……だが、検死解剖というものは行なわれていないのだろうか、かなり無茶苦茶な話になってきている。死因がなかなか報道されないなと思ってたらこれかよ、まったく斜め上の話がでてきたのだ。あまりに斜め上なので調べてみることにした。その結果、結論としては「検視は行なわれていない」。まったくもう、リトビネンコ事件のほうがまだ直球といえるような展開だ。
まず発端の「斜め上」。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2330599/2479956
同省のBrigadier Javed Cheema報道官によると、車から身を乗り出して支持者らに手を振っていたブット元首相は、自爆テロ発生時、車内に身を隠そうとした際にサンルーフのレバーに右耳付近をぶつけて頭蓋骨を損傷し、それが原因となって死亡した。
AFP BBの日本語記事にぴったり対応する英文のAFP記事が見つけられないのだが、近い記事なら見つかった。
Slain Bhutto laid to rest in family tomb
http://afp.google.com/article/ALeqM5h7X7ppYKC0yqcpoHQgFw5IL2jwcA
The interior ministry said Friday that Bhutto would have survived the latest assassination attempt if she had stayed inside the car and not had her head above the sunroof.
The bomber apparently fired three times at her but missed, said Cheema, the ministry spokesman.
As she ducked, her head hit a lever of the sunroof of the car that was to speed her away from the campaign rally.
"The lever struck near her right ear and fractured her skull," Cheema said. "There was no bullet or metal shrapnel found in the injury."
Officials previously said Bhutto was shot in the neck by the suicide bomber moments before he blew himself up, killing her and around 20 others.
ブットがサンルーフから顔を出したりせず、車内に座っていたら、死ぬことはなかっただろうというのが内務省の見解だ(←ただしこれは、内務省がそういうことをいったのか、AFPの記者がそう解釈して書いたのかは不明)。報道官は自爆犯はブットを狙って3回発砲したが失敗したと述べ、ブットは身をかがめたときに、急発進した車のサンルーフのレバーに頭を打った。「レバーが右耳のすぐ近くに当たり、それで頭蓋骨を骨折した。銃弾も金属片もその傷からは見つかっていない」とCheema報道官は述べた。当初当局者は、ブットは自爆犯が自爆する寸前に首を撃たれたのだと語っていた。
同じような話だが、少しトーンの違う記事を、インドの英語メディア、Mera Bilaspurから。
What caused Benazir Bhutto's death? Not bullets or shrapnel says government
29-Dec-2007
http://merabsp.com/UrNews.aspx?News=0000661
The Pakistani government ... has claimed that Benazir Bhutto died of head injury and not bullet or shrapnel wounds as earlier reported.
The earliest reports had indicated that 54 year Benazir Bhutto had died of the injuries she had sustained from the bullets that she had taken in the neck and the chest.
Yesterday, representatives of the government from the interior ministry speaking to the media indicated that the leader of the Pakistan People's Party had not been killed by bullets or shrapnel from the bomb.
パキスタン軍政いわく、当初は銃弾か爆弾の金属片によって死亡したのではないかと報じられていたが、昨日(28日)に内務省の記者会見があり、銃弾でも金属片でもないだろう、という見解が示された(indicated)。
同じ記事から、上のAFP BBさんの記事抜粋に対応する部分:
Javed Cheema, the spokesman from internal ministry said that as she ducked to escape the bullets she must have banged her head against the lever of the sun-roof of her car when the car jerked in the shockwave of the blast. This fractured her skull resulting in her death.
内務省報道官のJaved Cheemaは、次のように述べた。ブット元首相が銃弾をよけようと身をかがめたときに、車が爆発の衝撃で大きくゆれ、そのときに車のサンルーフのレバーに頭を強打したに違いない。このため頭蓋骨が骨折し、死に至った。
この報道のmust haveとかindicatedというのが、実際に報道官の口から出たことば(の正確な英訳)なのか、翻訳を経た結果ある程度の「伝言ゲーム」になっているのか、記者の独自見解なのか、そこらへんは判断の材料がない。
だが、ひとつわかることは、ブットの遺体はまともな検死解剖をされてないんではないか、されていたとしても軍政当局がすべてをコントロールして、検死解剖の結果でさえやけに都合のよい話になっているのではないか、という可能性がある、ということだ。
長井健司さんの死を思い起こす。ビルマ軍政はいまだに「偶発的な死」だという見解を撤回していない。(カメラの返還を求める署名は、23日に3万人に到達したそうです。まだ署名をされていない方、是非。)
というところで、ポストモーテムについて検索してみたら案の定だ。パキスタンのデイリー・タイムズ:
Medico-legal reasons prevented Benazir's postmortem
Saturday, December 29, 2007
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2007%5C12%5C29%5Cstory_29-12-2007_pg7_62
要旨:
ラワルピンディのthe Allied Hospitals(病院連合)の最高責任者であるムサディク・フセイン医師が、金曜日、ベナジール・ブットの検死解剖は、法医学的理由から、行なわれていない、と語った。同医師は、法執行当局が、PPP(パキスタン人民党、ブットの政党)のリーダー、アミン・ファヒームが、アシフ・アリ・ザルダリ(ブットの夫)の許可なしでは検死解剖は行なわないようにと要請していると伝えてきた、と告げた、と述べた。
ちょっとわかりづらいのだが、警察が医師に対し、「PPPの話では、ご主人が許可しない限りは解剖はダメとのことです」と告げた、という証言が、医師から出ている、ということだ。
続き:
同医師は、ブットの死亡が宣告されたラワルピンディ総合病院での記者会見で発言した。彼はブットが運び込まれたときは現場はパニック状態となり、医師団はとにかく彼女の生命を救うことだけに注力していたと語った。また彼は、ザルダリ(夫)が許可を与えない限りは検死解剖は行なわないようにと警察から告げられたと語った。検死解剖は通常は警察の依頼で行なわれるが、ブットについては警察は依頼を行なわなかった。そのため、医師らはブットの遺体を(解剖しないまま)地方行政当局とPPP幹部に引き渡した、という。
もうひとつ、パキスタンのメディアから:
Resuscitation bid failed
http://www.dawn.com/2007/12/28/top2.htm
A REPORT sent by the Rawalpindi General Hospital to the Health Department of the Punjab provincial government said all efforts by its doctors to revive Ms Bhutto failed and she was declared dead exactly 41 minutes after she was brought at its emergency department at 5.35pm with open wounds on her left temporal bone from which "brain matter was exuding".
つまり、ラワルピンディ総合病院からパンジャブ州保健局に提出された報告書によると、5:35に運び込まれたブットは、医師が手を尽くしたにもかかわらず、41分後に死亡が宣告された。病院に運び込まれたときには左の側頭部の骨がぱっくりと開いており、脳が外に出ていた。
……ん? 「左」? 何かの間違い? いや、間違いない、on her left temporal boneとある。
AFP記事などで紹介されていた軍政のスポークスマンは「右側をぶつけた(右耳付近に負傷)」と言っていた。
病院から保健当局への報告書で間違えるはずはない。とすれば、スポークスマンの言い間違い? The Dawnの記事の書き間違い? あるいは(以下、陰謀論めいた話を省略)。
搬送された病院の医師が記録している「頭の左側の開いた傷」はスルーで、「右側をぶつけて頭蓋骨骨折」ですか。>軍政スポークスマン。
この記事によると(ファクトだけメモ):
- 搬送されてきたときにはすでに自発呼吸していなかった。
- 搬送されてきたときには脈拍も血圧も計測不能だった。
- 搬送されてすぐに蘇生が開始された。
- 医師団のチーフは、ラワルピンディ医学大学のムサディク・カーン教授。
- 心臓マッサージのために、左側の開胸手術が行なわれた(Left antrolateral[sic] thoracotomy for open cardiac massage was performed)。
- すべての手を尽くしたが、18:16に死亡が宣告された。
そして、この記事にも検死解剖が行なわれていないということが記されている。つまり、病院から行政当局への報告書には「検死解剖は行なわれていない」と書かれている、ということだ。これ以上はないほどオフィシャル。
The report said a post-mortem examination of Ms Bhutto's body was not carried out at the hospital "because the district administration and police had not requested the hospital authorities (for this)".
報告書には、遺体の検死解剖は、「行政当局と警察が、病院側にそれを依頼しなかったので」、病院では行なわれなかった、と書かれている。
もう一度、軍政当局のスポークスマンの話を見てみよう。
バーレーンのメディア:
But Interior Ministry spokesman Javed Cheema said all three shots missed her and that a postmortem found no bullets or shrapnel in her body.
http://www.gulf-daily-news.com/Story.asp?Article=204129&Sn=WORL&IssueID=30284
パキスタンのThe Dawn:
In reply to a question about a post-mortem of Ms Benazir Bhutto, Mr Cheema said her external post-mortem had been conducted by doctors, but her husband Asif Ali Zardari had requested the government not to undertake a complete post-mortem.
http://www.dawn.com/2007/12/29/top5.htm
external post-mortemって何だ……complete post-mortemと対置されているから、表面だけ見たということかな。
で、何、右の耳の辺りを骨折していたというのはわかるかもしれないけど、銃弾や金属片ってのはexternalじゃなくinternalで見ないとわからないじゃない。
表面だけ見て傷に銃弾が金属片がないから、死因は銃弾や金属片ではありません、頭を強打した結果の頭蓋骨陥没ですって? かんべんしてください。しかも医者じゃないだろ、あんた。
パキスタン軍政にフォントを大にして言いたい。
Fact is sacred.
で、PPPや夫が解剖を依頼しなかったという件についてだが、27日付のThe Dawnには、PPPの人が「死因がわかるのは解剖を待ってから」という内容のことを言っていることが報じられている。
ISLAMABAD, Dec 27:
When asked to confirm whether Ms Bhutto was killed as a result of bullet shots or the blast, he (= PPP vice-chairman Makhdoom Amin Fahim) said it would be cleared only from the post-mortem report.
http://www.dawn.com/2007/12/28/top4.htm
普通に考えれば、PPPが「解剖を行なわないでください」という意思を表示した可能性は極めて低い。
では夫の方はどうか。親族の意見は所属政党の意見より強いはずで、夫が「解剖は行なわないでください」という意思表示をしていたら、それはそれだ。
というわけで探したらインドのメディアの記事が出てきたのだが:
He said Bhutto's husband Mr Asif Ali Zardari didn't want a post mortem - to which Mr Zardari responded later by saying that he had landed in Pakistan too late to be consulted on the matter.
http://www.thestatesman.net/page.news.php?clid=1&theme=&usrsess=1&id=182861
うはー、「到着が遅かったので、その件について相談されていない」。
この人がどこに住んでいるのかを私は知らないけれども(たぶんドバイだと思うんだけど)、少なくともパキスタン国内ではない。
http://en.wikipedia.org/wiki/Asif_Ali_Zardari
英テレグラフは、「夫の要請により解剖は行なわれていなかったことが判明した」と報じているが(下記)、上のインドのメディアの記事と照らし合わせると、「しないでくれと要請した」というより、「してくれという要請をしなかった」という事情ではないかと思われる。
It emerged that no post-mortem examination was carried out at the request of Miss Bhutto's husband, making a cause of death impossible to establish.
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/12/29/wbhutto129.xml
いずれにせよ、検死解剖が行なわれていないということは、死因はわからない、ということだ。
パキスタンでは、ますます「政府が手を下した」説が燃え上がるだろう。
大混乱のなか、とりあえず聞こえてくることは全部書いておきました的なBBC記事:
Bhutto's cause of death disputed
Last Updated: Saturday, 29 December 2007, 12:50 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7163754.stm
内容を箇条書きで:
■死因:
- パキスタン政府スポークスマンは、ブットは爆発の衝撃で頭をぶつけて死亡したと述べた。
- ブットの同僚は、銃弾を受けて死亡したと述べている。
- 支持者は政府の説を「危険なナンセンス(dangerous nonsense)」として強く反発している。
■暴動:
- ブットの死で暴動が拡大しつつあるが(略奪なども起きているようだ)、ムシャラフは略奪者は「厳しく対処し、国民の安全のためあらゆる手段を講じる」と述べた。
- 土曜日、街路には多くの兵士の姿が。
- 木曜日の暗殺から後、騒乱での死者数は少なくとも31。
- 金曜日から土曜日にかけて暴動が発生したブットの出身地のLarkanaでは、燃やされた車の残骸が人影のない通りのあちこちに。
■葬儀:
- ブットの葬儀は金曜日に執り行われた。
- 夫のアシフ・アリ・ザルダリは、家族は「彼らは失敗し私たちが成功する」と思っていただけにいっそう悲しみに打ちひしがれていると語った。
■PPPの今後:
- ザルダリは、日曜日にブットの遺言(PPPがこの先どうなるか)を公開すると述べた。
- 自身がPPP党首となる可能性については、BBCの取材に対して「党の決定することだ」と答えた。
- PPPは、1月8日の選挙に出るかどうかについてはまだ決めていない(ボイコットするかもしれない)としている。
■そのほかの政党:
- PPPのライバル政党(選挙ボイコット宣言済み)党首のナワズ・シャリフは土曜日に遺族を弔問した。(→記事。長年の政敵であったが最近はよく話をしており、12月25日生まれのシャリフにブットから花束が贈られたばかりだった、とか。)
- ナワズ・シャリフが葬儀に到着したときに、ブット支持者は「ブットは永遠だ」と叫び、反政府スローガンを叫んだ。
■実行犯?: ※この件についてのBBCの記事での慎重さに注目。
- 政府はパキスタン人のミリタントで「アルカイダのリーダー」のBaitullah Mehsud(South Waziristan tribal leaderだそうです)が犯行の背後にいると非難。
- 非難された本人は、自分は関わっていないと否定。
- 内務省スポークスマンのJaved Iqbal Cheemaは、情報当局がBaitullah Mehsudの電話を傍受した、と述べた。その中でMehsudは、もうひとりのミリタントに祝福を述べていた。(→内務省が公表した傍受記録の英訳。)
- 非難されたMehsudのスポークスマンMaulana Omarは、電話で「政府のプロパガンダである」として関与を否定。「女性を攻撃するなど、部族の伝統と習慣に反する」。
■アルカイダ:
- アルカイダとタリバン支持のミリタントは、この数年で多くの爆弾事件を起こしていると考えられている。
- これらの爆弾事件では、女性を含め、数百人単位の人が死んでいる。
■最後の瞬間:
- 政府は記者会見で、ブットの最後の映像を公開した。(映像は私も見ました。サンルーフから頭を出して微笑むブットの左側から撮影されたもので、車が半分過ぎたあたりで群集の中から伸ばされた手にピストルが確認でき、一瞬後に発砲。政府が「ブットは頭の右を打っていた」と発表しているのは、発砲に驚いてとっさに身をかがめたら身体は右に傾き、右の頭を打つ、という仮定には合致します。病院の医師団の報告書の「左側から脳みそが出ていた」というのは、発砲もしくはその直後の自爆で彼女の頭がやられた、ということを意味しているのだろうと思います。)
■死因:
- パキスタン政府スポークスマンは、ブットは爆発の衝撃で頭をぶつけて死亡したと述べた。
- ブットの治療に当たったムサディク・カーン医師は、先に、ブットは金属片で死亡したのではないかとの見解を示していた。
- ブットの同僚(PPPの人たち)は政府の発表はおかしいと反論している。
- PPPのSherry RehmanはBBCに対し、「衝撃で頭をぶつけたなどとはまったくばかばかしい。それは暗殺計画などなかったということを示唆しており、危険なナンセンスである」、「首の後ろにはっきりと銃創とわかるものがあった。ひとつの方向から入り、別の方から出ていた(貫通していた、ということ?)。私の車も服も、みんなも血まみれになっていた。つまり、頭をぶつけたのではない」と語った。
■警備:
- (映像を見る限り、どう見ても、拳銃を持った人間があんな近くまで近づけただけでもおかしなことなのだが)、内務省スポークスマンのCheemaは、警備としてはすべてやれることはやっていた、車から頭を出していなかったら死ぬことはなかったかもしれない、と述べた。(ああ、これさっきAFPの英文記事にありましたね。)
■実行犯:
- 誰が暗殺者を送り込んだのかについては互いに矛盾する説が入り乱れており、誰一人として正確な解説はできない、とBBCのFrank Gardner記者(防衛・治安問題の専門)。
- アルカイダもタリバンも非宗教的なブットの表すものを呪詛しており、容疑者として完璧ではある。
- しかし反ムシャラフの人々は、軍政がアルカイダの命令での暗殺だという証拠があると主張していることについて、納得はしそうもない。
■10月の暗殺未遂事件:
- 10月にドバイからパキスタンに戻ったときに起きた爆殺未遂事件について、ブットは「パキスタン情報機関のrogue elementsの仕業だ」と述べていた。(だんだんリトビネンコ事件みたいになってきた。)
■選挙:
- PPPもどうするかわからない、ナワズ・シャリフはボイコットという状況で、暴動・騒乱もひどい。このような中で、政府がわずか10日後に選挙を実施するつもりでいるとしたら、それは驚きである、とBBCのOwen Bennett-Jones(パキスタン南部のブットの実家に行っている記者)。
- しかし当局の発表は、各政党に相談して、延期について合意を形成してからになるだろう、と同記者。
- 1999年にムシャラフ将軍がクーデターで政権を掌握してからずっと軍政が続いてきたパキスタンで、今度の選挙は民政移管を決定付けるものになるはずだった。
- 米国政府は、選挙が滞りなく安全に行なわれうるのであれば、予定通りに行なうべきだ、と国務省スポークスマンが述べた。(って何これ、何も言ってない!)
- ムシャラフのスポークスマンは、決定するのはまだ早いと述べた。(早くないよ。)
ほんで、しばらく経ったらこんなことになっとります。
Musharraf cracks down on rioters
Last Updated: Saturday, 29 December 2007, 14:57 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7164138.stm
騒乱での死者は「少なくとも38人」に。銀行176件、電車の車両72両、鉄道の駅18件が破壊され、100人以上の囚人が脱獄。ブットの本拠地の選挙事務所(たぶんお役所のもの。「選挙管理委員会」みたいな)が9件放火されて全焼、など。
追記@30日の夜中から31日にかけて読んだ記事から
クウェートの英語メディア、Arab Timesの記事(日付がわからないのだが、Google Newsの時刻表示によると、日本時間で30日の早朝か)、発信地はイスラマバード、クレジットはAgencies:
'Qaeda' denies kill - Tribal people ...'we don't strike women'
PPP sees cover-up ... Riots toll 44
http://www.arabtimesonline.com/client/pagesdetails.asp?nid=10062&ccid=11
「アルカイダ」とされる部族リーダー側が「うちらはやっていない」と否定している、という内容と、PPPは政府が隠蔽していると主張している、という内容と、パキスタン全土で騒乱状態で44人が死亡(かなり詳しく書かれている。、という内容などを伝える記事。
この中で、PPPが政府の内務省スポークスマンの「サンルーフに頭をぶつけて死んだ」という説明について猛反論しているという部分に、埋葬前のブットの遺体を清めたブットのスポークスウーマンの話が出ている。
"The story that al-Qaeda or Baitullah Mehsud did it appears to us to be a planted story, an incorrect story, because they want to divert the attention," said Farhatullah Babar, a spokesman for Bhutto's party. Senior members of Bhutto's Pakistan People's Party (PPP) dismissed the government's version of events as "lies". "There was a bullet wound I saw that went in from the back of her head and came out the other side," Bhutto's spokeswoman Sherry Rehman, who was involved in washing her body for burial, told AFP. "This is ridiculous, dangerous nonsense because it is a cover-up of what actually happened," said Rehman. Farooq Naik, Bhutto's lawyer and a senior PPP official, said Bhutto had a second bullet wound in the abdomen. Bhutto was an outspoken critic of al-Qaeda-linked militants blamed for scores of bombings in Pakistan and had received threats.
"I was actually part of the party which bathed her body before the funeral" said Rehman, who added that her car was used to transport Bhutto to hospital. "There was a bullet wound I saw that went in from the back of her head and came out the other side. "We could not even wash her properly because the wound was still seeping. She lost a huge amount of blood." Rehman accused the government of mounting a cover-up over Bhutto's death. "The hospital was made to change its statement. They never gave a proper report," she said. "I believe the interior ministry is saying that she died from some concussion that may have taken place against the sunroof. "This is ridiculous, dangerous nonsense because it is a cover-up of what actually happened." Musharraf on Saturday ordered security chiefs to take firm action against rioters, state media said.
つまり、ブットのスポークスウーマンのシェリー・レーマンさん(埋葬前に遺体を清めた)が、次のように述べている。
- 銃弾が後頭部から入り、前頭部に抜けていたのを確認した。
- ブットを病院に搬送したのはレーマンさんの車だった。
- (死亡宣告後も)傷口からの出血があって、遺体を清めるのも十分にはできなかった。ものすごい出血量だった。
- 病院は、声明の内容を変更させられた。病院の報告はちゃんとしたものではない。
それと、ブットの弁護士でPPP幹部のファルーク・ナイクさんが、次のように述べている。
- 腹部にも銃創を負っていた。
……というわけで、何が本当なのか、さっぱりわかりません。病院の報告は、内務省のスポークスマンの発言とは噛み合っていないのだけれども、ブットのスポークスウーマンの話ではその病院の報告でさえ嘘がまざっているという。さらに、この記事から読み取れる限りにおいては、遺体を見ているはずのブットのスポークスウーマンは、見ていないはずの弁護士(「ファルーク」は男性名である)が証言している「腹部の銃創」のことは言っていない。といっても、それは英語での報道をまとめたこのアラブ・タイムズの記事から欠落しているだけで、彼女もまた「腹部の銃創を見た」という記述が、どこか別の記事にはあるのかもしれない。そこまでは調べていないのでわからない。
なお、軍政当局は、党からの要請があれば遺体を掘り起こして調べることにもやぶさかではない、といった記述もある(Brigadier Javed Cheema said the Pakistan government had told the truth. He added that the government would let the former premier's body be exhumed for inquiry if Bhutto's party asked.)。だからそれは、埋葬する前にしておくべきことだろう。自然死とはかけ離れた形で亡くなっているのだから。パキスタンに「司法解剖」とか「行政解剖」といった法的な制度があるのかどうかはわからないけれども。いったん埋葬してから掘り起こすなど、ご遺族やご友人にとって残酷極まりない。しかも、いくら世俗主義的であろうともイスラム教徒である。墓を掘り起こすなどほとんどできない相談だ。
それと英国の外務大臣、デイヴィッド・ミリバンドの見解:
Speaking to reporters outside the Pakistan High Commission in London after signing a book of condolence for her, he added that while elections could still go ahead there next month, this was a matter for the parties involved. "We have no evidence to contradict the reports that are coming out of Pakistan," he said. "Obviously it's very important that a full investigation does take place that has the full confidence of all concerned." Asked about the viability of polls, he said: "I think the elections could take place on the 8th of January but whether they will take place is a matter for the political parties in Pakistan, critically the decision of the PPP (Pakistan People's Party). "The message that I want to give today is that after 48 hours of real grief over this terrible tragedy, the next 48 hours need to be a time of unity and responsibility."
ミリバンドがここで言っている "the reports that are coming out of Pakistan" が、具体的に何のことなのかがわからないのだが(「背後にアルカイダ」ということなのか、「頭をぶつけて死んだ」ということなのか。ミリバンドのブログも記帳に出る前に書かれたものなのかもしれないが、その点についての言及は何もない)、とにもかくにも「そういうこと」なのだ。何としても選挙は予定通りに行なう。
実際、ベナジール・ブットの息子でまだ19歳のビラワルが「PPPの党首」として選ばれ(パキスタンの参政権の下限年齢に達していないので、本人の立候補はできないそうだが)、PPPは選挙をボイコットせず、先にボイコットを宣言したナワズ・シャリフにもボイコット中止を呼びかけているという。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7164968.stm
ビラワル・ブットは「ブット・ファミリー」の3代目だが、おじいさん(初代)と同じくオクスフォード大学のクライストチャーチ・コレッジで学んでいる。専攻は歴史学でまだ1年生。学業を追えるまでは党のことは父親(ベナジールの夫)が行なう。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7165052.stm
ブット家はパキスタンではdynastyと形容される政治家一家であるが、2004年にビラワルは「政治の道に進むかどうかはわかりません。その前に勉強がありますし」というようなことを述べている。2004年というと3年前、ということは16歳だ。16歳の子に「将来はおじいさんやお母さんのような政治家になりたいですか?」と質問したときの答えとして、これ以外の答えはあまりありえないのではないかと思う。
※以降、アップデートは当分はブクマで:
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/Pakistan/Bhutto/
よくコメントくださる「消印所沢」さんのところの報道などのまとめも。
http://mltr.free100.tv/faq10e03.html#Bhutto-Assassinated
※この記事は
2007年12月30日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【i dont think im a pacifist/words at warの最新記事】
- 「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」展(東京・六..
- アメリカのジャーナリストたちと一緒に、Twitterアカウントを凍結された件につ..
- パンデミック下の東京都、「コロナ疑い例」ではないかと疑った私の記録(検査はすぐに..
- 都教委のサイトと外務省のサイトで、イスラエルの首都がなぜか「エルサレム」というこ..
- ファルージャ戦の娯楽素材化に反対の意思を示す請願文・署名のご案内 #イラク戦争 ..
- アベノマスクが届いたので、糸をほどいて解体してみた。 #abenomask #a..
- 「漂白剤は飲んで効く奇跡の薬」と主張するアメリカのカルトまがいと、ドナルド・トラ..
- 「オーバーシュート overshoot」なる用語について(この用語で「爆発的な感..
- 学術的に確認はされていないことでも、報道はされていたということについてのメモ(新..
- 「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族..































http://www.youtube.com/watch?v=LyKNUGa3Z4U
で、このレポートにはパキスタンのCheema報道官の会見の様子も少しおさめられているのですが、わけがわからないのは、彼は「ブットはサンルーフの左側のレバーに頭をぶつけた」と述べ、その説明をしながら自分の頭の左側に手を当てるというジェスチャーをしていること(映像では00:36のところ)。
報道官の説明の書き取り(びみょうに間違ってるかも):
When she was tugging down, she was thrown by the force of the shockwave of the explosion. Unfortunately one of the levers on the left side, the lever of the sunroof, hit her.
(身をかがめたときに爆風の力で投げ出された。そして不幸なことに左側のレバー、サンルーフのレバーがぶつかった。)
エントリ本文の最初の方に引用したAFP記事にある、"The lever struck near her right ear and fractured her skull," という発言は、論理展開という点から考えると、BBC World Newsのレポートに入っている部分に続いていると思われるが、報道官は自分で左のコメカミのあたりにレバーが当たったのだというしぐさをしておいて、「右耳のあたりを打った」と発言しているのだろうか? 一度左側をぶつけて、反動で右側も打ったとでもいうのだろうか?
なお、BBC World Newsのレポートの音声は、映像とシンクロしていなくて(口の動きがずれている)、Cheema報道官の発言の音声が記者会見の現場で録音されたものなのか、あとからボイスオーバーでかぶせられたものなのかがわからない。九分九厘報道官自身の発言をそのまま流しているとは思うけれども。
http://www.youtube.com/watch?v=um33omVs9GM
あちこちのメディアで言及されている、"My mother always said, 'democracy is the best revenge'." ということばを言うときの彼の表情と語調の強さ。
彼はパキスタンの外での生活が長いので英語で会見を行なっているのではないか、とのBBCのナレーションがあります(お父さんは、ウルドゥ語かどうかは私にはわかりませんが、現地のことばで話しています。英語はボイスオーバーなので)。ベナジールもウルドゥ語は何とか使えたけれども、シンディはまるっきりダメだった、との話ですが(下記ガーディアンCiF記事参照)。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2233334,00.html
また、PPPは選挙には出るとの決意は固いけれども、首相職に誰を推すかはまだ決まっていない(ビラワルは若すぎて被選挙権がないので、「党首」は名目だけのようです)。
それから、暗殺の瞬間の別の角度からの映像。車の後部、右斜め後ろから撮影されています。
http://www.youtube.com/watch?v=nJRXGN8lNVI
車の左側から発砲があって、ブットのスカーフがめくれあがっているように見えます。つまり銃弾は彼女の頸部か頭部のどこか、左側に命中しているのではないかという推測ができます。
この映像だと音声が確認できないのですが(ニュースキャスターと記者がずっとしゃべっているので)、さっき東京のニュースで見たこの映像では、2、3発の発砲があり(2発だったか3発だったか、はっきり覚えていませんが)、間髪いれずに爆発が起きていました。
この日、ブットを取材していたゲッティのフォトグラファー、ジョン・ムーアの写真のスライドショー:
http://www.guardian.co.uk/news/video/2007/dec/28/1
※後半で非常に悲惨な写真が出てきます(たぶん、身体から吹き飛ばされた脚だと思います)。
事件現場となった公園での集会と演説の様子に始まり、襲撃直前の、ブットの車の右斜め前からの写真(事件発生直後に「最後の写真」として各メディアで配信されたもの)、爆発の直後の炎をとらえた写真、路上に横たわる人々などの写真。人々の多くは伝統的な衣装や普段着っぽいジャケットを着ていますが、ひとり、負傷して運ばれていく人が仕立てのよさそうなスーツです。
事件翌日のカラチの様子:
http://www.youtube.com/watch?v=xYAGSt-n1T0
カラチ在住のかたが車の中から撮影したホームビデオです。とにかく街に人が少ない。商店と思しきところはすべてシャッターが下ろされています。これが撮影されたあとに道路は封鎖され、放火など大混乱状態になったそうです。
> それから、暗殺の瞬間の別の角度からの映像。車の後部、右斜め後ろから撮影されています。
> http://www.youtube.com/watch?v=nJRXGN8lNVI
画面に "Channel 4 Exclusive" と出ています。
UKのChannel 4のサイトで映像が音声付で見られます。銃声は3発、パン、パン、パンと連続で、次に爆発音。(まさに「四拍子」です。)爆発の前に、ブットは崩れ落ちています(あるいは自分の意志でかがみこんだのかもしれませんが)。
http://www.channel4.com/news/articles/politics/international_politics/footage+of+bhuttos+death/1246547
映像が始まる前のキャスターのコメントが、「長井さんは流れ弾で」というビルマ軍政の説明は、現場の映像とまったくあっていない、というのを思い出させます。
レポートのなかで、「ブットの治療に当たった外科医は、木曜日に、頭と首に2発の銃弾を受けていた、と説明した。しかし金曜日にはそれを修正し、銃弾は遺体からは見つからなかったと述べた」とあります。そしてその後に「サンルーフに頭をぶつけて死んだ」説が、内務省から出された、と。
レポートではそのあとでサンルーフのレバーが映されますが、レバーに血の跡はついていません。車内のシートは血でぐっしょりと塗れています。内務省の説明にある「爆発の衝撃で倒れた」というのは、映像で爆発の前にブットが倒れでいる/身体を下にかがめているのと合致しません。
それから、「発砲の前、車の左側(狙撃者がいる側)には警官が3人いるけれども、彼らは何もしていない」、「ブットは事前に米英のセキュリティガードをつけられるようパキスタン政府に要請していたが却下された」など。
そのあと、チャンネル4の記者が、政権側の人にインタビューしてそこにツッコミを入れていますが、お茶を濁されて終わり。
なお、タイムズの記事(下記)によると、この映像はパキスタンのDawnNews TVで土曜日の夜に流されたものだそうです。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article3110018.ece