「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2019年02月07日

BBCは嘘をつく。そしてしれっと修正する。(「情報として最小限で必要不可欠な限定句を省略する」という手法について)

1つ前のエントリが、結局は、メディアがview数を目当てにスピンした(ミスリーディングなことをわざと書いた)という事案だったかもしれないのだが、6日に、同じようなスピンが行なわれている現場にリアルタイムで遭遇した。

どちらにしても、実際にあった発言の一部を、狭いスペースに入る程度に切り出して(ここに「編集判断」が働く)、そのいわば「短縮版」を、「放流」すれば勝手に「拡散」されていくようなSNSという場に放り投げるだけの簡単な(それでいて手法としては計算されているような)お仕事。1つ前のエントリは、内容としては多少は「社会」的な面もあるにせよ、カテゴリーとしては「芸能ニュース」だったが、ここに書くのはもろに「国際」「政治」のカテゴリーで、つまり「フェイクニュース」という表現で語られるべきことだ。

Screenshot_2019-02-06-21-43-25.jpgさて、何があったか。2月6日の夜、本を読んでいた私は何気なくBBC Newsのアプリを立ち上げてみた。そこで目にしたものに、思わず崩れ落ちた。

先日も書いたが、今の英国――というよりイングランドのBrexit支持界隈のムードは基本的に完全に "Us vs Them" になっている。 "Us vs Them" はすべてを敵味方に分ける考え方で、「我々に賛成・同調しない者は、みな敵だ」という状態。世界のすべての国を例えば「反日か、親日か」で分けて考えるようなことは、便宜的に、考えや状況を整理するためにやるのならまだましだが(それでも私はそういう考え方はとらない)、実際に何か対立や争いがあるときにその枠組みで考えることは、極めて危険なことだ。「自分たちの思い通りにならないのは、敵のせいだ」という思考で物事をみるとき、そこに見えてくるのは「解決すべき問題」ではなく「叩き潰すべき敵」であるだろう。

そういうのが煽られているときに、「敵」が「暴言」を吐いて、我々を「侮辱」している、というストーリーがあれば、煽られている人々はますます感情を高ぶらせて怒りを募らせるだろう。

ここで見出しになっているドナルド・トゥスクの発言も、それを伝えるBBCの見出しも、絶望的なまでにひどいものだと私は見てとった。こんなの、感情を煽ることにしかつながらない。





※↑↑このツイート↑↑、エンベッドすると画像の最も重要な部分が切れてしまって見えなくなっています。リンク先でご確認ください。あるいはすぐ上、ブログ本文内に入れた画像をご参照ください。

"Us vs Them" はイングランドの昔からある「愛国」のナラティヴ(のひとつ)なのだが、そこにおける "Them" はフランスであったりドイツであったり、ヨーロッパであったりする。かのウィリアム・シェイクスピア(1564年-1616年)がイングランドの王たちを描いた史劇のひとつで、その「偉大なる島国イングランドは、勇猛果敢にも大陸に乗り込んでいき……」という精神性を見事に描写した箇所があると、先日読んでいた本で知ったのだが、それが下記。









「あんな発言をしたら、そりゃ炎上しないはずがない」のだが、ドナルド・トゥスクはどう見たって「わかってて言ってる」ふうだった。何しろ問題発言は "By the way, I've been wondering..." と切り出されているのだから。

たたみかけるようにジャン・クロード。漫才してる場合じゃない。「外交の言葉」なんてとっくの昔に捨ててるのかもしれないけど、それにしてもこれはやりすぎだ。言葉をこんなふうに使っちゃいけない。

しかも発言場所はあたしのアイルランドである。そのアイルランドではレオ様(アイルランド首相)が楽しそう。レオ様は余裕を感じてるからだろう。でも北アイルランド、それもDUPを抱えてるときに、その余裕は……と思う。(´・_・`)



政治家たちが言葉をこんなふうに使っちゃいけないんだって、ほんとに。




で、トゥスクの「地獄の特等席」発言は、当然のように「炎上」。少しだけ収録しておこう。








このように、DUPはトゥスク発言について「EU離脱に投票したすべての人々(17.4mの人々)に対する侮辱である」と吹き上がって見せたのだが、実際にはトゥスクはそのようなことは言っていない。平たく言えば、トゥスクが「地獄の特等席が待ってるはずだ」と述べたのは、「まともなアイディアもなく煽るだけ煽って、いざ離脱となるとケツまくって逃げたり、責任回避したりしている連中」のことで、つまりはLeave陣営の指導者たちのことだ。トゥスクは名指しはしていないが、ナイジェル・ファラージやボリス・ジョンソンのような無責任なホラ吹きのデマ屋たちのことだ。もっと言えば、北アイルランドとアイルランド島のボーダー(境界線)について、何の考えもなく、「英国のEU離脱」を画策してきた連中のことだ。そこにはもちろんDUPも入っている。

だが、DUPはその事実を押し隠し、「トゥスクはEU離脱に投票した人々を侮辱している」とわめき立てている。

まあ、DUPだからね……と思われるだろうが、実は、BBC Newsが同じことをしていた。

※↑↑このツイート↑↑、エンベッドすると画像の最も重要な部分が切れてしまって見えなくなっています。リンク先でご確認ください。あるいはすぐ下のを見てください。



これに気付いていたのはもちろん私だけではない。Our Future Our Choice(Brexitに疑問をつきつける若者たちの組織)のFemiさんは、BBCの汚いやり方をはっきりと指摘し、「怒りと分断を引き起こすことを目的としたフェイクニュースだ」と批判している。彼が「消せ」と言っているBBCのツイートは、BBC News系アカウントのひとつによるもので、トゥスク発言を伝えた最初のツイート(no-planという限定語句のないもの)。騒ぎが大きくなったあとでアカウントの中の人が削除したようで、いつの間にか消えていた。


北アイルランドの人も「EU離脱に投票した人の怒りを、実現方法の計画もなく離脱を煽った人々にではなく、EUに向けようとしている」と指摘している。


BBCがこういうことをする――ということをあんまり言うと、「WTC7はなんちゃら」という信念を持っている陰謀論者のみなさんからの注目を集めることになってしまうのがネット上の日本語圏なのであまり言いたくないのだけど、今回のこれは事実だし、記録もしておかなければならないと思う。あまりにもおかしい。

そもそもBrexitについてBBCの態度はずっとおかしいのだ。

もっと言えばBrexitについてだけでない。2016年の米大統領選で共和党の予備選の段階からずっとトランプに注目してその発言を「記事見出し」として拡散する役割を担っていたし(ただし、それはBBCだけでなく非常に多くのメディアで見られたことで、「起きたことを伝えるメディア」の限界というか、「ある人物の発言をそのまま見出しにしてしまうこと」の限界と言える)、2017年のフランス大統領選挙に際しては、最有力候補の名前を大きく取り上げることなく、やたらと「マリーヌ・ルペンは初の女性大統領になるのか」的な持ち上げ方をしていたわけで(私は投票前1ヶ月くらいになるまで、最有力候補マクロン氏の名前を英メディアで見なかった)。

今回、BBCは "Brexiteers" を "no-plan Brexiteers" に修正したことで「うっかりしてました」と弁解することができるようになったわけだが(うっかりやらかしてしまったんでしょうね、メイのブリュッセル行きのニュースに戦争の映像をかぶせてしまったのと同じように、うっかりと)、修正前のフェイクニュースによるダメージは既になされている。というか、下記の例ではロイターの仕事が雑すぎて唖然、という面もあるのだが(クリック稼ぎかな……ロイターともあろうものが)。


というわけで、私はTwitter上で見えるものにうんざりしてしまって、しばしネットを離れて読書に戻ることにした。その間に着々と大喜利が進行していようとは思いもせずに……。

別のページに続く!



もちろん、大喜利なんかに興じておらず、「トゥスクが我々のことをバカにしたーー」と吹き上がっている人々もいっぱいいると思う。でも、単に視界に入ってこない。私は私のフィルターバブルの中にいるのだから(それもBrexit関連では、かなり積極的にミュートしてる。ピアース・モーガンだのケイティ・ホプキンスだのは視界に入ってこない)。


※この記事は

2019年02月07日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 08:50 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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