「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2017年05月19日

【訃報】クリス・コーネル

「ブラックホールの太陽」がやってきたらしい。でも「そんな気配はなかった」そうだ。米ABCNYTの記事なども目を通したが、下記はガーディアンから。

Soundgarden frontman Chris Cornell died after hanging himself, a US coroner said on Thursday.

Cornell, 52, was found dead in a bathroom in his room at the MGM Grand Detroit hotel on Wednesday night after performing in the city with the grunge band.

Detroit police spokesman Dan Donakowski said that officers were called to Cornell’s room around midnight by a friend of the musician and found Cornell “laying in his bathroom, unresponsive and he had passed away”.

The Wayne county medical examiner’s office said after an initial autopsy the cause of Cornell’s death had been determined as suicide by hanging. “A full autopsy report has not yet been completed,” the office added.

Cornell’s publicist Brian Bumbery said earlier that the singer’s death was “sudden and unexpected”.

...

In the US, the National Suicide Prevention Hotline is 1-800-273-8255. In the UK, the Samaritans can be contacted on 116 123. In Australia, the crisis support service Lifeline is on 13 11 14.

https://www.theguardian.com/music/2017/may/18/soundgarden-chris-cornell-killed-himself-coroner-says




明確に説明する目的で書かれたような遺書があれば別だが、「なぜ」なんてことは、その「なぜ」を持って墓場に行った本人にしかわからない。家族も友人も、その本人でないのだから、わからないだろう。そのとき家族や友人が考えるのは、いや、考えずにはいられないのは、「なぜ気づかなかったのだろう。なぜわからなかったのだろう」ということだ。そしてそれは、その人の内部で「ブラックホールの太陽」となる。

いつかそれに食われるんじゃないか、そう思って日々を過ごしている人は、ものすごく大勢いるだろう。ひょっとしたらクリス・コーネルもその1人だったんじゃないのか(彼の歌詞は、そういう性質のものだ)。そのことがひとつの「思い」につながっていく。そうやって、個人の中のブラックホールは連鎖を引き起こすのだ。この連鎖は、断ち切らねばならない連鎖だ。














うまく言葉にならない。観察したものを説明する言葉なら、うまく出てくるだろうか。

Soundgardenは4月下旬から全米ツアー中だ。まだこの先、6度のライヴが予定されていた。








訃報を伝える記事に、最後となったデトロイトでのステージのことが書かれていたので(後述)、Setlist.fmを見てみたら(……この「ので」っていうのもおかしい。言葉の出方が普通じゃない。どうしてもうまく書けない)、日によってセットが違う。



ツアー中のバンドにとって、「毎日同じことの繰り返し」がたいへんにつらいということは、これまで数多くのインタビューなどでも語られてきた。それを避けるため、何通りかセットを用意してあるのかもしれないし、もっと即物的に、フェスの日は単独公演の日とは別のセットリストなのかもしれない。細かく検討しないとわからない。そして、そんなことのできる集中力は、ない。

ともあれ、最後となったデトロイトでのライヴの最後の曲は、Slaves & Bulldozersだった。フェスでない日はこの曲で終わるのかもしれない。14日のカンザスシティでのライヴも、6日のTuscaloosaでのライヴもそうだったし、3日のアトランタ公演もそうだったということが確認できる。

で、Soundgardenがいつもそうやっているのかはわからないが、Setlist.fmで確認できる限り、10日のインディアナポリスと、17日のデトロイトでは、この曲の途中にクリスはLed Zeppelinの "In My Time of Dying" の歌詞を入れ込んでいた。観客が撮っていた映像でも確認できる(6:36から)。(この曲は、伝統的なゴスペルだというのだが、LedZepの楽曲のそういうところはちょっと私はよくわからないので、大手報道が書いてる通りに「LedZepの曲」と扱うことにする。もにょるよね、ほんと。)

昔読んだインタビューか何かで知ったのだが、クリス・コーネルはアイリッシュでカトリックである。二度目の結婚のあと、配偶者の影響でギリシャ正教に改宗したと今回初めて知ったのだが、いずれにせよ、キリスト教の信仰を持った人だ。それに、音楽の仕事でLedZepとも(というかジミー・ペイジとも)直接つながっている。だから、彼がライヴを締めくくる曲に "In My Time of Dying" の一節を取り込んでも、誰も不思議には思わなかったのかもしれない。







そうかもしれない。ただのカバーソング、ただの偶然かもしれない。しかし、"In my time of dying, I want nobody to mourn. All I want for you to do is take my body home" とクリスが、(ロバート・プラントのように)「歌う」というよりは「語りかける」ように口にしたあと、彼は元の "Slaves & Bulldozers" に戻って、"Every word I said is what I mean" と歌うのだ。これを「解釈するな」と言うほうが無理だろう。

死ぬつもりなどなかったのかもしれない。けれど言葉にしているうちに、それらの言葉を自分の声帯を震わせて音声として出力しているうちに、彼の中にブラックホールができたのかもしれない。

もちろん、何もわからない。本人にしかわからない。

ちなみに、ライヴのあと観客の誰かがもぎ取ったと思われるセットリスト(激しい争奪戦の後が生々しい)では、最後の曲(アンコール)は "Beyond the Wheel" となっている。それを "Rusty Cage" と "Slaves & Bulldozers" ("In My Time of Dying" つき) に変更したのだ。
http://www.setlist.fm/setlist/soundgarden/2017/fox-theatre-detroit-mi-43e7fb7f.html



そのこと自体、何も不思議ではない。そのときの気分、ノリ、空気、雰囲気、そういうものでアンコールの曲が予定とは違うものになることは、別に珍しいことではない。

何一つ、「様子がおかしい」と思わせる要素はなかったのだ、きっと。だからクリス・コーネルの死は "sudden and unexpected" なのだ。

感情の起伏があっても、それが「いつものこと」である場合。そういうことだ。






人々の言葉。「クリス・コーネルが歌うなら、内容が電話帳の読み上げだって金払ってただろう」「彼の声は山だって動かした」「気持ちよく歌ってる人の頭の中では、ああいうふうに歌ってることになってる」「彼の死は、好きな歌の歌詞を誰かが取り去って沈黙で置き換えたようなもの」:













ラム爺のKnown Unknownsポエムのとき、実はクリス・コーネル様の声で「アラーイヴ・イン・ザ・スーパーアンノウン!」というのが頭の中に響いて、ちょっと困りました。



If this isn't making sense
Then it doesn't make it lies




















私の見た範囲では、"Nothing Compares 2 U" のアコースティック・カバーへの言及がとても多かった。昨年急死したプリンスの曲で、アイルランドのシニード(シネイド)・オコーナーのバージョンが一番ヒットした。



あと、マイケル・ジャクソンの "Billy Jean" のカバー。10年前のソロアルバムに入ってる。これは最初聞いたときびっくりして、その場で5回くらいリピートして聞いた。


これも、クリシェを言うなら「今頃天国では……」だ。


この映画、当時見たけど、音楽以外は実につまらなくて(サントラは何度聞いたかわからない)、「マット・ディロンがロン毛で出てた」ことしか覚えてない。今月アメリカで再発されてたみたいっすね。








「ヒップホップしか聞いてなかった自分が、ある日道端で、偶然傷だらけのCDを拾った。そのままでは再生できなかったが、CDを捨てずにディスク研磨セットを買ってきた。そして流れてきたのが……」。とてもパーソナルで、とても美しい話。ルー・リードのRock 'N' Rollでは「ラジオから流れてきた」けど、彼は「道で拾った」んだ。












もうこの人は、同じ時代を生きてくれないんだな。












Chris Cornell (July 20, 1964 – May 17, 2017)
※ウェブサイトは、クリス・コーネル個人のもサウンドガーデンのも、つながらない。



ちょい政治的な方面。クリス・コーネルの最後のシングルについても。




クリスの最後のリリースの収益は、IRC(インターナショナル・レスキュー・コミッティー)に寄付される。そのことを、IRCの会長を務めているデイヴィッド・ミリバンド(元英国外相)もツイートしている。ミリバンドは「この世代」の人だし、あの時代、グランジとか聞いてたんじゃないかと思う(というか、「クラシックしか聞かない」「ヒップホップ以外は聞かない」ような人は別として、「シアトル系」は10代から20代の誰もが聞いてた。「メタル」とか「ニューウェーヴ」とかいったジャンルの壁もなくなった)。



テリー・ジョージが暮らしてた時代のベルファストからも「難民」は出ていた。ロイヤリスト(「プロテスタント系住民」)が、アイリッシュ・ナショナリスト(「カトリック系住民」)を暴力的に「俺たちの町」から追い出していた。後にバルカンで「エスニック・クレンジング」という呼び名を与えられたようなことが行なわれていて、多くの「カトリック」が北アイルランド内のカトリックの町に移ったり、北アイルランドからアイルランド共和国に移ったりした。その1人が、メアリ・マカリース前アイルランド共和国大統領だ。





それと、オーディオスレイヴで(まだ国交回復前の)キューバに行ったこと。





あと、クリス・コーネルのTL見てて、この人ほんとに絶望したのかもしれんなと、ジョークではなく思ったのが下記。時事ネタ・ニュース系のTW/RTは、これのあとにトランプのツイートにツッコミを入れたほかの人のツイートのRTが最後だ。

nytmay11tw.png

こういう「一般的」なニュースが、「最後のワラの一本」になることもある。ただ、それが、月内はみっちりライヴの予定が入ってるミュージシャンに起こるものであるかどうかはわからない。

上記のNYT記事RTのあとは、クリスのTwitterは大まかに、ライヴ関連の写真と、母の日(5月14日)のメッセージと、映画The Promise関連のRTが並んでいる。



英語圏では、自殺のニュースがあると、必ずヘルプラインの情報が記事に書き添えられる(本エントリ冒頭のガーディアン記事の引用でも、元記事のその部分を入れておいた)。Twitterにも、米国だけでなく英国などほかの国のヘルプラインの番号がたくさん流れていた。




下記のような、理解あふれる暖かい言葉もたくさん流れていた。

でも違うんだ。「話さない」のではなく、「恥ずかしくて口にできない」のでもなく、「話すのもめんどくさい」「どうせ理解などされないので言葉にするだけ無駄」「言葉にすることが不可能」「語られえぬものについては沈黙するよりない」なんだ。そしてそれは最初は精神を奪い、やがて魂を奪う。"First it steals your mind. And then it steals your soul."

「くだらない」かもしれないけれど、コミックリリーフは必要。それをわかった人がこのアカウントの「中の人」でよかった。


(^^;) まあ、明らかに、バランス悪いですけどね……



「直接知ってるわけでもない芸能人の訃報に、いちいち騒ぎすぎ」と思う人たちへの言葉(こういうことがあると回覧される言葉):





本稿は、先に地の文を書いて、そこにいろいろなツイートを入れ込んで作成した。入れ込むべきツイートは、日本時間で19日の午後(訃報があってから15時間ほどあと)にざーっと見て、(RTせずに)Likeすることで書き留めた。ただし映画The Promiseに関するもの、International Rescue Committeeに関するものはごっちゃにならないようRTすることで書き留めた。

※この記事は

2017年05月19日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:01 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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