kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年12月27日

アフガン政府が2人を国外追放、の謎。

アフガニスタン政府が「外国人」2人を国外追放することを決定したと、昨日の昼間(日本時間)にBBC Newsのトップ記事で報じられていた。

Urgent talks on Afghan expulsions
Last Updated: Wednesday, 26 December 2007, 13:40 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7160090.stm

昼間に流し読みだけして、とりあえずブクマして、夜になってもう一度見てみたら、同じURLで記事のアップデートが行なわれている。少なくとも、細かな情報が追加され、現地のBBC記者のコメントが加えられ、小見出しが変更されているのは確実だが(キャッシュを取っておかなかったことをちょっと後悔している)、基本的には「記事を最初に出したあとのアップデート」だけだと思う。

追放処分が決定された2人について、このBBC記事では次のように書かれている。(昼間は個人名の記載はなかったと思う。)
One is a high-ranking UN employee, Briton Mervyn Patterson, the other is acting head of the EU mission in Afghanistan, Irishman Michael Semple.

ひとりは要職にある国連職員で英国籍のマーヴィン・パターソン、もうひとりはアフガニスタンEUミッションの首席代行のマイケル・センプルでアイルランド人だ。


この2人については、ちょっと意外なことに、BBC NewsのNorthern Irelandセクションに詳細が出ている。

NI man in Afghan expulsion threat
Last Updated: Wednesday, 26 December 2007, 11:30 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7160217.stm
One of the two diplomats being threatened with expulsion from Afghanistan is from Northern Ireland.

Mervyn Patterson is a high-ranking employee of the United Nations who has been working in Kabul.

The other man, Michael Semple, is from the Irish Republic and is the acting head of the EU mission in the country.

ちょっとわかりづらいかもしれないが、英文として普通に読めば、マーヴィン・パターソン氏が北アイルランドの人である(マイケル・センプル氏については「アイルランド共和国出身」と明示されているので)。

ともあれ、この件の概要をBBC記事からまとめると次の通りである。

パターソン氏とセンプル氏は、アフガニスタン南部のヘルマンドでタリバンと会って話をしたとの疑惑があり、これによってアフガニスタン政府から国外退去を命じられた。退去の期限は今週木曜日。国連でも既に帰国便のチケットを手配してあるという。

カルザイ大統領のスポークスマンをつとめるハミドザダ氏によると、パターソン氏とセンプル氏のアフガニスタン人の同僚たち(つまり国連職員とEUミッションの職員)も既に身柄を拘束され、捜査の対象となっているという。

BBCカブール支局の記者によると、パターソン、センプル両氏はアフガニスタンの言語、社会(部族中心主義)、文化に通暁した専門家として知られており、アフガニスタンとは何年にも渡って関わってきた人物だという。

ここでちょっと検索してみたところ、パターソン氏の名前は2002年10月のNYT記事でも確認できる。北部のサマンガンでウズベク系とタジク系の武力衝突があったときの対応を報じる記事だ。2002年7月のNYTマガジンの記事(マイケル・イグナティエフによる)には、"The United Nations negotiators -- Mervyn Patterson, a frenetic Northern Irelander, and Jean Arnault, a suave Frenchman -- later explain the terms of the deal they have negotiated." という一節がある。"frenetic" という形容詞は、後続する "suave" との対比の目的でのレトリック的なものだろうが、どちらかというと「熱血漢」タイプの人なのだろう。(しかし北アイルランド人が「熱い」人で、フランス人が「乙に取り澄ましている」というのも、何か妙にステレオタイプじみているなあ。本筋には関係ないけど。)

センプル氏については、9-11事件の前、2001年4月に、オーストラリアのABCがインタビューを行なっているものが見つかった。1980年代半ばに英国の新聞の求人広告に応募してアフガニスタンで仕事を開始し、インタビュー時点で国連の支援活動のコーディネイターをしていたそうだ。その時点で既に、「アフガニスタンで最も経験を積み、尊敬されている職員」だったという。

そんな2人が、ペルソナ・ノン・グラータに認定されて国外追放となる。しかも、BBC記者によると、追放の命令は外務省などではなく、大統領のオフィスから出されたものらしい。

見込みとしては、カルザイ大統領は水曜日にパキスタン訪問に出発しており、2人は木曜日に退去となることは確実であるにせよ、その後、再入国を認めるように「誤解」を解くための交渉が国連によって行なわれるかもしれない、ということだ。(「誤解」というのは国連側の使っている表現である。)

2人が「タリバンと会った」とされるのは、最近、英軍とアフガニスタン軍がタリバンから奪還したMusa Qalaという町でのことだった。アフガニスタンの内務省は2人の行き先を把握していたが、政府の別の部局か何かの人たちは、2人が会おうとしている人たちについて反対していたようだ。

在アフガニスタンの国連のスポークスマンは、2人がタリバンと会っていたということを否定し、アフガン情勢の安定化のために現場にいるすべての人々と話をしていたのだと説明している。

しかし元内務省のアリ・ジャリリ(ジャラリ)氏は、これは和平プロセスの助けにはならないとBBCに語っている。「こんなことをされてはすべてが台無しになる。タリバンに利用されるだけだ」。

で、「アリ・ジャリリ」氏についてググってみると、米ヴァージニア大学の同窓会のサイトに、2007年12月7日の講演予定が上がっている。そこにあるプロフィールから抜粋。名前に表記ゆれがあるが(Jalili or Jalali)、この人で間違いない。
Minister Ali A. Jalali, who served as the Interior Minister of Afghanistan from 2003 to 2005, is Distinguished Professor in the Near East South Asia Center for Strategic Studies at the National Defense Institute and a Distinguished Visiting Fellow at the Institute for National Strategic Studies.

文中のthe National Defense Institute(国立防衛研究所)、the Institute for National Strategic Studies(国家戦略研究所)のいずれも、ググると出てくるのは、アメリカのNational Defense Universityで、これは米国防省の資金で運営している大学だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/National_Defense_University

なお、"ali jalali" でググってみたときに出てくる話は、なかなかカオティックである。例えばこんなのとか、まるでイラクのアフメド・チャラ(略……。(^^;)

……というところで、いい具合にアタマの中がカオスになったところで、あたしの脳内で「北アイルランド」がほとんど無意味にスパークするわけだ。

これはつまり、米国流の「テロリストとは交渉しません」路線と、英国の裏流、というか北アイルランド和平プロセス的な「話をして落としどころを見つけないと何も進みません」路線とのぶつかり合いなのでは……。

というただの思いつきでは、何も結論づけられはしないのだけれども。

だいたい英国も、少なくとも建前としては(i.e., 情報機関の現場がどう判断しているのかはわかりませんが)、「テロリストとは交渉しません」路線なのだし……と思ったら何、今月、Musa Qalaがタリバンから奪還された直後に、ブラウン首相が「交渉」路線を?
The Prime Minister is due to set out a new long term strategy for Afghanistan today after visiting the country earlier this week.

He will reveal a new "three-pronged strateg" with the establishment of security by Nato and the Afghan army to be followed by economic and political development.

The most controversial part of the strategy is the proposal to hold formal discussions with the Taliban - with the aim of dividing forces opposing British troops, splitting local Afghan fighters from militants linked to al-Qa'eda.

Previously, the coalition authorities have sought to get former Taliban figures to renounce the organization and join the government. However, the new strategy is understood to involve negotiating with the Taliban officially - with sources claiming the plan had been discussed with the White House.

これはテレグラフの「事前報道」(12日付)だから信頼性はどーなのかなあというか、確認が必要だ(仮にテレグラフでなくても)。

確認のために見た事後(13日付)のガーディアン記事(しかも、Patrick Wintour and Richard Norton-Taylorによる記事)では、
Gordon Brown yesterday held out the hope that middle-ranking Taliban insurgents will renounce violence and join a political process of reconciliation with the Afghan leader, President Harmid Karzai.

The prime minister was setting out his long-awaited strategy for Afghanistan, including extra aid, military equipment and a drive against poppy production.

Denying that he was seeking to open direct talks with the Taliban, Brown claimed Nato was driving the insurgents and extremists out of their hiding places, preventing them from regrouping and attacking the areas around the provincial capitals where stability is taking hold.

というわけで、これは微妙〜〜〜な玉虫色ですね〜〜〜。というか、タリバンの真ん中あたりの人たちに暴力放棄を呼びかけるというのは、タリバンとの直接交渉なのかそうではないのか、「正解」がないことなのでは。今のアフガニスタンでは、insurgents = Taliban fighters という式は必ずしも成立しないだろう。軍閥とか豪族が入り乱れた地域なのだ。

っていうか、英国のこの態度、これもう絶対、プロトタイプは北アイルランドだよねー。(<スパークが止まらない。)2003年の報道から。
Despite protestations to the contrary over the years, the British Government constantly maintained open channels with the IRA during the worst of the Troubles.

The first major meeting of 1972 when an IRA delegation including Gerry Adams was flown into London is among the most well known.

But documents released under the 30-year-rule reveal for the first time the details of official reaction at the time - and confirm that Mr Adams had an earlier longer meeting with two officials which had given the government hope of a breakthrough amid conflict.

長年にわたって否定してきたが、実際には英国政府は北アイルランド紛争の最悪の時期にずっと、IRAとのチャンネルを維持していた。1972年、最初の会合のためにジェリー・アダムズらのIRAの代表団がロンドンに飛んだことは最もよく知られている事例だ。機密保持期間として指定されている30年が経過して公開された文書で、今はじめて、当時の公式な反応の詳細が明らかになった。そして、アダムズはその前に、2人の当局者とより長い会合を行なっていたことが事実と確認された。

-- Adams and IRA's secret Whitehall talks
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/2601875.stm

ここで「ジェリー・アダムズらIRA代表団がロンドンに飛んだ」というのは、William Whitelawとの会談のことをいう。この会談が、1974年のサニングデール合意につながった(が、これはロイヤリストによるゼネストですぐに頓挫した)。なお、ジェリー・アダムズは今もなお、自分が「IRA幹部」であったことは認めていないし、IRAに加入していた事実もないとしている。

で、また話を戻して、「国連とEUの職員で無二の専門家の国外追放」についてのファクトだけども、ペルソナ・ノン・グラータを宣告されたパターソン氏とセンプル氏が「ヘルマンドでタリバンと交渉していた」という話の火元は、デイリー・テレグラフですってよ、奥さん。
The row comes as a British newspaper, the Daily Telegraph, reports that members of Britain's secret intelligence service, MI6, held meetings during the summer with senior Taleban members in Afghanistan.

http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7160090.stm

問題のテレグラフの記事は(おそらく)これだー。(26日の記事だから、ちょっと時系列的に合わないかもしれない、つまりこれの前に何か記事があったかもしれないけど。)

Britain in secret talks with the Taliban
By Thomas Harding and Tom Coghlan
Last Updated: 1:51am GMT 26/12/2007
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/12/26/wafg126.xml

のっけからこんな感じ。
Agents from MI6 entered secret talks with Taliban leaders despite Gordon Brown's pledge that Britain would not negotiate with terrorists, The Daily Telegraph can disclose.

うは……3語目に "MI6" と。次のパラグラフでは、
Officers from the Secret Intelligence Service staged discussions, known as "jirgas", with senior insurgents on several occasions over the summer.

うは……。つまり問題の2人はMI6/SISだ、という断定。1人は英国人ではないのだが、そういうディテールはスルーして、ひたすら断定。(「英国人でないMI6エージェント」はありえない。MI6公式のFAQに、"Do I need to be a British citizen? - Yes." とある。ただし「インフォーマント」ならありえる。)

テレグラフのこの「プロパガンダ8割+事実2割」の記事は、「ブラウンの二枚舌」への攻撃が主軸と思われるのだが、時系列がややこしくてちょっと読みづらいかもしれない。「MI6/SISのエージェント」が「ヘルマンドでタリバンと交渉した」のが今年の夏であるが、ブラウン(6月に就任したんだよね)はずっと「交渉しない」と言い続けており、12月12日にも党首討論で「交渉しない」と明言した(ただし、上に引用したガーディアン記事を参照すれば、それが「交渉」の範囲の定義次第だということは明々白々だが)、という点を攻撃する記事だ。

もうちょっと引用:
The Government was apparently prepared to admit that the talks had taken place but Gordon Brown was thought to have "bottled out" just before Prime Minister's Questions on Dec 12, when he made his denial instead.

It is thought that the Americans were extremely unhappy with the news becoming public that an ally was negotiating with terrorists who supported the September 11 attackers.

アメリカ合衆国の機関誌の役割、ご苦労様です。

毒消し。ガーディアン:
Afghanistan expels Briton accused of Taliban talks
Haroon Siddique and agencies
Wednesday December 26, 2007
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,2232132,00.html
※こっちはこっちでまた強烈だったりもするかもしれない。

アイリッシュ・タイムズ:
http://www.ireland.com/newspaper/breaking/2007/1226/breaking3.html

RTE:
http://www.rte.ie/news/2007/1226/afghanistan.html

アイルランドでの報道は、ロイターとかとあんまり変わらないなあ。ボクシング・デーで基本的にお休みなのか、それとも(以下陰謀論を省略)。

北アイルランドでベルテレさん:
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/article3284939.ece
The British Government was unable to confirm if a UK national was among the two men asked to leave.

But a spokeswoman at the Irish Department of Foreign Affairs said: "We are aware of an incident involving an Irish official in Afghanistan. We are currently investigating the facts."

うは……両国の対応の違いが微妙すぎる〜〜〜。英国政府はボクシング・デイでお休みなのか、それとも(以下陰謀論を省略)。

あと、このベルテレさん記事には、2人が1980年代からアフガンに関わっていた専門家であることについてもわりとしっかり書かれている。

で、BBC NIの記事に非常に興味深い一節がある。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7160217.stm
The feudal and tribal nature of areas like Helmand are complicated and Taleban is a shorthand phrase for a whole variety of anti-government forces, our correspondent adds.

BBCのカブール支局特派員は、ヘルマンドのような封建的で部族中心主義的な地域は複雑であり、「タリバン」というのはありとあらゆる反政府勢力について用いられる手軽な呼び名なのだ、と付け加えている。

つまり、「タリバン」と呼ばれる人たちが、全員、本当に「タリバン」なのか――つまり、オマル師をトップとする組織の一部なのか、単に地元の愛国・愛郷主義的自警団なのか、あるいは親戚や知り合いがタリバン戦士で「いいカネになるから」と勧められて断れなくて、何だかんだで武器も持たされて頭数に入れられてしまった人とかなのか、そういったことを確認しないことにはどうにもならない、ということではないだろうか。、「ペルソナ・ノン・グラータ」とされてしまった専門家2人が誰と「交渉」をしていたのかもわからない。

この点については、カブール支局の特派員が書いた記事が、BBCのサイトで大きく扱われている。

Murky world of Afghan negotiations
By Alastair Leithead
BBC News, Kabul
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7160432.stm
... there is an Afghan reconciliation programme that actively sets out to persuade insurgents to switch sides.

And it also raises the question of who the Taleban actually are.

It is a shorthand phrase for anything from extremists like Mullah Mohammed Omar, their spiritual leader, who is thought to be in Pakistan, to the farmer paid to fight against the international troops.

The latter group are considered by many to be "persuadable".

Of course, there is also every shade of grey in between, and going along to a tribal shura, or meeting of elders, it is impossible to know as an outsider who is allied with the more extreme elements.

つまり、オマル師のためならえんやこらな人は別だが、カネで戦士になったような人は「説得できる」タリバンだと見なされている。説得してタリバンから離れさせるというアフガニスタン政府のプログラムがある。そして、部族の長老会議に行ったりすれば、誰が過激派と組んでいるのかなど部外者にはまったくわからない。

記事は続く――このように複雑な社会に犯罪や麻薬取引、宗教的過激主義が蔓延している状況で、今日タリバンの指導者である人でも、明日にはカルザイ政府支持者になっているかもしれない、というのが実情。反政府の反乱は軍事だけで打ち負かせるものではないという理解が共有されており、ヘルマンドではとにかく連絡を取り、復興と発展という支援を与えることで人心を掌握しようというものだ。タリバンよりも、政府を支持することでより多くを得られるのだ、ということを実感してもらいたい、そのために地域の統制を強化する、それが中核にある。つまり、ブラウン首相の議会での発言とは裏腹に、「タリバン」と呼ばれる人たちと話をする、ということである。実際、事情を把握している人たちは、交渉が行なわれていることは公然の秘密であり、「タリバン」の定義も難しいというのに「タリバンと交渉はしない」と言い切ったブラウンにお茶を吹いた。

この後がまた興味深い。
The UK foreign office strategy in the south is to roll out Afghan experts and Pashtu speakers, of which there are very few, to learn a who's who of Helmand - who the tribal leaders are and who might be persuaded to support the new government and turn their backs on the Taleban.

The US has been cold on any kind of talks with insurgents in the past but that attitude is thought to be thawing.

「英外務省の戦略」というのは、外務省→MI6/SISで、MI6の戦略でもあるだろう。彼らはアフガン専門家やパシュトー語を話す人たち(数は少ない)を現地に入れて、ヘルマンドの部族長は誰か、説得されれば新政府支持になりうるのは誰か、といったことを把握しようとしている。一方で米国はこれまで、反乱勢力とは一切話をしないという方針だったが、それも変わりつつある。

……となると、なぜアフガニスタン政府が2人を追放することに決めたのかが疑問だ。カルザイがアメリカの指示を無視できなかったのだ、と考えても、当のアメリカが方針を変えつつあるのだとすれば、いったいなぜ?――という疑問は、もちろんBBC記者の人も抱いていて、記事はそういう疑問とそれに対する仮説も提示している。つまり、アフガニスタンの省庁間での伝達がうまくいっていなかったのではないか、あるいは政治的不正(political shenanigans)があったのではないか、との可能性。

まあ、国連とEUの専門家をああいう形で追放したということは、国連やEUとの関係は必ず悪化することになる。アメリカだけに頼っていればOKという情勢でもないのに、カルザイがアフガニスタンのような土地で多極化を推進し、自滅したがっているとも思えないし、となると確かにカルザイは政敵に嵌められたとかいうことなのかもしれない。でもそれって、考えるだけで泣けてくるほど恐ろしいシナリオなんですけど…… (^^;)

しかし「タリバン(と俗に呼ばれる人たち)」と会った、というだけで国外追放とは、「ザルカウィ支持者と考えられる人たちが集まっていたと考えられる家屋を爆撃」といった悪夢のような話がアタマの奥底からよみがえってくる。こういうことがあると、人々の間に「陰謀論」が広がって、ますます不安定化してしまうんではないかという懸念もある。「無能なカルザイ政権にノーと言って自衛の武器を手にしたって『タリバン』と呼ばれるんだ」といった感情が出てきたところに、「アメリカは云々」、「イスラムこそ我らのよりどころ」というプロパガンダが浴びせられたらどうなるんだろう。しかも本物のタリバンは、最近、明らかにPR方法を変更している。恐ろしい。

今回追放された2人の専門家は、米国の政策決定者のブレーンとやらよりもずっとよく現地の情勢を把握しているに違いない。何しろ20年にもわたって現地と関わってきたのだ。言語にも困っていない。(そういう人が「実はMI6」というのは出来すぎな気もするが、MI6からの依頼なり何なりがあったとしても不思議ではない。)

一方の米国側にいるのは、国防省ヒモ付きの大学と関わりのあるアフガニスタン人(米国の市民権を取得しているかもしれないが)とか、「キューバ危機」がわかんなくてちょっとパニクっちゃうホワイトハウス報道官とか、とりあえず共和党のブッシュ政権への忠実さだけはものすごく抜きん出ている人とか、そんなんばっかりなんじゃないのか、という疑念は、わたしの頭の中から消えない。イラクでの例(チャラビ)があるからだ。事実はそうではないとしても疑念は消えない。疑念が疑念ではなく事実だとしても、それは必ずしも米国の情報機関の問題ではない。米国のトップとその取り巻きの問題だ。彼らは、自分たちの聞きたいことを言う者にしか耳を傾けない。しかも、「異文化」とか「他言語」とかいったものについてのセンスがまるっきり欠けている。世界中で英語が使われ、Windowsが使われ、ハリウッド映画が好まれているのは、アメリカがすばらしいからだ、というお追従を言われたら、真に受けて本気で信じ込みかねない、と思うほどに、基本的なセンスが欠落している。それでいて情報を使おうとする。

とりあえず、2人の専門家が話をしたという「タリバン」は本当にオマル師のタリバンだったのかどうか、その点をはっきりさせる方向で事態が進展することを願うばかりだ。

でもこれだけおおごとになってしまって、SISも (covert) operation でまた彼らを使うことができるんだろうか。

※この記事は

2007年12月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼