kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年09月16日

制止すべきはイランではなくアメリカだろうに。

16日付け、オブザーヴァー社説。自分の中を一度通すために手元で日本語化した。「わざわざ日本語にした」ように見えるような形でオープンな場で紹介する価値があるのかどうか、ずいぶんと迷ったが、何もしないよりはよかろうと判断し、ブログに掲示することにした。

2002年の、「イラクの大量破壊兵器」をめぐる言説を鮮明に思い出しながら、日本語化を試み、そのあとでいろいろ書き付けておきたいと思う。

ところで、改めて読むと、第一パラグラフと第二パラグラフとの飛躍がひどいな。第一パラグラフに書かれていないこと(というか国名)もいろいろある。

というわけで……。

Time is running out to avert war with Iran
イランとの戦争を回避するための時間は、もうなくなってきている
原文:http://www.guardian.co.uk/iran/story/0,,2170381,00.html

核を手にしたイランは、全地球規模の平和と安全保障にとっての甚大な脅威となるであろう。イランが核を手にすれば、サウジアラビア、エジプト、トルコ、イスラエル、パキスタンでも軍拡競争となるであろう。そしてそのことで核戦争が起こる可能性は飛躍的に大きくなり、またテロリストが核兵器を入手する可能性も飛躍的に大きくなる。

上記のような理由により、米国とEUの間には、イラン政府の核開発は止めなければならないという合意がある。しかし、ではいかにして止めるかという点においては、米国とEUの間で合意されていることはほとんどない。【注:この箇所での改行は翻訳者による】

今週、国連の場で、米国は外交的な攻撃を開始する見込みである。米国政府は、イランが核兵器開発計画 (nuclear weapons programme) を放棄していないことを非難し、その罰として経済制裁を強化する内容の安保理決議を何とか取り付けたいと考えている。

【▲ここまでが「論の前提」としての「事実」の提示……けっこう危なっかしいが。】

国連安保理で、米国の思うようにことが運ぶ見込みはほとんどない。ロシアが、先行する2件の決議と現行の制裁がどのような影響を生じさせるかを慎重に見極めたいとしているのだ。【注:この箇所での改行は翻訳者による】

一方でイラン政府は、既にIAEAとの間で合意された「作業計画」に満足している。つまり、イラン政府は核開発計画についての質問に答えるということには応じるとしているが、ウラン濃縮を停止することはない、と。【注:この箇所での改行は翻訳者による】

この計画について、英国、フランス、ドイツ(いわゆる「EU3」)は懐疑的な態度であるが、米国は(懐疑的どころか)「引き延ばし策に過ぎない」とし、全く話にならないとの態度を隠していない。

イランにも懐疑的になる理由はある。米国政府があれやこれや発言しているのを聞いて、イランは自分たちが何をしようともどうせ攻撃されるのだと結論している。そして、核抑止力の方向へ全速で突き進むしか道はないと結論する(している)かもしれない。

米国がますます「喧嘩上等」な態度になってきていることは事実だ。ブッシュ政権内のパワーバランスは、イラン政府との慎重な交渉をとの立場のライス国務長官から、イランとは対決すべきだとの立場のチェイニー副大統領に移ってきている。

米政権内でパワーバランスが移行したことは、ワシントンにおける英国の外交的影響力もまた弱まりつつあるということを意味する。ライス国務長官は、チェイニー副大統領より、米国の同盟国の意見に耳を傾けようという立場なのだ。【注:この箇所での改行は翻訳者による】

英国政府はまた、イランに対しても外交的影響力を有している。イラン国内での権力闘争を読み解くのは容易ではないが、英国は、イランの政権に対し、明晰であり同時に押し付けがましくもないメッセージを伝えるために、十分な経路を有しているのだ。英国が発するメッセージは単純なものでよい。現状、戦争はまだ回避できる。しかし戦争とするなら、米国の強硬派からは攻撃する口実を奪うべきであり、慎重派が重ねてきた外交努力に対する見返りを十分に受けるべきである、と。つまりそれは、IAEAの「作業計画」という口実を放棄すること、ウラン濃縮を直ちに停止するよう取り組むことを意味する。

米国がイランの核施設を爆撃するというのは、既に決まった話ではない。だが、米国が外交努力は尽くしたとして次の行動に移るのは時間の問題なのだ。

読んでいて非常に複雑な気分になる論説である。「このままでいけば、近いうちに、米国はイランに対し戦争を仕掛けるであろう」という観測にはまったく同感である。そして、「戦争はもう決まった話ではないし、今から回避されるべきだ」との基本的な考え方にもまったく同感である。

しかし「戦争はまだ回避できる」ということについての、オブザーヴァー論説委員の具体的な提案――「ウランを濃縮しているのは核兵器開発のためだ」と決めてかかり、それを「戦争」の口実としようとしている米政権のタカ派(チェイニーら)から、その口実を奪うため、そして米政権のハト派(ライスら)や英国の外交のこれまでの「努力」に報いるため、イランはウラン濃縮の即時停止を、という提案――には、非常に複雑な思いである。

このオブザーヴァー論説記事に寄せられた読者コメントのいくつかが(コメントまで全部読んだわけではないが)、「それは話のすり替えだろう」と指摘している。つまり、IAEAのプラン(「核の平和利用」)は、すべての国に認められている権利であり、もちろんイランという国にも認められている。それを、「タカ派に口実を与えないために投げ出せ」というのは、まあ実際に残された手はそれしかないのかもしれないと思うのだが、ひどいすり替えだと私も思うのだ。(自分が原子力発電に対してサポーティヴではないから自分の頭のなかでまたややこしいことになるのだが、その件はここでは除外して考える努力をする。余談だが、国内のイスラム教徒の数では世界最大のインドネシアでは「原発はハラム」とのファトワが出されたとか。)

NPT体制の外側で「核兵器保有国」となっているインド、パキスタン、イスラエル、それを放置している(どころか米国はインドとはニコニコして握手をし、パキスタンともそういう関係、イスラエルとはべったりだ)ということだけで、「米タカ派」というか「対イラン開戦派」への対抗はできんのかね、というか。まあオブザーヴァーだしな、ここらへんが限界かね。(←諦めすぎ。)

米国は「北朝鮮は無能力化することにしましたよ。それでrogueというレッテルをはがしてもらったり、いろいろ『援助』を受けたりと、けっこういい目を見るみたいですよ」という「外交」のアプローチでイランを釣ろうとしているのかもしれないが(日本の拉致被害者のご家族も気の毒に)、イランは「それは断る」という態度を明示した、というのが現在の段階だと私は思っている。

で、英国は米国と違ってイランとは外交のチャンネルがあるのだし(国交断絶していない)、もっとできることがあろうにというのはオブザーヴァー論説の言うとおりなのだが、この論説で「え?」と思うのは、「米国のタカ派がああなのだから」ですべてを考えているところだ。

いや、これは「え?」ではなく、「英国らしいなあ」だな。例えば、1997年ごろの北アイルランド和平交渉での「政治犯(テロリスト)の早期釈放」のあれこれを見れば、「IRAがああなのだから」で動かして結果オーライにしてるし。ははは。

で、「(ロシアとかEUとかは『んー』って言ってるし、米国のハト派も『いやそれは違くて』と言ってるのに)米国のタカ派が暴走しそうですよ」という場合に止めるべきは、「米国のタカ派」であろうのに、オブザーヴァーのこの論説は、そっちを止める努力をしようともせず、「米国のタカ派があんだけキレてるから、あんたがとりあえず矛を収めなさい」とイランに説教、と。

ははは。

押さえ込むべきはチェイニーが振り上げているその拳じゃないのか、むしろ。

ジャイアンに「マンガをよこせ」といって殴られるのを回避するために、のび太くんに「マンガは家に置いていけ」とアドバイスするどらちゃん、みたいなことになっている。(←変なたとえ。)

私は私が読める範囲で読めることを読んだ結果、今のイランの政権はちょっとなあと思っているが、それでも、今の段階で国際社会によって制止されるべきは「イラン」ではなく「アメリカ」ではないかと――国際社会による「制止」の努力は、2003年2月の安保理でなされ、同年3月のバグダード爆撃で見事に砕け散ったとはいえ――強く思う。

仮にイランの革命防衛隊が、米軍が主張するとおりに、直接・間接的にイラクの民兵を訓練するなどしているのだとしても、それは裁判での「検察側の主張」のようなもので、justiceの前で立証されたことではない。

ていうか、本当にイランがやっているのだとしたら、イラク南部シーア派多数地域(バスラはシーア派民兵あれこれお好みどおり、な状況で、ペルシャ語があふれているとか)を担当している英国が、「イランはウラン濃縮をやめなさい」と進言する以外に何もできないわけがない。

それともあれかね、「英海軍兵士を無事に帰してくれてありがとう」で、アハマディネジャド大統領の思い通りに動いていると思われたくない、とかそういう話か?

ばかばかしいんだけど、英国の外交というのを考えると、「くそー、イランめ、恥をかかせてくれたな」で動いているというのもありそうな話なのでこわいんだな。

オブザーヴァー論説記事の読者コメント欄から:
Are we supposed to be engaged forever in these baseless allegations by the US against Iran? Did we not learn a lesson after waging two unprovoked wars based on these very claims which has by now led to the killing of hundreds of thousands of innocent civilians and thousands of British and American soldiers?
(September 16, 2007 2:30 AM)

米国によるイランに対する根拠のない「疑惑追及」にずっと付き合わなければならないということなのか? まったくおんなじような主張に基づいて、攻撃されていないのに戦争をしかけて(2件)、何十万という無辜の市民が殺され千人単位で米英の兵士が死んでいるのに、それが何も教訓になっていないと?


The Iranians have suffered a lot from American policies and actions. They were attacked by Saddam Hussain who was a stooge of the Americans before, and they prevailed after a long bloody war - they would never ever forget that. In as much as the government might be slightly unpopular now, unlike the dictatorship that was in Iraq, the people have a lot of say in choosing their leaders. Any foreign threat would immediately crystallise strong support to the government in a nationalistic fervour.
(September 16, 2007 5:07 AM)

イランの人々は、アメリカの政策と行動によって、これまでひどく苦しめられてきた。アメリカの傀儡であったサダム・フセインから攻撃され、長々と戦争を行なった末にようやくここまできた、そのことはイランの人たちは忘れることはない。今の政府は支持という点では少し劣るが、イラクのように独裁体制だったわけではなく、イランの人たちは自身のリーダーを選ぶにおいて意見を表明することができる。外国から脅しがあれば、どのようなものであれ、愛国心で団結して政権に対する支持ががっちり固められる。

▲基本的に同感のコメントなのだけど(特に「外国からの脅しでイランは挙国一致の翼賛体制になる」ことは、つまり「反体制派、反革命分子への弾圧が今よりいっそうひどくなる」ことを意味するが、その点は強くうなづきたい)、ひとつ抜けているのは、イスラム共和国を可能にしたシャー・パーレビの独裁政治は、アメリカ(とイギリス)が、選挙で選ばれたナショナリストの政権(モサデク政権)を転覆し、アメリカ(とイギリス)が植えつけたものだ、ということ。

It's not 1914, but it feels like it.
(September 16, 2007 6:24 AM)

まるで1914年のようだ。

▲第一次世界大戦。

With such an opening paragraph, it sounds like it's the Observer leaders/editors who are losing patience with Iran and not the White House!!
(September 16, 2007 6:40 AM)

ひどい書き出しだなこりゃ。これを見るだけでも、オブザーヴァー紙はホワイトハウスに対して堪忍袋の緒が切れました、って話じゃないわけね。【←超訳】

▲第二次世界大戦で「アメリカの堪忍袋の緒が切れた」のがいつか、日本人はすぐにわかる。その背景についても、いろいろ。まあ、最近も粗雑な歴史認識のあの人(のスピーチライター)が「日曜の朝……」で「お話の時間」を予感させて、聞いてた人にお茶吹きをさせていたが。

Given that Israel and Pakistan already have nuclear weapons, and Saudi Arabia, Egypt and Turkey host US bases which presumably contain nuclear weapons how would Iran's possession of them fuel an arms race?
(September 16, 2007 7:00 AM)

イスラエルとパキスタンは既に核兵器を持っていて、サウジとエジプトとトルコには米軍基地があってそこには核兵器があると考えられるわけで、で、そこにイランが核兵器を手に入れたとして、何がどう軍拡競争だと?


Has the writer of your leader actually read the texts of the two Security Council resolutions against Iran, or indeed past copies of his own journal? If he had, he would have known that, contrary to what he suggests, neither of the resolutions condemn Iran for "failing to abandon its nuclear weapons programme". There is no known "nuclear weapons programme" in Iran for it to be condemned for. A fact confirmed by the IAEA. ...
(September 16, 2007 12:33 PM)

この論説を書いた人は本当に対イラン安保理決議を読んでいるのでしょうか。それとオブザーヴァー紙の過去記事も読んでるんですかね。もし読んでいるのだとすれば、安保理決議は「核兵器計画の放棄をしていない」ことでイランを非難しているわけではないので、書いているのとは正反対なんですが。イランには、非難されるような「核兵器計画」などないはずですよ。これはIAEAも確認している事実です。

▲これは細かいけれど重要な点で、論説本文では確かに "Washington wants to negotiate a new Security Council resolution condemning Iran for failing to abandon its nuclear weapons programme" とあるのだが、これは「米国は、イランは(発電用の核エネルギー開発ではなく)核兵器を開発しているのだ、と主張している」+「米国は、イランがその核兵器開発計画を放棄していないとして非難決議を取り付けたい」の意味だと思う。なぜならイランの「核開発」が「核兵器開発」だと認められたことは、ないのだから、そうとしか読めない。でもウッカリしていると「事実として、イランは核兵器を開発している」と受け取ってしまうかもしれず、ライティングとしては軽率だなあ、確かに。

あと、September 16, 2007 9:36 AMで「イランから」と名乗る人(<捨てハンくさいがそうなのかどうかは未確認)のコメント、ははは。。。ここまでbaselessな「イランから」も珍しいというか、一部は「イランから」らしい意見だが、大半は「単にニュースを知らない人」の言いたい放題だ。

でもその系統のコメントがこれ1件というのも、まあオブザーヴァーらしいといえばらしいか。

でも多くのコメントが指摘するように、オブザーヴァー/ガーディアンがこういうことを書き始めるということは、戦争回避を願う者にとっては、よいことの前兆ではない。

この数年間、何度かこういうふうに「あれ?」と思うことはあったのだが、今回は……。

コメント欄で言及されてたから、デッケネのHoliday in Cambodiaで。
http://youtube.com/watch?v=0R9_ZLxsmmg


※この記事は

2007年09月16日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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