kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2020年02月25日

「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族も友人も守れるはず――善意で広まるあるチェーンメール

新型コロナウイルスに関してはいろんなことが言われていて、その一部はデタラメだ。個人的にウイルスの話など読んだり聞いたりしてもどのくらい正確に理解できるのか怪しいくらいの素養しかないのだが、それでも「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」で始まる日本語のメッセージを受け取ったときは、「これはデタラメだ」と即判断した。

なぜか。日本語がひどかったからだ。「ひどかった」というより「機械翻訳臭」に満ち満ちていたから。もっと言えば「失敗した機械翻訳臭」だ。(詳細後述)

そういうダメな翻訳の話は、今回の新型コロナウイルスに関するニュースのなかでもうひとつあるのだが、そちらについて書こうとしていたらなぜかドツボにはまってしまい、昔聞いていた『基礎英語』のテーマ曲が頭をぐるぐるし始めるというありさまで(その音楽が『基礎英語』のテーマだということは、あとから調べて確認しなければならなかったのだが……つまり、ぐるぐるしている間はずっと「これ何だっけ、これ何だっけ」と考えていた)、もう少しこなれるまでの時間が必要だということで、取り急ぎ、「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」の怪文書から。

そう、これは「怪文書」だ。

これは「怪文書」である

このメッセージを(幸いにも)受け取っていない人もおられるだろうから、下記に画像データで示しておく。(読み上げソフトをお使いの方には申し訳ありませんが、コピー&ペーストできるテキストの形で再掲することは、不確かな情報を記載した怪文書を、当ブログからまたコピペで拡散させてしまうことになるので、なにとぞご理解ください。)画像データには大量のウォーターマークを入れておくが、それはこれをこのまま悪意で再拡散・再利用させないためである。読みづらい点はお見逃しいただきたい。

基本的に送信されてきた文面をそのまま画像化したが、画像化に必要とされる改行を何か所か加えた(改行を加えた個所は、画像中に「☆」で示してある)。また、私にこの文面を送信してきた人(直接つながりのある人)の書いた部分もプライバシーの観点から一部を保護したが、その人にこのメッセージを送信したのがどういう立場の人かはわかるようにしてある。

あと微細なことだが、文中で半角のナカグロ(「・」の記号)が1か所使われているところがあったが、それはテキストデータにするときに全角に変換してしまった。(この手の怪文書で半角のナカグロが使われていることは、ちょっと気になるけど。)

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※画像はクリックで原寸表示。

この文面は、Twitterで多発が報告されている文面(「耐熱性に乏しく、26-27度の温度で殺傷します」を特徴とする)とは若干異なっている。つまりこの「怪文書」の文面は1つではない。

書き出し最初の2行にある情報、つまり「ウイルスは熱に弱い」とか「温かい飲み物を飲もう」「ぬるま湯を持ち歩こう」とかいったことは、厳密ではないかもしれないが(「ぬるま湯」では持ち歩いてるうちに「常温の、つまり冷たい水」になってしまう)、別に変ではない。日本語も、「やたらと読点(、)が多いな」という程度で、特に変には見えない。日本語の文章を書き慣れていない人が、丁寧に書こうとして、やたらと読点だらけの文を書いてしまっているのだろうというのが第一印象で、だから私も元々は看護師さんからの転送メッセージだというこの文面を、読まずに捨てることはせずに読んでみたのだ。しかし、読み進んでいくうちにどんどん「?」となってくる。

まず「?」が浮かぶのは、5行目の「必ずたくさん伝達してください.」だ。チェーンメールの常套句ではないか。

チェーンメールは善意が回す

「チェーンメール」とは、人から人へと鎖状に(チェーンのように連鎖的に)転送させることを目的とするメールのこと。SNSやLINEのようなメッセンジャー・アプリが当たり前になった現在では「メール」という名称は時代遅れだが、言語的には「筆」ではなく「鉛筆」を入れているのに「筆箱」と呼び続けているような現象なので、そこは気にしないでいただきたい。

この「チェーンメール」について、日本データ通信協会は次のように説明している

チェーンメールとは、転送を呼びかけ、次々と鎖のように連鎖していくメールのことです。

チェーンメールは転送されることを目的としているため、受信者の恐怖心をあおるホラーな内容や幸せになれるおまじないなど、善悪様々な種類の内容で転送させようとします。

……こういったチェーンメールのほとんどはデタラメ(で)……軽はずみな転送は、悪質なデマの情報を不特定多数の人にまで広げてしまうことになります。


「必ずたくさん伝達してください.」という文言は、まさに定義通りの転送の呼びかけである。

チェーンメールの目的(なぜ多くの人に転送させたいのか)はケース・バイ・ケースで、中には本当に善行を目的としたものもあるのかもしれないが、インターネットといえばパソコンを使わないと利用できなかった時代からネットを使っている人々の多くは、「なるべく多くの人に転送してください」という不特定多数宛てのメッセージは無視する習慣が身についていると思う(メーリング・リストなどにうっかりチェーンメールを転送してしまうなどした日には、お叱りやら罵倒やら忠告やらアドバイスやらで大変なことになったものである)。

だが、現状、ネット利用者の多くがそういうわけのわからない情報空間に慣れていない人たちだ。FacebookであれLINEであれ何であれ、リアルの知り合い同士の安心できる情報交換や交流の場でしかなく、そういうところにネットの、いわば野良のチェーンメールが持ち込まれても、「無視する」というマナーが発動しないのだろうと思う。だから(私が受け取ったのとは少し違う文面だが、同内容の怪文書が)拡散してしまっているのではないかと思う。






ちなみに私が受け取った文面で、「必ずたくさん伝達してください.」の文末の句点は半角ピリオドである。文書全体にわたって、句点は全角のマル(。)で統一されているのだが、ここだけ、なぜか半角ピリオドだ。「あとから付け加えられた」臭が立ち込めている。

上述の半角のナカグロにしても、「あとから付け加えられた」部分で発生した誤変換かもしれない。(ナカグロに全角と半角があるということを知っている人はそれなりのスキルがある人で、パソコンなんかほとんど触ったこともない人たちがどんどんネットを使うようになっている現在、そこを統一するのが当たり前で統一されていなければおかしいと考える人は「異様に細かい人」扱いされるものだが、何が言いたいのかというとGoogleなり何なりに投げて得られる機械翻訳結果に半角ナカグロって含まれるものなんすかね、ということ。)

ここらあたりから、文面は一気に「不自然な日本語」っぽさを増していく。上述の「必ずたくさん伝達してください」という常套句にしても、日本語としては不自然だ。

しかし、「日本語として不自然」だからという理由だけで「転送すべきでない文書、怪文書の類なのではないか」と疑える人は、実はそんなに多くはない。だってこの文書には何かもっともらしいことがかいてありそうだから。

「何かもっともらしいこと」というのは下記の図をご参照いただきたい。


下記は、上に示した図に、簡易的にハイライトを施したものである。新型コロナウイルスに関する不安の中でこのメッセージを(信頼できる人から)受信して、さらに他人にも回覧する人は、ピンク色の背景にしたところだけはしっかり読んで、あとは読み飛ばすか、ほとんど読まないで、「難しいことはよくわからないけれど」という謙遜をしつつ、「何か重要そうなことが書いてあるし、何となく役立ちそうなことが書いてある文書だ」と判断していると思われる(その根拠は、主に、末端文章書きとしてのセンスと経験でしかなく、「そう考える証拠を科学的に検証可能な形で示せ」と言われたら困ってしまうが)。

だってこの文章、「冷たい飲み物はよくない」とか「衣類は日に当てろ」とかいった、極めて常識的なことも書かれているし、別に悪いものではないだろうし、お医者さん筋の話だっていうし、何となく役立ちそうなのだから、友達や家族に教えてあげてもいいんじゃない?−−という方向での心理もあるだろう。

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どんなときも、何かこうちょっと新奇な情報、他では耳にしないようなことを言われると、「あ、そうなんだ!」という驚きを覚えるが、不安の中にいるとき、そういった類の(ほとんど無害な)驚きを与えてくれるような情報は、「このもやもやを追い払ってくれるような情報」のように見えてしまう。それが「何となく役立ちそうに思える」という(誤った)判断をさらに強固なものにする。

この文面の日本語がなんか変だということには、ほとんどの人が気づくだろう。しかし、いったん「これは役立つメッセージだ」と判断したら、「日本語が変なのはきっと不慣れな翻訳か、うわさに聞く機械翻訳の問題だし、私が文面を読んで何が何やらさっぱりわからないということはないのだから、きっと他の人にも役に立つはず」と、自分の判断をさらに強化することしかしない。それが人間の心理だ。

そうして《善意》がチェーンメールを回す。

これはもうずっと、20年以上も前から繰り返されてきたことである。

過剰な機械翻訳臭

当方、少々その筋なのだが、この文面には機械翻訳臭を感じたというのは上述した通りである。普段、自分で何かを日本語に、あるいは日本語から訳すという方向で機械翻訳を使うことはないので(フランス語やスペイン語、ドイツ語など欧州の言語とアラビア語を英語にすることが多い)、あまり詳しいことはわからないのだが、この怪文書の「です・ます」の混在は現在のニューラル翻訳でのGoogle翻訳っぽい。

試しに、この怪文書に特徴的な文を使って日→英でGoogle翻訳にかけて、得られた結果(英文)を単にGoogle翻訳でフレーズ検索してみたが、同一の文面はないようだ。

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※文の後半、"It will make you breathless as if drowned" だけで検索しても該当なし。

こういう次第で、この文書は英→日の機械翻訳の産物と仮定して調べてみても、元の文(原文)が出てきそうな感じはしない。元々私が探し出せるとは思っていないのだが、ときどき「この日本語怪文書の英語原文はこれじゃね?」っていうのを突き止める凄腕の人がいたりするので、ネット上を期待を持って眺めていれば原文が判明するかもしれない。

さて、この怪文書で非常に気になるのが「米国友人」という表現だ。機械翻訳っぽさが過剰なのである。ときどき日本語圏Twitterに出現する「機械翻訳を駆使して日本人とコミュニケーションをとるニセ外人アカウント」の文面臭い過剰さを感じるのだ。

おそらく原文ではこうであっただろうなと思われるフレーズ、American friendをGoogle翻訳にかけても「米国友人」という表現は出てこない。「米国友人」をそのまま英語にしてUS friendという妙な英語フレーズを作ってみても、今時のニューラル翻訳はちゃんと助詞の「の」を使ってくれる。ずいぶん賢くなったねぇ……。

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これと、上述した「半角のナカグロ」や「半角ピリオド」により、私はこの文書は「機械翻訳の変な文を、要所要所書き換えたり書き加えたりして仕上げた文書」と考えている。

機械翻訳の変な文はそのままでは読むに耐えないので、人が手を入れて何とか読めるものにする(「ポスト・エディット」という)のは、ごく当たり前の工程であるかもしれない(余談ながら、現実世界でのその作業に対する対価はとても低くてとうていやっていられないのだが)。

その「人が手を入れる」という余地のあるところには、「情報操作や捏造を意図した人が、何かを忍び込ませる」こともまた可能だ。

これは、単なる「誤訳」の問題ではない。誤訳の問題ならば原文と対照して必要なら修正すればよいだけだ。

だが、このような怪文書では、そうはいかない。

っていうか、そもそもこの怪文書、これでもかこれでもかというレベルで機械翻訳臭を漂わせていながら、ソース(原文のURL)を示してもいない。その一点だけで「読むに値しない」と判断できてこその情報リテラシーではないか。

……あ、日本語圏ではマスコミの記事でさえ原文のURLが示されることは稀なのだった。

どうしたらよいものやら。

とにかく、あの怪文書の拡散はやめましょう。そして、ああいう怪文書を見たときに、専門的なことがわからなくても「これは怪文書である」と判断できるくらいのリテラシーは身に着けましょう。

極端な話、「菌とウイルスの違い」がわからない人でも、この文書がおかしいということはわかると思います。その「おかしい」という確信を、「難しい話は私にはわからないから」とか「私の知らないことが書いてあるのだろうから」という《善意》で消し去らないようにしてください。


追記: あとこれな。市川海老蔵さんはブログに怪文書を(善意から)掲載することで「流言」や「不確かな情報」を拡散してはいても、「デマ」を拡散はしていないでしょう。「結果から見ればデマだ」という考え方もあるのでしょうが、そういう結果論が横行していると言葉が壊れてしまう。「デマ」に関してはもう遅いんですけどね(世間では完全に定着しきっているし、言葉を使って仕事をしている学者のような人々でさえ、「デマ」という言葉が正確に何をさすのかを不明確なままにして語ることについて誠実さの問題を感じもせず、その言葉に基づいて立論してしまうのが普通)。





※この記事は

2020年02月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:21 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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