言の場だけではない。大手メディアも多くが「ゼロかイチか」で説明したがる側にいて(デイリー・テレグラフ、デイリー・メイル、デイリー・エクスプレスなど)、TwitterであれGoogleであれ何であれ、報道記事を検索するとそういう媒体のそういう記事がどっと出てくる。

実際、月曜日(現地)にホンダのステートメントが出されたときに、そこに「Brexitのため」といった文言がなく、「自動車産業における前例のない環境変化のため、苦渋の決断を……」という説明がなされていたことを根拠として、「ほら見ろ、ホンダの工場閉鎖にはBrexitは関係ない!」と鬼の首を取ったように騒いでいる人たちがいた(その後、英ホンダの人がBBCラジオで “This is not a Brexit-related issue for us” と述べたそうだが)。Brexit過激派の中でも口数が多くて声のでかいアカウントはミュートしてある私の環境でも、そういうのをちらほら目にした。中には、「前日にBrexit関連だと報じたメディア(Sky NewsやFT)は、記事を撤回しろ」という調子の強気の発言もあった。

「Brexitだけが原因ではない」と言い、他の要因を指摘するのなら、普通に合理的だ。しかし、現在英語圏を浸しているのは「ゼロかイチか」の極論だ。「英国らしいアンダーステートメント」は忘れ去られてしまったようなその世界では「いくつもある原因(のひとつがBrexitであること)」を認めようとしない。ここでの問題点は、「Brexitは原因ではない」という結論が決まっているために、他の要因をありえないほど過大評価することにある。情報操作、というか昨今の用語でいう「フェイクニュース」、「オルタナティヴ・ファクト」だ。そしてTwitterは汚染されたtoxicな言論で埋め尽くされる。

その一例が、「ホンダのスウィンドン工場ではディーゼル車が生産されていた」という事実をめぐるものだ。

「Brexitは原因ではない」論者(Brexit過激派)いわく、「ディーゼル車は需要がなくなっている」→「それはディーゼル車が時代遅れになっているためで、Brexitとは関係ない」(これ自体は正しい)→「ディーゼル車を作る工場は閉鎖するというのは、普通の経営判断で、Brexitとは関係ない」ということのようだ。これは、これだけ見ていると「ふむふむ、なるほど」と思ってしまうような主張である。「なるほど、あの工場はディーゼル車の工場だったのか。なら閉鎖も仕方ないな。時代の流れだよ」みたいに。そしてBrexitに関しては、「これだけ見ている」人は、たぶんとても多い。ソーシャル・メディアを使って、人々はそれぞれにタコツボ(フィルターバブル)の中にいて、限られた情報にしか接していない(リアル世界に出ても、ことBrexitに関しては、意見が違えば付き合いもなくなるという極端なことが起きているという)。

では本当に今回の事態は、「ディーゼル車を作る工場を閉鎖するだけ」なのかというと、そうではない。実際には、ホンダのスウィンドン工場は、ごくわずかのディーゼル車と、たくさんのガソリン車を生産していた。だから「ディーゼル車の工場だからリストラされる運命だ」というのは、false claimである。(そもそも、ディーゼル車の工場だからといって、今まで何十年も設備投資をし、技能のある従業員を育ててきた企業がそれだけで閉鎖するだろうか、という疑問も出て当然なのだが。)

その点、声の大きなBrexit過激派の発言に、Twitter上でどのようにツッコミが入ったかを、インディペンデントの運営するネットメディアIndy100がまとめている。

Brexiteer Julia Hartley-Brewer claims Honda factory closure is due to ‘diesel’ and people made an important point
https://www.indy100.com/article/brexiteer-honda-factory-closure-diesel-brexit-eu-8786006

ここでの「ホンダの工場閉鎖はディーゼルのせい(Brexitとは関係ない)」という発言の主、Julia Hartley-Brewerは、元々イヴニング・スタンダードやガーディアン、サンデー・エクスプレスなどで政治記者として仕事をしていたジャーナリストで、2016年3月からはTalkRadioというトーク専門のラジオ局で平日午前の時間帯の番組を担当している。昨年8月のオマー爆弾事件20周年の機会を捉えて、労働党のジェレミー・コービンをディスる目的で非常に無神経な発言をツイートして炎上したが、特に謝罪などはしていないっぽい(ことのあらましは、ウィキペディアに記載されている)。

ともあれ、ハートレー=ブルワーは自動車業界紙autocar.co.ukのOp-Ed記事(つまり事実を報道する記事ではなく、書いた人の意見を述べる記事)を参照し、"they make diesel cars at that factory & no one wants to buy them anymore" ということを、イヤミたっぷりにツイートしている。そして、彼女のツイートが投稿されて1時間もしないうちに、FTの政治部チーフのジム・ピカード氏が次のように指摘している。つまり、「2018年度、スウィンドン工場での生産は、ディーゼル車が6パーセント、ガソリン車が94%である」。




生産全体の6パーセントしかないものが、工場全体の命運を決めるはずがないわけで、普通の議論ならここで話は終わるというか、ハートレー=ブルワーの先の発言はかえりみられることなく流されるはずだ。

しかしここはついったらんどである。ハートレー=ブルワーはこの言論空間を知り尽くしている。一度ツイートしたものは、たとえ中身がデタラメでも、インパクトさえ強ければ、R/Tなどの形でいつまで経っても参照され続ける。そして「これはデタラメである」という指摘よりも、元の発言が回覧されることのほうがずっと多く、その主張を真に受けた反応のほうが増幅されやすい。「ほら、またしつこい残留派が、デマをまいている! 事実を冷静に見れば、ホンダの判断がBrexitとは関係ないことは明らかだ!」と思いたい人々は、信じがたいことかもしれないが、大勢いるのだ。そういう人々が、誤情報を積極的に流す情報操作屋のみなさんと一緒になって、 #ProjectFear というハッシュタグをつけてこの「ディーゼルのせいだ」説を流し、回覧する。トラフィックが生まれ、情報プラットフォームはウハウハだろう。

そもそも発端のハートレー=ブルワーのツイートの段階で、めちゃくちゃなんだけどね……彼女がリンクしている元記事を見れば、次のような記述があるのだから。でも、ほとんど誰も、元記事のリンクをクリックなんかしない。
Is Brexit uncertainty a factor? Almost certainly. As Jim Holder wrote following Nissan’s X-Trail decision recently, such uncertainty makes it difficult for companies to plan long-term. And car companies need to plan long-term. But it’s not the only reason – or the key reason, in this case.

You have to consider the decline in demand for diesel too: Honda’s Swindon engine plant produced diesel engines. Then there’s the ever-growing rise in popularity of SUVs, which is harming sales of traditional cars such as the Civic – the only model made in Swindon.

And you can’t ignore global trade, such as Donald Trump’s threat to impose huge tariffs on cars imported from Europe into the US – such as the Civic. At the same time, the European Union and Japan recently agreed a trade deal that effectively removes tariffs on Japanese-built cars imported into Europe. That reduces Honda’s need to have a European manufacturing base.

https://www.autocar.co.uk/opinion/industry/opinion-why-honda-shutting-its-swindon-factory

この論説記事には「ディーゼルが唯一の原因だ」などということは書かれていない。にもかかわらず、ハートレー=ブルワーはたっぷり芝居がかった口調で「ディーゼルのせいだ」と断言してツイートしている。

彼女は読解力に欠けているのだろうか? いやいや。それなりにキャリアの長いジャーナリストだし、高い教育を受けている(中産階級の家の子で、パブリックスクールからオックスフォード大という経歴)。彼女は元記事から情報を取捨選択しているのだ、意図的に。

Brexitに関して、「離脱」派イデオローグの言説はおおむね、2016年の投票前からずっとこの調子だった。見てると病むレベルでひどかった。

こういうことがTwitterなどネットでだけ起きているのではなく、BBCのようなメインストリームのメディアで行なわれている。一事が万事、この調子で。

このメディア・マニピュレーションのあり方は、遠くから見ていても空恐ろしい。おそらくこれは「他山の石」なのだろう。

See also:
2019年02月07日 BBCは嘘をつく。そしてしれっと修正する。(「情報として最小限で必要不可欠な限定句を省略する」という手法について)
http://nofrills.seesaa.net/article/bbc-fake-news-special-place-in-hell-brexit.html



追記:
再度、欧州などに進出している日本企業とかかわる仕事をしているPernille Rudlinさんのツイートから。政治家はある程度はムードメイカーとして大言壮語をフカして気分をアゲるようにしてるだけでもいいのかもしれないが、経営者はリスクを慎重に見極めなければならない。


テリーザ・メイ首相と保守党がここ数ヶ月積極的にやってきた「あたくしの合意案を受け入れられないのなら、no-dealでフィニッシュですよ」という《脅し》は、分裂しかけている保守党の党内引き締めのため、またEU27カ国との難しい交渉での戦術のためには、実用的だったのかもしれない。しかし、あの人たちは、リスクは《脅し文句》ではなくリアルなものとしてとらえねばならない実業界というものが、おそらくわかっていない。

いや、わかってるのもいるよね。ジェイコブ・リーズ=モッグのように、自分とかかわりのあるところの資産は英国外に移してしまっているのもいる。そりゃ、リスクは回避できるならしたほうがよい。回避できるのならね。

そして取り残され、リスクを負わされるのは、「エリートに一泡ふかせてやる」とばかりに「離脱」に投票した、本当には離脱などするつもりがなかった一般の国民だ。彼らの多くはナイジェル・ファラージなど「一般人の味方のふりをしたエリート」の嘘を信じ、ファラージらと一緒に「デイヴィッド・キャメロンなどのエリートに一泡ふかせる」つもりで投票した。

(これは、東京都民としては「やっべー、マジで青嶋幸男が都知事かよ」という感覚が近いのではないかと思うが、「都市博中止」を公約に掲げて当選し、そして実際に中止した青嶋氏と、Brexitの嘘つき連中とは、比べものになりゃしない。)

なお、私が普通に見ている世界(私のフィルターバブルの中の世界)は下記のような感じの発言でほぼ埋め尽くされており、ジュリア・ハートレー=ブルワーのような発言はぽつりぽつりとしか流れてこない。逆に、ハートレー=ブルワーやらケイティ・ホプキンスやらケイト・ホーイーやらピアース・モーガンやらウエストモンスターやらの発言で埋め尽くされたフィルターバブルの中にいる人もいるのだろう。これが「情報化社会」か。引きつった笑いを浮かべることしかできない。














※この記事は

2019年02月20日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 18:30 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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