映像は、何か板状のものにあけられた四角い穴から撮影されている。最初はその穴がふさがれている。
穴をふさいでいるものがすっと取り去られると、四角い穴の向こうに人々が立っているのが見える。
20歳くらいの女性や白髪の男性など、多種多様な人々が立っているが、「暴徒化」でおなじみのブラック・ブロックのような黒ずくめは見当たらないし、覆面をしている人もいないし、手には何も持っていない。
最前列の人たちが画面の右に向かって何かを言い、群集の3列目くらいから後ろのあたりで次々と何も持っていない手のひらが上がる。
次の瞬間、四角い穴が左方向にパンして、群衆の3列目、4列目あたりの様子を映し出す。
四角い穴が元の位置に戻ると、群集の中から「せーの」という掛け声のような雰囲気の声があがり、最前列の人々も何も持っていない手のひらを画面右に向かってかかげる。
そしてさらに多くの手のひらがかかげられ、歌が始まる。
次の瞬間(歌はまだ2小節も歌われていないくらい)、画面の右からライオット・ギアの警察官が助走をつけて踏み込んでくる。
画面手前の人々の影になっているが、踏み込んできた警官は群集の最前列の人に警棒を振り下ろしている。
そして次の瞬間には、画面手前でも右側から警官が突撃してくる。最前列に立っている女性が思わず手を下げて防御の体制をとる。
勢いをつけて踏み込んできた警官は、思い切り突撃する。その盾でぶつかられているのは、最前列にいる若い女性だ。
女の人の悲鳴と思われる声が手前でして、潰されそうになった女性は両手で盾を押し返す。
そしてその一瞬後にはますます多くの警官が画面の中に、つまり群集の最前列に向かって雪崩れ込む。
群集を散らすことを目的としたノン・リーサルの武器を持って雪崩れ込んできた警官が「バン」と何かを発射する。画面の中ほどでは別の警官が警棒を何かに打ち付けている。
撮影者も押され、四角い穴のあいた板状のものから一歩下がり、穴の形状がどういうものかがはじめてわかる(真四角だ)。
人々の悲鳴と、何かに物を打ち付ける重い音が響き、画面手前の人影が消える(撮影者の角度が変わる)。通りの向こう側にいる人たちが両手をあげている。やはり、何も持っていない。今日はデモではなく投票で、彼らは投票しに来た人々で、プラカードの類ですら持っていない。
画面手前で警官たちの波が右に動き、画面の向こうのほうでも人の波が右に動く。
警棒を振りかざした警官が、誰かの胸ぐらをつかんで振り回している。
その警官が胸ぐらをつかんでいた人を小突いて画面の奥の方に消えると、画面手前にまた別の警官たちが入ってくる。
そして四角い穴の左側に姿が消える。
がさっ、どすっというような音がして、画面の左側から何人かの男の人たちが逃れ出てくる。30秒の映像はここで終わりだ。
映像全体は下記。
I have no words to describe this. Spain has lost Catalonia.#CatalanReferendum pic.twitter.com/uLZQCpgljp
— Catalans for Yes (@CatalansForYes) October 1, 2017
カタロニア語もスペイン語も読めない・聞けない私だが(フランス語が一応は読めるので、スペイン語は見れば何となくわかるという範囲がけっこう大きいにせよ、そんな頼りないことで何とかなるような話ではない)、今日(日本では既に「昨日」だが)のカタルーニャ(カタロニア)での事態について英語圏を見ていて、最も共感をおぼえたのは、2014年に同趣旨のレファレンダムを(非常に平和的に)行ったスコットランドの自治政府トップ、ニコラ・スタージョン(SNP党首)のことばだ。
1/2 Increasingly concerned by images from #Catalonia. Regardless of views on independence, we should all condemn the scenes being witnessed
— Nicola Sturgeon (@NicolaSturgeon) October 1, 2017
2/2 and call on Spain to change course before someone is seriously hurt. Let people vote peacefully.
— Nicola Sturgeon (@NicolaSturgeon) October 1, 2017
スコットランド自治政府トップ、ニコラ・スタージョン(SNP)「カタルーニャからの写真・映像をみて、懸念が募る一方である。独立についての見解がどうであれ、現にみられている光景については私たち全員が厳しく非難すべきである」 https://t.co/dwntRQkuPn
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 1, 2017
続)「また、重傷者が出る前に、スペイン(政府)に対し、物事のコースを変えるよう求めるすべきである。人々には非暴力的に投票をさせよ」 https://t.co/EHlvBPuihg
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) October 1, 2017
一方、バルセロナのど真ん中、観光客が多いことで知られるランブラス(先日、車暴走テロがあった大通り)は、まったくもって通常通りだそうだ。
Down on Las Ramblas, things in Barcelona continue on as normal. Tourists milling about, no sign of #catalanreferendum here. pic.twitter.com/gMtMFQFIWw
— Euan Conley (@euanconley) October 1, 2017
こういうの見ると、シリアのダマスカスで、市内の一部区域や隣接する町などが戦場になっていたときにも、「うちの地域では何も起きてませんよ?」とかいう報告が市内から出てきて、「内戦状態だとかいうのはテロリストの情宣ですよ?」とかいうプロパガンダがなされたことを改めて思い出さずにはいられない。
そういえば、うちのあたり、最近古い家の建て替えが続いているなと思ってたら、今年はついに、いつも歩く通りから金木犀が消滅してしまった(玄関先に金木犀が植わっていたお宅があったのだが、それがいつの間にか取り壊されて更地になっているお宅だということに先日気づいた)。そのため、私は日常で金木犀を見ないから「金木犀が激減した」とか「金木犀が都市部から消滅した」と思っている。しかし、私がいつも歩かない通りには、外周部分に金木犀がずらりと植えられた築30年くらいのマンションがあって、そこでは小さなかわいらしい花をたくさんつけた金木犀が香っているし、そのマンションの住民の人や近隣の人々は「金木犀が消滅した」とは思っていないだろう。
何が見えているのかはほんと人による(その人のいる場所による)。
イラクの人やトルコ出身のジャーナリストが「こんなことが欧州から伝えられるなんて」と驚愕しているのと同時に流れてくる「いつもと変わらぬランブラス通り」という報告に、そんなことをぼんやりと考えている。これ以上ひどいことにならないようにと願いながら。
事態は、現在進行中だ。
負傷者数は460人を超えているという。
#CatalanReferendum: Catalan officials said over 460 people had been injured. LIVE: https://t.co/fBso6VxqEL pic.twitter.com/3vpDLrJrRh
— dwnews (@dwnews) October 1, 2017
※この記事は
2017年10月02日
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