「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年08月13日

米シャーロッツヴィルでのネオナチのデモについて

ネオナチのすることは、基本的にちょっと書き留めるくらいでスルーするようにしているのだが、今回のこれはちょっとスルーできないような気がするのでブログに記録しておく。といっても、ブログの文を書こうとするとまた時間がかかってしまって結果的に塩漬けにしてしまうので、基本的にTwitterのログの貼り付け。

昨年の英国でのEUレファレンダム(6月)、米国での大統領選挙(11月)のあと、「反グローバリズムで移民排斥主義のアンチ・オーソリティーの勢力(極右勢力)が投票で勝つ」ということが、英米だけでなく欧州各国で起きるのではないかと予想され、英語圏メディアが「パニック報道」的なものを展開していたことをご記憶だろうか(英語圏メディアの日本版の一部でも見られたが)。米大統領選のあと、オーストリア大統領選挙(前回の結果が僅差だったため、再投票という判断が法的に下された)、オランダ総選挙、フランス大統領選挙……という具合に欧州各地で大きな選挙が行なわれ、そこで英国のUKIPや米国のトランプ支持者的な「アンチ・オーソリティの勢力」が、ある意味「ドミノ現象」的に勝利をおさめるのではないか、という予想がなされ、オーストリアの自由党(故ヨルグ・ハイダーの党、というと前回のパニック報道を思い出す方も多いだろう)、オランダのヘルト・ウィルダース(PVV)、フランスのマリーヌ・ルペン(FN)といった政党・政治家や、その側近(キングメイカー)たちが「次はこの人だ!」的に、BBCなど大手メディアで注目された。しかし結果は、誰も勝たなかった。「アンチ・オーソリティ」が勝利を収めたのは英米だけだ。

上に述べた国々のほか、今年総選挙が行なわれる欧州の大国で昨年から注目されていたのがドイツだが、選挙は9月に迫っているというのに、今、「国際報道」と呼ばれる報道機関はめっちゃ静かだ。というのも、「極右」ブームでパニック報道が繰り広げられていたときに「英米の次はオランダか、フランスか、ドイツか〜〜〜〜っ!」ときぃきぃ声で騒がれていた「アンチ・オーソリティ」の政党、AfDが、現実的に勝つ見込みがなくなったからだ。フランスのマリーヌ・ルペンと同様に若くて(40代)「いかつくて暴力的な極右勢力」のイメージとは遠い女性党首がこの4月に選挙戦出馬を見合わせると決断し、それによってAfDは「今までも常にどこかにいたような極右政党」的な存在になりそうだと報じられている。つまり、もう全然注目されていない。「欧州難民危機」と騒がれたころに英語圏でパニック報道を引き起こしていたPegidaなど、今は英語圏では名前を見かけることもない。あれらのパニック報道は組織の宣伝の役割を果たし、英国ではEDL創設者の通称「トミー・ロビンソン」や、EDL以上に過激な反イスラム団体「シャリーア・ウォッチ」を立ち上げたアン・マリー・ウォーターズ(この人、アイルランド人なんだよね。ブロガーで煽動家の「グイド・フォークス」もアイルランド人だけど)などがPegida UKなる団体を立ち上げたが、ニュースで名前を見ることはない。

だがそういったことだけで「よかった、極右はメディアの注目を失い、おとなしく、元いた巣窟に戻ったんだ」と短絡することもできない。英国でいえば、UKIPは政党としては溶け去ったが、UKIPが撒いた種は枯れずに「草の根」を構成しているし、フランスでは、中央は確かにエマニュエル・マクロンのEMが席捲しているかもしれないが地方議会などFNが一定の勢力を有しているといった具合だ。

というわけで、極右勢力にとっては、思い描いていたシナリオ(極右版の「世界同時なんちゃら」を描いていたと思われる)通りには行っていないかもしれないが、ガッカリするような結果を得ているわけでもない。何しろ、世界一の超大国アメリカが彼らの手中にあるのだ(と彼らは思っている)。

だから、オーストリアで負け(もしここで極右が勝ってたらえらいことになってたと思う……他の国とはシンボリズムが違う)、オランダで負け、フランスで負け、ドイツで戦う前から負けるなど、欧州でシケった結果しか出せていなくても、アメリカでは極右は元気だ。これまで社会の片隅で細々と「言論の自由がある!」ということを根拠に発言をしては無視され、「われわれを無視するのは、奴らにとってわれわれの言う真実が都合が悪いからだ」などと強がって支持者の間だけで盛り上がっていた地下組織が、政権の中枢に代弁者を持っている。そのことは、私は2016年11月までは想像してもいなかったが、彼らを非常に強くエンパワーしたのだと思う。メディアだってもう彼らのことを無視できないのだ。普通の大統領なら、ネオナチのスローガンを唱えるような連中のことはばっさりと非難する発言をするし、そんなことはほとんどニュースにもならない(なるとしてもベタ記事だ)。しかしトランプは「普通の大統領」では全然なく、ネオナチのスローガンを唱えるような連中をばっさり非難することはしない。そして、そのこと自体がニュースになり、それがまたネオナチを勇気付ける。「俺たちの大統領だ」、「アメリカは、自分たちが望む方向に変わりつつある」と。

bbcnews13aug2017.png

US President Donald Trump is facing criticism for his response to the violence at a white supremacist rally.

A woman was killed and 19 people injured when a car ploughed into a crowd of counter-protesters in Charlottesville, Virginia.

Mr Trump condemned violence by "many sides" - but stopped short of explicitly condemning the far-right.

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-40915569


以下、シャーロッツヴィルで何があったかの経緯を含め、Twitterのログ。

事の起こりは12日(土)に米ヴァージニア州シャーロッツヴィルで、南北戦争の南軍司令官、リー将軍の銅像を撤去するという市の方針に反対するという名目で計画されていた「市民団体」のデモだ。

「リー将軍の銅像を撤去させないぞ」というのはデモ参加者に共有されていたのだろうが、実際のところ銅像撤去反対は名目に過ぎない。でなければデモ前日の金曜日の晩に「松明を掲げて行進」などというシンボリックな行動はしないだろう。




アメリカのネオナチには注意を払っていなかったので知らなかったが、アメリカン・ネオナチのこういう集会は今回が初めてではなかったそうだ。ただ、今回は「松明を掲げて行進」というシンボリズムもあり、いわゆる「モメンタム」に達したのだろう、BBCでもガーディアンでも記事になっていた(少し後にツイートを貼りこんである)。「松明を掲げて行進」するなど、明らかに、メディアにとりあげられることを狙った演出じゃないか。無視してればいいのに……という思いも心のどこかにありつつ、デモ主催者のことなどを少し調べてみた。北アイルランドでの「旗騒動」(主催者はジェイミー・ブランソンとフレイザー)に少し似ているような気がして、なんだか気になったのだ。そしたらジェイミー的な活動家というより、EDL創設者の通称「トミー・ロビンソン」のようなのが出てきた。




このTwitter Cardの画像が12日の集会のビラなんだけど、そうそうたる面々ですな。界隈をヲチしてる人なら、Baked Alaskaの発言にはよく遭遇すると思う。彼については今年4月にBIがまとまった記事を出してたのでそれを参照。極右っていうより、目立ちたがりのエゴの塊っていう感じがするけど、ここ数年の「ネットで有名な活動家」ってたいがいそんな感じだよね(ガチの思想筋という感じが薄い)。
http://www.businessinsider.com/who-is-baked-alaska-milo-mike-cernovich-alt-right-trump-2017-4



「シャーロッツヴィル」のハッシュタグは、12日の夜(日本時間)にはUKのTrendsに入っていたので、そのハッシュタグを見たところ……
















ホワイトハウスのこの態度については、ハアレツに寄稿しているSamuel G. Freedmanが、13日付論説で次のように書いている。
http://www.haaretz.com/us-news/1.806464
The previous weekend, someone had tossed a firebomb into the imam’s office while about a dozen people were chanting morning prayers in the nearby sanctuary. Fortunately, the explosion did not harm anyone. Even more fortunately, the attacker struck a few hours before hundreds of children would have been in Dar al Farooq’s school.

In the aftermath, U.S. President Donald Trump had nothing to say on the subject. His attorney general, Jeff Sessions, declined to categorize the bombing as an act of terror. Even though Minnesota’s governor had no trouble stating the obvious, even though a thousand local residents came to the mosque several days later in a rally of support, the silence from my nation’s highest offices spoke volumes about the free pass that white nationalists have been granted for their hate.


話を元に戻そう。12日〜のシャーロッツヴィルについて。
































以上、Twitterのログの貼り付けなので読みづらいと思うがご容赦いただきたい。頭がブチ切れそうで、地の文を書いて構成している余裕がないのだ。

ハアレツの記事はぜひ読んでいただきたい。Premiumコンテントになっているが、下記見出しをGoogle検索してそのリンクから飛べば閲覧できると思う(普通にURLをクリックしても閲覧できるのかもしれないが)。

From Swastikas to David Duke: Nazism and anti-Semitism Take Center Stage at Charlottesville Rally
http://www.haaretz.com/us-news/.premium-1.806454


このハアレツ記事に埋め込まれているHuffPo記者の下記ツイートが、多くを物語っていると思う。




デモとカウンター・デモの現場にいたキャンベル記者のTLは、ぜひ、ざっとでいいので見ていただきたい。
→まとめた。キャンベル記者と、一緒に取材しているマティアス記者のTL(と、あとイアン・ブレマーのツイートに1つに引き起こされた反応)。
https://chirpstory.com/li/365747

これが、彼らの夢見た「アメリカ」なのだ。

日本語圏で無邪気に「なんちゃらファースト」っつって喜んでる勢力、特に「リベラル」を自認する勢力(民主党→民進党系の候補者などにいる)は、その足元を見直すべきである(そもそも英語圏のニュースやツイートを追ってて「アメリカ・ファースト」というフレーズに遭遇することはまずないのだが……トランプ支持者の合言葉はMAGA: Make America Great Againだ。さすがの彼らも、ガチで第二次大戦中のナチス支持者が使っていたフレーズをそのまま使うことにはためらいがあるのかもしれない)。

「日本ファーストの会」設立 小池氏は役職に就かず(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

「国際派」の小池百合子は当然知ってるはずなんだけど、America Firstってのは第二次大戦中の親ナチ派が掲げたフレーズで: https://www.theatlantic.com/politics/archive/2017/01/trump-america-first/514037/ Britain Firstは極右過激派の団体名。

2017/08/07 21:04


車で突っ込むというテロに命を奪われたヘザーさんの思いこそが、全世界に伝わるべきである――松明デモのネオナチ連中のヘイトではなく。



※この記事は

2017年08月13日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:56 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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