「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2008年03月21日

ジョン・マケインのご先祖はロバート・ザ・ブルース?

米国にとっての英国とは、とかく都合のよい存在なのだろう。米国が国際社会で孤立しそうなときには一生懸命にバックアップしてくれるとかいった面とは別に、大統領選挙という「民主主義の一大イベント」(おっと失礼)では「候補者のオーセンティシティ」を証明するための装置として有効に利用できる。ヒラリー・クリントンの「もしもあたくしがいなかったら北アイルランド和平は」的な域に限りなく近づいてしまった限りなく嘘に近い「事実」の主張もそうだが、ジョン・マケインのはある意味もっとすごい。

何でも、マケインの主張によると、マケインのご先祖はロバート・ザ・ブルースなのだそうだ。

しかしガーディアンが専門家にねちねちとツッコミを調査を依頼した結果、「マケインのご先祖はロバート王」説は、「すばらしいフィクション」、「デタラメ」との判定となった。

McCain's links to Scottish king shot down by experts
http://www.guardian.co.uk/world/2008/mar/20/johnmccain.uselections2008

The McCain link to Scotland was first mooted several years ago, but resurfaced this week on the eve of his trip to the UK, when Gibson Square, the publishers behind the senator's book, Hard Call, announced that "John McCain's family is of Scottish-Irish descent and related to the Scottish king, Robert the Bruce, on his mother's side"


出版社がGibson Square(笑)。なんで「(笑)」なのかは過去記事参照。ま、私の中では、ということですが。

The firm said the claim was sourced from the US presidential candidate's official website. But the ancestral link appears to originate from a 1999 family memoir, Faith of My Fathers.


ぶわはははははは。1999年! これなら「実はアルスターマンだったんだよ!」ってことになってたほうがまだ、ある意味での真実味というか、神話としての正統性があったと思います(実際、Scots-Irishだそうだし、ということはウッドロウ・ウィルソンとかセオドア・ロウズベルトとかの「米大統領といえばアルスターマン」という神話にぴったりはまりこむ)。マケインのはあまりに話がでかすぎる。こういう具合なんだよね:
In it the senator said his great-grandparents "gave life to two renowned fighters, my great-uncle Wild Bill and my grandfather Sid McCain."

Wild Bill, he wrote, "joined the McCain name to an even more distinguished warrior family. His wife, Mary Louise Earle, was descended from royalty.

She claimed as ancestors Scottish kings back to Robert the Bruce." The passage goes on to mention that Mary Louise Earle was also "in direct descent" from Emperor Charlemagne.


シャルルマーニュ大帝!!! で何、シャルルマーニュ大帝とロバート・ザ・ブルースにつながりがあるとでも? これは映画『ブレイブハート』のトンデモ(イザベルとウィリアム・ウォレスとの恋愛関係)を軽く超えるトンデモというか、ある意味の修正主義ではないのか?(笑)・・・ということはガーディアン記事で専門家がさんざんツッコミを入れているので、ガーディアン記事をお読みください。

中でもおもしろいのが、
Dr Bruce Durie, academic manager, genealogical studies at the University of Strathclyde, said after initial research into Mary Louise Earle's ancestry, that there was "no existing documented link" to Robert the Bruce in terms of traced lineage. "If you're going to track the direct lineage of Robert the Bruce, he is Andrew Bruce, Earl of Elgin and Kincardine."

Durie pointed out that Robert I was believed to have had up to a dozen children ― several illegitimately. Basic calculations suggested there could be as many as 200 million people distantly related to him. "In that sense McCain probably is descended from Bruce. So am I. So are you. So is everyone."


でも白眉はここね。
Durie also found other inaccuracies in extracts from the McCain memoir. For example, the suggestion that McCain's grandparents on his mother's side were descendants of Scots Presbyterians who "suffered the privations that were the fate of those who had remained loyal to the Scottish crown" in the aftermath of the death of Queen Mary.

"Mary Queen of Scots was Catholic. She was executed in 1587 by which time the Presbyterians were well in charge, so why would there be 'privations'? This is a mangling of history, or at best a misapprehension of it," Durie said.


もう、どうしたらいいのかわからん。米国人の歴史オンチにもほどがある。(笑)

で、先日の「スクーン石」ともちょっと関係するかもしれないこと:
"A lot of Scots of Irish descent tend to say 'we're related to so and so' ― people say Robert the Bruce quite often," he added. "William Wallace is another one, as you can imagine."


専門家からのダメ押し:
Durie added that despite his romantic reputation, Robert the Bruce was "an absolute scoundrel".

"He changed sides five times and would have ended up making Scotland a vassal nation to the English if Edward I had supported his claim to the throne. The first thing he did after taking power was destroy Stirling castle and he was a self-serving, vainglorious opportunist who was determined to be king at any cost."


つまり、仮にロバート・ザ・ブルースの子孫であったとして、ロバート・ザ・ブルースはかなりとんでもない人物だよ、と。

マケインもchanged his sideはしているから(「CIAの拷問」の件とかで)、まあ、それはそれでいいのかもしれません。

いずれにせよ、あまりに間が抜けていてほとんど好きになりそうです。

※引用部分の太字強調は引用者による。

※この記事は

2008年03月21日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 09:56 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ジョン・マケインはアルスターマン」説は、本気のようです。DNA鑑定やってるそうです。

DNA testing reveals US ancestry
Page last updated at 06:03 GMT, Friday, 27 June 2008 07:03 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7476058.stm

An international symposium taking place in County Tyrone is focusing on how families can trace relatives going back hundreds of years.

One of the speakers has used DNA testing to make a connection with US Presidential nominee, Republican John McCain.

Genealogist Barry McCain also used the scientific method to connect many McCain families in Ireland and America.

で、「アルスターマン」(つまりスコットランドからの移住者)と「アメリカの大統領」については、マイク・リーの映画『7月、ある4日間』でも軽く言及があります。
http://nofrills.seesaa.net/article/83594433.html

マケインがアルスター・スコッツであっても別にいいんです。「ロバート王とつながってる」とか言い出さない限りは。。。

ただ、今回の「DNA鑑定」云々というのは、基本的に「アルスター」のプライドがどうのこうのという話で、時期的に、非常に微妙な気持ちです。もうすぐ7月……。
Posted by nofrills at 2008年06月28日 15:46

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼