「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2019年05月28日

「英国ではサッカーは労働者階級のスポーツ」という類型に対する強烈なカウンターをどうぞ

英国をめぐる類型(ステレオタイプ)の中に、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というのがある。(それと同時に、フットボーラーがファンに丁寧に応対したりしていると「さすが紳士の国」云々のナレーションがつけられたりするのでわけがわからないのだが。)

「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というのは、それ自体は真である。1990年ごろまではそう言われていたものだし、ほかのスポーツ(特にラグビー)と比較するとサッカーは際立って「労働者階級」的な存在だ。

しかし、少なくとも21世紀の現代においては、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」をひっくり返して「労働者階級以外はサッカー以外のスポーツに入れあげる」とか、「サッカーは労働者階級だけのスポーツ」と言ってしまうのは、真ではない。

それでもしかし、「サッカーは労働者階級のスポーツだ」というわかりやすい言説は、ときに「サッカーは労働者階級だけのスポーツだ」と尾ひれはひれをつけながら、今も流通している。「それ、必ずしも正しくないですよ」ということを指摘したい場合は、普通に「今はそうとも限らないですけどね」と言うこともあるが、黙ってほほ笑んで聞き流しておくこともあるだろう。

いずれにしても、「労働者階級だけ」でないことをはっきり示すエビデンスがあれば、「サッカーは労働者階級だけのスポーツだ」という極論を知ったかぶりで吹聴するような人々の発言は無視すべきものだということを、説得力をもった形で示すことができるわけで、その機会を待ち望んでいた人も少なくなかろう。

そしてついにその機会が、まさに願ってもないような形で、我々の前に訪れたのである。

ケンブリッジ公、つまりウィリアム王子といえば、英王室メンバーの中でも最も真顔力が足りていない人である。昨年のヘンリー王子の結婚式の際、あまりに激しいアメリカの黒人教会式の流儀に、エリザベス女王をはじめ王室の方々が居並んだ席のなかでただ一人、顔を真っ赤にして下を向いて肩を震わせているのが中継されていた(ちなみにお父さんのチャールズ皇太子は、口元が多少ひくひくしながらも鼻で大きな息をするなどして持ちこたえていたし、お祖母さんのエリザベス女王に至っては完璧な真顔力の持ち主としての実力をこれでもかこれでもかと見せつけていた)。

そのウィリアム王子がサッカーの「アストン・ヴィラFC」(バーミンガム拠点)のサポーターであることは、英国では広く知られているそうだが、現在チャンピオンシップ(二部リーグ)に落ちているアストン・ヴィラが、来季におけるプレミアリーグ昇格をかけた試合が27日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われ、ウィリアム王子もVIP席で熱戦を見守った。試合は終盤、アストン・ヴィラが1点リードしたまま、アディショナル・タイムに入り、VIP席ではウィリアム王子が(フットボール・ファンにはなじみ深い)例の表情で(つまり感情をむき出しにして)、試合を見守っていた。

TV画面のその表情を見て、「この人、本物だ」という声がTwitterに。



そして試合はそのままアストン・ヴィラの勝利で終了、ダービーを2-1でくだしたヴィラは2019-20シーズンのプレミア復帰を決めた。

その瞬間のウィリアム王子がこちら。



サッカー情報専門のところも、王子の「さまざまな感情 many emotions」に注目。



Twitter Momentsも「本物のヴィラ・ファン」を特集。



一方、王室ファンによく読まれている雑誌Peopleはこの取り上げ方:



いずれにせよ、ウィリアム王子のアストン・ヴィラへの愛と熱意は、「サッカーは労働者階級だけのスポーツだ」という極端な類型を、吹き飛ばしてしまうだろう。

将来の国王の仕事として、すばらしいことではないか。



ウィリアム王子はちょっと抜けたところがあって、not the cleverest one in the classなどと評されてもいるのだが、王室廃止論者(共和主義者)でも「あの人は憎めない」と言ってしまうような存在だ。先日ハリー王子とメーガンさんの間に赤ちゃんが生まれたtきのフィーバーっぷりを冷たく見ていた共和主義者のTwitterでの会話を少し見たのだが、「あー、でもあたし、ハゲと赤毛のうちのハゲはちょっと好きかも。今日赤ちゃんが生まれたのはどっち?」、「赤毛。でも赤毛もハゲになりつつある」みたいな口の悪さを発揮しながら、敬意は特に払っていないながらも「有名人のひとり」として特に敵視せずに扱っていた。

こういう人が王室の中から出てきて、王室廃止論の牙を抜いてしまうあたり、とても英国的だと思う。

なお、ウィリアム王子がアストン・ヴィラをサポートしている理由については、地元バーミンガムのメディアの報道がある。




BBCにも。聞き手はリネカーさん。(子供を仕込もうとしているあたり、本物すぎる……。)


ウィリアム王子とスポーツ:
Sport
William plays polo to raise money for charity, is a fan of football, and supports the English club Aston Villa. He became President of England's Football Association in May 2006 and vice-royal patron of the Welsh Rugby Union (WRU) in February 2007, supporting the Queen as patron.

https://en.wikipedia.org/wiki/Prince_William,_Duke_of_Cambridge#Sport




アストン・ヴィラのサポといえば、ということでこんな話も。



うちなんてジェレミー・コービンからピアース・モーガンまで、エリザベス女王からオサマ・ビン・ラディンまでっすからね。この一覧には入ってないけど、OOORRRRRDDDEEEEEERRRRR! でおなじみの英下院議長ジョン・バーコウも。
https://genius.com/3368882


※この記事は

2019年05月28日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:53 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼