
話は少しさかのぼる。もう1年ほど前のことだが、ある新作映画をめぐり、私が観測するネット上の英語圏で一斉にお茶ふき大会となったことがある。当時の報道のヘッドラインを並べてみよう。
The film where Pierce Brosnan plays a Gerry Adams type figure is coming to Netflix - here's what the critics made of it
https://www.dailyedge.ie/pierce-brosnan-gerry-adams-netflix-3712273-Nov2017/
Pierce Brosnan as Gerry Adams: the movie you need to see now
https://www.irishtimes.com/culture/film/pierce-brosnan-as-gerry-adams-the-movie-you-need-to-see-now-1.3327490
(・_・)
(この時点で「人名わかんないよ」って方は、まずはこっちからどうぞ)
この映画のポスターやトレイラーが公表されたのはさらにその数ヶ月前、2017年夏のことで、そのときにも私が観測するネット上の英語圏では一斉お茶ふき大会が起きていた。
Pierce Brosnan as an ex-IRA government official in The Foreigner film poster looks even more like Gerry Adams than Gerry Adams
https://www.independent.ie/entertainment/movies/movie-news/pierce-brosnan-as-an-exira-government-official-in-the-foreigner-film-poster-looks-even-more-like-gerry-adams-than-gerry-adams-35857696.html
その時代(2017年)を生きていないと、単に「役者ってすごいな」という話になってしまうかもしれないが、2017年夏といえば、3月にマーティン・マクギネスがこの世を去り、11月にジェリー・アダムズが党首の座を退くまでの間に位置しており、何というか、手を血で染めまくった世代のIRA/シン・フェイン指導部が退いて(「IRA/シン・フェイン」という表記には問題があるが、ここでは便宜的に使用する)、同年年頭にマクギネスが退いたあとシン・フェインの北アイルランドのリーダーを引き継いだミシェル・オニールのような「紛争を知らない子供たち」の世代、手に血がついていない世代が、「アイルランド全島規模の政党であるシン・フェイン」を率いてアイルランド政治に深くかかわっていこうとするようになるまでの間の時期だ。
2017年夏には、ジェリー・アダムズの声を日常のニュースで聞かなくなる日々なんて、想像できなかった。同年11月の党首引退から1年経過した現在、それは何の違和感もない日常の一部になっている。むしろ、たま〜にアイルランドの議会関連のニュースなどで久しぶりに声を聞くと、ぎくっとなってしまう。時間が経過するということは、そういうことだ。接点がなくなって、日常の中では忘れていても、きっかけさえあれば、リアルタイムの流れとは別に自分の中に流れている「記憶の流れ」が、再度表面に出てくる。あの声を聞くと、グッドフライデー合意 (GFA) 後にIRAの武装解除をめぐってもめていた2000年のニュース(私がロンドンにいて直接TVで見ていたニュース)を思い出す。そのころはまだ、Real IRAがロンドンで活動していたし(彼らの最後の実行された爆弾攻撃は2001年8月のイーリングのパブ爆破だった)、Real IRAはIRA(Provisional IRA)とは別の団体ではあるが、GFAからまだ2年で、「北アイルランド紛争は本当に終わったのか」という疑念が支配的だった。その不安。
ともあれ、「アダムズの声をニュースで聞かない日常」について想像しようとしても想像できないという段階にあった2017年夏、ジェリー・アダムズという人物が既に「歴史化」されていく過程にあるということを見せ付けたのが、この「有名な映画スターが、アダムズの容姿をコピーしている」という現実だった。
この映画でのピアース・ブロスナンの容姿は、実は既に2016年初めには公開されていて、そのときはお茶ふくのを忘れてみな騒いでいるという感じだった。そのときのことは、当ブログに書いてある。私の印象は下記:
この「目」。白髪になったあとのアダムズはあまり見せなくなってるけど、IRAの武装解除をめぐって「ピース・プロセス」が難航してたころはこの「目」だった。ロンドンでテレビニュース見て「うはぁ」と思ったのを覚えている。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) January 15, 2016
アダムズ自身は喜んでいた。浮かれてた。きゃぴきゃぴしてた。
I never knew Pierce Brosnan was so good looking.
— Gerry Adams (@GerryAdamsSF) January 14, 2016
Hollywood star Pierce Brosnan gives exclusive interview to @An_Phoblacht ;) @GerryAdamsSF #gerryadams #PierceBrosnan pic.twitter.com/knE559bJbG
— An Phoblacht (@An_Phoblacht) January 14, 2016
アダムズ本人も、映画のスチール写真が出回るようになって初めて、ブロスナンが「ジェリー・アダムズに激似のIRA系大物」を演じているということを知ったそうで、そのことは2017年夏にトレイラーやポスターが出たときのアイリッシュ・インディの記事に引用されている。アダムズ的にはこういう「秘密主義」もツボったに違いない。
[Gerry Adams] told the Argus that he he knew nothing about the film until the photos started circulating on social media.
"It's a bit of craic, a bit of fun, that's all and I'm getting a lot of slagging about it," he said at the time. And he must be getting even more flack in recent weeks as the first official poster (above) has been doing the rounds.
In it, Navan actor Brosnan (64) looks even MORE like Adams.
However, Adams denies ever having been a member of the IRA so any similarities are purely visual.
https://www.independent.ie/entertainment/movies/movie-news/pierce-brosnan-as-an-exira-government-official-in-the-foreigner-film-poster-looks-even-more-like-gerry-adams-than-gerry-adams-35857696.html
※最後の1文は真顔で読むべき。
ともあれ、前置きがとても長くなったが、このNetflix映画が、2019年のゴールデンウィークに日本で劇場公開されることになったという。
【朗報】ピアース・ブロスナンのジェリー・アダムズっぷりが日本でもスクリーンで堪能できることに。 https://t.co/DtqgPoYUbt ジャッキー・チェンが娘をテロで奪われ復讐の鬼と化す映画「The Foreigner」日本公開決定 - GIGAZINE
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 22, 2018
この映画、小説が原作である。
ジャッキー・チェンとピアース・ブロスナンの映画The Foreignerは、この小説→ https://t.co/lhfMjm2cJx のゆる〜い映画化(小説と映画とではかなり違っているが、大筋は同じ)。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 22, 2018
というわけで、この小説、スティーヴン・レザーの『チャイナマン』についてツイートしたときの一連の「北アイルランド本紹介ツイート」を、ここにまとめておこうと思う(ほんとはもっと早くにまとめてブログにアップしておくつもりだったのだが、いろいろあって遅くなった)。映画『ザ・フォリナー』公開を前に、「北アイルランド紛争について知っておきたい」という方にも役立てていただけるのではないかと思う。
#ふぁぼされた数だけ本棚の本を紹介する
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 3, 2018
北アイルランド系(上限あり)。
今週後半をめどに。 pic.twitter.com/ZtRNXnltqR
5件ふぁぼいただきました。ありがとうございます。下記キャプチャ画像(拙ブログ https://t.co/V5JkSEp1Hk より)にない本を、床置き平重ね本棚(aka 積読)を含めた本棚から。 pic.twitter.com/Dsfv0VeKji
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
当初の画像にあるEyewitness Bloody Sundayは、拙ブログ https://t.co/V5JkSEp1Hk サイドバーにある映画Bloody Sundayの紹介 https://t.co/NfWmFGiedL で言及しているので、今回は省きます。 pic.twitter.com/5c93hx89Cc
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
基本文献として、ここでは外してある本(既にどこかで説明などしている本)
【以下で紹介する本のリスト】
■01. ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』
■02. Alistair Little with Ruth Scott, Give a Boy a Gun
■03. Ardoyne Commemoration Project, Ardoyne: The Untold Truth
■04. 岡村昭彦『シャッター以前』、『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』
■05. Ed Moloney, Voices from the Grave: Two Men's War in Ireland
■06. Bill Rolston, Children of the Revolution
■番外(本ではないもの)
■07. David McKittrick and David McVea, Making Sense of the Troubles
■08. Brian Rowan, Unfinished Peace
■09. シェイマス・ディーン『闇の中で』
■10. スティーヴン・レザー『チャイナマン』
■11. ジョン・クリード『シリウス・ファイル』
■12. マーティン・マガートランド『IRA潜入逆スパイの告白』
■13. トム・ブラッドビー『哀しみの密告者』
■14. Gary Mitchell, As the Beast Sleeps
■15. 堀越智『アイルランドの反乱: 白いニグロは叫ぶ』
■16. Peter Taylor, Talking to Terrorists
■17. Jonathan Powell, Terrorists at the Table: Why Negotiating Is the Only Way to Peace
■01. ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』
1. ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
フィクション。あらすじは140字では無理なのでリンク先へどうぞ。 https://t.co/SL4BAbUnNv 私は大昔に古書で購入。80年代に映画化されてて、神父がボブ・ホスキンス、ファロンがミッキー・ロークで画像2枚目のようなやり取りがあるのですよ。ザ・見応え pic.twitter.com/dZchAi0xg5
『死にゆく者への祈り』の映画版は、長らくソフトがなかったのですが、数年前に英語圏でDVDが出て、今年1月には日本でもブルーレイが出ました(ニューマスター版)。 https://t.co/fACB2ZKL50 私が持っているのは欧州版DVD。なお、ファロンの人物像など「クリシェ」として批判もあります。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■02. Alistair Little with Ruth Scott, Give a Boy a Gun
2. Alistair Little with Ruth Scott, Give Boy a Gun
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
UVFメンバーとして17歳で人を殺したアリスターが生きた北アイルランド紛争。Forewordは現在のヨルダン国王の叔父で先王の弟、人道・平和分野で活動するハッサン・ビン・タラル王子が書いている。 https://t.co/rEZBnNx9DZ pic.twitter.com/LipmHnRUVT
アリスター・リトル氏はUVFを離れたあと、ハッサン・ビン・タラル王子らが進めている平和活動(「平和のための戦闘員」という元テロリストの団体)に加わった。彼については拙ブログも参照: https://t.co/UQXyIcDcoP (2009年4月投稿)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
この拙ブログ記事で言及している映画Five Minutes of Heavenはアリスター・リトル氏の体験に基づいて作られたフィクション映画。『レクイエム』の邦題で日本語版DVDが出ている。https://t.co/2iaRN9If4w 『死にゆく者への祈り』でIRA上官を演じていたリーアム・ニーソンが元UVFのアリスターを演じる。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■03. Ardoyne Commemoration Project, Ardoyne: The Untold Truth
3. Ardoyne: The Untold Truth
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
ベルファストの北部にあるナショナリストの地域、アードイン地区。毎年、7月12日に「オレンジオーダーのパレードが無事通過」するとニュースに出てくる地名。この地区で紛争中に落命した人たちひとりひとりの生きた記録。分野的には「郷土史」だろうか。 pic.twitter.com/CP9RSfX0ZB
紛争の死者たちは「○人が死亡した」というように語って済まされる単なる数字ではない。ひとりひとりに名前があり、顔があり、家族も友人もあり、過去も未来もある存在だった。死者のリストでkilled by...と記されているのは非戦闘員、killed on active serviceとあるのは武装活動中の武装組織メンバー
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■04. 岡村昭彦『シャッター以前』、『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』
4. 岡村昭彦の写真、『シャッター以前』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
1960年代、ベトナム戦争、ビアフラ紛争、NIなどを撮影し、それについて伝えたフォトジャーナリスト岡村昭彦。2014年東京都写真美術館で開催された写真展の図録(画像2)と、「岡村昭彦発見の会」の機関誌(画像3)。※ここでの写真は少し不鮮明になるよう加工済 pic.twitter.com/HMxeFl7xtC
岡村昭彦については写真展のあとでブログを書いた(未完) https://t.co/tKMiPyJVdx
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
「アイルランドにはすべてがある」とは、最終的にアイルランドに移り住んだ岡村の言葉。抑圧され弾圧されたアイルランド人、ベトナム戦争を始めたアイルランド人(アイリッシュ・アメリカンのJFK)……
岡村昭彦の写真展図録はISBNついてるので一般でも買えます。 https://t.co/k04zgW3saX
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
機関誌の「シャッター以前」も岡村の言葉で、「写真家はカメラを構えてシャッターを切る前にたくさんの調べものをする」という意味。展覧会にはそういった調べものの資料もたくさん展示されていました。
■05. Ed Moloney, Voices from the Grave: Two Men's War in Ireland
※ここで番号がずれてしまっていて、本当は5冊目なんだけど、4冊目としてツイートしている。細かいことは気にしない。
4. Ed Moloney, Voices from the Grave: Two Men's War in Ireland
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
米ボストン・カレッジ(カトリック系の大学)のオーラル・ヒストリー・プロジェクトとして進められていた紛争当事者の聞き取り。当人が死んだら公開という条件で、 IRAのブレンダン・ヒューズとUVFのデイヴィッド・アーアヴァインの… pic.twitter.com/QKkhOrZmAm
※タイポあり。×「アーアヴァイン」、○「アーヴァイン」
…語り残したことが1冊の本にまとめられている。ひとりの当事者から見た紛争の構造が生々しい。2人とも武装活動で有罪になった武装組織メンバー(テロリスト)で、ロングケッシュ(メイズ)刑務所の中のことも語っている。なおこのプロジェクトはその後北アイルランド警察によってうわ何をするやめろ…
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■06. Bill Rolston, Children of the Revolution
5. Bill Rolston, Children of the Revolution
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
紛争当事者の子供たちが、紛争当事者の子供であるとはどういうことかについて語るという形のオーラル・ヒストリー本。バラクラバで「革命」にいそしむ親世代としかめっ面の子供という表紙の写真が雄弁すぎる。著者はアルスター大学社会学教授で著書多数。 pic.twitter.com/j2yFSkh1Ha
この本、デリーのギルドホール・プレスという小さな出版社から出ていて、出版当時はAmazonに卸されていないようで、私は版元から直接買ったのだけど、今はAmazonでも購入できるようになっている。 https://t.co/oCgKZoCHKT 他の本では読めない内容なのでぜひ。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
連投中にさらにlikeをいただきました。ありがとうございます。少し休憩して、このあとにまた続けます。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■番外(本ではないもの)
番外(本棚にあるんだけど、本ではない): Some Mother's Son (VHS)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージ監督(北アイルランドの人。元INLA)が1981年ハンストを題材に制作したフィクション。獄中ハンストに打って出た息子(エイダン・ギレン)の生命を救うため介入するか、…… pic.twitter.com/08O3kTkZE8
……大義に殉じるという息子の意思を尊重するかの選択を迫られる母親(ヘレン・ミレン)と、同じ立場に置かれたもう1人の母親(フィオナ・フラナガン)。ボビー・サンズはジョン・リンチ、他NI俳優大勢。https://t.co/GAQweolR87 この作品も長くVHSだけだったんだけど、今は英語圏ならDVD/BDあるはず。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
※ヘレン・ミレンの「北アイルランド紛争もの」には、『キャル』もあるんだけど、これはソフト持ってない(映画は劇場で見てるはず)。映画パンフは何年か前に古書店で見つけて買いました。
積読技能を磨きすぎて、1冊見当たらない……どこに埋蔵されているのだろう。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
隊長! 発掘に成功しました!
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■07. David McKittrick and David McVea, Making Sense of the Troubles
6. David McKittrick and David McVea, Making Sense of the Troubles:
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
概説書で目次を参照すればわかる通りの内容。私が持ってるのは2000年の版で、AmazonのUKから購入したもの。その後2012年に改訂新版が出てて、それならKindle版もある。https://t.co/Odtl51VPXj (「なか見検索」は旧版) pic.twitter.com/DeXaFNKwCV
■08. Brian Rowan, Unfinished Peace
7. Brian Rowan, Unfinished Peace
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
前掲書旧版は98年和平合意とそれに基づく新体制発足までカバーしていたが、その後の時期をカバーしたジャーナリスティックな本は2016年の本書まで出てなかったのではないか。自身その中で生きている著者が実際にこの時代を生きる人々に取材してまとめたすばらしい本 pic.twitter.com/yQyu6tIXAd
ちなみにタイトルは「未完成の作品 unfinished piece」との掛けことば。この本も小出版社が版元で(ベルファスト)、出た当時はAmazonには入っておらず、私は版元のサイトで注文して買った。今は業者(古書店)がAmazonで売ってる。 https://t.co/RW7vFrhZya ちなみに版元での価格は£9.99です。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
■09. シェイマス・ディーン『闇の中で』
8. シェイマス・ディーン『闇の中で』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
「北アイルランド紛争」と呼ばれる局面(ナショナリストとユニオニストと英当局の三つ巴の紛争)に入る前、1950年代のデリーのボグサイドでの人々の生活。IRAがマイナーな過激派に過ぎなかった時代の話。著者の自伝的小説。https://t.co/MMADuhPgi3 格安で入手可 pic.twitter.com/NLeaysweNK
■10. スティーヴン・レザー『チャイナマン』
9. スティーヴン・レザー『チャイナマン』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
英国のジャーナリストとして北アイルランド紛争の時代を過ごした著者によるぶっとんだアクション超大作。原作の出版は1992年、つまり「紛争」真っ只中。とにかく細部がえぐいんだけど、90年代、IRAとアメリカについてのこういう認識は共有されてたと思う。 pic.twitter.com/xrfQtp3wSw
この作品に緩く基づいた映画がジャッキー・チェンとピアース・ブロスナンで制作され、主にアメリカ方面からものっすごい見当外れのブーイングというか「差別だ」論が巻き起こったことだけで話題になったかも。日本公開されてないよね。私はブロスナンがジェリー・アダムズになってるのを見たいんだけど
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
1992年に出た原作では、ロンドンの中華料理店経営の東洋人(実はベトナム人)がざっくりと「中国人」と認識されていたという設定。それが2010年代のアメリカ人には許せなかったらしくて大騒ぎになってた。映画では原作のその設定は引き継がれていないはず。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
※「東洋人」のことをとりあえず「チャイナマン」と呼ぶという習性があって(日本で白人を見ればとりあえず「アメリカ人」扱いして英語で話しかけるのが当たり前だったのと同様)、批判者たちはそういうのが許せなかったみたい。だから映画化に際して「チャイナマン」は「フォリナー」になってるのだけど……。
すみません、急にエネルギーが切れてしまったので、残りはまた明日。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 9, 2018
昨日の続き。スティーヴン・レザーの『チャイナマン』 https://t.co/xwzN4s85qO は、1992年に出た作品(94年停戦の2年前)だが、IRA内部の武装闘争至上主義者たちとの対立に焦点が当てられている。1998年和平合意後、8月のオマー爆弾事件でReal IRAという存在が前景化されたあとに読んでいるから……
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
……92年当時こういう「IRAにも過激派と穏健派がいる」的なことを言われていたら自分がどう反応したかは想像するよりないが(想像してみても「想像がつかない」としかいえない)、IRAという組織内に常に和平への強い意志があったことが「歴史」として語られるようになった今読んで味わい深いのは事実。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
ジャーナリストってすごいよね、やっぱり。
あと、小説『チャイナマン』で一番凄みのある記述は、冒頭の爆弾テロの現場の凄惨な描写で、作者はこのテロを取材するフリーランスの記者として現場の状況を、報道記事には書けないほどの詳細さで伝えている。どうしても映像にしなければならない映画ではここまではできないんじゃないかなというくらいの凄惨さ。
■11. ジョン・クリード『シリウス・ファイル』
10. ジョン・クリード『シリウス・ファイル』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
『チャイナマン』の10年後、2002年に出たThe Sirius Crossingという小説の邦訳。奥付に「平成16年」とあるが西暦に計算するのめんどい。私は古書で入手。北アイルランド紛争での英当局の関与の中で最も深い闇といえる機関を題材にした娯楽小説。 pic.twitter.com/rchexHPfrh
背表紙に印刷されている「あらすじ」が、ストーリーを知る上でほとんど何の役にも立たないと思ったので、店頭で文庫本を手に取る人の多くがレジに持ってくかどうかを判断するために目を通す「訳者あとがき」の一部で代用。なおこの「あとがき」で「IRAによる独立運動」などとなってるのがトホホである
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
北アイルランド紛争においてのIRA(つまりProvisional IRA)が戦ったのは「北アイルランドの独立闘争」ではないということは、過去に何度も書いているのでそちらを参照されたい。例えば https://t.co/M9GjyclOA0 (←おすすめ)とか https://t.co/diKmrVbgin (←長いのがやな人はこれ)とか。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
ジョン・クリード『シリウス・ファイル』は現在中古のみで入手可能。Amazonでは格安で出てます。 https://t.co/MjuPWeZELY この本はどこがおもしろいのか、ネタバレせずには説明できないので、読んでみてください。いわゆる「冒険小説」の筆致が苦手ならそういうところは読み飛ばせばOK。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
■12. マーティン・マガートランド『IRA潜入逆スパイの告白』
11. マーティン・マガートランド『IRA潜入逆スパイの告白』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
著者はベルファストの人で、若いころからIRAに関わっていたが、いろいろあって英当局に情報を流すことに……英国が北アイルランドでやってた「汚い戦争」の中にいた人の体験談(ノンフィクション)。https://t.co/vjoRoHyy83 中古のみ入手可 pic.twitter.com/1qRKFaXBrv
邦題の「逆スパイ」の「逆」は意味不明。著者は最終的に英当局によって「トカゲの尻尾」扱いされ、約束されていた待遇を受けることもできず、法廷に出ている。 https://t.co/yP2CCUiEkW テリーザ・メイ現首相が内務大臣だったときのこと。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
マガートランドの手記は映画化されたが、 https://t.co/30KGfUxUdy マガートランド本人は、一番重要な部分(なぜ彼はスパイになったのか)が改変されているとして激怒している。映画は日本ではビデオスルーというかDVDあり。 https://t.co/kXUD5hsBui ※私は未見
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
次行く前に休憩。というかまた発掘作業に取り掛からねば……先週見た本が見当たらない。(その本を置いてあるはずのところにあったのは、サイードの『パレスチナとは何か』だった。これも先週中を見たかもしれない。いろいろと時空が歪んでいるのだろう。)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 10, 2018
続き。結局探し物は見つからないのでそれよりぼくと踊ってみたりしようかと思ったが、そうじゃなくて写真なしで進めればいいんだ。あったまいいなー、おまえ!となった。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
■13. トム・ブラッドビー『哀しみの密告者』
12. トム・ブラッドビー『哀しみの密告者』https://t.co/l9segewcaf 古書で入手した文庫本。映画『シャドー・ダンサー』のベースとなった小説で、映画の脚本も小説を書いた人が手がけているが、小説版と映画版とでは結末を含めいろいろとかなり違う。映画予告編: https://t.co/rkdWP0RQ9Q
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
著者・脚本家のトム・ブラッドビーは今も現役のジャーナリスト。1967年生まれなので80年代のことは年齢的にジャーナリストとしては接していない。小説が出たのは1998年。 https://t.co/FxDqisylFK (『チャイナマン』などのスティーヴン・レザーも元々ジャーナリストだったが)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
https://t.co/qyievUgjHh 映画『シャドー・ダンサー』についてはブログに書いた。小説にも少しだけ言及している。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
■14. Gary Mitchell, As the Beast Sleeps
13. Gary Mitchell, As the Beast Sleepshttps://t.co/Pw7ucximLu 戯曲。BBCでドラマ化されたものが、2008年に東京で開催された北アイルランド映画祭で上映された。ネタバレしまくりの拙ブログ: https://t.co/glUuyA5o9x この映画(ドラマ)は一度見たら忘れられない。 pic.twitter.com/nDYiVPw75F
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
確か13favいただいていたと思うのですが、今見たら13じゃなくて17になっていたので、もう少し続けます。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
■15. 堀越智『アイルランドの反乱: 白いニグロは叫ぶ』
14. 堀越智『アイルランドの反乱: 白いニグロは叫ぶ』
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
以前もTwしたことがあるけど、昭和45年、つまり1970年の本。古書店で見つけて入手。1970年ということはブラッディ・サンデーの1年半以上前。というか「紛争」の状態に突入したのが1968年10月、泥沼化が始まったのが69年8月なので、非常に早い。 pic.twitter.com/dt75mUSH7A
著者の堀越智さんは、1996年に『北アイルランド紛争の歴史』 https://t.co/c1H0OGulky を出しておられて、こちらは日本語で読めるNI紛争に関する本としては基本文献かと(今回の「本棚の本」企画では、既に紹介してある基本文献として外してある一冊です)。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
■16. Peter Taylor, Talking to Terrorists
15. Peter Taylor, Talking to Terrorists
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
2001年9月11日まで、英国で「テロ」といえばリパブリカンだった(現に2001年はロンドンでReal IRAが爆弾テロを実行してた)。その「時代の境目」を、70年代から北アイルランド紛争を取材してきたイングランドのジャーナリストの体験&調べもの&取材で綴る。 pic.twitter.com/8ZCMnPGoPY
この本の目玉は第1章で明かされる「IRAと英国政府の橋渡し役」のこと。「山登り」というコードネームで数十年ずっとパイプ役をつとめてきた人物はデリーで信頼あついビジネスマン、ブレンダン・ダディさんだった。拙ブログに書いたはず。ブログ内検索してみてください。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 11, 2018
See:
2012年06月03日 ロンドン五輪の聖火が北アイルランドに入った(そして、ランナーの中にこの「和平」を実現させた人の名前が!)
http://nofrills.seesaa.net/article/273302652.html
2017年05月21日 【訃報】ブレンダン・ダディ(表に出ないところで和平のために尽力した北アイルランドのビジネスマン)
http://nofrills.seesaa.net/article/brendan-duddy-secret-peacemaker-in-derry.html
書籍タイトルのTalking to Terroristsということでは、2018年の今読むなら、ピーター・テイラーのこの本のあとにNI和平の英国政府側アーキテクトであるジョナサン・パウエルが書いた本のほうがよいのではないかとも。パウエル本は私は電子書籍で所持しているので「本棚」の本じゃないけど、次にて。
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■17. Jonathan Powell, Terrorists at the Table: Why Negotiating Is the Only Way to Peace
16. Jonathan Powell, Terrorists at the Table: Why Negotiating Is the Only Way to Peacehttps://t.co/vY2emYZajz 著者はトニー・ブレアの補佐として1998年和平合意(GFA)に関わった人物で、現在は紛争と和平に関するNGOをやってる。
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この本は「テロリストとの交渉」について、北アイルランド、南ア、中東(オスロ合意)、バスク、コロンビアなどでの実例を参照し、現場の人たちがどう行動したかを詳しく述べている。このメンツの中では北アイルランドは「コミックリリーフ」的になってしまうのが何とも……いや、単に変な人なのか。 pic.twitter.com/5eVNZ70hfd
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おわりに
(12日早朝、投稿失敗分を、12日午後に投稿します)
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) September 12, 2018
……とまあ、こんな具合。まだ行方不明の本があるので、出てきたら再開します。バーコードついてない時代の単行本で、サッチャー首相が誘拐されるスリラー小説とかあるんだけど、(棚・積読ではなく)箱の中に入ってるっぽい。 pic.twitter.com/oFkfBlpcau
あと、自分で持ってない80年代の翻訳スリラーで、IRAが競走馬を誘拐するという明らかに実話を参考にしたプロットが含まれる小説も図書館で読んだ。今思いつく検索ワードで検索したら、「1986年の英国ミステリー」という個人サイトが見つかってタイトル判明。 https://t.co/KXn9mofiOt ←探してみてね♡
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See also:
the Northern Ireland Troubles FAQ
http://nofrills-nifaq.seesaa.net/
(北アイルランド紛争について、FAQ形式で、基本的なこと)
※この記事は
2018年11月27日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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