kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年07月19日

全く他人事の選挙ウォッチング――保守党候補者は労働党支持者?

ロンドン西部、London Borough of Ealingの西、Southallというと、ヒースロー空港のすぐ近くのエリアだが、「アジア人 Asian」(UKにおいては「南アジア人」、つまりインド亜大陸系の人たちを指す)が非常に多い地域だ。英下院のEaling Southall選挙区の人口構成は、2001年センサスで白人が37.6パーセント、黒人が8.9パーセント、アジア人が47パーセントだそうだ。ちなみに、マルチカルチュラリズムのプロパガンダ映画、Bend it Like Beckham(邦題は『ベッカムに恋して』)の舞台はこのへんである。

「アジア人」と一口に言っても、ヒンズー教徒、シーク教徒、イスラム教徒、それぞれ別個のコミュニティを築いているが、Southallのあたりはシーク教徒が最も多い。映画Bend It Like Beckhamでしっかりわかるように描かれていたかどうか記憶にないのだが、あの地域の「アジア人」には成功したビジネスマンが多く(ヒースロー空港関連の仕事が多い)、「移民」という貧相な言葉から短絡的に連想されがちな「貧困層のエリア」というのとはちょっと違う。

そんなEaling Southall選挙区から選出された議員(労働党)が、6月半ばに病気で亡くなって(亡くなった当時、最高齢議員・・・ってことはイアン・ペイズリーより上! よく見たら82歳! 日本人としてはやはり「チェリー!」と叫んでおこう)、その補選が19日に行なわれる。(トニー・ブレアの議員辞職にともなうSedgefieldでの補選と同日。)

行なわれるのだが、その投票日の直前、いわゆるひとつの「ラスト選挙サンデー」ってやつですかね、そのタイミングで、ガーディアン/オブザーヴァーが高笑いしながらすっぱ抜いた――Ealing Southall選挙区で保守党が立てた候補は、労働党に£4,800(だいたい100〜120万円)献金していた!

Tory candidate made £4,800 gift to Labour
Nicholas Watt and Jo Revill
Sunday July 15, 2007
http://observer.guardian.co.uk/politics/story/0,,2126699,00.html

いわく、前の議員が亡くなった翌日の6月20日、ブレア引退の1週間前に、エンバンクメントでの労働党の食事会が開かれた。これを主催した(金を出した)のがSouthallのコミュニティ・ラジオ局、Sunrise Radioの重役を務めるTony Lit氏。会社名義で労働党に£4,800の政治献金(英国では£5,000以上の献金は開示する必要がある)。

そしてその食事会の8日後、Tony Lit氏はなぜか保守党の候補者となった。

オブザーヴァーの記事では労働党の人が「何でしょうね、この保守党の筋の通らなさは。こんなんで有権者を騙せると思ってるとしたら、キャメロン党首ってアホですね」(<超訳)みたいなことを言っている。

Tony Lit氏は立候補前に会社(Sunrise Radio)を辞めており、労働党との食事会については「ビジネスマンとして、アジア人のビジネス界の代表として出席した」と説明しつつ、「この国を任せるには労働党では無理だと感じている。アジア人コミュニティはだんだんと労働党を離れ、デイヴィッド・キャメロンの現代的で包括的な保守党(David Cameron's modern and inclusive Conservative party)に加わりつつある」と語っている。modern and inclusiveとかいう血の通ってない言葉で。

保守党のスポークスパーソンは、Tony Lit氏を候補として擁立することを決めたときに労働党とのディナーの話は聞いており、問題とは考えていない、という内容のコメントをしている。

リトビネンコ事件とか見てると惰性で陰謀論思考に身を任せては人を見るたびに「きゃー、スパイだわ!」とか言いたくなるのだが、この件ではその辺はどうなのかわからない。

で、ガーディアン/オブザーヴァーが保守党をdisるために高笑いしているだけなら「はいはい」で終わるのだが、投票前日にBBCまでしれっとした「高みの見物」系の記事を出している。

On the campaign trail in Ealing
By Brian Wheeler
Political reporter, BBC News, Ealing Southall by-election
Last Updated: Wednesday, 18 July 2007, 09:21 GMT 10:21 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/6903172.stm

書き出しの部分:
Ealing was once famous for its film comedies - but Thursday's by-election could easily rival anything committed to celluloid when it comes to bizarre plot twists and unexpected developments.

いきなり「これはコメディです」宣言だよ。(^^;) イーリングは映画の撮影所があって、1930年から50年代にかけて数々の映画が制作され、特に1948年から55年にかけては戦後のコメディの秀作が何本も作られた(といっても私は1本も見たことがない)。

このBBC記事は、「今回の補選の紆余曲折の展開、あっと息を呑むどんでん返しは、それら名作コメディに匹敵するのでは」と書いているわけだ。

何でも、通常であれば労働党の安全区であるこの選挙区が、Lab→Conの離党が相次いだこと(区議会議員が5人)と、汚い手口が使われたとの疑惑などで、先が読めないのだそうだ。

The Official Monster Raving Loony PartyとGreen Partyを除く各党がアジア系の人を候補として擁立(→候補者一覧:反EUでイングランドに自治議会をというナショナリスト政党のEnglish Democratsもアジア系の候補を立てている)しているこの補選で当初最も意気軒昂だったのは、ここを安全区とする労働党ではなく、保守党だったそうだ。

Conservative expectations were sky high when they unveiled their candidate, 34-year-old businessman Tony Lit.

He may have joined the Conservative Party only a few days before the start of the campaign but his high profile background - as the boss of Asian radio station Sunrise - and his smooth, media friendly style, makes him the perfect poster boy for Mr Cameron's new model Tory party.

34歳と若く、地域の大物ビジネスマン(Sunrise RadioはLit家のファミリービジネス)であるTony Lit氏は、メディアに対するにもスマートで、デイヴィッド・キャメロンの新生保守党をアピールするにはまさにうってつけの人物。(BBC記事には明示されていないが、彼がアジア系であることも「新生」保守党っぽい。)

1週間ほど前、労働党を離党して保守党に移った5人の区議会議員(そのうち4人は、保守党のテーマカラーである青のターバンを着けていたとな)と一緒にイーリングの区役所前に立ったキャメロンは「保守党は変わりました、新しくなりました。そのことが今ここに示されたのです。保守党は皆さんの代弁者です」と述べ、家族と事業と仕事を大切にする保守党こそが、英国生まれのアジア系の人たち(British Asians)にとって「自然な居場所(natural home)」であると訴えた。その光景を苦々しく見つめる労働党・・・こりゃ「勝利を確信」みたいな流れにもなるわね、保守党的には。

しかしそこに、15日のオブザーヴァー。

労働党は、25年間区議会議員を務めてきた人を候補として擁立し、ほかにも地域の有力者のバックアップを取り付けているようだが、15日の「保守党候補、労働党に£4,800献金」というオブザーヴァーのスクープでさらに攻勢に出る。(ガーディアン/オブザーヴァーは完全に労働党サポの新聞。)

しかも、オブザーヴァーの記事には書いてなかったと思うのだけれど、Tony Lit氏とブレアが握手している写真も出たらしい。いや、「出た」んじゃなくて「出した」んだよね、労働党が。大人の国はやることが陰険だなあ。

でもLit氏はこんなことでめげたりしない。「私はずっと保守党に共感していたが、ラジオの仕事をしていたので政治的な発言ができなかったのだ」と説明し、「確かに労働党の食事会には出たが、保守党の食事会にも出ている」と述べて踏ん張っている。実際、名家の御曹司である彼には、2001年の総選挙に無所属で立候補して3位に入った父親のバックアップもあり、ハンパないくらいに選挙運動を展開しているとのこと(お金があるんでしょう)。
Mr Lit, who insists he is a lifelong Conservative sympathiser whose job as a radio station chief had prevented him from expressing his political views, was unrepentant.

The 34-year-old, who resigned from Sunrise to stand in Southall, said he attended the Labour event in his capacity "as a businessman" - and had also attended a similar Tory event.

The revelation was an embarrassment for the Tory campaign in Ealing Southall but Mr Lit can still count on strong local support.

His father, Avtar, came third at the 2001 general election when he stood as an independent. He has been spotted supporting his son on the campaign trail in his dark blue Rolls Royce, with its L1 TTT number plate.

ただ一方で、有権者は全体的にはがちがちの労働党支持、というかアンチ保守党だったり。ある床屋の主人は「私は特に支持政党なしですが、うちのお客さんはみんな労働党ですよ」と述べている。「ただイラク戦争がね。ここらあたりじゃあトニー・ブレアはダメですねぇ。誰からも好かれてないです」

ここで記事が「しかしゴードン・ブラウンが党首になった現在では……」という方向に行くかと思いきや、そこはスルーして(ブラウンもイラク戦争をおっぱじめたひとりである以上、スルーするしかない)、「イラク戦争反対」つながりで話はLibDemへ。

LibDemは05年選挙で2位に終わり、また今度も2位ということになれば党首の責任問題にもなりかねない、という状況にあるらしい。で、LibDemの選挙チラシではブレアとブッシュのツーショットを掲載し「イラク戦争をやった労働党にNOを」という方向を訴えつつ、犯罪とかゴミ収集といった地域の問題を訴える、という感じらしい。

・・・LibDemはどう見ても苦しいですね。何か、うちから駅前に行くときに通り抜ける路地の壁に貼ってある「たしかな野党」のポスターの列を組み合わせるとこうなるというか。日本のこの政党の場合はそもそも「野党」でいくことを訴えているのだからそれでいいと思いますが。

さらに、YouTubeのLibDemのところに、「現実的に考えれば私たちは勝てない。保守党にすっかりお株を奪われた」とかいうコメントが書き込まれ、「保守党が汚い手口を」という話にもなっている。探すまでもなくすぐに見つかったけど、これ投稿したGrant Shappsって現役の保守党の議員じゃん・・・笑止! 保守党では「誰かが議員のメールアカウントをハックした」と説明しているけれど、メールアカウントのハックとYouTubeアカウントのハックは別の話だし(だよね? それかメアドとPWを盗んで勝手にログインして勝手にコメントした奴がいるとか?)、そもそも議員がメールアカウントをハックされるなんてことがあるという方が問題じゃないのかなあ。とにかくイミフメイすぎ。

日本でも公職選挙法に違反して自民党や民主党が選挙公示後もサイトを更新しているとかで、このままなし崩し的に公職選挙法が変えられてネットを使った選挙運動が解禁されるのかなと思うけど(こういうマッチポンプ的な既成事実先行の法整備ってのは、「法治国家」のやることではない)、何かこういうレベルの低い工作活動(らしきもの)を見ると、心底げんなりする。

一方で、今の保守党にうんざりして離党した人というのもいて、保守党→LibDemへの離党者もいれば、保守党→UKIPという人もいる。

UKIPのSouthall選挙区の候補者は保守党からの離党者でインド生まれのドクター。UKIPといえばEU嫌い・移民嫌いの政党だが、このAsianのドクターは「東欧からの移民を制限すべき」と主張。「私は奇麗事は言わない、現実を見ようじゃありませんか。私は移民に反対しているのではありません。厳格に管理されるべきだと言っているだけです」とのこと。2005年選挙での保守党ですな。。。あのときの保守党は笑ってしまうくらい右に行って自滅したようなものだけれど。さらにまた、ドクターは東欧からの病気の伝播に警鐘を鳴らしている。結核やAIDSの検査を義務化すべき、と。ドクターですな。

Respectの候補者については、ジョージ・ギャロウェイ(<今かなり危ない)の冴え渡る弁舌を。シンプルだけど。
Respect MP George Galloway said: "Salvinder belongs to this community. He will be Southall's man in Westminster, not Westminster's man in Southall."




今BBC見てたら出てきたニュース。

Police begin Southall vote probe
Last Updated: Wednesday, 18 July 2007, 23:09 GMT 00:09 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/london/6905715.stm

The Daily Torygraphことthe Daily Telegraphが、Southallの期日前投票(郵便投票)の各候補得票数がわかったとして、テレグラフのサイトのブログにエントリを立てたそうです。

テレグラフ社ではそれが公職選挙法に抵触しているとの指摘を受けて直ちに削除したが、労働党が警察に申し立てをして警察が捜査を開始。テレグラフでは「保守党の選挙陣営内部からの情報」としてブログに書いていたとのこと。保守党では「Southallの選対本部には、テレグラフにそのような情報を開示した者も、テレグラフと話をした者もいない」としている。

うーむ。テレグラフのでっち上げだとでも? あるいは労働党が放った間諜がテレグラフにタレこんだガセねた? それともただのいたずら? 

何か、来年のロンドン市長選挙が現職のケン・リヴィングストンと保守党のボリス・ジョンソンの闘いになりそうで、すでに舌戦は始まっている気配なんですが(どっちも良かれ悪しかれ「言葉の人」)、この2人の戦いなんて絶対にお笑い化するに決まっているので(British sense of humourのため)今からハライテェ上にアタマイテェな空気が濃厚なのですが、おそらく、Southallの補選はその前哨戦としての位置づけもされているし、前哨戦でこんだけどろどろとしたダーティ・トリックがあるということは、来年は泥仕合ですわよ。

Boris Johnson standing for mayor
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/6900326.stm

Boris Johnson enters London mayoral race
http://politics.guardian.co.uk/gla/story/0,,2127424,00.html

The wit and wisdom of Boris Johnson (つまり、失言大魔王)
http://politics.guardian.co.uk/gla/story/0,,2127579,00.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/6901161.stm

ボリス・ジョンソンの著書(小説):
http://nofrills.seesaa.net/article/35011793.html
世界同時中継!朝まで生テロリスト?世界同時中継!朝まで生テロリスト?
ボリス ジョンソン Boris Johnson 高月 園子


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SouthallではなくHounslowですが、Asianのティーンエイジャーが主人公の一人称小説。
0007231768Londonstani (Harper Perennial)
Gautam Malkani
HarperPerennial 2007-04-02

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実際には進学校に通ったいいとこの子なのに、「ゲットーに住んでる不良(と書いて『ワル』と読む)」であることにしていて(Ali Gかよ)、自分のおハイソ系の英語はイケてねェと思っているので、ゲットー風の言葉遣いをしています。それで一人称小説ですから、読むのが大変。話は青春小説という感じ。

Bend it Like Beckhamも一応。Southallのシーク教徒のコミュニティの話なので。
B0000AXM2Jベッカムに恋して
パーミンダ・ナーグラ キーラ・ナイトレイ ジョナサン・リース・マイヤーズ
パンド 2003-10-03

by G-Tools

この映画は「多文化共存っていいな!」という国策宣伝映画。だから主役の2人の女の子以外は「類型」として描かれているだけであっても、単に楽しめばいい。「深みがない」とか「プロットがぐだぐだ」とか文句を言うのは邪道(<私だ)。

※この記事は

2007年07月19日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 14:40 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
選挙の結果が出たぴょん。SedgefieldもSouthallもLabour→Labourだぴょん。キャメロンは全然ダメぴょん。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/6907049.stm

Labour has held on to its parliamentary seats in Sedgefield and Ealing Southall following by-elections - but its winning margin has fallen in both.

The party took Sedgefield, Tony Blair's old constituency, by 6,956 votes - down from 18,449 at the general election.

In Ealing Southall, its majority fell from 11,440 to 5,070.

The Liberal Democrats were runners-up in both seats - overtaking the Tories in Sedgefield - after keenly fought contests for second place.

...

In Sedgefield, Labour took 12,528 votes, the Lib Dems 5,572 and the Conservatives 4,082. Turnout was 41.57% - down 20.65 points from 2005.

Liberal Democrat leader Sir Menzies Campbell said of the result: "It is a blow to [Prime Minister Gordon] Brown and a disaster for David Cameron.

"The Conservatives have been pushed into a poor third place and proved once again that they are entirely marginalised in the North of England."

...

(In Ealing Southall) Thursday's by-election saw Labour take 15,188 votes, the Lib Dems 10,118 and the Conservatives 8,230. Turnout was 42.95% - down 13.23 points on 2005.

...

Conservative candidate Tony Lit said: "A race that's always been a one-horse race is no longer a one-horse race."

Tony Litさんの言ってることがわからないぴょん。誰か教えてほしいぴょん。

# 東京、今日は蒸し暑い。。。
Posted by nofrills at 2007年07月20日 12:57

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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