Facebookはもはや「プラットフォーム」ではないし、中立でもない
2017.03.11 SAT 21:00, TEXT BY DAVEY ALBA
http://wired.jp/2017/03/11/facebook-media-company/
原文: https://www.wired.com/2017/03/facebooks-officially-media-company-time-act-like-one/
フェイスブックは、従来のメディア企業として分類されるのを頑なに拒んでいる。米国の成人の半数近くがFacebookでニュースを見ているにもかかわらず、CEOのマーク・ザッカーバーグは、Facebookを「テクノロジープラットフォーム」と呼ぶことにこだわっているのだ。だが、こうした古い議論はもはや必要ない。とくに、フェイスブックが独自の動画コンテンツの制作を始めたいまとなっては。
『DIGIDAY』US版によると、フェイスブックはモバイルアプリ用に「スポットライト・モジュール」と呼ばれるタブを開発しているという。Facebook用に制作された番組や長時間の動画コンテンツをハイライトするものだ。
FBが立ち上げようとしているこの「動画コンテンツ」の詳細は、ここでは措く。私はFBは使っていないし、別に興味もない。それより、下記の指摘だ。
動画制作の領域に確実に踏み込みつつあるフェイスブックは、巨大メディアとしての責任を回避しようとしており、それは議論の的となっている。
……フェイスブックは、コンテンツ制作を手がけることで、「単なるプラットフォームである」と主張することはもはやできなくなる。
結局のところ、「コンテンツをつくる」というのは、フェイスブックが編集上の判断を行うことを意味する。それは、動画制作者が何をするか、あるいはしないか、そしてその動画のフォーマットや長さ、トーンを決めるのに、フェイスブックが意見をもつということだ。そしてもちろん、フェイスブックは番組に直接資金を投じることになる。そこに、ニュートラルなものなど何もない。
FBというのはアメリカ企業で、基本的にアメリカしか相手にしていない。英語圏ならまだしも、言語が異なる(それも、使う文字から異なっている)日本語圏では、また事情が違っているのかもしれない。だがいずれにせよ、FBについては次のような問題(をザッカーバーグが絶対に認めようとしないという問題)が指摘されている。同じ記事から。
フェイスブックは、編集上の判断をこれまでまったく行ってこなかったというわけではない。「Facebookは、決してニュートラルなプラットフォームではありません」と、コーネル・テックでSNSを研究する法律学教授のジェイムス・グリメルマンは言う。「常に、どこよりも効率よくコンテンツを拡散してきたのです」
フェイスブックの技術的・社会的な決定は、コンテンツに明らかな影響を与えてきたと、グリメルマンは語る。……
グリメルマン教授の言葉に、私は昨日読んだBuzzfeed.comの記事を思い出した。内容をかいつまんで連続ツイートしたものだ。元からそれをブログに引っ張ってくるつもりだったが、このWIREDの記事はちょうどタイミングよかった。
というわけで、昨日読んだBuzzfeedの記事である。
nofrills / nofrills/新着更新通知・RTのみ
I Made A Facebook Profile, Started Liking Right-Wing Pages, And Radicalized My News Feed In Four Days https://t.co/F7PI8GJxOa via @broderick at 03/10 20:45
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承前、「Facebookのアルゴリズムがどうなっているのか、それによってどのように思考が形成されるか、自分で人体実験してみた」という記事。最初に「友達」なしで自分のプロフと名前・顔写真を登録して新規開設し、共和党全国委員会公式ページを「いいね」したが、FBのアルゴリズムは無反応。 at 03/10 20:53
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続)そこで「このページにいいねしている人」のコーナーで一番上に表示されていたWHのCoSに「いいね」してみたら、FBの「お勧め」機能が作動し、ドナルド・トランプやショーン・ハニティ、Fox News, Breitbartなどが表示。筆者はそれらのページをすべてフォローした。2 at 03/10 20:57
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続)同様のことを、民主党の側でヒラリー・クリントンのページで行ない、アルゴリズムの反応を見た。このころにはフィードが入ってくるようになったが、政治家のアカウントからのアップデートばかりなので、ウィジェットを使ってさらに「いいね」しまくってみることにした。3 at 03/10 20:59
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続)このウィジェットの画面で、NWOだのイルミナティだののページが表示されるようになった(早いね)。その次の段階では、これまでのニュース系&政治家のフィード系では見られなかった「ミーム画像」が表示され始めた。ただこの段階ではそう変な画像は出てきていない。4 at 03/10 21:02
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続)続いて、既にフォロー済みのページがシェアしてくるページをどれでも「いいね」してみたところ、FBのアルゴリズムはまた激しく反応した。「関連するページ」としてこれまで出てこなかったページを示すようになった(ここでMiloとか「アメリカ・ファースト」などが観測範囲入りしてる)。5 at 03/10 21:05
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続)このころにはますます様子がおかしくなり、右翼的メッセージをつけたソフトコア・ポルノ的画像が出てくるようになった。アルゴリズムは、筆者と共通点のある人々を結びつけようとしていた。保守系のお笑いページを「いいね」すると、10代で子供を持つ親たちのコミュニティが表示されるなど。6 at 03/10 21:09
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続)こうして、更地で共和党全国委員会公式ページとクリントンのページから始めて数時間「いいね」を押しまくった結果、筆者のページにTrending Topicsが表示された(キャプチャに出てるそのニュースの内容が、す・ご・い) https://t.co/iKoClNc6XG 7 at 03/10 21:12
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続)ここで「いいね」の上限に達してしまった筆者は、既にフォローしていた複数ページが同じ記事(リンク)をシェアしていることに気づく。ちょっとアレな感じのするトランプ支持アカウントがシェアしてきたのは、2012年には既にネットに出回っていた有名なデマで、リンク先はそれもんのサイト。8 at 03/10 21:16
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続)そのそれもんのサイトの記事は、別のそれもんのサイトの記事をコピペして再構成したもので、そのそれもんのサイトの記事はさらに別のそれもんのサイトの記事を…という具合になっている。筆者のFBページのニュースフィードの多くがこのように「ソース・ロンダリング」された記事になっていた。9 at 03/10 21:19
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続)次に筆者は、自分のフィードで複数ページがシェアしてきたものは何であれ、自分もシェアするという行動をとった。それにより自分のところに表示されるものの性質がどう変わるかを見るために。(このセクションの画像が、Twitter Cardに使われているアレックス・ジョーンズの画像)10 at 03/10 21:23
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続)こうして1週間続けたころには、筆者のFBページのニュースフィードは、"alternate reality" へののぞき窓のような様相。流れてくる「ミーム画像」もちょっとおかしな感じになってきたし、アレックス・ジョーンズのところのネタを別のサイトが書いてるのが出てきたり。11 at 03/10 21:27
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(これ、日本語圏では6年前のTwitterで非常に多くの人に生じたことに似てますね。自分で何か積極的に読みに行ったりしてもいないのに、Twttrのフィードにどんどん極端なものが流れてくるようになって、その「極端なもの」が本当に極端すぎるので判断するための座標軸がなく…という状態) at 03/10 21:30
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(実際、Buzzfeed記者のこの「実験」、記事にしているのは彼の遭遇したページのごく一部だけなのですが、それでもけっこう来ますよ……所謂「電波浴」の状態。私はある程度「はいはい、陰謀論陰謀論」と流せるし遠慮なく流すんですが、それでもちょっと消耗しますね) at 03/10 21:33
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続)また、「フィルター・バブル」がいかに形成されるかを確認するためのこの実験を筆者が開始した3日後には、「ホワイト・パワー」のミームが表示され始めたり、プーチンのファン・ページに勧誘されたりし、金曜日までにはニュースフィードに本物のネオナチのサイトの記事が表示されていた。12 at 03/10 21:39
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続)記事 https://t.co/iKoClNc6XG の最後は結論まとめ。個人的には、デイリーストーマー(本物のネオナチのサイト)が出てくるのが早いと思ったけど、Googleで普通に検索するとすとーむなんちゃらが検索1位に出てくるのが現実なので、そこは何とも言えないのかも。 at 03/10 21:43
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続)筆者は実験の結論をまとめたあとで、最後に、更地から始めた自分のFBのフィードがどうなっているか、キャプチャで示している。彼が積極的にやったことは、最初に共和・民主両党の公式ページ(のそれぞれ1つ)を検索したことだけで、あとはFBのアルゴリズムの言う通りと強調している。14/了 at 03/10 21:49
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ついでに書いておくと、記事のあとにある筆者のプロフィールの欄を見るとわかりますが、この「実験」の主で記事の筆者の拠点は米国ではなく、英国のロンドン。それでもFBのアルゴリズムでは米国の話ばっかり薦めてくるようになってる、ってことです。(日本語圏はあらかじめ切り離されてますけどね) at 03/10 21:51
nofrills / nofrills/新着更新通知・RTのみ
さて、アレックス・ジョーンズという名と陰謀論という言葉を一緒にツイートするとフォロワー数が減るのが常なのですが、今回はどうでしょ……WLの件(なのかタイミングが同じTuamの件なのか不明だけど)でフォローしてくださる方が増えたのですが「陰謀論」云々がお嫌な方はどうぞお外しください at 03/10 22:00
さて、BuzzFeed記者が使っている「フィルター・バブル」という概念は、5年以上前に、イーライ・パリサーが書いた本にまとめられている。日本語版の翻訳もとてもよかった。
![]() | 閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義 イーライ・パリサー Eli Pariser 早川書房 2012-02-23 by G-Tools |
以前、この本について書いたときに述べたが、パリサーは2000年代、米国の反戦運動(イラク戦争反対)をオンラインで組織化していた人である。「みんなの意見」系の「集合知」を信じてきた(あるいは今も信じている)ようで、署名サイトのAvaazを立ち上げたのもこの人だ。彼はこの本を出した後、Upworthy(「いいね」を押すなどして上位に表示させ、人目につくようにする価値があるもの)という名前の「バイラル・ニュース・サイト」を立ち上げた。このサイトは、少し見てみたことはあるがどうにもついていけない感じがして(こういうのフォローするほどアメリカに興味ないし)、フォローはしていない。
『閉じこもるインターネット』の日本語版は大変話題になり、2016年には文庫化もされている。まだ読んでいない方には、ぜひ、ご一読をおすすめしたい。そして、Googleなり何なりに「ログインしっぱなしでネットを使う」ことが、自分の周りに壁を作っているということを知って、その上でネットを「賢く」(っていうフレーズ、実は苦手なんだけど使うね)利用するにはどうしたらよいかを考えてみてほしい。といっても、日本語圏での情報の流れ方はまた特殊なので、具体的に何をどうしたらどうなるか、ちょっと私にはわからないけれど……。
![]() | フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF) イーライ・パリサー 井口耕二 早川書房 2016-03-09 by G-Tools |
※この記事は
2017年03月11日
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1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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