「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2017年04月24日

フランス大統領選は「親EU」か「反EU」かの選択だ。「極右の台頭」の文脈に組み込んではならない。

今週水曜日、2017年4月26日は、ピカソが「ゲルニカ」という作品にした都市爆撃からぴったり80年となる日である。
ゲルニカにはバスク地方の自治の象徴であるバスク議事堂とゲルニカの木があり、歴代のビスカヤ領主がオークの木の前でフエロ(地域特別法)の遵守を誓ったことから、ゲルニカはバスクの文化的伝統の中心地であり、自由と独立の象徴的な町だった。フランスの思想家であるジャン=ジャック・ルソーは、「ゲルニカには地上で一番幸せな人びとが住んでいる。聖なる樫の樹の下に集う農夫たちがみずからを治め、その行動はつねに賢明なものであった」と書いている。この爆撃は焼夷弾が本格的に使用された世界初の空襲であり、「史上初の都市無差別爆撃」や「史上初の無差別空爆」とされることもある。この爆撃は敵国民の戦意をそぐために行われる戦略爆撃の先駆けと考えられており、戦略爆撃は第二次世界大戦で本格化した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%AB%E7%88%86%E6%92%83


ピカソの「ゲルニカ」の成り立ちについては、下記の本がとてもよかった。中学生に読めるような易しい本だが、内容は濃い。
4905194326ゲルニカ―ピカソ、故国への愛
アラン セール Alain Serres
冨山房インターナショナル 2012-05

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2014年に第一次世界大戦(当時はただの「大戦 Great War」と呼ばれていたが)開始から100年を迎えて以降、英国の大手メディアで「○○の戦いから100年」という記事を目にすることが頻繁だが、それと同時に第二次世界大戦についても「○○作戦から70年」、「○○事件から75年」(75年はthree quartersで大きな節目として扱われる)といった記事が書かれて日々流れてきている。

加えて、第二次大戦はVEデイで完全に終わったのではなく、めっちゃくちゃになったヨーロッパはその後数年はしばらく大変な状態にあったので、2017年の今もまだ「○○から70年」という記事が流れてくる。先週は、英軍によるヘリゴランド(ドイツ語読みはヘルゴラント)島での大爆破について、対岸からそれを見ていた島の人々の声を軸にした記事がBBCに出た。当時英軍は、ドイツ軍が蓄えていた大量の未使用爆弾を処理する必要があり、「ビッグバン作戦」という作戦を立案して、ドイツの西側の沖に位置する同島で爆破した。同島が選ばれたのは、ここがドイツ軍によって要塞化された一大軍事拠点だったためだった(戦争に負けてもなおいろいろと諦めきれないドイツの勢力が、ここを利用して何かを画策することを事前に阻止するという目的があった)。この爆破は、現在に至るまで、核を使用しない爆発としては最大のもので(当時の英軍による記録映像が同記事に入っている)、当時英軍は150キロも離れた少し内陸のハンブルクにまで、「爆発(の衝撃波)に備えて、建物の窓・扉を開けておくように」という指示を出していた。対岸からは、既に対戦中に島から退避させられていたヘルゴラント島の人々が、自分たちの島が爆破されるのを見守っていた(実際には見ることはできず、音だけだったという)。中には島が破壊されてなくなってしまうと思っていた人もいたが、島は消えてなくなりはせず、1952年に島がドイツに返還されると人々も島に戻り、現在は1,483人が暮らし、免税店目当ての観光客を迎えている。この島はナポレオン戦争の時代に英国が占領し、1890年にドイツに寄贈されるなど、英国との歴史的な関係は浅くない……。

こういった「欧州事情」の記事を見るたびに、部外者の私は改めて、EUがノーベル平和賞を受賞(2012年)したことの意味を思わずにはいられない。当時は「馬鹿げている!」と思ったし、今も「ノーベル平和賞はもう終わりにしたほうがいい」と思っているが(ダルフールやシリアやウクライナや南スーダンを前にしたときにそう思わずにはいられない)、少なくとも、受賞の理由について理解はできる。あのドイツとあのフランスが戦争になるということが考えられない今の現実を構築してきたのは、「欧州共同体」という理念だ。

日曜日(23日)に一回目の投票が行なわれたフランスの大統領選挙は、内政上の課題がもちろん最重要なのだが、それを除いては、まず「Brexit後のEUがどうなるのか、EUをどうするのか」を問うものだ(英国での議論の推移を改めて振り返る限り、「移民がー」というフレーミングは、そのデコイに過ぎない。むろん、そういう語りを積極的に採用して目立つのが移民排斥の「ホワイト・ナショナリズム」の陣営、つまり平たく言えば「ネオナチ」系であるということは確かだが)。「反EU」の候補者でEUを "根本的に変える" 方向で動くのか、「親EU」の候補者で英国が抜けたあとのEUを一層強化する方向で動くのか。

日曜日の投票結果、トップで決選投票に進んだエマニュエル・マクロンは「親EU」の候補者だ。壇上に置かれた旗に明らかなように。

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*via http://www.bbc.com/news/world-europe-39689385

マクロンは選挙戦でも一環して「親EU」の態度を明確にしてきた。下記はそのときどき話題になったインタビューなどを「音楽」に仕立ててネットで発表しているミュージシャン(DJ)のKhaled Freak(日本にはそのようなリミックスで、「ムネオハウス」というすばらしい前例がある)が、マクロンの支持者の集会での演説をもとに作った必見の「おもしろ動画」だが、ここでも聴衆がフランスのトリコロール旗とEU旗を振っているのがはっきりわかる。マクロンの絶叫のインパクトが強すぎて、注意していないと目に入らないかもしれないが。



コメント欄に「30年間メタルを聞いてきたし、いろいろライヴも見てきたけれど、こんなところにこんな逸材がいるとは。ラムシュタインのチケット売って、マクロンのツアーを追っかけることにするわ」とかいう人がいる。この「おもしろ動画」のせいでマクロン支持に回ったメタルの人がどのくらいいるかな…… (;▽;)

ちなみに作者のKhaled Freak氏はメランションの支持者のようで、メランションも自分のスピーチが、氏がオートチューンを使って作成する音楽にリミックスされてネット上に出回ることを歓迎しているようだ。マルセイユの港でオリーヴの枝を掲げて行なったスピーチが「音楽」にリミックスされた映像に、メランションのアカウントから「ありがとうございます」というコメントがついている。(しかしこれ系の左翼の間でのシリア内戦についての認識は、どうにかならんもんかね。2011年の「ネットの力」への熱狂の中で「民主化要求デモ」が起きたときに、政権側が迷わずに「武力弾圧」したことで、「平和的デモ」を「武装蜂起」にしていった。最初から「戦争」だったイラク戦争とはまるで違う話なのだが。)

なお、マクロンのスピーチはずっとこんな絶叫調というわけではもちろんなく、最初は普通に静かに始まるが、段々盛り上がってきて、最後は大絶叫というのがパターン化しているようだ。上に貼り込んだキャプチャ画像(via BBC News記事)は第一回投票の開票結果があらかた出た(決戦投票に進む2人が決まった)段階で行なわれたスピーチのものだが、そのスピーチも最後は大絶叫していた(France 24のライヴで見ていた)。そういう意味で、(最初からやかましいパンクや第一音から不穏なダブステップではなく、いわゆる「様式美」的な意味で)メタルなのだろう。

メタルはどうでもいいのよ、メタルは。あまりにはまりすぎてて可笑しいというだけで、本人が好きか嫌いかはわからない。本人がメタル好きであっても新奇性はない。ほかの国の大統領や首相でメタル好きっていう人いるしね。もっとすごいことに、英デイヴィッド・キャメロンなんかThe Smiths好きだったしね(爆笑)

閑話休題。

今回のフランス大統領選挙は、EU(の前身となったEC, EEC, ECSC)の中心的存在であるフランスで、前年のBrexitで決定付けられたかのように英語圏大手メディアの多くが喧伝している「EUの終焉」という方向性において、どのような政治指導者を選ぶのか、という点で大いに注目を集めてしかるべきものだ。

大手メディアがどのような方向づけをして煽ろうとも、これは単に「欧州の一国における極右の台頭とその波及効果」とかいう話ではない(そういう性質の「極右の台頭」なら、冷戦終結後これまでに何度も繰り返されてきたことだ。英語圏の報道で「ヤバい」っていうムードが中でも濃かったのは、古い話だが、オーストリアでハイダーの自由党が議席を獲得したときだったと思う。オーストリアだからね)。

私はBBCとガーディアンのサイトをほぼ毎日チェックしているが、BBCは確か1年以上前(EUレファレンダムの日付が2016年2月に公表されたあと)から、「来年行なわれる最も大きな選挙(のひとつ)」において「注目されるのはルペン」というトーンで「フランス大統領選」を語ってきた。「ルペン旋風」を待望しているかのような態度を取っていたメディアはBBCだけではなく、テレグラフのTwitterフィードでも見かけた(ガーディアンはそうではなかったが、この新聞はぶっちゃけ特殊な立ち位置の媒体なので「メディアのムード」をみるには適していない)。そういった大手メディアが(オランダの……ええと、名前なんだっけ、ヘルト・なんとか……ほんとに忘れた……と並べて)ルペン、ルペンと大騒ぎしているのは、そのときにはまだ行なわれていなかった2016年11月の米大統領選挙で「注目されるドナルド・トランプ氏」と関連付け、何か「グローバル」な動きとして「極右の台頭」を語ろうとするもののように見えたし、そのときは実際、そういうことが起きているようにも見えていた。(今は、私はそれは疑わしいと思っている。)

フランス大統領選の投票日まで1ヶ月を切った段階でも、BBCなど大手メディアの「ルペン、ルペン」騒ぎはますます激しくなるばかりだった。それまでにFNの選挙参謀について「ルペンを支えるこの男」みたいな長文記事を出したりしていた英語圏メディア(そこまで関心持つようなことか?)は、何度も繰り返して「マリーヌ・ルペンとはどのような人物か」を語った重厚長大な記事を出していた(彼女がFNの党首になったときから何度も繰り返し語られている「父親との確執」とかを何度も語ってるわけ)。「ルペンを支持する人々」へのインタビュー記事もあった。英語圏大手メディアにしてみれば、レディ・ガガやケイティ・ペリーやハリウッドの芸能人を追っかけてるスキに「トランプ旋風」を捕まえ損ねていたことが「失点」として響いていたのかもしれない。

それにしても、投票まで1ヶ月を切った段階で、普通に見て(=「フランスの二大政党」にとらわれずに先入観なしで見て)「最有力候補」だったエマニュエル・マクロンを無視してまで、マリーヌ・ルペンばかり注目していたのは、「肩入れ」にしか見えなかった。私が見てた範囲で(偏っているが、それでも)マクロンを目立つように扱っていたのは、ガーディアンだけだった。ロイター記事をそのまま掲載するなど、あまりリソースを割いてるふうではなかったが、それでもトップページの目立つ位置にマクロンの顔写真と名前を掲載して記事への誘導をしていた。

マクロンは「現政権での閣僚経験者」であり、同時に「新星」である。元々金融畑の出身で、2006年から09年まで社会党に所属し(時系列がごちゃごちゃしているのだが、はっきり離党したのは2015年のようだ)、2012年に現在のオランド政権が発足したときにエリゼー宮でdeputy secretary-generalに任命された。2014年には第二次ヴァルス内閣で経済・産業・デジタル部門大臣に任命され、財界寄りの改革を推し進めた(「トニー・ブレア」になぞらえられるのはこういったことによる)。2016年4月に自分の政党En Marche! (「前進!」という意味)を立ち上げ、8月30日に閣僚を辞任し、11月16日に2017年の大統領選に立候補する意向を表明した。投票まで半年もない段階での立候補表明だったが、急速に支持を集めていた。
https://en.wikipedia.org/wiki/Emmanuel_Macron

これに「危機感を抱いている」と報じられたのが―― Surprise, surprise, ロシア政府筋である。確かもうこの時点で共和党(元UMP)のフィヨンが「プーチンのプードル」っぷりを示していたのだが、ウィキリークスが必死になって、マクロンに不利な情報を「リーク」しようとし始めた。それの中身がわかったときには、大爆笑だったが。以下は元FT、現BuzzFeed NewsのBorzow Daragahiさんの連投。2月5日付け。
















ここでDaragahiさんはAPのRaphael Satter記者のスレッドを参照するよう勧めているので、そちらを見てみよう。



























(・_・)

……とまあ、こういう顛末で、「ロスチャイルド」だの「ヒラリー・クリントン」だのといったキーワードを流しておけば勝手に「な、なんだってーっ!」と騒いでくれる界隈だけを相手にしている連中は、さすがにやることが違う。

さらにこういうのもある。「アメリカの犬であるマクロンをやっつけろ」的な情宣が行なわれているということがよくわかるだろう。







一方で、4月23日の大統領選のフランス語圏のハッシュタグ、#JeVote (英訳すると "I vote")の画面は、見渡す限り、(フランス大統領選の投票権を持たない)アメリカ人ばかりという状態だったのだが(詳細後述)。

で、誰が「アメリカの犬」ですって? っていう話だ。

むろん、クレムリン筋のこんなのにビビるようなEUではない。3月下旬の「EU(の前身)設立から60年」の記念式典前には、ベルギー元首相がこのツイートで煽る煽る。



ああ、ヨーロッパっておもしろい。だからユーロヴィジョンやめられない(そこか)。

こんなことを書いていると全然書き終わらないので先を急ごう。

ともかく、投票1ヶ月前になってもマクロンについてまともに取り上げず、ルペンのプロフィール記事などはまた繰り返し掲載していた(クリックさえしていないから中身は知らないが)BBCが、ようやくマクロンの人物像を解説する記事を出したのは、投票日の2日前、21日のことだった(「大統領選の結果を左右するぅぅぅぅぅ!」とヒステリックな反応が起きたシャンゼリゼでの警官銃撃殺害事件のあとである)。しかも「ヴィジュアル・ストーリー」枠でたっぷりと演出が為されており、さほど関心がないような人でもさくっと読めるというような記事ではない。読めば、内容はおもしろい。

Emmanuel Macron
The meteoric rise of France's youngest presidential candidate
By Lucy Williamson
http://www.bbc.co.uk/news/resources/idt-sh/emmanuel_macron

しかしこの力の入った記事でさえ、BBC Newsの編集部は目立たないように扱おうとしていた。トップページやサイドバーで推されてはいたが、リード文が「まともな政治家」を扱う調子ではなかった。私生活面にフォーカスしていたのだ(そのリード文がついた状態のサイドバーをキャプチャしておくべきだったと思っている)。確かにすごい話だし、「思い込んだら一直線」、「激情家」、「Can-doスピリット」といった側面を語るものではあるが、とっくに「最有力候補」とみなされるようになっていた新人をようやくBBC Newsがまともに取り上げたときに一番大きく見せようと、このたっぷりした記事の中からリード文として選び出したのが、「24歳年上の高校時代の教師と結婚した」ということだったというのは、すべてがめんどくさくなるレベルのことだ。あえて言葉にすれば「デイリー・メイルか!」としか言いようがない。

まあ、英メディアがフランスの政治家の私生活に異様な執着を見せるのは今に始まったことではないのだが。

といいながら、私も例のKhaled Freak氏のリミックスと遭遇しなかったら「ルペンが、ルペンが」と騒いで、逆方面で「メランションが」とか言ってたかもしれない。英語圏のメディアしか見てないからね。

この2月、パニクったロシアとウィキリークスによる「マクロンを標的にしたリークによる情報戦」が展開されるはずが、実際に行なわれたのは、上述の通り、ウィキペディアを見れば誰にでも確認できるようなこと(周知の事実)を、わざわざヒラリー・クリントンのメールから掘り出してみせるという、ものごとを大げさに見せたがる連中が使う古典的な方法による目くらましだったという壮絶なオチが展開されたあと、全然別の件でマクロンの名前がガーディアンのトップページに出ていたことがあった。「フランスのアルジェリア」筋を激怒させる発言だ(URLが記事の内容と少しずれてる)。この時点でマクロンは「フロントランナー(一番手)」である。

French election: Macron sparks Algeria row as Fillon hit by fresh blow
Thursday 16 February 2017 09.51 GMT
https://www.theguardian.com/world/2017/feb/16/france-inquiry-into-presidential-candidate-francois-fillon-to-remain-open
Frontrunner refuses to back down over criticism of France’s ‘barbaric’ past as rival told ‘fake work’ inquiry will stay open


記事本文から。ハンパないっすな。
French presidential frontrunner Emmanuel Macron has refused to back down after his far-right rival attacked him for comments he made condemning France’s colonial past in Algeria.

On a visit to Algiers on Tuesday Macron said France’s history in Algeria was a “crime against humanity”. “It’s really barbaric and is part of that past that we must face up to also by apologising to those who were hurt,” he said.

And on Thursday, Marine Le Pen, leader of the Front National, said on Facebook: “Is there anything worse when you want to become president than going abroad to accuse the country you want to lead of crime against humanity?”

But Macron refused to back down, and in a video statement sent to Reuters, he said: “We must find the courage to call things by their name,” he said. “Are we condemned to forever live in the shadows of this traumatic experience for our two countries?”


ガーディアンに掲載されていたのはロイターの記事なので、あっさりしていて教科書的だ。もうひとつ、別のメディアも見てみよう。アイリッシュ・タイムズ。

Emmanuel Macron calls colonisation of Algeria ‘real barbarity’
Thu, Feb 16, 2017, 18:00
Lara Marlowe, Paris Correspondent
http://www.irishtimes.com/news/world/europe/emmanuel-macron-calls-colonisation-of-algeria-real-barbarity-1.2978336
The centrist presidential candidate Emmanuel Macron has angered the French right by calling France’s 132-year colonisation of Algeria a “crime against humanity.”

Mr Macron made the comment in an interview with Echorouk TV during a visit to Algiers earlier this week. Fifty-five years after Algeria won independence, the subject remains extremely sensitive on both sides of the Mediterranean.

Mr Macron was attempting to correct the impression created by an interview last November, in which he referred to “elements of civilisation” as well as “barbaric elements” of colonisation.

Then, as now, many French and Algerians would rather take offence at one aspect of Mr Macron’s discourse than view it as a nuanced whole.

In 2005, the conservative party now known as Les Républicains (LR) passed a law recognising “the positive role of the French presence overseas”. It was later abrogated by the socialists. The debate returned with a vengeance on Thursday.

“I think it is inadmissible to glorify colonisation,” Mr Macron told Echorouk. “Some wanted to do that in France, more than 10 years ago. Never will you hear me say such things.”


極右の修正主義が極右に限ったものではなくメインストリームに入っているというのは、日本に限った問題ではない。フランスでは、ここにあるように、2005年に当時のUMP(現在の共和党)が「フランスの海外進出のポジティヴな役割」を認める法律を通した。つまり、「植民地支配を通じて、宗主国は野蛮の地に文明をもたらしたのだから評価されるべき」論が「まっとうなもの」となったわけだ。時系列的に、FNが地方議会で議席を取るなどめきめきと勢力をつけていったのはこのあとだ。

マクロンのこの態度を前提するとき、下記の「おもしろ動画」で(上のほどエクストリームではない)メタルにリミックスされている社会党のアモンとマクロンのスピーチは、非常にシリアスな「排斥しない」というメッセージだということがわかるだろう。なお、このスピーチ冒頭でアモンが言っている "clause Moliere" (モリエール条項)は、「公共建物の建設の仕事をするときはフランス語必須」とするもので、実質的に「外国人(非フランス語話者)締め出し」につながるものだ(詳細はAFP BBで日本語記事になっている)。





「外国人排斥」に反対する2候補の演説会場には、フランス国旗と一緒に、EUの旗がある。

この選挙は、そういう選挙なのだ。






ただ、現場にいたアルジャジーラ英語版などで仕事をするフリーランス記者は「マクロンの後ろにはEU旗はなかった」と写真つきで報告しており、そうなるとBBCの映像とも矛盾するので、ちょっとよくわからない。タイミングが違うのだろうか。







ともあれ、このフランス大統領選に際しては、英語圏の「ルペンが来る!」という大騒ぎにはかなりの違和感をおぼえてきた。彼女が有力候補の一人であることは間違いない。しかし、フランスの二大政党がもはやこれまでのような「二大」(大統領は必ずどちらかの政党から選ばれることになる、というような)ではなくなるかもしれないという「多極化」の時代に「有力候補」となっているのは、左翼の側のメランションも同じだし、それよりも「社会党を出て独自の政党を立ち上げた新人」でトップを走っているマクロンのほうが、よほど注目すべきではないか。(メランションは、投票数日前になってから「支持上昇」的な記事がようやくBBCに出ていたが、彼は左翼政治家として、ジェレミー・コービン同様、すごいベテランである。)













ローラ・ポイトラスの新作映画はこちら。




英語圏では、主流メディアでさえこの情報の偏りっぷりだったのだが、トランプ支持の偏向上等のメディアはこんなもんじゃなかっただろう。そしてそれに釣られた「信者たち」としか呼びようのない人々が、#JeVoteのハッシュタグに殺到していたのだが、そちらは別項にまとめることとしよう。



Khaled Freak氏のおかげでスイッチ入っちゃった人いると思うんで、置いときますね♪

When the fallout comes, he is fire!



B00000112QThrough Silver in Blood
Neurosis
Relapse 1996-04-02

by G-Tools




追記:ウィキリークスとルペンの関係


※この記事は

2017年04月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:51 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【フランス大統領選】「フェイク・ニュース!」と叫ぶなら、今だ――ハッシュタグの大量投稿は、誰によるものだったのか。
Excerpt: フランス大統領選挙の第一回投票が23日(日)に行なわれた。決戦投票に進む2人は誰かという点での結果が出るにはあまり時間はかからなかった。事前に言われていた通り、En Marche! という新政党を立ち..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2017-04-25 12:01

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼