「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年11月12日

UDA/UFFの「解隊」宣言の映像、ほか。

2つ前の記事1つ前の記事で言及したBBC記事が、再度、同じURLで上書きされた。といっても、時間の経過にともなって、「〜する予定です」が「〜しました」に変わった程度。(前の版は「ウェブ魚拓」を取ってあるので、前の記事をご参照ください。)

UFF given the order to stand down
Last Updated: Monday, 12 November 2007, 00:22 GMT ← midnight後の更新
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7089310.stm
The Ulster Defence Association formally stood down part of its organisation, the Ulster Freedom Fighters, at midnight.


で、更新された記事では、右側のVIDEO AND AUDIO NEWSのところに映像が加わっている。ベルファストのSandy Rowでのポピー・デイの追悼集会で声明を読み上げるColin Halliday (UPRG) の生映像。音声が反響しちゃってもわんもわんしているのと(ライン録りではない)、背後でヘリコプターの音がかなりうるさいのと、ベルファスト訛りの相乗効果で、ほとんど聞き取れない。(^^;) (→でも大体の内容は各メディアが文字で報じている。1つ前の記事を参照。)

コリン・ハリデイが「解隊」を口にしたところでオーディエンスから何か声が上がるのだが、それはほんとにまったく聞き取れない。

コリン・ハリデイの隣で「感無量」という表情で声明文を印刷した紙を見つめているのは、UDA南ベルファスト旅団長で、UPRGスポークスマンのジャッキー・マクドナルドだ。写真は下記に。マクドナルドは、「UDAの活動停止」後についてのアイルランド共和国政府との交渉を行なってきた人物だが、それ以上のことは私にはよくわからない。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/3420391.stm

また、解隊についてのBBC記事の右肩にあるVIDEOで出てくるポップアップウィンドウでRelatedとして表示されているThe UDA military wing that is being stood downという1分半ほどの映像が:
・最初の20秒はUDA/UFFの示威行動(こわいよ)
・その次が今年のポピー・デイ(戦没者慰霊)のパレード@Sandy Row
・35秒からジャッキー・マクドナルドのスピーチで、"Ninety per cent of people in the loyalist community don't want decommissioning. They're not the UDA's guns. They're the people's guns." という部分
・58秒、フクザツな表情で指導部のスピーチを聞くロイヤリストのみなさん
・59秒、英国政府のウッドウォードNI大臣のコメントで、「active unitだけでなく犯罪も即時活動停止というのは非常に大きなことです」というような話。
・締めはデニス・マレー記者の「言葉ではなく行動で示されることが必要」云々

「言葉ではなく行動で」は、IRAの武装闘争停止宣言のとき(2005年7月29日)もinitial reactionとして出てきていたものであり、IRAはこの宣言から2ヵ月後の9月27日には武装解除の完了を宣言していて、ここで「行動で」という要件が半ば満たされた(当時は「どうせまだ隠し持っているはずだ」といった声もあったが、「IRAの秘密の武器庫」の話はそれから2年経過しても出てきていない)。IRAのこの動きがpeace processの推進に大きく貢献したことは間違いないが、ジェリー・アダムズとイアン・ペイズリーの直接会談(3月)をはさんで、5月8日のpeace processの完了(つまり、北アイルランド自治議会・政府の再起動)を決定づけたのは、2007年1月のシン・フェインの党大会での「警察支持」決議の可決という「行動」だった。

なお、5月の自治議会・政府再起動の数日前には、ロイヤリスト武装組織でUDAの次に大きな規模を持つUVFが活動停止の宣言を出している。UVFは「武器は手の届かないところに (beyond reach)」という妙な宣言をして、「はぁ?」という反応を買ったが、そのUVFの武器の破棄もそう遠い話ではないらしいということを、ガーディアン/オブザーヴァーのヘンリー・マクドナルドが伝えている。

http://politics.guardian.co.uk/northernirelandassembly/story/0,,2209322,00.html
The Ulster Volunteer Force, the oldest loyalist paramilitary movement, is to use Remembrance Sunday to announce that it is putting its terrorist arsenal beyond use.

The group will say today that it has agreed to seal the weapons in secure dumps. However, UVF sources told The Observer there was no question of any arms being handed over to a third party.

Moves to place the UVF's guns and explosives into a permanently sealed dump come as the other main loyalist terrorist group, the Ulster Defence Association, prepares to issue a major statement on its future.

ただしこれ↑(ポピー・デイにUVFが「武器を封印する」ことを宣言する)というのが実現された気配はない(他のメディアでの報道がないし、ヘンリー・マクドナルドの次の記事でも「予定」になっている)。

http://politics.guardian.co.uk/northernirelandassembly/story/0,,2209571,00.html
The other main loyalist terror group, the Ulster Volunteer Force, has said it will seal arms away. Senior UVF sources have told the Guardian there would be no question of arms being destroyed or handed over to a third party.


UVFとUDAはものすごく仲が悪いから、UDAがサンディ・ロウで「我々こそがプロテスタントの労働者階級の代表」と述べた日に、UVFが何か大きなアクションをとるのは見送ったのかもしれないが。

まあ、今回のUDAの声明でとりあえず:
・Provisional IRA(リパブリカン)
・UVF(ロイヤリスト)
・UDA(ロイヤリスト)
という「紛争」のメイン・プレイヤー3者が、「戦争」の終結の宣言を完了した、ということにはなる。コミュニティにとっての大問題である「ギャング活動(組織犯罪)」はまた別の話で、それぞれの分派、特にリパブリカンの分派の政治的暴力/武装闘争活動は政治的なコントロールのもとにないのだが。

次は、IRAの動きに注目が集まるだろう。ボールはIRA側にある。当面は、先月ボーダー地帯で発生したポール・クインさん殺害事件の犯人の特定と逮捕という件。この事件はボーダーの南で発生しているので、直接的には共和国警察の管轄になる。下記は共和国の新聞(the Irish Independent)での最新のニュース。

Peer to name IRA killers under Lords privilege
By Chris Anderson
Monday November 12 2007
http://www.independent.ie/national-news/peer-to-name-ira-killers-under-lords-privilege-1217184.html
A Northern Ireland peer says he intends to name the IRA men behind the brutal murder of Paul Quinn.

Lord Laird of Artigarvan says he will use parliamentary privilege in the British House of Lords to name the individuals he believes were responsible for the killing of the 21-year-old south Armagh man.

...

Lord Laird will claim that although Paul Quinn's attackers were senior members of the IRA, the murder was not officially sanctioned by the terror group's army council.

However, the Northern Ireland peer will also claim the republican movement is currently actively attempting to cover-up the circumstances surrounding the Cullyhanna man's murder.

Lord Laird is to challenge the gardai and the PSNI to prove that south Armagh-based terrorists are not above the law as, he has claimed, they had been during the Troubles.

...

It is believed the south Armagh victims organisation Families Acting For Innocent Relatives (FAIR) has provided Lord Laird with detailed information on the Quinn murder.

Director of FAIR William Frazer, said he met the PSNI and gardai in Newry on November 1 to pass on sensitive information he had received about Paul Quinn's murder from known republicans and members of south Armagh's nationalist community.

He said that the subsequent lack of definitive action by police on both sides of the border in relation to the Quinn killing was a matter of grave concern to himself and many others."Attempts are being made by police and government ministers on both sides of the border as well as on mainland Britain to have the inquiry kept 'low-key' to prevent any backlash at Stormont similar to the 'Stormontgate affair'," he said.

いやぁ……「ストーモントゲイト」といえば、デニス・ドナルドソンの殺害事件はどうなったんだという話もあるのだが。



UKの保守系メディアの記事を。

タイムズ:
だいたい他のメディアの報道と同じく、ステートメントの内容の紹介だけ。

November 12, 2007
Loyalist terror group to be 'stood down with all weapons out of use'
David Sharrock, Ireland Correspondent
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article2853249.ece
第二パラグラフで「UDAとはどのような組織か」を解説(血なまぐさい):
The Ulster Defence Association, which has some 3,000 members, had in 1994 declared a ceasefire but pursued violence and crime on a lesser scale. At its peak it had had 50,000 members and the muscle to enforce the 1974 strike that brought down the Sunningdale power-sharing accord. Its speciality was revenge murders of innocent Catholics after IRA attacks. It killed hundreds of people and extorted vast sums from its own community.

記事末尾に箇条書きで「UDAの活動の歴史」(血なまぐさい):
36 years of violence

- The UDA was founded in 1971 and was designed to be an umbrella organisation for a variety of loyalist groups

- It has been blamed for the deaths of more than 400 people, using the cover name of the Ulster Freedom Fighters in the majority of cases

- At one point it favoured an independent Northern Ireland and maintained links with far-Right groups including Combat 18

- Its most infamous attacks included the killing of eight people at Greysteel, Co Derry, and the murder of the lawyer Pat Finucane

- A ceasefire was called by the group in 1994, after the IRA's cessation, but crumbled amid internal feuding


テレグラフ:
淡々と、ステートメントの内容などを報じるだけだが、指導部名義の声明よりも、ジャッキー・マクドナルドのスピーチに注目しているのかな。

UDA orders military wing to stand down
Last Updated: 6:31am GMT 12/11/2007
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/11/12/nuda112.xml
Jackie McDonald, brigadier of the South Belfast UDA, said the community now had to get involved in politics even though 50 per cent were not registered to vote.

"We will work with the community to wake the sleeping giant, and work together to have our own voice," he said.

"We are the red, white and blue; we are the people who paid the price; we have to represent ourselves."

Last night it appeared that while it was stated that weapons were being "put beyond use", they were not being formally de-commissioned as IRA weapons eventually were.

Mr McDonald said: "Ninety per cent of people in the loyalist community don't want de-commissioning of weapons. They are the people's guns. The people don't want to give them up because they don't trust people yet."

ロイヤリスト・コミュニティの50パーセントが投票の登録をしていない(日本とは異なり、選挙のときには有権者登録の手続きが必要で、顔写真と住所氏名などを登録しなければならない)というのは、「労働者階級のプロテスタントの政治的な声」はこれからもっともっと公的な形で表明されなければならない、ということだろう。ジャッキー・マクドナルドはここで明確に「みんな、登録して投票するように」と呼びかけている。となると、次の選挙(自治議会選挙)でのUPRGの議席獲得を本気で狙っている、ということだろう。



いずれにせよ、2007年11月11日のUDA/UFFのステートメントをめぐって、"historic" という言葉がまったく見られないことは非常に印象的だ。IRAのときは、まあ英国政府直轄統治で派手好きのブレア政権だったということもあるだろうが、ネコも杓子も "historic" と言っていた。

だが、治安当局とべったり貼りついて、パット・フィヌケン弁護士殺害やらなにやらいろいろやってきたUDA/UFFの「活動停止」に際しては、誰も "historic" とまで言い切ることはできないらしい。「ドラッグ密売」など、現在進行形の犯罪の側面があまりに重要であるせいかもしれないが。



「UDAの犠牲者」として最もhigh-profileな人物である弁護士パット・フィヌケンの友人や遺族らが運営するthe pat finucane centre for human rights and social changeのサイトを見てみたが、最終更新が11月8日で、UDAの解隊についてはまだ何も書かれていない。
http://www.serve.com/pfc/

そういえば、UVFの活動停止宣言のときには、BBCは「UVFの所業」をまとめた記事を立てていたが、今回は「UDAの所業」のまとめ記事がない。日曜日で人手が足らなかったのかもしれないし、時期的に、ほかのニュースで忙しいのかもしれないが(全国的にポピー・デイである)。

※この記事は

2007年11月12日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 16:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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