http://www.youtube.com/user/londonmayor08
Lib Demのブライアン・パディックの回答が17本:
http://www.youtube.com/view_play_list?p=F6C571CC5436AA80
労働党のケン・リヴィングストンの回答が15本:
http://www.youtube.com/view_play_list?p=FA06F85BAE9D6D15
保守党のボリス・ジョンソンの回答が17本:
http://www.youtube.com/view_play_list?p=BE51FD502D5428D1
なんだかんだいってこの3人が選び抜かれたトップ3であることに変わりはなく、質問に手短に回答しながら「自分」をアピールするさまは、けっこう見ごたえがあると思う。エフェクティヴなしゃべりという点で、勉強にもなる。
質問は、「交通機関」とか「犯罪対策」とか「コンジェスチョン・チャージ」とか「イスラモフォビア」といったシリアスなものがほとんどだが、「好きなアイスクリームのフレイバーを教えてください」、「雨を何とかしてください」とかいった質問が出されるあたり、BBC Londonはさすがに手ごわいなあと思ったり。
女子2人組の「アイスクリームは何味が好きですか」と「雨を何とかして」という質問に答えるブライアン・パディック:
http://www.youtube.com/watch?v=ZlNQTGzg31A
ひとしきりはっはっはと笑ったあと、一瞬で真顔に戻り、そのまま最後まで「真顔でジョーク」、最後はニヤリと笑顔。見事すぎるし、かっこいいよ、素で。女性サポが多そうだ。で、「でもゲイなのよー、もったいないことに!」となるのもお約束。(ゲイというのはほんとです。オープンリー・ゲイの警察官で、ロンドン警察内で人種偏見などと、かなりガチで闘ってきた人。警察でのキャリアを終えたのは、2005年7月のブラジル人電気技師射殺事件で、「トップは本当は知っていたのではないか」という件でトップに不利になることを述べて左遷されたことから。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Brian_Paddick
おっちゃんの「日照時間を増やしてほしい」という要望にこたえるケン・リヴィングストン:
http://www.youtube.com/watch?v=i-ZwtNbBIJs
わずか15秒くらいの回答だけれど、真顔ジョークとサーカズムの絶妙なバランスがいぶし銀!
http://en.wikipedia.org/wiki/Ken_Livingstone
ハックニーのあんちゃんの「選挙戦はぜひモヒカンで! 期待してますー」というわけのわからない要望にこたえるボリス・LOL・ジョンソン:
http://www.youtube.com/watch?v=bDcQWeqd8RA
これはすばらしい論点ずらし! さすが、トーリーの元フロントベンチャー、巧みの技が炸裂!
http://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Johnson
んで、タイムズとかテレグラフのあたりでは、選挙前に「平気でウソをつく労働党、ウソをつけない保守党」という路線でキャンペーンを展開し(たかが10年前のことを人々はもう忘れている、という前提なのね)、「ボリス、ウソつかない」的な印象操作に成功していたのだが、論点ずらしは保守党はスゴい。というか、テクニックとしての論点ずらしは政党には関係ない。関係があるとすれば経験だろう。特に大学での経験はものを言う。(その点、パディックはオックスフォード大卒とは思えないほどまっすぐな語りの人だ。だからちょっとboringでもある。)
そして、「有権者からの質問」でまで「髪型」をネタにされたボリス・LOL・ジョンソンは、開票日もやっぱり「髪型」がすごかった。開票結果が発表されたあとのacceptance speechの映像から:
http://www.guardian.co.uk/politics/video/2008/may/03/boris.wins
↑のURLでは、ジョンソンの市長職受諾演説、リヴィングストンの敗北の演説の2本が聞ける(ロイターの映像ニュース)。どちらもいい演説だと思う。
この演説では、候補者全員が壇上に並び、選管委員長の結果発表を聞き、勝利した候補者が「職務の受諾」の演説をする。これは議会選などでも同じで、日本での「選挙事務所でバンザイ三唱をテレビが中継、党本部で党幹部が名簿に花」ってのとは違い、選挙結果の伝達のときから、すべてが「公」の行事である。
ジョンソンは、ときおり笑いを取りながら、ライバルとして選挙戦を戦ったパディックとリヴィングストンを讃え、特にリヴィングストンに対してはしっかりと敬意を示している。そして、聴衆にしっかり聞かせなければならないところで、語調とペースを変化させ、「私が当選したからといって、ロンドンが一夜にしてコンサーヴァティヴに変わったわけではありません。いや、コンサーヴァティヴのほうが変わったのです。30年の歳月の後、ようやく、保守党はまた信頼される政党になったのです」と述べ、ロンドンについて「コスモポリタンで、マルチ・レイシャル(多人種)で、ジェネラス・ハーテッド(寛容)な都市」と述べ、貧富の差が拡大していることに懸念を示し、最後に「私に投票してくださった方々に感謝します。用紙に印をつける前に逡巡された方もおられることでしょう。ですが、この人に投票してよかったのだと思っていただけるよう、全力を尽くします」といったことを述べて、「犯罪を減らすこと、交通を改善すること、緑を守ること、普通に働いていて暮らせる住宅を提供すること(ロンドンはあまりに高すぎて、普通の勤め人では暮らせないほど)、納税者には、納税した分の見返りを確実に届けること」と「課題・抱負」を列挙し、「Greater London(行政区としての「グレーター・ロンドン市」)をさらにgreater(すばらしい)ものにしましょう」と結ぶ。全部で4分程度。
ジョンソンが下がるのと交替でリヴィングストンが出てきて(すれ違うときに握手を交わす)、リヴィングストンの敗戦の弁(退陣演説)。
リヴィングストンもジョンソンと同様、最初は選管スタッフや警察など、選挙の実施に尽力した人たちへの感謝の辞。それから投票してくれた人への感謝の弁(特に、LibDemやグリーンズなど、第一候補は自分たちの候補でも第二候補として推してくれた人たちへ)、そして労働党への感謝。それから「数パーセント及ばず三選がならなかったのは他の誰の責任でもなく私の責任である」と述べ、次は8年間の市の行政当局スタッフへの感謝で、さっきの党への感謝のときも「トップから末端のパンフレット配りの人まで」と述べていたように、ここでも「役所勤めの人たちからバス運転手、消防士まで」という形で感謝を示す。そして「ロンドン市民の皆さんに、8年間、みなさまのための職務につかせてくださったことを感謝します」。それから、ボリス・ジョンソンに向けて、「この先数年はあなたにとってとても大きなものになります。ロンドンは、本当に素晴らしい街です」。最後は「私はこれからもロンドンに住み、ロンドンで働き、ロンドンを愛し続けます」。
泣いてしまうではないか。「お疲れさまっした!」という感じで。
考えてみれば、80年代にサッチャー政権によってGLCが取り潰され(取り潰しの原因となったのが、当時GLC議長だったリヴィングストンが、国会の向かいにあるGLCの建物に毎日「本日の失業率」を掲げるなど、保守党を相手にゴリゴリやったことなのだが)、その10年後にトニー・ブレアの労働党のもとでGLCがGLAとして復活し、市長が公選で選ばれることになって、2000年にほとんどゼロからスタートしたGLAを、機能停止とか空中分解とかいった事態に陥らないよう、ここまで「形」にしてきたのはケン・リヴィングストンである――というのは、ボリス・ジョンソンが受諾演説で言っていたことでもあるが。
ケン・リヴィングストンを、サッチャー時代のような「闘士」として崇めることは、単に実像と合わないという点で、間違ったことだと私は思う。いろいろな意味で、彼は「政治家」であり、それ以上ではない。
ただ、今回の落選劇は、本人の責任ばかりではない。能力的にダメな市長だから落選させられたわけではない。声が大きい人たち(メイルだのESだの)が何を言おうとも、どのような「イメージ」を植えつけようとも、ジョンソンのほうがよいというより、「変化」を望んだ人たちが多かったということであり、有権者が「労働党」に引導を渡したということだ――それが「保守党支持者」からのものであれ、「LibDem支持者」からのものであれ。(このくらい、楽観的に見ておいてもいいよね? メイルやESのプロパガンダを真に受けて「ケンはやっぱり不適格だ」と考えた人があんなに多かった、というのが現実かもしれないけれど、さすがにそこまで「明らかに裏がありそうなメディアに言われることを鵜呑みにする」状態までは行っていないと思う。いや、「思う」んじゃなくて「思いたい」のか。)
ジョンソンの受諾演説を聴く限りでは、そこで変な勘違いはしていないみたいだから、その点は安心できると思う。むしろ彼には、これからの保守党の輝かしい道(97年労働党のような!)を脱線させないことが求められる。「やっぱダメじゃん、保守党」と思わせないようにしなければならないジョンソンは、相当慎重になるのではないかと思う。
しかし、ボリス・ジョンソン市長とデイヴィッド・キャメロン党首で、97年の労働党ばりにやられたら、うっとーしいかもしれん。
ってなわけで、可能な限りAlways look on the bright sideということで書いてみましたが、正直、ボリス・ジョンソンはとても頭のよい人で、ディテールの積み重ねはすごくできる人なのだけど、何か大きなものをオーガナイズするのはどうなのか、というか、大きなものをやってるとつい口がすべってしまい、という過去があるので、そういう過去から学んでくれていることを願うばかりです。
で、この選挙結果、あれこれ満載で、Private Eyeの次の号が楽しみですわね、おほほ、と思ったら、2日にもう出てた! しかも仕事の早さが異常!
http://www.private-eye.co.uk/
http://www.private-eye.co.uk/covers.php?showme=1209&
↑すべての人に、これをクリックして画像を見てほしい。ベタすぎてひどいのだけど、早さが異常だというだけでも笑えるから。
あと「今週のメディアウォッチ」のコーナーから、いくつか抜粋:
http://www.private-eye.co.uk/sections.php?section_link=street_of_shame&
THIS FORTNIGHT IN THE STREET OF SHAME:
THIS FORTNIGHT:
- Why the Guardian still can't tell Blair and Brown apart ←お茶ふいた。
- ... while the editor of the Times won't miss his trip to Beijing for anything ←あー、なんかウスマノフのカネでモスクワの豪華ホテルでってのもあったしね。タイムズに限らずだけど。
- Why Charlie Whelan is still spinning for Gordon (with very little effect at the New Statesman) ←NSも大変なことになっているのだな。もうみんなLabour支持やめてLibDemにいけばいいのに。ケン・ローチみたいに。
- Russell Brand starts civil war at the Guardian ←心底どーーでもいい。
- The Independent on Sunday - the budget choice for knife gang criminals ←意味がわからないのだが。
PLUS: the night of the long knives continues at the Daily Mailograph, as nearly the entire sports department is sacked to make space for the idiot's idiot, Jasper Gerard ←ほんとに? オブザーヴァーで書いてた人じゃん。うはっ、ほんとだ。
これも笑える。考えてみればすごいよこれ、「レッド・ケン」と「バフーン」と「ゲイの警官」、とても「(冷静な)選挙」とは思えない。
元ネタは、You wait ages for a bus and then, three comes along all at once. (バスが一向に来なくてどのくらい経ったかわかんなくなったところで、3台まとめて来るんだよね)
※この記事は
2008年05月03日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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