その「とんでもないこと」が起きたのは、米フロリダ州のオーランドという都市である。といっても私はアメリカについては何も知らないので、その都市についても検索しないと基本情報もわからない。ウィキペディアを参照すると「フロリダ州中央部、オレンジ郡の郡庁所在地であり、全米屈指の観光・保養都市として知られる」、「市近郊にはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、ユニバーサル・オーランド・リゾート、シーワールドなど幾つものテーマパーク・遊園地を有している。またゴルフ場も100ヶ所以上を数える。豪華なリゾートホテルが林立し、郊外には幾つものショッピングセンターやアウトレットモールがある」、「手つかずの自然も多く残り、自然保護区が多数指定されている。デイトナビーチなど近郊の海岸にはビーチリゾートが発展しており、世界中から多くの観光客が訪れる」という。要するに、非常にメジャーな都市だ。
その都市名は、その「とんでもないこと」が起きる前日にすでに、大ニュースになっていた。日本でも東京・小金井のライヴハウス(小金井は東京でも郊外で、あんなところにライヴハウスなんてあるんだ、っていうような場所)で若い女性歌手がストーカーに刺されて瀕死の重傷を負うという事件があったが、フロリダ州オーランドでも、若い女性歌手がライヴハウスで何者かに銃撃されるということが起きた。私はその事件を、TwitterのTrendsにいきなりトップで出てきたハッシュタグ、#PrayForChristinaで知った。
アメリカでも、TVのオーディション番組に出て芸能活動をしている若い女性が、ライヴ後に会場で物販コーナーにいるときに銃撃されるという事件が起きた。銃撃犯は自殺、被害者は危篤。 https://t.co/MvHR5qqw1K #PrayForChristina
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 11, 2016
小金井での事件の被害者の女性歌手は、刺されて意識不明になっていたが、何日もしてから意識を回復したと報じられている(本当によかったと思う)。オーランドで撃たれたクリスティーナ・グリミーにも、彼女と同様に持ちこたえてほしいと願っていた。クリスティーナは、私はまったく見たことも聞いたこともない歌手だが、22歳で、これからがんばっていこうという人だ。スターであるセレーナ・ゴメスのチームの一員として活動したこともあったそうで、セレーナ・ゴメスのファンの間で回復を祈る言葉が行き交っていた。本人のTwitterのアカウントでは、少し前に、スターであるクリスティーナ・アギレラと会ったときのことが楽しげにツイートされていた。芸能界にようやく足がかりを得たところだったのだろう。Twitterでは「彼女が好きで、The Voice(オーディション番組)のあのシーズンを最後まで見てた」という人もいた。クリスティーナ自身の過去のツイートから、「神」に関する言葉を画像にしてRTしている人もいた(彼女は非常にしっかりとした信仰を持っていたようだ)。みなが祈っていた。
しかし、彼女は持ちこたえられなかった。映像を見ると、非常に広い音域のある、強く印象に残る声の持ち主だ。その声でこれから成し遂げようとしていたことがあっただろうに、気の毒でならない。
フロリダ州でライヴ後に銃撃された若い女性歌手、助からなかった。気の毒すぎる。 Former Voice contestant Christina Grimmie shot dead in Orlando https://t.co/Oxdzhhi2MB #RIPChristina
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 11, 2016
Christina Grimmie: 'Unclear' why gunman killed singer https://t.co/DnrW475Gid 銃撃犯は26歳のKevin James Loiblという男で州内在住。被害者を襲うためにわざわざこの街に来ていたらしい。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 12, 2016
被害者の歌手が、ライヴ終了後のミート&グリート(客との直接交流)をしているところに、拳銃を2丁持った男が寄ってきて発砲。一緒にいた被害者の兄(か弟)が銃撃犯を取り押さえ、勇気ある行動に賞賛が集まっている、と記事にある。ライヴは小規模で客は100人ほど、事件時まで残っていたのは数人
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 12, 2016
BBC記事には、ライヴ会場では手荷物チェックはしていたが、ボディチェックはなく金属探知機もなかったとある。ダイムバッグ・ダレルの事件 https://t.co/fT8LmnWovJ のあといろいろ強化されたはずだが、この歌手のこのライヴについては危険性は想定されてなかったのだろう
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 12, 2016
クリスティーナを撃ってから自殺した銃撃犯については、事件当初、「クリスティーナの元カレ」という話がTwitterで飛び交っていたが、結局、それは単なる「うわさ」で、警察では加害者と被害者の間に直接の関係は認められないと述べている。可能性としては思い込みの激しい「ファン」だった、というのはあるが、立証はされていない。
いずれにせよ、加害者は、100人ほどが見に来ていたライヴが終わったあと、歌手本人が物販コーナーで客と交流しつつ、CDやグッズなどを買ってもらうという時間を狙っていたのだろう。それも、歌手本人を確実に撃てるよう、客がはけてしまうまで待っていたのだろう。
何かの強い思いがあって、加害者は歌手を殺したのだ。
Photos from the memorial for Christina Grimmie outside the Plaza Live in Orlando pic.twitter.com/hIvc8GjjwW
— Christal Hayes (@Journo_Christal) June 12, 2016
Sneak peak at tomorrow's @OrlandoSentinel topped with our story on Christina Grimmie's death https://t.co/2L0AI8AScV pic.twitter.com/UJkjbFZoTO
— Christal Hayes (@Journo_Christal) June 12, 2016
Gunman who killed 'The Voice' singer Christina Grimmie traveled to Orlando to shoot her https://t.co/ZWwudNM8D3 pic.twitter.com/wig3FxacGl
— ABC News (@ABC) June 12, 2016
一方、歌手銃撃の翌日に同じオーランドで起きた事件は、無差別的な大量殺人である。
……と、あっさり書いているが、2日連続でOrlandoという地名が「銃撃事件」についてモニター内に流れてきたとき、私は少なからず混乱した。ひょっとして名前が同じだけで別の都市なのではないかと思った。しかし「フロリダ州」に「オーランド」は1つだけだ。
Florida Pulse gay nightclub attacked in #Orlando https://t.co/6qs84xfGJ8 若い女性歌手が撃ち殺されたのと同じ街で、今度はゲイ・クラブ「パルス」が襲われた。銃撃犯は人質を取って立てこもり中。現在進行中。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 12, 2016
このツイート↑を投稿した時点で、最初の銃撃から2時間経ってなかった。なお、私はBBCのフィード(下記)を見て気づいたが、この時点ではアメリカの大手メディアはこの事件をほとんど報じていなかったようだ。「CNNは欧州大陸の話ばかりだ」とか、「ABC NewsもNBC Newsも扱っていないが、BBC Newsが報じてる」とかいうツイートが、私が上記を投稿する前後にどかどかと出ていた。
Florida police confirm multiple injuries from shooting at Orlando's Pulse gay nightclub, warn people to stay away https://t.co/iJhop3TGKy
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) June 12, 2016
フロリダ警察が、オーランドのゲイ・クラブ「パルス」で銃撃があったことにより負傷者が複数出ていることを事実として確定。事件現場のクラブ(のあるエリア)には近づかないよう注意を喚起しているとのBBCのフィード。 https://t.co/q3FHSwcVTM
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) June 12, 2016
ちなみにBBCでの最初のツイートは下記。
A shooting has been reported at nightclub in Florida city of Orlando - attacker is said to have taken hostages https://t.co/iRSlnr5riL
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) June 12, 2016
襲撃されたのが土曜の夜のゲイ・クラブということで、加害者はゲイ嫌悪のキリスト教の宗教保守や極右かもしれないし、イスラミストかもしれないと反射的に思ったが、この時点ではそういう話は報道には一切出ていなかった(個人の「つぶやき」などではあったかもしれない)。まだ「何が起きたのか」、「何が進行中なのか」もはっきりしていないタイミングで、何が「うわさ」で何が「事実」なのかもわかっていなかった。そのときに警察が、当該のクラブで銃撃があったという事実と、大勢が(撃たれた結果)負傷しているという事実を認めたタイミングで、BBCが速報を出した。
その時点でのBBC記事に書かれていたのは、クラブの場所など基本情報と、襲撃されたクラブのFacebookのアカウントの投稿内容程度だった。そのFBの投稿が:
Pulse #Orlando posted this one hour ago/. @Stewartmoore @orlandosentinel @MarthaSugalski pic.twitter.com/rKtMAR9FW9
— James Feeney (@CoasterStorm) June 12, 2016
「みんな、Pulseから出て、とにかく走ってください」
そのFB投稿につけられたリプライで、Pulseの中で起きていると伝えられていることは、信じがたいようなことだった。
Wtf is happening in Orlando pic.twitter.com/sCfZ5r8UJN
— traci (@traaccii) June 12, 2016
このころのツイートは、またいずれ「まとめ」たいと思うが、何とか逃げ出した人が無事を報告するツイートもあれば、現場にかけつけた報道記者の実況ツイートや、クラブにいた人へのインタビュー映像のツイートもあり、襲撃されているクラブの中からのツイートもあった。クラブの中からのツイートは、その人がどうなったのかを私は確認する勇気を持たない。現場実況ツイートの映像で、私はあの音を聞いていた。
ともあれ、私が最初に事件に気づいてから2時間後くらいに、襲撃者は死んだという警察の確定がきた。そのときには死者数は「少なくとも20人」とされていた。一方、クラブにいた人は「店の中には少なくとも100人はいた」とインタビューで語っていた。何十人殺されたか、正直、わからない、と思った。事件を知ったときから、2015年11月13日のパリのバタクランが思い出されてならなかった。バタクランでは100人近くが殺されていた。客でいっぱいのクラブやライヴハウスのような場所で、客に向かって水平撃ちが行なわれたらどんなことになるか……
そして、襲撃者が死亡したことが確定された数時間後に、現場の惨状をまざまざと示す恐ろしい数字が伝えられてきている。
The number of casualties in the Orlando #PulseNightClubShooting is now 50. https://t.co/HASIyWQB0r
— Twitter Moments (@TwitterMoments) June 12, 2016
APの映像。
※この記事は
2016年06月13日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
- 「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」展(東京・六..
- アメリカのジャーナリストたちと一緒に、Twitterアカウントを凍結された件につ..
- パンデミック下の東京都、「コロナ疑い例」ではないかと疑った私の記録(検査はすぐに..
- 都教委のサイトと外務省のサイトで、イスラエルの首都がなぜか「エルサレム」というこ..
- ファルージャ戦の娯楽素材化に反対の意思を示す請願文・署名のご案内 #イラク戦争 ..
- アベノマスクが届いたので、糸をほどいて解体してみた。 #abenomask #a..
- 「漂白剤は飲んで効く奇跡の薬」と主張するアメリカのカルトまがいと、ドナルド・トラ..
- 「オーバーシュート overshoot」なる用語について(この用語で「爆発的な感..
- 学術的に確認はされていないことでも、報道はされていたということについてのメモ(新..
- 「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族..