「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年11月30日

痛ましい事故でファースト・チームがほぼ全滅しようとも、それは「終わり」ではない。 #ForcaChape

clb-tt01.pngあまりにも痛ましいし、悲しすぎる。あまりにも突然だ。あまりにも被害が大きい。そしてあまりにも衝撃が大きい。

Twitter Trends (UK) に「コロンビア」が入っている(右キャプチャ参照。日本時間で、2016年11月30日午前0時50分ごろ取得)。普段、英語圏で「コロンビア」という国名が大きなニュースになるのは、最近では政府とFARCの和平交渉・和平合意のトピック、もう少し広く見ると麻薬・ギャング関連と決まっているようなものだが、今、ColombiaがTrendsに入っているのはまったく別のニュースに関してである。

コロンビアで飛行機が墜落したのだ。チャーター便で、乗っていたのはブラジルのサッカーチーム、シャペコエンセ(現地語では「シャペコエンシ」のほうが近いそうだ)。欧州で言えばUEFAヨーロッパリーグ(旧UEFAカップ)に相当する南米のクラブチームによる国際大会「コパ・スダメリカーナ」の決勝戦のため、相手チームのホームに乗り込もうとしていたところだった。プレイヤー、監督、コーチやスタッフ、そして帯同のジャーナリストたちと搭乗員81人のうち、生き残ったのはプレイヤー3人、搭乗員2人とジャーナリスト1人の6人だけだ。下記はコロンビアの航空当局の声明の英訳(ガーディアン掲載)。

Colombia’s civil aviation authority has confirmed the names of six people who survived the crash - not five as previously reported.

The surviving players are named as defenders Alan Luciano Rushel and Helio Hermito Zampier, and the goalkeeper Jakson Ragnar Follman. It does not name the team’s other goalkeeper Danilo, who is believed to have survived the initial impact but died of his injuries.

The other survivors are named as crew members Ximena Suárez and Erwin Tumiri, and journalist Rafael Valmorbida.

https://www.theguardian.com/world/live/2016/nov/29/brazilian-team-chapecoense-onboard-plane-that-crashed-over-colombia-latest?page=with:block-583d8cfbe4b049350cc94291#block-583d8cfbe4b049350cc94291


なお、コロンビア当局のこの声明で「生存した状態で救出されたが、後に負傷のため死亡」とされているDanilo選手(GK)については、コロンビア赤十字が重ねて情報を出している(初期段階で情報の混乱があったようだ)。亡くなったDanilo選手がチームの正ゴールキーパー、救出されたJakson Ragnar Follman選手は控えのGKで、Alan Luciano Rushel選手とHelio Hermito Zampier選手はディフェンダー。こう書きながらも、あまりに痛ましいことで、言葉に詰まって、しばらくぼーっとなってしまう。

シャペコエンセは、サッカーの盛んなブラジルで、「地方の弱小チーム」だった。それが、2014年に1部リーグに昇格してわずか2年でコパ・スダメリカーナ(南アメリカ杯)の決勝まで到達した。日本語でツイートしているブラジル人記者のTiago Bontempoさんが、その経緯を詳しく書いてくれている。ほんの数年のうちに4部から1部まで来て、南米大陸の大会でトップになろうとしていた……プレイヤーもスタッフも、彼らの家族や友人たちも、どれほど力を入れて日々を過ごしてきたことか。どれほど真剣に取り組んできたことか。





この快進撃は、イングランドでは2015-16シーズンのプレミアリーグを制したレスター・シティを想起させるようで、BBCブラジルの記者はそのように説明している。

Their "Leicester City-like run" in the Sudamericana was described as "a massive achievement for a very small club" by (BBC Brasil's Fernando) Duarte.

http://www.bbc.com/sport/football/38142966


ニュースの受け手にとってわかりやすい形で語るために、英国(実質、イングランド)でイングランドの類似例が参照されるのは当然のことだが、ブラジルのプレイヤーは世界中でプレイしている。そして日本にとっては、シャペコエンセは直接的に縁の深いチームだそうだ。監督と複数のプレイヤーがJリーグを経験しているとのことで、Qolyに詳しい記事がある(他の媒体にも同様に詳しい記事はあるだろう)。また、コパ・スダメリカーナの優勝チームは、日本のルヴァン杯(旧ヤマザキナビスコ杯)で優勝した浦和レッズとの対戦が予定されており(スルガ銀行杯)、シャペコエンセが勝ったら日本で試合をするはずだったということになる。多くのJリーグ経験者が南米チャンピオンとして日本に舞い戻るという形にもなっていただろう。チーム名の日本語での検索結果をさかのぼって見ていると、どんどんつらくなる。

私が画面を見たときにTrendsに入ってたColombiaという検索ワードでTwitter英語圏をさかのぼっていくと、境界線の下は「いつものコロンビアのニュース」だ。あのスティーヴン・ピンカーが和平について極めて的確に表現したツイートなどがある。





このピンカーのツイートの6時間後くらいに、英デイリー・ミラーのケヴィン・マグワイアさんが「コロンビアにいる」とツイートしている。文脈を示すと、SkyNewsなどで仕事をしているアンドルー・ピアースさんに「ケヴィンはキューバにいて、フィデル・カストロの葬儀で旗を持つことを申し出ているそうだ」などと書かれたので、「キューバなんか行ってない、コロンビアだ」と書いている。これもまた、「和平」絡み(コロンビア和平交渉を仲介したのはキューバ)、「英語圏でコロンビアが言及されるときの。普通の文脈」だ。

clb-tw01.png

マグワイアさんの次にシンガーのVal Youngのツイートがあって、そこが「境界線」。その次に、スペイン語、ポルトガル語と英語を使うジャーナリストが、スペイン語圏から「シャペコエンセの一行を乗せた飛行機が消息を絶った」というニュースを入れている。そしてその後も続けて「飛行機は墜落し、負傷者が地元の病院に搬送されているという」と、スペイン語の報道を英語に翻訳してツイートしている。(Twitterって、こういうものだったよね。私はそういう「情報の交易路」、「日本語圏という閉鎖空間にあけられた窓」としてTwitterをおもしろく使ってたんだ……「トランプ支持者がどんなトピックにも出てきて演説をぶちかます場」になる前は。)



































事故を起こした機体は、3週間前に、アルゼンチン代表が移動のために使っていたとのこと。日本語圏でも話題になっているが、英語圏でもその話は出ている。下記はリオネル・メッシのファン・アカウントより。





この件について、ジャーナリストのベン・ヘイワードさんは、同じ機体を対戦相手のアトレティコ・ナシオナルも何度か使っていたこと、3週間前にアルゼンチン代表が使ったときに機体の揺れが激しかったことを指摘していたこと、今回シャペコエンセがこの機体を使うことになったのは最後の最後に決まったということを書いている。






※こんなときにも「アンチ・メッシ」が湧いて出て「なぜメッシばかり特別扱いするのか」的なことで絡んだりしている。自称「サッカー・ファン」の一部にこういう面があるという点は、私、すごい苦手だし嫌いですね。


負傷や出場停止で、今日、コロンビアに行かずブラジルに留まっていたプレイヤーたちが、ロッカールームで呆然としている。




監督の息子さんが、一緒に行くつもりだったがパスポートを忘れてきてしまい、ブラジルに居残りになって、結果的に命拾いしたとも。




……と、もう一度検索結果をよく見てみると、事故発生前、スティーヴン・ピンカーとケヴィン・マグワイアの間に(トレッキングとかコーヒーとか、地雷原を避けるための安全な通学路といった話題に混ざって)、飛行機の中の写真がある。ハッシュタグで「コパ・スダメリカーナ」とある。




このツイートの主は、シャペコエンセがホームとする街、シャペコのスポーツ・ジャーナリストだ。彼がこのあと、メデリンのスタジアムから投稿するはずだったであろうツイートは、永遠に書かれもしないままになってしまった。

ブラジルは、3日間の服喪期間を宣言している。





世界的に見れば、サッカーのチームが全滅したり、大きな損失を負ったりするような航空機事故はこれまでに何度か起きていて、BBCの記事はそれらの事故を箇条書きにしている。1949年のトリノ(イタリア)、1958年のミュンヘン(ドイツ。イングランドのマンチェスター・ユナイテッド)、1987年の太平洋(ペルーのアリアンサ・リマ)、1993年のガボン沖(ザンビア代表)。



英語圏を見ているとどうしてもマンチェスター・ユナイテッドの「ミュンヘンの悲劇」への言及が多いように見えるだろう。私も真っ先に連想したのはそれだった。





だがスペイン語圏ではきっと様相は違うだろう。今回の事故により似ているのは、1987年のアリアンサ・リマの事故だ。飛行機はもう少しで目的地に到着するというところで墜落しているし、チームはもう少しで栄冠を手にするというところであまりにむごい結末を迎えた。

In 1987, Alianza Lima was first in the standings with a few matches left, and it looked like a new title would be obtained, but tragedy got in the way. On 7 December of that year, Alianza made a trip to Pucallpa to play against Deportivo Pucallpa for the league. The match was won 2–0, with Carlos Bustamante scoring. The team took a charter flight for the trip back. The flight departed on 8 December in a Peruvian Navy Fokker F27 airplane, which crashed into the sea when it was a few kilometers away from the Lima-Callao Airport, close to the Ventanilla district in Callao. The only survivor was the pilot, all the players and coaching staff died, being a game away from conquering another title.

https://en.wikipedia.org/wiki/Alianza_Lima#1987_air_tragedy


アリアンサ・リマはその後、ユース・チームと隣国チリのクラブからレンタルしたプレイヤーでシーズンを終え(優勝はできなかった)、引退した選手やそのシーズンで引退する予定だった選手1からチームを作り直し、事故の翌年は降格寸前に陥ったが何とか踏み止まった。そして事故の10年後の1997年に、18年ぶりにタイトルを獲得した。(→ソース)

マンチェスター・ユナイテッドも、「ミュンヘンの悲劇」のあと、消えてしまったりはしなかった。若いプレイヤーを育て、チームを作り直した。私はMan Utdについては全然詳しくないが、その経緯は例えば下記の新書に書かれている(立て直されたMan Utdのエースとなったのが、「ベルファスト・ボーイ」のジョージ・ベストだ)。

4582855245ジョージ・ベストがいた マンチェスター・ユナイテッドの伝説 (平凡社新書)
川端 康雄
平凡社 2010-05-15

by G-Tools


シャペコエンセもきっと、何年かしたころにはきっと「強いチーム」としてニュースに登場するだろう。そのときにも日本のリーグとのつながりがまた改められているかもしれない。今日のこの衝撃と悲しみは、衝撃と悲しみとして受け止めなければならない。けれどもこれは、終わりではない。

#ForçaChape
#ForcaChapecoense


































































































英語圏のクラブ、および世界各国のクラブの英語アカウントの反応は、探せばまだまだあると思いますが、このへんで。

あ。デルピエロだ。





※貼り付けたツイートは、私がログインした状態でColombiaの検索結果に出ていたものから、サッカー関係のアカウントのツイートを目視・手動で抽出。なお、いつものことなのですが、私が積極的にフォローしている系統のアカウントのTwはなぜか検索結果にはあまり表示されないので、ガーディアンのTwがありません。アーセナルもありません(貼り付けているのはわざわざ見に行ったもの)。レンジャーズがあるのにセルティックがないというのもいつも通りです(私がフォローしてたりする北アイルランドの人々にレンジャーズ・サポが多いのかも)。













レスター・シティとの類似を言うのは、カイオ・ジュニオール監督自身の発言なんですね。





Twitter Trends (UK) は、日本時間で11月30日午前2時半すぎには、次のようになっていた。注目される語句が、「事故のあった地名」(コロンビア)から、「事故に巻き込まれた人々」(シャペコエンセ)に代わっていた。英国では、いくらサッカーが人気があっても、自分たちが対戦する機会が多い欧州(UEFA)や、イングランドで活躍したプレイヤーが選手生活の最後の数年を過ごしにいくことが多い米国以外のクラブ名がこういうふうに話題になるということは、めったにない。

clb-tt02.png

亡くなったプレイヤーやチームの方々、取材のため同行していた記者の方々、飛行機の乗組員の方々に、謹んで哀悼の意を表します。

forcachape.jpg



アップデート: 死者数が修正された。






※この記事は

2016年11月30日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:00 | TrackBack(0) | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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