「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2018年11月27日

ジャッキー・チェンとピアース・ブロスナンの「北アイルランド紛争もの」映画の劇場公開決定とのことで、本棚の本を紹介したときのログをまとめてアップする

2019年GWの公開が決まった映画について、「北アイルランド紛争(北アイルランド問題)について知ってないと難しいかも……」という感想がちょこちょこあるようだが、うちの本棚の中身の一部のリストは、少しはお役に立てるだろうか(→本エントリについて、「前置きは不要」という方向けのショートカット)。

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話は少しさかのぼる。もう1年ほど前のことだが、ある新作映画をめぐり、私が観測するネット上の英語圏で一斉にお茶ふき大会となったことがある。当時の報道のヘッドラインを並べてみよう。

The film where Pierce Brosnan plays a Gerry Adams type figure is coming to Netflix - here's what the critics made of it
https://www.dailyedge.ie/pierce-brosnan-gerry-adams-netflix-3712273-Nov2017/

Pierce Brosnan as Gerry Adams: the movie you need to see now
https://www.irishtimes.com/culture/film/pierce-brosnan-as-gerry-adams-the-movie-you-need-to-see-now-1.3327490

(・_・)

(この時点で「人名わかんないよ」って方は、まずはこっちからどうぞ

この映画のポスターやトレイラーが公表されたのはさらにその数ヶ月前、2017年夏のことで、そのときにも私が観測するネット上の英語圏では一斉お茶ふき大会が起きていた。



Pierce Brosnan as an ex-IRA government official in The Foreigner film poster looks even more like Gerry Adams than Gerry Adams
https://www.independent.ie/entertainment/movies/movie-news/pierce-brosnan-as-an-exira-government-official-in-the-foreigner-film-poster-looks-even-more-like-gerry-adams-than-gerry-adams-35857696.html

その時代(2017年)を生きていないと、単に「役者ってすごいな」という話になってしまうかもしれないが、2017年夏といえば、3月にマーティン・マクギネスがこの世を去り、11月にジェリー・アダムズが党首の座を退くまでの間に位置しており、何というか、手を血で染めまくった世代のIRA/シン・フェイン指導部が退いて(「IRA/シン・フェイン」という表記には問題があるが、ここでは便宜的に使用する)、同年年頭にマクギネスが退いたあとシン・フェインの北アイルランドのリーダーを引き継いだミシェル・オニールのような「紛争を知らない子供たち」の世代、手に血がついていない世代が、「アイルランド全島規模の政党であるシン・フェイン」を率いてアイルランド政治に深くかかわっていこうとするようになるまでの間の時期だ。

2017年夏には、ジェリー・アダムズの声を日常のニュースで聞かなくなる日々なんて、想像できなかった。同年11月の党首引退から1年経過した現在、それは何の違和感もない日常の一部になっている。むしろ、たま〜にアイルランドの議会関連のニュースなどで久しぶりに声を聞くと、ぎくっとなってしまう。時間が経過するということは、そういうことだ。接点がなくなって、日常の中では忘れていても、きっかけさえあれば、リアルタイムの流れとは別に自分の中に流れている「記憶の流れ」が、再度表面に出てくる。あの声を聞くと、グッドフライデー合意 (GFA) 後にIRAの武装解除をめぐってもめていた2000年のニュース(私がロンドンにいて直接TVで見ていたニュース)を思い出す。そのころはまだ、Real IRAがロンドンで活動していたし(彼らの最後の実行された爆弾攻撃は2001年8月のイーリングのパブ爆破だった)、Real IRAはIRA(Provisional IRA)とは別の団体ではあるが、GFAからまだ2年で、「北アイルランド紛争は本当に終わったのか」という疑念が支配的だった。その不安。

ともあれ、「アダムズの声をニュースで聞かない日常」について想像しようとしても想像できないという段階にあった2017年夏、ジェリー・アダムズという人物が既に「歴史化」されていく過程にあるということを見せ付けたのが、この「有名な映画スターが、アダムズの容姿をコピーしている」という現実だった。

この映画でのピアース・ブロスナンの容姿は、実は既に2016年初めには公開されていて、そのときはお茶ふくのを忘れてみな騒いでいるという感じだった。そのときのことは、当ブログに書いてある。私の印象は下記:



アダムズ自身は喜んでいた。浮かれてた。きゃぴきゃぴしてた。



アダムズ本人も、映画のスチール写真が出回るようになって初めて、ブロスナンが「ジェリー・アダムズに激似のIRA系大物」を演じているということを知ったそうで、そのことは2017年夏にトレイラーやポスターが出たときのアイリッシュ・インディの記事に引用されている。アダムズ的にはこういう「秘密主義」もツボったに違いない。
[Gerry Adams] told the Argus that he he knew nothing about the film until the photos started circulating on social media.

"It's a bit of craic, a bit of fun, that's all and I'm getting a lot of slagging about it," he said at the time. And he must be getting even more flack in recent weeks as the first official poster (above) has been doing the rounds.

In it, Navan actor Brosnan (64) looks even MORE like Adams.

However, Adams denies ever having been a member of the IRA so any similarities are purely visual.

https://www.independent.ie/entertainment/movies/movie-news/pierce-brosnan-as-an-exira-government-official-in-the-foreigner-film-poster-looks-even-more-like-gerry-adams-than-gerry-adams-35857696.html
※最後の1文は真顔で読むべき。


ともあれ、前置きがとても長くなったが、このNetflix映画が、2019年のゴールデンウィークに日本で劇場公開されることになったという。


この映画、小説が原作である。


というわけで、この小説、スティーヴン・レザーの『チャイナマン』についてツイートしたときの一連の「北アイルランド本紹介ツイート」を、ここにまとめておこうと思う(ほんとはもっと早くにまとめてブログにアップしておくつもりだったのだが、いろいろあって遅くなった)。映画『ザ・フォリナー』公開を前に、「北アイルランド紛争について知っておきたい」という方にも役立てていただけるのではないかと思う。





基本文献として、ここでは外してある本(既にどこかで説明などしている本)



【以下で紹介する本のリスト】
■01. ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』
■02. Alistair Little with Ruth Scott, Give a Boy a Gun
■03. Ardoyne Commemoration Project, Ardoyne: The Untold Truth
■04. 岡村昭彦『シャッター以前』、『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』
■05. Ed Moloney, Voices from the Grave: Two Men's War in Ireland
■06. Bill Rolston, Children of the Revolution
■番外(本ではないもの)
■07. David McKittrick and David McVea, Making Sense of the Troubles
■08. Brian Rowan, Unfinished Peace
■09. シェイマス・ディーン『闇の中で』
■10. スティーヴン・レザー『チャイナマン』
■11. ジョン・クリード『シリウス・ファイル』
■12. マーティン・マガートランド『IRA潜入逆スパイの告白』
■13. トム・ブラッドビー『哀しみの密告者』
■14. Gary Mitchell, As the Beast Sleeps
■15. 堀越智『アイルランドの反乱: 白いニグロは叫ぶ』
■16. Peter Taylor, Talking to Terrorists
■17. Jonathan Powell, Terrorists at the Table: Why Negotiating Is the Only Way to Peace


01. ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』







02. Alistair Little with Ruth Scott, Give a Boy a Gun






03. Ardoyne Commemoration Project, Ardoyne: The Untold Truth





04. 岡村昭彦『シャッター以前』、『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』






05. Ed Moloney, Voices from the Grave: Two Men's War in Ireland

※ここで番号がずれてしまっていて、本当は5冊目なんだけど、4冊目としてツイートしている。細かいことは気にしない。

※タイポあり。×「アーアヴァイン」、○「アーヴァイン」



06. Bill Rolston, Children of the Revolution






番外(本ではないもの)



※ヘレン・ミレンの「北アイルランド紛争もの」には、『キャル』もあるんだけど、これはソフト持ってない(映画は劇場で見てるはず)。映画パンフは何年か前に古書店で見つけて買いました。






07. David McKittrick and David McVea, Making Sense of the Troubles




08. Brian Rowan, Unfinished Peace





09. シェイマス・ディーン『闇の中で』




10. スティーヴン・レザー『チャイナマン』




※「東洋人」のことをとりあえず「チャイナマン」と呼ぶという習性があって(日本で白人を見ればとりあえず「アメリカ人」扱いして英語で話しかけるのが当たり前だったのと同様)、批判者たちはそういうのが許せなかったみたい。だから映画化に際して「チャイナマン」は「フォリナー」になってるのだけど……。



ジャーナリストってすごいよね、やっぱり。

あと、小説『チャイナマン』で一番凄みのある記述は、冒頭の爆弾テロの現場の凄惨な描写で、作者はこのテロを取材するフリーランスの記者として現場の状況を、報道記事には書けないほどの詳細さで伝えている。どうしても映像にしなければならない映画ではここまではできないんじゃないかなというくらいの凄惨さ。


11. ジョン・クリード『シリウス・ファイル』







12. マーティン・マガートランド『IRA潜入逆スパイの告白』








13. トム・ブラッドビー『哀しみの密告者』







14. Gary Mitchell, As the Beast Sleeps





15. 堀越智『アイルランドの反乱: 白いニグロは叫ぶ』






16. Peter Taylor, Talking to Terrorists



See:
2012年06月03日 ロンドン五輪の聖火が北アイルランドに入った(そして、ランナーの中にこの「和平」を実現させた人の名前が!)
http://nofrills.seesaa.net/article/273302652.html

2017年05月21日 【訃報】ブレンダン・ダディ(表に出ないところで和平のために尽力した北アイルランドのビジネスマン)
http://nofrills.seesaa.net/article/brendan-duddy-secret-peacemaker-in-derry.html




17. Jonathan Powell, Terrorists at the Table: Why Negotiating Is the Only Way to Peace




おわりに



See also:
the Northern Ireland Troubles FAQ
http://nofrills-nifaq.seesaa.net/
(北アイルランド紛争について、FAQ形式で、基本的なこと)

※この記事は

2018年11月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 16:30 | northern ireland/basic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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