kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年08月29日

ポリトコフスカヤ殺害事件、容疑者逮捕

2006年10月の、アンナ・ポリトコフスカヤ殺害事件で、容疑者10人が逮捕された。

Arrests over Russia writer murder
Last Updated: Tuesday, 28 August 2007, 00:55 GMT 01:55 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6965253.stm

【以下、記事の概要】

モスクワの検事総長によると、10名の中には治安当局の職員が1名(a security officer)、チェチェン・マフィアのリーダーが1名(a Chechen gang leader)含まれている。また証拠を見る限り、殺害計画は海外で立てられている。

記者会見での検事総長のYuri Chaikaの発言:
「ポリトコフスカヤを消したいと思っていたのは、ロシアの国境の向こうに住んでいる人たちだけだ」【←ここでお好きなようにツッコミをどうぞ。】

「特に、ロシアを不安定化させ、ロシアの憲法の下の秩序を変え、ロシアを混乱させることを望んでいる人々や組織だ。この犯罪から利益を得ることができるのは、そういった者たちだ」

検事総長が容疑者逮捕と起訴の方針についてプーチン大統領に報告する様子はテレビで放映された。【←BBCの記事にスチール写真で出てます。】

検事総長の説明:
「犯行グループのトップは、チェチェン出身の在モスクワ犯罪組織のリーダーである。遺憾ながらこのグループには政府関係者もいた――内務省とFSBの、退職した職員と現役の職員である」

検事総長の説明によると、この同じグループはほかにも2件の殺人に関与している可能性がある。1件は2004年のポール・クレブニコフ(Paul Klebnikov、ロシア版『フォーブス』の編集長でロシア系アメリカ人)殺害事件、もう1件は2006年のアンドレイ・コズロフ(Andrei Kozlov、ロシア中央銀行の副頭取)殺害事件である。

逮捕された10人に含まれているFSB職員の名は、Lt Col Pavel Ryaguzov(パヴェル・リャグゾフ、でいいのかな)である。

検事総長の説明によると、ポリトコフスカヤ殺害は非常に慎重に計画されており、彼女を見張っておくために2つのグループが関与していた。

一方で、ポリトコフスカヤが仕事をしていた新聞『ノヴァヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)』の調査報道部の編集長、ローマン・シュレイノフ(Roman Shleynov)は、BBCに対し、断定するのは時期尚早と述べている。

編集長の言葉:
「外国の犯罪勢力が関わっていたとの証拠は何もない。ソ連時代のことを思い出させられる――国内で何か問題があると必ず、指導部は西側の人間が悪いのだとしていた」

また、編集長は、政治的な言動は現場の捜査官の仕事に影響を与えるというのに、検事総長がこのような発言をした動機がわからない、とも指摘した。

……というのが、「容疑者10名逮捕」を報じるBBC記事に書かれていることの概要。

では、検事総長のこの発表について、ロシアではどう受け止められているか。BBCが淡々と、「こういう報道がありました」ということを英文で要約して伝える(という説明のある)BBC Monitoringによると:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6966452.stm
- ほとんどの新聞は検事総長の説明を受け入れている。

- 政府系のRossiskaya Gazetaは、「ポリトコフスカヤ殺害事件、解決」との見出し。

- Nezavisimaya Gazetaは、「事件解決へ」との見出し。

- 検事総長の「外国からの関与」に注目する新聞もある。

- Moskovskiy Komsomoletsは、「アンナは外国から『消された』のか?」。

- Vedomostiは、検事総長の発言は、ボリス・ベレゾフスキーに向けられたものだと考えている。【←はい、「やっぱりねぇ」とため息をどうぞ。】同紙にはベレゾフスキーの「検察が『外国の』と言ったらほかにいないでしょう」という発言(ロシア政府転覆計画の際に為されたもの)を引用している。【←苦笑をどうぞ。】

- 親クレムリンのIzvestiyaの論説委員もまた、プーチンの敵がポリトコフスカヤ殺害の背後にいるとの考えに傾いている。【←こんな支離滅裂な・・・】この論説記事には、「ロシア政府は独裁的であるとのイメージを保っておかねばならない勢力が云々」とある。

……えっと、ちょっと一休みしていいですかね。あまりの「陰謀論」っぷりに本気で頭が痛いので、おでこに貼る熱さましのシートを取ってきますんで。(今日の東京は連日35度の昨日までと比較すれば、28度あたりで全然涼しいのですが、さすがにこれは頭が痛い。)

先日、ロバート・フィスクが、講演とかするたびに「9.11の真実」論者から「あなたは本当のことを知っていながらそれを口にしない、なぜか」と詰問される、いやもう参ったね、あたしゃ中東でずーっと仕事してきて自分の知ってることは書いてますよ、みたいなことを書いていたんですが、いやぁ、ほんとなんかそういう感じ。しかもイズベスチャが。

淡々と「事実」を述べたり分析したりするのではなく、「ロシアの威信」で物事を語るからこうなるんだろうけどね。BBCにあるIzvestiyaの論説から:
"The Kremlin realised that unless this murder was finally and convincingly resolved, the whole world would be convinced that it was the authorities that removed the inconvenient journalist," he says.


先に行きましょう。

- 警察やFSBの現役職員・元職員が逮捕された中に含まれていたということに注目する新聞もある。

- 経済紙Kommersantは、「チェチェン(・マフィア)を追尾し警察にたどり着く」と書いている。

- Novaya Gazeta(ポリトコフスカヤが書いていた新聞)は、「オールド・ボーイのネットワークによる殺人」と書いている。

- タブロイド紙のTrudでは、ある論説委員が、当局が治安組織関係者が関与していた可能性があると認めていることに感心した、と書いている。「クサいものにはフタというやり方が、この件では発動されていない」。

- 一方でNezavisimaya Gazetaは、これで、ポリトコフスカヤ殺害事件がクレムリンによって直接為されたものだとの説は、「受け入れがたい」ものということが立証された、と述べている。


最後に、Novaya Gazetaの編集長、Dmitri Muratovの意見。
But there are also sceptical voices. The chief editor of Ms Politkovskaya's former paper, Novaya Gazeta, says that while he agrees with the investigation's conclusions so far, he is worried about how the authorities will interpret them.

"We fear that the ultimate masterminds may be 'appointed'", Dmitri Muratov is quoted as saying by the Moskovskiy Komsomolets daily.

"So far we have had no guarantee that the names of the real masterminds behind the crime and the names of those who in the end will feature in the indictment will be the same", he adds.

つまり、「ここまでの捜査の結論には同意するが、それを当局がどのように解釈するかは不透明である。殺害の本当の黒幕の名前と、起訴状に書かれる名前とが一致するとの保証は何もない」としている。(要するに、編集長の考えでは「代わりにクサいメシを食ってきてくれんか」という事情がある可能性がある、ということか。。。)

リトビネンコ事件以降、ロシア関係では英国の報道はほとんど当てにならない状況になっていると私は思うので、BBCなど英国のメディアに「真相」や「真実」が書かれているとは思いませんが、「こういう報道が英国でありました」ということだけは事実なので。

でもこの2件のBBCの記事は「事実」の記述に徹していると思うけど。(単なる「事実」の記述においてさえも、多くの場合、記述の順番とか用語法の問題があるんですが、特に1番目のBBC記事は、速報が出てからアップデートされてきたのを少しは見ていた記事で、イラク戦争に関する記事のように「なぜか消えた重要な記述」というものはなかったと思うし、上で「概要」としてまとめたときに記述の順番を入れ替える作業をしても特に変なところはなかったし、用語法としても特に何か際立ったものがあるという印象は受けませんでした。)

追加:
BBCのジェイムズ・ロジャース記者の「モスクワ便り」(2週間に1度更新)が、アンナ・ポリトコフスカヤ射殺事件の容疑者逮捕を受けて、ロジャース記者がポリトコフスカヤに会ったときのことを回想する内容になってます。

Moscow Diary: Silenced critic
Last Updated: Wednesday, 29 August 2007, 10:45 GMT 11:45 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6966543.stm
彼女は自分の生命を危険にさらしていた。そして自身そのことをよくわかっていたに違いない。

アンナ・ポリトコフスカヤには2度会ったことがある。最初に会ったときには1時間以上も話をした。彼女のチェチェン報道についてがほとんど。当時、私はロシアに住んではいなかった。チェチェンを訪れたのはその何年か前で、それ以来訪れていなかった。

夏の日の午後のことで、陽光のあたるところでお茶を飲んだ。コーカサスでの戦争の残酷さと悲惨さとはまるでかけ離れた状況。

彼女が紛争の細部を非常に詳しく知っていること、紛争に関係する人々を広く知っていることに私は驚嘆した。

2度目に会ったのはその数ヵ月後だ。

2004年の秋だった。9月の初めに、ベスラン学校占拠事件の現場に向かう途中で、彼女は体調を崩した。

毒を盛られたのだと、彼女は確信していた。

このとき、彼女は以前よりずっと警戒心を強めていたように私には思われた。彼女は毒物で入院するはめになったのであり、その毒物の影響がまだ残っていたとしても不思議ではなかった。

彼女の死についての捜査で、10人の容疑者が逮捕されたとの報せで、では誰が彼女の殺害を命令したのかといったことについての話題が、こちらでは再燃している。

煎じ詰めていえば、彼女の支援者たちは、彼女のしてきたことの結果として殺害されたのだと確信しているようだ。一方で当局は、検事総長の言葉を借りれば、「外国にいる者が彼女の殺害を命じた」との説をとりたがっている。

このような謎を解明することは、アンナ・ポリトコフスカヤが自分で取り組んでいたかもしれない、そんな類の仕事である。

彼女の殺害という事態が引き起こした政治的な様相、これは彼女が死してなお影響力を持つということを意味している。

なお、BBCはFM局でのロシア語放送ができなくなるなど、ロシアでは相当の締め付けの対象になっています。リトビネンコ事件の容疑者の身柄引き渡し要求に始まる外交官追放の応酬と、最近のロシアの対外的な「軍事的に強いロシア」の誇示(冷戦期さながら)といったコンテクストもあります。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6951710.stm

はてブのほうにちょっとだけ記事クリップしてあります。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/Russia/



■追記:
HODGEさんのブログに、日本語、英語での報道記事、英語でのニュースクリップが。(これはすごい。)
http://d.hatena.ne.jp/HODGE/20070831/p1

※この記事は

2007年08月29日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 21:37 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
追記をコメントで。

露女性記者殺害の捜査迷走…誤認逮捕4人、責任者解任
2007年9月4日23時33分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070904i4w6.htm
[quote]
 【モスクワ=瀬口利一】ロシアのプーチン大統領のチェチェン政策を批判した女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさんが昨年10月、自宅で射殺された事件で、最高検察庁は特捜班の責任者を解任した。露メディアが4日、一斉に伝えた。

 殺人共謀罪などで逮捕された容疑者10人のうち4人が誤認逮捕だったことが分かり、ずさんな捜査の責任をとらされたとみられる。

 モスクワの軍事裁判所は3日、当初、ポリトコフスカヤさんの尾行や身辺調査などにかかわったとされた連邦保安局(FSB)元中佐について、「不当逮捕だった」との裁定を下した。職権乱用容疑の別件逮捕で、事件とは無関係という。

 内務省の元警察官ら3人も犯行当時のアリバイが確かめられたなどとして釈放された。「チェチェン出身」とされた容疑者に対しては、取り調べの際に身体に危害を加え、自白を強要した事実が明るみに出ており、事件から1年近く経過し、捜査の進展をアピールしようとする最高検の「勇み足」が露呈した格好だ。

 捜査経過の公表には、「政治的意図」がうかがえる。チャイカ検事総長は殺害を依頼した犯人について「政権転覆をたくらむ国外勢力」との見方を堅持。犯行の動機を「政商が仕切る旧体制に後戻りさせ、ロシアへの(内政干渉)圧力を強める狙い」と決めつけ、プーチン大統領と対立して英国に亡命した政商ボリス・ベレゾフスキー氏の関与を強く示唆した。(以下略)
[/quote]

あと、8月30日にチェスのカスパロフらの「もうひとつのロシア」がモスクワで追悼集会を開いたこともこの記事で言及されています。

それから:
チェチェンニュース Vol.07 No.21 2007.09.06
http://chechennews.org/chn/0721.htm

「迷走する捜査」についての解説。一読して「こりゃひどいことになっている」としか言えないのだが(何度か読み直したがここは同じ感想)、ではリトビネンコ事件での英国側の「捜査」がどうなのかというと、これも「結論ありき」上等のロンドン市警(リシン事件参照)だから、何とも。

リトビネンコ事件のルゴボイ容疑者の身柄をめぐる英国とロシアのあんなことやこんなことも、「本命はベレ氏」というのが明らかなのですが、という話は長くなるので別に。

とりあえず、米国は首つっこみそうにないのかなと思っているのですが(コンディの他人事みたいな一般論の発言があっただけだと思う)、そこで何かあるかも。
Posted by nofrills at 2007年09月10日 13:39

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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