「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2018年10月30日

「オルタナティヴなTwitter」として知られるGabが居場所を失った件

10月27日(土)、米ペンシルヴァニア州ピッツバーグで、安息日のシナゴーグが攻撃されるという卑劣なテロがあった。トランプ政権はこのテロについて「頭のおかしな個人がやったこと」的な誘導(ざっくり言えば)を行なっているし、今もケリーアン・「オルタナティヴなファクト」・コンウェイが「反宗教」という枠組で片付けようとしているというフィードを見たばかりだが、銃撃を行なった人物は「反ユダヤ主義」に染まり、「陰謀論」を信じ込んで、政治的な目的を持ったテロリストとして指弾すべき人物だ(順番が前後するがこの事件そのものについて詳細はこのあとで書く)。MSNBCのベン・コリンズ記者が掲示している、容疑者が投稿したミーム画像を見れば、どういう方向の「陰謀論」に染まっていたかがわかるだろう。

gaboffline4.png

11人を撃ち殺したこのテロ容疑者が公然と発言するのに使っていたSNSが、GabというSNSである。「オルタナティヴなTwitter」という位置づけのこのSNSは、2016年夏にベータ版がスタートし、2017年5月に本格サービスを開始した。「オルタナティヴなTwitter」というのは、Twitterが(不十分でかなりでたらめな面もあるとはいえ)発言の内容によってはユーザーの活動・サービスの利用を制限・停止することもあるという一方で、Gabは「言いたいことは何でも言える」状態にあるということだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Gab_(social_network)

Gabを設立したアンドルー(アンドリュー)・トーバは、「オルタナティヴ」とか「言論の自由」といった概念を、まったくの中立の観点から使っている人物ではない。「世間は左傾した大企業が牛耳っている」的な世界観の持ち主である。その「言論の自由」は(「政府による検閲が行なわれないこと」などではなく)、はっきり言えば、「陰謀論を主張する自由」であり「人種差別をする自由」である。

Gabは、映画『スターウォーズ』の新作に出ている俳優が有色人種だというので「俺たちのスターウォーズを取り戻せ!」と叫んで暴れ出したBreitbartあたりや4chanなどに巣食っていた人種主義者たちがTwitterを追い出されたあとで集う場となった。ほかにもBritain Firstやアレックス・ジョーンズなどTwitterから規約違反で出禁になった人々がGabを使っている。

つまり「隔離部屋」だ。そういう文脈でかなり広く知られているサイトだし、Gabといえば「ヘイトスピーチがあふれる場」という認識は(一時Twitterが「イスラム過激派の煽動があふれる場」と認識されていたのと少なくとも同程度には)持たれていただろうが、広く世間一般に知られていたかというと、微妙なところではある。

ピッツバーグのシナゴーグ襲撃テロにより、そのGabが広く一般に取り沙汰されるようになった。Twitter上の英語圏を何となく見てて「こんなにもたくさん、Gabへの言及を見たことはないよ」と思うくらい大量の言及がなされている。何しろテロ容疑者はただの「ユダヤ人嫌い」ではなく、Gabのアカウントの一番上に表示されるバナーの写真(Gabのユーザー・インターフェースはTwitterのそれとそっくりなので、Twitterを思い浮かべてもらえればよい)で、「1488」を掲げるくらいの「ガチのネオナチ」だ(日本ではその点への注目がほぼないようだが)。そういう人間が合法的に銃を大量に所持し、ネットで公然と発言し、そしてその発言の場で「予告」を行なって、祈りの場で11人を撃ち殺したという事実が、米国社会に非常に大きな衝撃を与えたことには何の不思議もない。

そしてその結果、Gabは居場所を失った。




私はGabのサイトのインターフェースを確認したくてアクセスしたのだが、結局中を見ることはできずに帰ってきた形だ。いつからこうなっていたのかを確認しようとTwitterで検索してみると、目の前に広がっているのはなかなかすさまじい光景である。




このように、ホスティング業者から追い出される前、送金窓口を閉鎖されたGabが「うわああああん! PaypalやStripeから切られたよ! パヨクに牛耳られたポイズンな業界が兵糧攻めにしてくるよ! 助けて、トランプマン!」(意訳)と叫んでいるツイートにぶらさがっているリプライがまた、興味深い。





「まるで政府が必要であると言わんばかりじゃないか」というスティーヴンさんの切り替えしにはお茶をふいた。

続いてホスティング業者から追い出されるという局面ではこうだ。



このGabのツイートには「いつものやつ、貼っときますね」っていうリプライがついてる。


あと、Gabのサイトのステートメントを校正してみた人のリプもついてる。


さらにTwitterの検索画面は、私が見たときにはこうなってた。すごい光景……いくらあたしでも、「ガール」氏と「ピーター」氏をひとつの画面の中で見たことはないんじゃないかな。 (・_・)

gaboffline2.png


んで日本時間29日の夜中、もう一度見てみたら、こんなんになってた。



サイトに掲げられたステートメントも長くなってる。

gaboffline3.png

なお、私の抱いている感覚は「シャーデンフロイデ」ではない。逆である。米国の中間選挙を前に、言論空間はもっともっとtoxicになっていくだろう。私が毎日TVを見るようにアクセスしている開かれたインターネットも、明確な意思と道具立てがないとアクセスできないダークウェブも、個人間のメッセージツールも。

シャーデンフロイデ: 人の不幸を喜ぶ私たちの闇
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シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書)
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Gabの運営の声明:


トランプはこういうことしてる。これがcollusionでなくて何なのかと。




Gabとトランプについてはこちらも:




この件での私のツイート、私のツイートにしてはかなり多くのRetweet, Likeをいただいています。ありがとうございます。No Pasaran! They shall not pass!

Battle-of-Cable-Street-red-plaque



シナゴーグ銃撃テロについて、少し記録してあります。ご覧ください。
https://matome.naver.jp/odai/2154083007447928801



※この記事は

2018年10月30日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 00:50 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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