「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年07月26日

イラクがアジアカップ決勝に。

http://nofrills.seesaa.net/article/49259253.html?1463702022

イラクがアジアカップ決勝に。: tnfuk [today's news from uk ] via kwout
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アジアカップの決勝はイラク対サウジアラビアとなった。AFPさんの写真ではイラク軍兵士もお祭り騒ぎになっている。

Iraq & Saudis secure final berths
Last Updated: Wednesday, 25 July 2007, 15:31 GMT 16:31 UK
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/internationals/6915796.stm

準決勝が2試合とも東アジア対西アジアだったのだから、決勝も東西対決で、イラク対日本だったらよかったのにと思う。

FIFAのAFCランキング(2007年6月)では:
1 Japan (722 Pts: FIFAでは36) →準決勝
2 Iran (666 Pts: FIFAでは46) →準々決勝
3 Australia (594 Pts: FIFAでは49) →準々決勝
4 Uzbekistan (526 Pts: FIFAでは54) →準々決勝
5 Korea Republic (511 Pts: FIFAでは58) →準決勝
6 Saudi Arabia (488 Pts: FIFAでは61) →決勝
7 China PR (439 Pts: FIFAでは73) →グループリーグ
8 Oman (416 Pts: FIFAでは76) →グループリーグ
9 Iraq (398 Pts: FIFAでは80) →決勝
10 Qatar (387 Pts: FIFAでは83) →グループリーグ
(以下略)

※準決勝での日本対オーストラリア、イラン対韓国はPK。(準決勝はあと2試合はウズベキスタン(1)対サウジ(2)、イラク(2)対ベトナム(0)。)

FIFAの代表別ページで見ると、イラクはBest Resultsが2004年オリンピックでの4位とのことで、今回のAFCでは既にそれを上回っている。めでたい。素直にめでたいと思う。あんな状態で、練習もしたいようにはできないだろうに、今の監督も就任して8週間とか10週間なのに、前の試合に勝ったあとに「国に喜びをもたらしたい」というコメントが監督から(だったと思うけど)出ていたのがすべてを物語るのだろう。

しかし、やはりこういうことが起きてしまうのか。

Iraq bombs strike football fans
Last Updated: Wednesday, 25 July 2007, 23:03 GMT 00:03 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6916230.stm

Two bomb attacks have killed at least 50 people and injured 135 in Baghdad as crowds celebrated the Iraqi national football team's win over South Korea.

The first strike killed 30 people in the Mansour district, where fans were marking Iraq's victory, which takes the side into the final of the Asian Cup.

Twenty died in the next blast, at an army checkpoint in east Baghdad.

...

Police said the two attacks deliberately targeted the jubilant supporters.

【大意】
バグダードで人々がイラク代表が韓国代表に勝利した喜びに沸くなか、マンスール地区(バグダードの西部)と、バグダード市東部(Ghadeer地区)の軍の検問所の2箇所で爆弾事件が発生した。合わせて少なくとも50人が死亡、135人が負傷している。マンスール地区での爆弾では30人が死亡、東部では20人が死亡した。警察は、2件とも勝利を喜ぶサッカーファンを標的にしたものと見ている。
※「大意」内、カッコ内は私の書き足し。

マンスール地区で爆弾が爆発したのが現地時間18:30、それから1時間もたたないうちに東部で爆弾。

en.wikipediaのエントリ(2007年7月25日版)で現在の代表メンバーの一覧を見れば、少しだけだが、シーア派の人もスンニ派の人もクルドの人もいるということが名前からわかる。ああ、若いチームだなあ。代表メンバーは1人を除いて全員80年代生まれで、ひとり、この大会期間中に20歳になったばかりのプレイヤーがいる。2003年に戦争が始まったときには、このプレイヤーがプロとしてのキャリアをスタートさせる前だっただろう。

BBCには、南部の大都市バスラの人のコメントが載っている。
"I am nearly crying for joy," 30-year-old fan Nuri Najjar told Reuters in the southern city of Basra.

"Iraq's victory with this harmonious team represents the way we should all live together."

「嬉しくて涙が出そうです」と、バスラでロイターの取材に答えたぬーり・ナジャールさん(30歳)は言う。「宗派で分かれていないチームでイラクが勝ったことは、私たちがそうやって一緒に暮らしていくべきだということを示しているのです。」


ロイターの記事、Bombs in wake of Iraq football win kill 50は、米国とイラクとイランの3ヶ国協議についてかなりの分量をあてている。話の流れとしては、米国(@シーア派の武装組織の裏にいるのはイランだろう)→イラク→イラン(@そもそも後先考えず侵略した米国が悪いのであって、うちは関係ない)となっているのだそうだ(米国とイランは直接は話はしない)。

誰がやってるのであれ、「人ごみならなんでも標的」みたいな連中もいれば、「フットボールはインフィデル」とかいうことを主張する「指導者」が広く「支持」を集めているのが2007年のイラクだ。
親愛なる者たちよ、西洋は自分自身を満たす(完全にする)ことを阻害するものを作り出した。彼らは我々に何をさせようというのか?ボールの後を追いかけるだと?親愛なる者たちよ...、それに何の意味があるのか?大の男が、ムスリムが、ボールの後を追いかけるのか?親愛なる者たちよ、この「ゴール」と呼ばれているもの...もし走りたいならば、高貴なゴールに向かって走りなさい。あなたの品位を落とすようなそれではなく、あなたを完成させる高貴なゴールに向かうのだ。ゴールをあなたの心に抱いてそれに向かって走りなさい。そして神のご満悦を得るというゴールに向かって、全ての人々はそれぞれの道に従いなさい。これがひとつ、そしてふたつめにもっと大切なこと。我々は西洋、特にイスラエル、親愛なる者たちよ、ユダヤ人たちがサッカーをするのを見たことがあるか?アラブ人がしているように彼らがゲームをするのを見たか?彼らはサッカーやほかのことに我々をかかりきりにさせ、自分たちはそれから離れている。イスラエルチーム(彼らに呪いあれ)がワールドカップに出たなどということを聞いたことがあるか?あるいはアメリカは?……

―― 出典:Riverbend, 「ムクタダばんざーい・・・」、2006年5月31日(翻訳はヤスミン植月千春さん)

……

ムクタダ(・アル=サドル)の言い分をまとめると、「サッカーは敵側の支配の道具である」ということになる。もう少し詳しくいうと、「きみたちがサッカーにうつつを抜かしている裏では、サッカー熱を煽るだけ煽って自分ではサッカーをしない連中が、あれこれ策をめぐらしている」ということだ。そしてムクタダの脳内では、「サッカーをしているのは支配される側であり、支配する側はサッカーなどしていない」ということになっているらしい。(ここで、「支配」という語を私はあえて用いる。)


勝った勝ったで大騒ぎの街の様子(祝砲があちこちで)は、例えばカタールのガルフ・タイムズが詳しく伝えている。
Bloodbath as fans cheer football win
Published: Thursday, 26 July, 2007, 02:07 AM Doha Time

BAGHDAD: Gunfire erupted across Baghdad and Iraqis danced in the streets yesterday after their soccer team's historic Asian Cup win, but two suicide car bombs marred the war-ravaged nation's rare moment of unity.

……爆弾についての記述がここにある……

In Sadr City, a sprawling Shia slum in Baghdad, women threw sweets to dancing soccer fans with Iraqi flags draped over their shoulders. Some families sacrificed sheep as celebrations dragged on into the evening.

Sadr City ice cream and juice shops gave away free treats, a rare sight in the district, a stronghold of the feared Mehdi Army militia of anti-American cleric Moqtada al-Sadr.
【大意(以下同じ)】サドルシティではイラクの旗を肩にかけたファンたちに、女性たちが飴玉などを投げていた。祝福のために羊を屠る光景も見られた。アイスクリームやジュースの売店は人々に無料でふるまっていた(サドルシティではめったにないことである)。

Thousands of fans poured into the streets in all areas of Baghdad as well as Shia Basra and Karbala in the south and Kurdish cities like Arbil, Kirkuk and Sulaimaniya in the north.
バグダードだけでなく、シーア派の多いバスラやカルバラ、またクルド人自治区のアービルやキルクーク、スレイマニヤといった都市でも、街路は代表チームの勝利を祝う人々でごった返した。

In Baghdad's Karrada district, soldiers standing in the gun turrets of Humvee armoured vehicles waved to dancing soccer fans and police joined in.
バグダードのカラダ地区では、ハムヴィーに乗って目を光らせている兵士が路上で踊っているサッカーファンに手を振り、警官は踊りの輪に加わった。

"I am nearly crying for joy. Iraq's victory with this harmonious team represents the way we should all live together," said Nuri al-Najjar, a 30-year-old fan in Basra.
バスラではヌーリ・アル=ナジャールさん(30歳):「嬉しくてもう涙が出そうです。イラクのチームは各宗派が混在して成り立っている。その彼らが勝ったことは、私たちがそういうふうにともに暮らしていくべきということを示しています。」

Iraqis in the autonomous northern region of Kurdistan even waved Iraqi flags in a rare display of national unity. Kurds normally view the Iraqi flag as an Arab symbol. "Life for Iraq, life for Iraq," fans in Sulaimaniya chanted.
クルディスタンではイラクの旗が振られた。このようにイラク国家は一体であるということが示されることは、通常はイラクの旗をアラブのシンボルと見なすクルディスタンではめったにないことだ。スレイマニヤではファンらが「イラクばんざい、イラクばんざい」と声をあげていた。

Soccer-mad Iraqis, who have had little cause to celebrate during four years of unrelenting violence and chaos, have avidly followed their team's progress through the tournament.

Many obtained extra fuel to make sure generators kept going during yesterday's match, the national power grid too unreliable to keep domestic appliances running.
イラク人はサッカーがものすごく好きだが、この4年というもの、暴力と混沌とでお祝いをする機会などほとんどなく、今回のチームの快進撃を夢中になって追ってきた。電気供給が不安定なため、多くの人が、試合途中で電気が切れてしまわないように、発電機用の燃料を多めに用意していた。

State television flashed a warning from military commanders urging people not to fire guns into the air, but the warning appeared to go unnoticed as jubilant fans fired pistols and AK-47 assault rifles.

The crackle of gunfire could still be heard in Baghdad hours after the match ended. One person was killed and 17 wounded in the capital by falling bullets, police said.

国営テレビでは軍司令官から、祝砲として空に向けて発砲しないようにとの警告が流されたが、どうも右から左へ流れてしまったようで、拳銃やカラシニコフの銃声が、試合終了後何時間か経ってもまだ聞かれた。警察によると、祝砲の流れ弾で1人が死亡し、17人が負傷した。【注:準々決勝のときは祝砲の流れ弾で2人が死亡している。】

During the game itself, Baghdad's coffee shops and restaurants were packed with Iraqis in team jerseys, standing and roaring at every near-goal scored by a mixed squad drawn from Sunni, Shia and Kurdish communities.
試合中は、バグダードのコーヒーショップやレストランは、代表ユニを着たイラク人で満杯になり、ゴールが決まるたびに総立ちで歓声をあげていた。

"Even though we are living in distressing times we follow the matches as though we are following our players into a battle," said Rahim Sahid, as he watched the game at a coffee shop in the upscale Karrada commercial district.

"The matches make us very nervous but our players are heroes whether they win or not. They bring joy to our hearts and to everyone in our society, children, women, old men, have all been waiting for these beautiful moments."
「大変につらい時だけれども、現地まで追っかけていったつもりで各試合を応援しています」と、バグダードの高級なショッピング街、カラダ地区のコーヒーショップで観戦中のラヒム・サヒードさんは言う。「試合は胃が痛むけれど、代表チームのみんなは、結果がどうであろうが、ヒーローです。彼らは僕たちの心に喜びをもたらしてくれる。僕たちの社会のすべての人に、子供も女性も年寄りも、みんなこのすばらしい瞬間を待っていたんです」

Many expressed the hope that their team's victory would at least temporarily turn the eyes of the world away from the relentless stream of bombings and killings that have otherwise distinguished the country in recent years.

"It is a victory for the entire country. No one makes us feel happier or more victorious than our national team," said Ahmed Hadi, a 24-year-old university student.
多くの人が、イラク代表の勝利は、少なくとも一時的には、世界の目を爆弾やら殺人やらといったこととは別なものに向けてくれると考えている。「国全体にとっての勝利ですよ。代表チームほどに僕たちを幸せな、やったーという気分にしてくれる人はいません」と、24歳の大学生、アハメド・ハディさんは言う。


AFPさんでは、「群集に爆弾」のニュースにも「歓喜する人々」の写真が使われている。子供とかいっぱいいる。下記の写真は、公園か何かでちょっと高いところ(噴水かなあ)に人々が上っている光景の写真。ここにもまた、インテル・ミランのユニの人がいる!(イラクの報道写真では、ティーンエイジャーがこの赤と黒のしましまを着ているのを、ほんとによく目にする。)

http://nofrills.seesaa.net/article/49259253.html?1463702022

イラクがアジアカップ決勝に。: tnfuk [today's news from uk ] via kwout
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※この記事は

2007年07月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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