「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2017年03月12日

BBC Newsでの微笑ましいハプニング(真顔)についての反応が示した「偏見」

韓国の大統領がついに罷免という大変な事態となり、世界中の注目が韓国に集中したその日、現地の大学(釜山大学)で国際関係論を教えている英国人のケリー教授は、BBC World Newsのコメンテーターとして、ウェブカムを使ってロンドンのスタジオのキャスターのインタビューを受けていた。ケリー教授は朝鮮半島についての専門家である。インタビューが進み、今回の事態が「より広い範囲に」、つまり朝鮮半島全体にどのような影響をもたらすかという深刻な面についての話になったとき、いきなり背後のドアが開き、どん・どん・どん・どんのバスドラ4つ打ちに合わせるように踊りながら、子供が入ってきた(ここで視聴者は、ケリー教授のインタビュー場所が大学の研究室ではなく自宅の書斎であることに気づく……英国ではこれは朝のニュースだったそうだが、韓国と英国は8時間の時差がある)。子供はそのままずんずんと前進して、パパが見詰めているカメラをじっと見詰める。教授も真顔なら、お子さんも真顔である。

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背中を向けているキャスターも真顔であることに疑いの余地はなく、真顔好きとしては、「これはすばらしい真顔博覧会ですね」と感嘆を禁じえないのだが、このあと、事態は急展開を見せる。どっかから「教授、アウト〜」って聞こえてきそうな画面だ。

短い映像だし、言葉などわからなくても見ればわかるので、まだ見ていない方には、ぜひごらんいただきたい。ただしお茶を飲みながらとか歯を磨きながらとかいった「ながら」視聴はおすすめしない。



これについては、「真顔」という観点を軸に、事態発生時にBBCのニューズルームにいたジャーナリストや当事者(キャスター、教授)のツイートとそれへのリプライを、下記に「まとめ」ておいた。

(・_・) 英国式真顔の真髄、あるいは「絶対に笑ってはいけないBBCニュース」
https://matome.naver.jp/odai/2148922169496268301

といっても、わざわざ「まとめ」にしたのは決して、これが「真顔好きにはたまらない」ものだったからだけではない。「真顔好きにはたまらない」からわざわざまとめたのではない。大事なことなので二度言いました。真顔で。 (・_・)

教授が「アウト〜」になり、事態がクライマックス(教授の「すみません」との発言)を迎えるシーン。大慌てで飛び込んできた紺色のボーダーの服の女性が誰であるかをどう認識するかについて、議論になったのである。

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……というわけで「どうしようかな」ってのの答えが本稿なのだが、本文は書かないかもしれない。リンク先の記事を各自お読みいただきたい。

Twitterでもう少し深いところまで行くと、「慌てふためいた女性」を見て「クビになることを恐れているお手伝いさん」だと即断している人などがいて、どうして、なかなか根が深い。

フランスの「風刺」雑誌シャルリ・エブドをめぐる論争のときにも明らかにされたが、うちら「黄色い人々」に対する人種・民族的偏見や決めつけが「白人」の世界で「レイシズム(人種主義、人種差別)」と認識されることは、「黒い人々」や「茶色い人々」、「ユダヤ教徒」に対する偏見・決め付けの場合と比べて、とても少ない。おそらくそれゆえに、特に米国から伝えられることが多いのだが、「黄色い人々」が時として過敏にすぎるのではないかと思われるような反応を示すことがある(先日のヴォーグの件など……前もああいうことがあったときに書いたことがあるが、あれがダメなら、日本人が金髪のカツラをかぶり、フランス人やロシア人に扮する舞台などはどうなるのだろう。あるいは、私が子供のころにそこらへんにあふれていた「外国の金髪の少女を主人公にした少女マンガ」などは。というか、そもそもうちらが「洋服」を着ていることは、どうなのだろう)。「見えないことにされている差別や偏見を、見える存在にしていかねばならない」ということと、「文化の収奪をそれとして指摘しなければならない」ということだが、BBC Newsでの微笑ましいハプニングに対する「知らず知らずに差別・決めつけをしている人々」による反応は、それが必要だということを私に思い知らせた。(それでも、日本に来た人が「異文化体験」として着物を着たり浴衣を着たりすること、それをファッション雑誌がかっこよくグラビアにすることが「文化収奪」だとは、私は思わないけどね。イスラエルが、中東で広く食べられているフムスを「イスラエル発祥のイスラエル料理」と呼ぶのが「文化収奪」だ。)

と同時に、何も明示的な情報がないのに(私は韓国語はわからないから、子供の言葉も聞き取れていない)入ってきた人を「教授の配偶者で、子供たちの母親」とすぐに判断したことについても、何らかの「決め付け」なのではないか、と。

なお、上で参照したWaPoの記事フィードは、子供たちのお母さんを「お手伝いさん」呼ばわりしたことのほかにもまだやらかしている。こちらは「偏見」などの難しい話は一切関係なく、単純なファクトを確認すれば避けられたはずの間違いだ。WaPoの「基本的な事実確認が雑すぎることが原因のひどい間違い」には、モハメド・エムワジ(ジハーディ・ジョン)を、彼が育った地域全体のステレオタイプな特徴に基づいて「中産階級」として描き出したことなどがある(実際には、奴の住んでたのは "rough" と言われるような一角で、それは警察の出してる犯罪統計などを見れば素人でもわかることだ)。



※本稿に引用したJames氏、Roland氏ともにBBCのジャーナリスト(James氏は映像の中の「スタジオのニュースキャスター」)。

※ちなみに私個人は、「これ、もしうちだったら、『子供を好きにさせるなとあれほど言っただろう!』と激高した父親が、母親にスリッパや本を投げつけ、首元を押さえつける前に私が間に入ってるな」という感想を抱いた。個人的には、コミカルには思ったし笑いはしたけれど、第一印象は「微笑ましく」なんかなかった。「微笑ましい」というのは、私が見た英語圏の人々の反応である。

※この記事は

2017年03月12日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:59 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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