http://www.sponichi.co.jp/entertainment/flash/KFullFlash20080308008.html
映画「007」シリーズの英俳優ロジャー・ムーアの吹き替えなどで知られる声優の広川太一郎(ひろかわ・たいちろう)氏が3日、がんのため東京都渋谷区の病院で死去していたことが8日、分かった。68歳。東京都出身。葬儀は近親者らで済ませた。……
長らく「伝説」でしかなかったモンティ・パイソンの日本語吹き替え版のソフトがやっと出て、それを手にいれたばかりだというのに! これを泣きながら見ろと、そういうことですね、このー。
「空飛ぶモンティ・パイソン」“日本語吹替復活”DVD BOX エリック・アイドル(広川太一郎) マイケル・ペイリン(青野武) ジョン・クリーズ(納谷悟郎/近石真介) ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2008-02-20 by G-Tools |
自分は世代的に、モンティ・パイソンの日本語吹き替え版を放映当時に実際にみていたわけではないのだが、「〜とか言ってみちゃったりなんかして」、「なんともはや」、「いいんでないかい」といった言い回しはものすごくよく知っている。自分でも使うのだが、それは子供のころにあの言い回しが身の回りに「ふつうに」あふれていたからじゃなかろうか。ドリフのちょーさんの「おいーっす」が、ドリフのちょーさんの「おいーっす」を知っている人の間でごく自然な日常の語彙として使われるのと少し似ているかもしれない。実際、日常生活のなかでこの人の「声」と「しゃべり」に接する機会は、自分が子供のころにはものすごくいっぱいあったと思う。
たぶん、最初に「広川節」を知ったのは、テレビまんが(と呼ばれていた時代の)『ムーミン』(正式には『新ムーミン』らしいが)のスノークだ。ムーミン谷に住んでいるあの人たち(「人」じゃないけど)のなかで、ひときわ異彩を放つあの登場人物(「人」じゃないけど)。当時まだ子供すぎて「いやみな」とか「気取った」とか「鼻持ちならない」いった語彙のなかった私は、「スノークのような」という価値基準の一種を自分のものとした。そしてその「スノークのような」が型となって、「いやみな」とか「鼻持ちならない」といった語彙を自分のものとしていった。
小学校の音楽室でバッハ(ヨハン・セバスチャン・バッハ)やヘンデルの肖像画のポスターを見て、「スノークだ!」と思い、私の頭の中ではバッハが勝手にあの口調であの声でしゃべっていた。習っていたピアノでバッハの曲を課題として与えられ、右手と左手が思うようには別々に動かないことに絶望するのはもう少しあとのことだ。頭の中でスノーク頭のヨハン・セバスチャンが「なーんたる!」と嘆いていた。
その後、中学くらいだろうか、テレビではじめて『お熱いのがお好き』を見て――日本語吹き替え版だった――、「この声はスノークだ!」→「その女装ムリ(げらげら)」→「気付けよ、そのゴツいの、男だよ、どう見ても」(リンク先の画像の一番←)、で「トニー・カーティス」という二枚目俳優を認識し、それからキューブリックの『スパルタカス』とかいろいろ見たんだった。テレビで。その後だな、ロジャー・ムーアは。確か、『死ぬのはやつらだ』のテレビ版。
それと同じころに、学校の図書館で『ムーミン』の原作(トーベ・ヤンソンの)を借りて読んで、テレビまんがでの「スノーク」が原作とはまるで違う人格者(「人」じゃないけど)であることにちょっとびっくりした。でもそのころの私は既に、「スノークのような」を使わなくても、ああいう感じの奴をいうときに「嫌味な」とかいう言葉を使うことを覚えていた。
んな感じだと思うんだけども、広川さんは「ブラウン管」を通じて子供だった私にほんとうに多くのもの、多くのきっかけを与えてくれた人だった。
合掌。
最後に、訃報記事を広川太一郎節にしてみちゃったりなんかしちゃったりして……。
「広川太一郎変換フィルタ 変換しちゃったりして」
http://www.keddy.gr.jp/~eigamichi/dic/hiro.cgi
※画像、クリックで原寸表示。
再度、合掌。
※この記事は
2008年03月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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