まず、何もなくても「今週はこういう週」ということがわかっていたのは、2009年3月の2つのテロ事件から10年を迎える、ということだった。
1件は2009年3月7日夜のアントリム州英軍基地襲撃。マセリーン基地(駐屯地)でアフガニスタンに向けて出発する直前にちょっと時間があったのでピザを頼み、配達を受け取りに出た20代初めの兵士(非武装)2人が、基地の外にいた銃撃犯に撃ち殺された事件で、未解決だ。これはReal IRAが犯行を認めていて、2人が起訴されて裁判が行なわれたが、1人は無罪となり、ここで有罪になったもう1人も控訴審で無罪となった。ちなみに2人とも銃撃の実行犯として起訴されたわけではなく、つまり、英軍兵士を基地の入り口で銃撃した当人を、当局は起訴に持ち込むことすらできていない。
もう1件は同年3月9日のクレイガヴォン警官襲撃。通報を受けて駆けつけた警官を銃撃者が待ち伏せして殺すという陰惨極まりない事件で、こちらはContinuity IRAだった(この事件でCIRAの存在を知った人も多かったかもしれない)。この事件では2人が起訴されて2人とも有罪になって、現在刑務所の中にいるが、彼らの支援者というか「反英」な人々が何かと賑やかである。
今これを書いているとき、今日は3月9日で、私は今日は定点観測ということでBBC News NIのページを開きっぱなしにしているが、クレイガヴォンの事件についての「あれから10年」の記事は見かけていない。7日のマセリーン基地襲撃事件については、未解決ということもあって「あれから10年」の記事を見たのだが。
そういうタイミングで、ロンドンの交通の要衝3箇所に郵便で爆発物が送られた。翌日にはスコットランドからも同様の報告が出た。
さらに、つい先日、パット・フィヌケン弁護士殺害事件についての司法の判断が出たばかりなのだが、来週は1972年1月30日デリーの「ブラディ・サンデー(血の日曜日)」で市民を撃ち殺した英軍兵士の訴追の可否をめぐる結論が出されることになっていて、英保守党の政治家たち何人かが「仕事をしただけの軍人を殺人罪に問うとは」というスタンスでわめき始めており、その中で現在の北アイルランド大臣カレン・ブラッドレーがかなりなトンデモであることが発覚(ブラディ・サンデーについては2010年に「撃ち殺された人々は全員無辜の市民」と結論したサヴィル卿の調査報告書が出たときに、当時の首相デイヴィッド・キャメロンが「英軍の行為に正当化の余地なし」と認めて謝罪をしているのだが、今の保守党の政治家たちはそれを無視している)、それと同時に、今週は1971年8月のバリーマーフィー事件(デリーのブラディ・サンデーの約半年前に、ベルファストで英軍が市民11人を撃ち殺した)のインクェストが始まっていて、非常につらい事件のディテールが改めて語られている(倒れた人を英軍は撃った、というような)。
これらのことを、大きく2つに分けて整理・記録しておこうと思う。まずこのエントリでは10年前のReal IRA, Continuity IRAと、今のNew IRA(元Real IRAなどが再編した集団)関連、ディシデント・リパブリカン関連のトピックを。
※なお、手紙爆弾については日本時間3月9日夜の時点でまだ犯行声明は出ていないし、誰がやったかはわからないとすべきだろうが、アイルランド警察がディシデンツの線で捜査しているとのことで、「ディシデンツであるだろう」と考えている。
ロンドンの空港2ヵ所(ヒースロー、ロンドン・シティ両空港)と鉄道駅1ヵ所(ウォータールー)で、封筒に入った爆発物が見つかった、1つは起爆はしたが封筒を焦がしただけでけが人はなかった、という報道を見たとき、瞬間的に「こりゃディシデンツだな」と思ったのは、私の思考パターンが「北アイルランド脳の恐怖」に陥っているからではなかろう。送られたのが1ヵ所なら職場の恨みとか愉快犯とかいうふうに考えられるが、3ヵ所同時で、しかも場所がねー。90年代の記憶が蘇る。そういえば映画『シャドー・ダンサー』でコレットがボムをしかけたのは何駅だっけ。ウォータールーだったか。
Officers from Counter Terrorism Command have launched an investigation after three suspicious packages were received at The Compass Centre #Hounslow, near #Heathrow Airport, London Waterloo Station and City Aviation House #Newham near City Airport https://t.co/Uuu3RfdNHa
— Metropolitan Police (@metpoliceuk) March 5, 2019
Seems like today's parcel bombs at Waterloo, Heathrow, and City Airport were sent from Ireland. pic.twitter.com/UjMoYqM2tI
— Peter R. Neumann (@PeterRNeumann) March 5, 2019
BBC News - Explosive packages found at Heathrow, Waterloo and London City Airport https://t.co/l3F0mhejzB 場所がIRAっぽいと思ったら、起爆すると小規模な爆発が起きるような爆発物の入った封筒にアイルランド共和国の切手が貼られてたとか、できすぎ感すらあるが
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
今あの人たちがやろうとすることは破壊ではなく「俺たちはここにいる we haven't gone away, you know」という告知だろうから。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
'Counter-terror police are investigating three packages containing explosives found at Heathrow Airport, London City Airport and Waterloo station.
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
The "small improvised explosive devices" were found in A4 postal bags, the Metropolitan Police said.
ヒースロー: 'The device set alight when staff opened the bag.' でも怪我はしていない。けががなくて何よりだけど、そういうふうに作られた爆発物だろうし、これができたということはもっと大きなこともできるという宣言だし、「恐怖」を与えるというテロリズムの目的は十分に達している。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
'The Met said: "The packages - all A4-sized white postal bags containing yellow Jiffy bags - hv bn assessed by specialist officers to be small improvised explosive devices. ... BBC Home Affairs correspondent Daniel Sandford said the package had Republic of Ireland stamps on it.'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
Explosive devices found at Waterloo station, Heathrow and City airports https://t.co/3w0YRlTQao 爆発した封筒の写真がトップにある。貼られていたアイルランド共和国の切手はハート模様のか。sinisterにもほどがある。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
翌日のアイルランドでの報道によると、この切手は大切な人へのカードや結婚式の招待状を送るときに用いられる切手だそうだ。ボム入り封筒はアイルランド共和国から差し出されていたとのことで、アイルランドの警察が捜査を支援している。
#Breaking: Gardaí assisting Met Police as three explosive devices found in London – @mitchefi reports https://t.co/zwMN7OVjfT pic.twitter.com/oVmuf8kUEe
— RTÉ News (@rtenews) March 5, 2019
Gardai assisting London police after explosive package 'sent from Dublin'https://t.co/M7QUf0YZCU pic.twitter.com/2FaSaeeKkY
— Belfast Telegraph (@BelTel) March 5, 2019
爆発物はこんなふうな封筒だった。外は白いビニール素材の封筒で、その中にクラフト紙の緩衝材入り封筒が入っていて、その中身が爆発物。
Photo of one of the suspect devices - this one sent to Heathrow. It caught fire: pic.twitter.com/keObgokRVH
— Alistair Bunkall (@AliBunkallSKY) March 5, 2019
https://t.co/qz8zaXHiV5 Sky News記者の爆発物の写真に、BBCやメイルなどほかの報道機関が写真の使用許可を求め、記者が快諾しているのが、このツイートにぶらさがったリプライで確認できる。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
The packages are described as having a white outer plastic postal bag with a handwritten address. They have two stamps with hearts on. Inside the bag is a brown A5 Jiffy bag that contains the device.
— Alistair Bunkall (@AliBunkallSKY) March 5, 2019
Security sources described them to me as “not very sophisticated” and said we should “keep an open mind”.
— Alistair Bunkall (@AliBunkallSKY) March 5, 2019
……というわけで初期段階では治安当局は、少なくともジャーナリストに語れる部分では「誰がやったのかわからない」という立場を取っていた。
https://t.co/h4VMwVVTrO イングランドで2001年夏まで爆弾攻撃をやっていたのはReal IRA(同年8月のイーリングでのパブ爆弾攻撃が最後)。この集団は2009年3月7日に北アイルランドで英軍基地を襲撃して兵士2人を殺している(今週木曜日で10周年)。現在は組織として再編されthe New IRAと呼ばれている
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
https://t.co/uxsuxaE0fG 2009年3月7日の英軍基地襲撃はこちら参照。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
1/ 当時の拙ブログ。https://t.co/0D6WeabXb7 2009年3月08日 北アイルランド、英軍施設に襲撃、兵士2人射殺。(英各メディア記事URLと、トップページのキャプチャ/追記:日本語での報道)https://t.co/pWAv7uJBnE 2009年3月09日 北アイルランド、英軍施設襲撃事件の詳細(メモ)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
2/ 当時の拙ブログ。https://t.co/s3FTRu1MD8 2009年3月09日 英軍基地襲撃、Real IRAから犯行声明が出たようです。https://t.co/oko8qeH7BT 2009年3月09日 安心しろ、どのIRAだかわかんないのは君だけじゃない、と言ってもらいたい気分のときに読むべきもの(なのか?)。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
3/ 当時の拙ブログ。https://t.co/pOf9hYuTnR 2009年3月09日 英軍基地襲撃、記事ははてなブックマークでクリップしています。(現段階での英メディア記事まとめ)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
……で、この英軍基地襲撃事件は未解決(起訴された被告はいたが有罪に持ち込めなかった)
で、マセリーンの英軍基地襲撃の2日後には、クレイガヴォンで警官が銃撃され殺害された。 https://t.co/wmx0Ri2rOy こちらはContinuity IRAが犯行声明→2人起訴→2人とも有罪(現在収監中)。なお、CIRAは現時点(2019年)は停戦(のはず)。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
今年1月のデリー/ロンドンデリーのカーボムがThe New IRA: https://t.co/qRFthqEmaf (「Brexit関連の可能性」云々と言われた事件。実際には、それとは関係なく、アイルランド独立の歴史的な出来事から100周年の節目のいわば記念ボムと思われるが)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
今回メイルボム(郵便爆弾)が見つかったのは交通の要衝というかターミナル(ヒースロー空港、ロンドン・シティ空港と、鉄道のウォータールー駅)。第一印象で「ああ、これ、IRAでしょうね」ってなるでしょ。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
https://t.co/3w0YRlTQao 'Irish police are assisting the Met with the investigation, An Garda Síochána said. It is understood that reports suggesting at least two of the packages had Republic of Ireland postage stamps on it are accurate.'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
まずは朝9:55にヒースロー空港のコンパス・センターで不審な封筒の通報が警察に入った。その封筒は社員によって開封され、これにより起爆して封筒が焦げたがだれにも怪我はなく、旅客機離着陸にも影響は出なかった。続いて11:40にウォータールー駅の郵便室に不審な封筒との通報が交通警察に寄せられた
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
ウォータールー駅の封筒は開封されず、警察の専門家が立ち会って爆発物を無害化した。けが人なし。駅からの人の退避は行なわれなかったが、駅前の狭い区域が立ち入り禁止となった。鉄道の運行には影響なし。さらに12:10にロンドン・シティ空港のロイヤル・ドックスで不審な封筒との通報が警察に入った
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
これにより従業員が念のためシティ・アヴィエーション・ハウスから退避させられた。封筒は開封されず、けが人なし。警察の専門家が立ち会って、爆発物は無害化され、建物も既に封鎖は解除されている。……ということがガーディアン記事に書かれている。https://t.co/3w0YRlTQao
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
これを見つけたとき、「あんたの出てくる幕じゃないよ」と声に出してしまった。パメラ・ゲラーが考えてるような「テロ」じゃないよ、これは。 pic.twitter.com/AISqPcPUgU
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 5, 2019
MIRROR: ‘New IRA’ Terror Attack on Britain #tomorrowspaperstoday pic.twitter.com/gTphB6BgJS
— Neil Henderson (@hendopolis) March 5, 2019
https://t.co/E4BLMY3nnt まだ何も確定的なことは出ていないし、新しい報道も見当たらないが、デイリー・ミラー(タブロイド)はこれ。なんだかな・・・
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 6, 2019
デイリー・ミラーは北アイルランド版もこう。2009年3月7日のマセリーン英軍基地(駐屯地)銃撃事件で殺された兵士の母親のことばと、「New IRAがロンドンを攻撃」の見出し。 via https://t.co/dV8hBJZI0p pic.twitter.com/LSKbAan9q7
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 6, 2019
あとはデイリー・テレグラフが「ディシデンツ」と見出しを打ってる程度で、ほかは「アイルランドから送られていた」程度の言及があるだけ。今日の新聞一面 via https://t.co/9FZQcanUyX pic.twitter.com/QBc6TgqWsm
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 6, 2019
そしてロンドンでの3ヵ所の翌日のニュースで……
‘Suspicious packages’ found at Glasgow University and RBS in Edinburgh https://t.co/XOktTVbMSe グラスゴー大学と、エディンバラのRBS本店でボムスケア。相互の関連性は不明。不審物が爆発物なのかどうかも不明。この段階でこういうボムスケアがニュースになるのは昨日のことがあるからだろう。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 6, 2019
これ、昨日同一犯人によるものと思われるレターボムがグラスゴー大学に送られたというニュースにびっくり。ヒースロー等宛のものと同様返送先がダブリンだったそうでディシデント・リパブリカンの線で捜査というのはわかるものの、なぜグラスゴー大学なのかが謎。 https://t.co/NexCvN72QP
— 優noD (@yunod) March 7, 2019
スコットランドは北アイルランド紛争の時代に標的にはならなかった。グラスゴーのサッカーのダービー(セルティック対レンジャーズ)は北アイルランド紛争での緑とオレンジの対立とは切っても切れない縁だし、スコットランドではオレンジ・オーダーの活動もあるのだが、IRAやINLAが攻撃対象としたのはイングランド内の施設だった。だからこのボムの件は、私にはわけがわからない。RBSに送りつけられたのは「反資本主義」かもしれないが(ディシデント・リパブリカンはイデオロギー的には極左でもある)。
そして3月7日、英軍基地襲撃から10年ということで出ていた記事や10周年のツイート。この件について、ナショナリストの発言は私は見なかった。ツイートしていたのはユニオニストかアライアンスの人(アライアンスもユニオニストなんだけど)、それとメディアの人。
Detectives in Northern Ireland are appealing for information to help solve the murder of two soldiers at the Massereene army barracks in Co Antrim in 2009 https://t.co/EJhB4OzfQU
— TheJournal.ie (@thejournal_ie) March 7, 2019
Thinking today of Sappers Mark Quinsey and Patrick Azimkar, murdered at their barracks in Massereene as they waited to collect a pizza. The ongoing grief, pain and hurt for their families must be unbearable. Thinking of all those fighting for truth & justice.
— Sorcha Eastwood (@SorchaEastwood) March 7, 2019
PSNI renew appeal on 10th anniversary of Massereene murders https://t.co/0ZhGZHuqvJ
— Chris Hagan (@hagan_utv) March 7, 2019
'Our thoughts today are very much with the families of Sappers Mark Quinsey and Patrick Azimkar whose ongoing grief, pain and hurt must be unimaginable' - https://t.co/3o7sk3RLm8
— Belfast News Letter (@News_Letter) March 7, 2019
#OTD 2009 - The Real Irish Republican Army kills two British soldiers and injures two other soldiers and two civilians at Massereene Barracks, the first British military deaths in Northern Ireland since the end of The Troubles.
— Howard G (@Innpictime) March 7, 2019
https://t.co/trqGuuuP2U pic.twitter.com/kqxWv7CucS
2009年に殺害された2人の英兵のうち、1人のご家族(お母さん)が今年初めてメディアの取材にこたえた。もう1人のお母さんは息子を殺され失意のうちに亡くなったという。(ウォリントン爆弾事件を思い出す。あれはPIRAの犯行だったが、PIRAの中の過激派がやったものだ。だからといってPIRAが免責されることはないのだが。)
https://t.co/O69GjPAzXD 2009年3月7日の英軍基地襲撃から10年。殺された2人の1人、Patrick Azimkarさんのご両親が初めて取材に応じた。「こういうことがあると、人は死者の数で考えるものです。しかしひとつひとつの事件のひとりひとりの死はとても大きな意味を持ち、その喪失はずっと後まで続く」
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
Azimkarさんのご両親と兄(弟)は事件前と変わらずここにいて、喪失の重さを語っているが、殺された英兵のもう1人、Mark Quinseyさんのお母さんは、息子を殺され、失意のうちに亡くなった。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
2009年3月7日、彼らはアフガニスタンに向かう軍用機に乗り込もうとしていた。直前になって離陸が遅延したため、彼らはピザを注文した。殺された2人と撃たれて負傷した1人は、そのピザを受け取るために門まで出ていって銃撃された。ピザ配達人も撃たれて負傷した。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
ピザ配達人を撃ったことについて、犯行を認めたReal IRA(当時。現在はいわゆるNew IRAとして再編)は「英国の占領(彼らの用語でいう英軍)への協力者だから」といって正当化した。(この理屈は北アイルランド紛争期のPIRAにも見られたもの。というかRIRAはPIRA内の超過激派と言えるわけだが)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
Patrick Azimkarさんは当時21歳。初の戦地(アフガニスタン)派遣を前に緊張していたという。だが彼は派遣される前に英国内の基地で襲撃されて殺された。その死の知らせが家族にもたらされたのは襲撃翌日日曜日朝5時。父親のメフメトさんと母親のジェラルディンさんは眠っているところを起こされ悲報を
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'“A lot of the early days are a blur”... “We hardly spoke. We sat in silence and I sat on the sofa and looked at the wall and cried. We cdn’t believe it. In fact we didn’t believe it and we convinced ourselves it wasn’t Patrick bc we were sure he was on his way to Afghanistan."'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'“After Patrick died, I thought I wd die too,” said Geraldine. “I thought my heart wd just stop out of despair and grief but I was desperate to live for James. He had lost enough and if I died too these people might see it is as another victory and I couldn’t let that happen.”'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'The family’s anger towards Patrick’s killers is still raw. “We have had no justice” ... “This was a cowardly attack, it took about one minute and they left a trail of absolute devastation and grief behind them, forever. For some reason, something has got in the way of justice..'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'“None of these boys were armed. They were off duty, they were simply picking up pizzas and they didn’t feel they had to protect themselves.
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
“They weren’t expecting to be attacked and it wasn’t a fair fight. It was cowardly, coming at them like that in the dark.”'
そういうタイミングで、ダブリンのディシデントのリーダーのひとりが、ガーディアンのインタビューに応じた記事が出た。ロンドンの郵便爆弾の前に取材が行なわれたという。記事添付の写真を見ると、インタビューは普通のカフェで行なわれており、ディシデントのリーダーは見た目では「過激派」とは全然思えないような穏やかそうな中年男性だ。
Brexit is a 'huge help' to Irish republicanism, says dissident leader https://t.co/Hbynar1nHD ガーディアンのロリー・キャロル記者がBrian Kenna, chairman of the political party Saoradhのインタビュー取った。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
SaoradhはいわゆるNew IRAと「多くのメンバーがオーバーラッピングしている」(と記事にある。「〜の政治部門」的な言い方は「事実ではない」と反論される)政治集団(「政党」としては未登録)。https://t.co/PbpjS59agr このURL、わりと最近も貼った気がするが何のときだっけ。デリーのカーボムか。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
Twitterにフィードはしてないかもしれないが、 https://t.co/FuWSlgQ3En らへん(「まとめ」のPC版の7ページあたり)にあるのではないかと。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'Saoradh, which means Liberation in Irish, is a small revolutionary party which rejects the peace process and the Good Friday agreement – and, by extension, Sinn Féin – as tools of partition. The party is believed to share ideology and overlapping membership with the New IRA'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'Speaking on Monday in Dublin, Kenna, 57, the party’s chairman, also distanced Saoradh from the New IRA. But he said a new generation of republicans was committed to using force to achieve a united Ireland.' フィジカルフォース・リパブリカニズムが新しい世代にと。これ自体宣伝だけど
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
'“Every generation going back 800 yrs, Irish republicans hv confronted British occupation. I don’t see any reason why that’s going to stop”...“Brexit is a huge opportunity. It’s not the reason why ppl wd resist Br rule but Brexit just gives it focus, gives it a physical picture”'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
ちなみにこの記事によると、今週のヒースロー空港、ロンドン・シティ空港、ウォータールー駅へのレターボムについて、アイルランド警察は、暴力的ディシデント・リパブリカンの線で捜査を進めていることが大臣らの発言でほのめかされている。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
ブライアン・ケンナの発言: 'The return of customs posts or any border infrastructure would underline the reason for resistance, he said. “That border denies our national sovereignty and partitions our island. Brexit has brought that into focus.”'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
ちなみにこの政治集団は反英であることは言うまでもないが反EU。(少し前までは「アイリッシュ・ナショナリズムは国家主権重視で反EU」という図式的な理解がなされてきたはずだが、たぶんベイルアウト以降はそうではなくなっている)(←変なこと言ってたらリプライでご指摘ください)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
(「リスボン条約のときのアイルランドでのレファレンダム」を思い出していただけるとわりとピンときやすいのではと)
あ、あと3日になる前だけど、武器庫が発見されたりもしてたんだ。次のエントリ書いてて思い出した。
読みづらいかもしれないけど、via Twilog: https://twilog.org/nofrills/date-190302/asc でソース貼り付けます。
Terrorist arsenal found near Border was 'to be used to exploit Brexit problems' www.independent.ie/irish-news/ter… March 2 2019 UKというかブリテンの媒体で大騒ぎになってても当然の内容なのだが、見てないな……。
posted at 16:40:26
'The find was made in a wooded area, close to 2 similar hides uncovered in searches last mth & about 2km from Omeath, Co Louth. The latest cache contained a quarter kilo of Semtex and a detonator, 2 rifles incl a Steyr assault weapon & around 300 rounds of assorted ammunition'
posted at 16:40:26
Steyrはアイルランド軍が使ってる。en.wikipedia.org/wiki/Steyr_AUG… "Standard service rifle of the Irish Defence Forces. The Army Ranger Wing special forces uses the Steyr AUG A2 and A3"
posted at 16:43:35
BBCは細部の情報のないごく短い記事だけ出てた。BBC News - Explosives and firearms found in Co Louth www.bbc.com/news/world-eur… アイルランド警察のステートメントの一部をそのまま掲載しているだけという感じ。
posted at 16:46:43
アイリッシュ・タイムズ。More dissident Republican-linked arms and explosives found in Co Louth www.irishtimes.com/news/crime-and… 長くて状況・文脈には詳しいが(特に2月上旬の森の中での発見の件)、具体的な情報には乏しい。爆薬の名称は出てくるが、銃の名称は出てこない。
posted at 17:02:37
このあと、今週も1件武器庫が出てきてた。
'Weapons hide' found in Northern Ireland village - cache may be from Troubles era https://t.co/30O86GmikG 'Police are at the scene of an operation in the Co Armagh village in Jonesborough with reports a possible "historic weapons hide" has been found.'
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 7, 2019
BBC News - 'Terrorist hide' with mortar tubes found in County Armagh https://t.co/nwcioGgYf4 これ、地名が同じなのだが、当初 "historic" と言われていたものだろうか。BBCでは "a more recent hide linked to dissident republican activity" って。警察が見解を改めたのかな。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 8, 2019
よほど古い武器庫(隠し場所)ならともかく、武器に名前書いてあるわけではないし、武器自体が古いものでも紛争期の忘れ物か、分派が持って出た武器なのかはわからない。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 8, 2019
※この記事は
2019年03月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
- 【訃報】ボビー・ストーリー
- 【訃報】シェイマス・マロン
- 北アイルランド自治議会・政府(ストーモント)、3年ぶりに再起動
- 北アイルランド紛争の死者が1人、増えた。(デリーの暴動でジャーナリスト死亡)
- 今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (2): ブラディ..
- 「国家テロ」の真相に光は当てられるのか――パット・フィヌケン殺害事件に関し、英最..
- 北アイルランド、デリーで自動車爆弾が爆発した。The New IRAと見られる。..
- 「そしてわたしは何も言わなかった。この人にどう反応したらよいのかわからなかったか..
- 「新しくなったアイルランドへようこそ」(教皇のアイルランド訪問)
- ジェリー・アダムズがシン・フェイン党首を退いた。