「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2019年11月24日

『博士と狂人』などの電子書籍がセールで安くなってる(11月28日まで)&電子書籍書店で否応なく見せられるものについて

11月28日(木)まで、早川書房のビジネス書の電子書籍がセールで最大半額という告知を見て、「ビジネス書かぁ……」とスルーしかけていたあなたに朗報。

サイモン・ウィンチェスターの『博士と狂人』(鈴木主悦訳)が対象になってる。34% OFFで458円。

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博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)
博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)

サイモン・ウィンチェスターはロンドン出身のジャーナリストでガーディアンで長く仕事をしていた。『博士と狂人  世界最高の辞書OEDの誕生秘話』は英国での原題は "The Surgeon of Crowthorne: A Tale of Murder, Madness and the Making of the Oxford English Dictionary" だが、北米では "The Professor and the Madman: A Tale of Murder, Insanity, and the Making of the Oxford English Dictionary" と題され、日本語版のタイトルはこちらの北米版にならっている。

内容は、19世紀末、英語の網羅的な辞書 (OEDことthe Oxford English Dictionary) を作るというすさまじい仕事に携わる言語学者のジェイムズ・マレー博士と、彼が語義をまとめ上げ辞書を作っていく過程でかけがえのない協力者となったウィリアム・チェスター・マイナーという知識豊富な米国の元軍人(ロンドンで殺人を犯し、精神病と診断され、精神病院で暮らしている)について、残された資料から丹念に読み解いて調査していったもの。この本については既に多くの紹介がされているので(例えばこちら)、ここで何かを書くまでもないだろう。当ブログが言いたいことは、「この名高い本がセールで安くなっているので、読んだことがない方は読んでみては?」にすぎない。

ところでこの『博士と狂人』、メル・ギブソンが製作と主演(マレー博士)をつとめ、マイナー氏にショーン・ペンを配して映画化されているはずだが、その話をとんと聞かない。IMDBを見てみると、今年3月に中南米や中東で封切られ、その後欧州各国でも次々とロードショーにかかっているが、米国では「インターネット公開」、「限定公開」となっているし、英国に至っては公開国一覧に出てもいない。それに、映画製作国は「アイルランド・アメリカ」なのだが、アイルランドでも封切られたというデータがない。
https://www.imdb.com/title/tt5932728/releaseinfo

と、ウィキペディアを見てみると、もめてたんすね。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Professor_and_the_Madman_(film)
In July 2017, Gibson and his production company Icon Productions sued the production company Voltage Pictures over their desire to control certain aspects of the production. They refused final cut privileges and an additional five days of production in Oxford.

On June 19, 2018, Judge Ruth Kwan of the Los Angeles County Superior Court rendered a judgment denying Gibson's motion for summary adjudication. The multiple lawsuits were settled in a confidential settlement in April 2019. Gibson and Safinia issued statements distancing themselves from the project and calling the version released by Voltage "a bitter disappointment". They did not participate in the promotion of the film. Safinia was not recognized for directing or co-writing the film, being credited instead under a pseudonym, "P. B. Shemran".


映画の評価は、IMDBのユーザーレビューでは「演技がすごい!」とめっちゃ高評価で、ウィキペディアで引用されているRotten Tomatoesでは低評価なので、俳優だけはすごいというパターンかもしれない。

ともあれ、そのうちに日本でも何らかの形でリリースはされるだろうから、映画に興味のある人も、元となったサイモン・ウィンチェスターの本を読んでおくといいかもしれない。「驚きの実話」ではあるけれど、「ネタバレ」したらつまらなくなるという性質のものではないと私は思う。

それと、早川書房ビジネス書のセールからもう1冊。


スティーヴン・ウィットの『誰が音楽をタダにした?』。

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誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)
誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)


この本については以前書いているのでそちらをご参照いただきたい。

2016年11月17日
『誰が音楽をタダにした? 』(早川書房)を読んで、私が端っこから見ていたあの「革命」の時代を回想する。
http://nofrills.seesaa.net/article/how-music-got-free.html



ところで、電子書籍書店の「見て回るのが苦痛」というのは、ほんとに何とかならないのだろうか。「使い勝手が悪い」とか「インターフェースが使いづらい」とかいったことではない。「何でこんなものを見せられなきゃいけないのか」という苦痛が、ほんとにハンパない。なぜああいう設計が野放しになってるのか、私にはわからない……「わからない」のではない。「理解しがたい」のだ。

私はマンガは読まないし、ラノベなるジャンルの本は手に取ったこともない・ブラウザで自分から能動的に表示させたこともないのだが、そういった本の表紙絵があちこちに表示されている中をかいくぐっていかないと、新書であれ実用書であれ何であれ、目的の本にたどり着けないのが日常である。

著者名・書籍タイトルで検索するような場合にはそういうノイズ(それもとびきり不快なノイズ)はほとんどないのだが、そうでなくもっとぼやーっと、例えば「英語関連の本で、白っぽいすっきりした表紙で、最近どの書店でも平積みにされてるあれじゃない本で、前に大型書店で中を見たけど買わなかったことは覚えてるけど、著者名も書籍タイトルも覚えていない」といった手がかりしかない場合に、実店舗でいえば「書棚の間を歩いてみる」という感覚で電子書籍書店を見て回ろうとすると、5秒ほどで辟易としてしまうことになる。

そこら中に、妙な色調のピンク系の色をしたはちきれんばかりの物体化された身体と10歳くらいの子供の顔が合わさったグロ絵。あるいはBLなる分野の妄想ポルノ絵(あれはほんとにひどい)。

あまりにひどいので、元々「陳列くらいはいいんじゃね」という立場だった私も「陳列すんな」と思うようになってきた。

実店舗であれば、マンガだのラノベだのの売り場に行かなければそれらを見る・見せられることはまずない(新刊案内のポスターくらいは掲示されているかもしれないが)。マンガだって、例えば大島弓子の作品を探すときに、物体化されたグロ絵をこれでもかこれでもかと見せられることはない。「ジャンルが違う」というのはそういうことだ。そちらの売り場で、好きなだけ、どうぞ。

しかし電子書籍書店というのは、「売れ線」だからという理由でああいうグロ絵・ポルノ絵を無遠慮に、あたかもそれが誰が興味を示すに違いないとされているめんつゆかカップ麺であるかのように、誰もが見る店頭に並べ、一応大まかなジャンル別になっているところにも並べ、果ては個別商品の下にも表示してくる。

サイモン・ウィンチェスターの『博士と狂人』に興味がある人は、『舟を編む』や『ケンボー先生と山田先生』にも興味があります、的な、誰がどう見ても関連しているというものならわかる。それは実店舗の書店の売り場と同じ構成だ。

同じセールに出ている同ジャンル(この場合は「ビジネス書」や「ノンフィクション」)の本が表示されているのも普通だ。

しかし実際にはそうではない。

下記は『誰が音楽をタダにした?』の楽天KOBOでの検索結果の画面である。「この商品に興味がある人は、こんな商品にも興味を持っています」という「知らんがな(´・_・`)」としか言いようのない基準(食品スーパーで豆腐を買った人が一緒にキャットフードを買ったからといって、豆腐の横にキャットフード置かねえだろ。もういいかげんこのバカげたアルゴリズムを何とかすべき)で自動化された表示がされるとき、日本語圏ではこうなる。

denshishosekib.png
(画像は不快なので、「不快な画像で誰かを不意打ちする」ということがないよう、一部マスクしてある。マスクしていない画像はこちらからどうぞ)

ちなみに、英語圏で同じタイトルを同じKOBOのストアで表示させるとこうだ。
denshishoseki-eng.png


※この記事は

2019年11月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 20:40 | 書籍系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼