「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2008年02月05日

思わぬところから米国非難

ヨーク公ことプリンス・アンドリュー(女王の息子、皇太子の弟)がイラクをめぐって米国を非難した、という記事があちこちに出ている。

Prince Andrew rebukes US on Iraq
Last Updated: Tuesday, 5 February 2008, 10:24 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7227627.stm

Prince Andrew rebukes US over Iraq war
Matthew Weaver
Tuesday February 5, 2008
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,,2252730,00.html

Prince Andrew rebukes America over Iraq
By Toby Helm, Public Policy Editor
Last Updated: 7:06am GMT 05/02/2008
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2008/02/05/nandrew105.xml

ヨーク公は、軍関係から退いたあと(ヨーク公は、フォークランド戦争では海軍の一員として、ヘリコプターを操縦していた)、現在は英国の通商担当特使をしている。そして特使として明日から訪米するというタイミングで、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンにインタビュー記事が掲載された。

From Prince Andrew, critical words for U.S. on Iraq
http://www.iht.com/articles/2008/02/04/america/andrew.php

ヨーク公のインタビューはめったにあるものではないとのことで、興味がおありの方はIHTの記事をぜひ。

IHTのインタビュー記事はそんなに長いものではないが、「イラク」について語っている部分はごく一部である。というか、いきなり「ヨーク公はアメリカ好きで、携帯の着信音はドラマ『24』から取られている」など、かなりどうでもいいことが書かれていたりして、「アメリカへの気遣い」の示し方として味わい深いものがある。

... the prince described the United States as Britain's No. 1 ally but conceded that relations were in a trough. There are, he added, "occasions when people in the U.K. would wish that those in responsible positions in the U.S. might listen and learn from our experiences."

米英の関係が底にある、というのは、ブレアがいなくなって「お前と俺」の関係で実態以上のものだった両国の関係が正常化しただけじゃないのかと思ってみたりするのだが、通商という点からいえば、米国の経済停滞も影響しているのだろう。

そんなことよりも、「英国の人々が、米国で責任ある地位にいた人々が、英国の経験に耳を傾けそこから学んでくれていたらなあと思うこともある」だろう、と述べた、という点。

Because of its imperial history, Britain has experienced much of what the United States is going through, Prince Andrew said.

"If you are looking at colonialism, if you are looking at operations on an international scale, if you are looking at understanding each other's culture, understanding how to operate in a military insurgency campaign - we have been through them all," he said. "We've won some, lost some, drawn some. The fact is there is quite a lot of experience over here which is valid and should be listened to."

なんて率直な。

というところまでが前置きで、「イラク」については
Prince Andrew's view that post-invasion chaos in Iraq could have been avoided if President George W. Bush's administration had listened more is widely shared in Britain. Geoff Hoon, the former British defense secretary, has said that British views on Iraq were ignored in the decisions to outlaw the Baath Party and dissolve the Iraqi military.
↑これはIHTの地の文で、ヨーク公と記者の間でこれについての話があったかどうかはこのテクストからは不明。

The fallout from Iraq has fueled, the prince argues, "healthy skepticism" toward what is said in Washington, and a feeling of "why didn't anyone listen to what was said and the advice that was given."

ははは、「健全なる懐疑」。「どうして誰も聴かなかったのか」。

実際、ジャック・ストロー外務大臣(当時)がぶら下がりの記者にグチったりもしていたように、米国はほんっとに、イラクでの経験が蓄積されている英国のアドバイスを、右から左へと受け流していた。その結果がCPAなる統治機関による失策の連続と、巨額の使途不明金と、何万か何十万かわからないが多くの死であり、3つに分かれそうな極めて危ない状態(バルカン化とまでも言われた状態)である。

IHT記事に出てくる「ジェフ・フーンが語ったように」については、テレグラフの過去記事を参照。
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/12/09/wirq109.xml

ガーディアンのNewsBlogでは、政治とは距離を取ってきたヨーク公のこの発言が米国で反発を買っていると報じている。というか、自分たちを褒め称えているのでない限りは、誰に何をいわれてもカリカリ来るであろうネオコンのブロガーが反発している、というだけの話だろうが、なかなかカラフルでリッチである。
http://blogs.guardian.co.uk/news/2008/02/prince_andrew_on_iraq.html

ワシントンの、the Margaret Thatcher Centreというおっかない名称の機関のトップであるNile Gardinerさんは、「イラクを巡ってロンドンとワシントンの関係が緊張しているときにこのような問題発言を」などと述べておられるそうだが、ヨーク公の発言のどこが「問題発言 gaffe」なのか、私にはさっぱりわからない。

「問題」があるとすれば、IHTが、「英国に罪はない」と言いたいのかとすら思えてくる書きぶりであることだ。英国はおそらく、爆撃するまではムクタダ・サドルとその民兵について把握していなかっただろう。バスラの街にペルシャ語のパッケージの商品があふれんばかりになるなどということも想定していなかったのだろう。

「歴史を知っていて経験のある英国」が、そういうことを想定していて、そして今のバスラの状態があるとは、論理的に、考えづらいことだ。

※この記事は

2008年02月05日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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