「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2016年06月02日

被害者は200人とも…英国でも「最悪」と言われる性犯罪者は、「英語教えます」と、アジアの貧困につけこんだ。

TwitterのTrends (UK) に「リチャード・ハックル」という人名が入っていた。知らない名前だが、何となくクリックしてみたら、とんでもない奴だった。表示されていたニュース系のフィードにあった「英国で最悪のペドファイル(のひとり)」というフレーズに、「また報道が大げさなことを」と思いつつそのリンク先を見てみると、これは確かに「英国で最悪」だ。というか「英国でも最悪」、「英国ですら最悪」と言うべきか。

【この下は、ちょっとあんまりひどいので、「続きを読む」の先に置いておきます。当ブログのトップページ等からではなく記事個別URLから閲覧されている場合は、このあとわりとすぐにその「最悪」の話が始まります。】

Sky Newsの記事:
Prolific Paedophile Raped Babies And Toddlers
http://news.sky.com/story/1705318/prolific-paedophile-raped-babies-and-toddlers
Richard Huckle admitted 71 charges - but investigators believe he abused up to 200 victims in poor Christian communities.


これがヘッドラインとリード文だが、ここまでならまだ「ひどいことをする奴がいる(怒)」で済む。

ヘッドラインとリード文の下に、このリチャード・ハックルという人物の写真があるが、カールのかかった長髪にゴーティー(ひげ)で、ヒッピー系というかバックパッカー系の雰囲気で、平凡というかどこにでもいそうというか、道に迷ったときにこういう人がそこにいたら、特に躊躇することなく道を尋ねるだろう。

しかしその「普通っぽい」人物は、何十人という単位で子供に対する性犯罪をはたらいて、法廷で有罪を認めている人物である。

詳細は、さらにひどい。

Sky Newsの報道をざっとまとめると、この人物、リチャード・ハックルは30歳で、2006年から2014年(つまり20歳から28歳)の間に、生後6ヶ月から12歳の子供たち数十人に対し、犯罪行為をおこなった。本人が法廷で認めたのは71人だが、捜査当局では被害者は200人いるとも見ている。

ハックルが犯行を行なった場所はアジア。今回の裁判では、マレーシアでの犯罪で起訴されている。

グラマー・スクール(大学進学を前提としているような生徒が通う高校)を出た彼は、フリーランスの写真家で、宗教系チャリティ(クリスチャン)で活動し、英語を教える資格を持っている。こうして、貧しい地域に行き(マレーシアの場合、キリスト教徒は社会のマイノリティ)、子供たちへのアクセスを得るわけだ。

そして乳児・小児・幼児を強姦し、それをビデオや写真に撮影して、ダーク・ウェブのペドファイルたちに見せる。被害者の中には、7年という期間にわたって虐待を加えられていた子もいるという。

Sky Newsのこの記事にはないが、他の報道によると、ダーク・ウェブでクラウドファンディングのサイトを立ち上げて虐待の写真・映像を流し、アジアでの滞在資金を得ていたようだ。

Sky Newsのニュース映像。マレーシアのブリカンが制作したビデオにちょろっと出てきてるとか、どんだけ図太いんだか……自分が若い頃に英国政府系機関のプロモーション・ビデオに出た国で、貧困家庭をカモにとてつもなく卑劣な犯罪行為を重ねるとは:



ハックルはオーストラリア当局が英当局に連絡したのを受けて、2014年にガトウィック空港で逮捕された。裁判は以前から行なわれていたが、被害にあった子供たちがネットでほかのペドファイルの餌食になるようなことがないようにするため、捜査当局が時間を要請したため、報道管制がしかれ、今になって具体的な報道が為されているということだそうだ。

捜査当局は、ハックルのコンピューターに2万点の虐待の画像を発見したほか、ペドファイル仲間に向け、子供に虐待を加えても逮捕されずに逃れる方法についてハックルが書いたノウハウ集も見つかった。陪審が見なければならない証拠のビデオや写真があまりに大量で、検察は陪審が耐え切れなくなってしまわないよう、審理を3本に分けているという。

当初、1月の時点では、ハックルは91の罪状すべてを否認していたが、徐々に罪を認めるようになり、今では71件で有罪を認めている。判決は金曜日。

1件の容疑によると、「超大当たり。飼い犬と同じくらい忠実な3歳女児。しかも誰も気にしていないようだ("I'd hit the jackpot, a 3yo girl as loyal to me as my dog and nobody seemed to care.")」などと発言していたらしい(たぶんダーク・ウェブで)。

つまり、子供(3歳児)がそういう目にあわされていることを把握していても、周囲の大人たちは気にしていない。

このような「セックス・ツーリズム」で誰もが思いつくのはタイだと思うが(大物芸能人であるゲイリー・グリッターがタイでの児童買春で有罪になるなどしている)、ハックルの91件(本人が有罪を認めた71件)のケースはマレーシアだ。

だが、ハックルの「活動域」はマレーシアだけではないかもしれないと思う(被害者がいるかどうかはわからないが)。

Twitterでリチャード・ハックルという名前がTrendsに入ったときに、たまたまタイミングがよかったのだろうが、一番下までさかのぼることができた。一番下の数件は明らかに関係のなさそうな(「なんとか・リチャード・ハックル」という名前の誰かのことだったりする)ツイートだったが、今回の被告人のことと判断できるツイートもある。2015年11月30日にはオールド・ベイリーの裁判予定のbotがハックルの名前をフィードしている。また、2013年に「ビッグ・ファミリー・ミッション」という名前のキリスト教の慈善団体のアカウントが「ハックール・フォトグラフィーのリチャード・ハックル」に感謝している文面のFacebookからのフィードがある。

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「ビッグ・ファミリー・ミッション」の2つあるツイートのうち、1つのURLは既にページが削除されていると出たのだが、もう1つのURLは生きていた。「ハックール・フォトグラフィーのリチャード・ハックル」は、バンガロール(インド)の孤児院を訪れて、行事の写真を撮影したり、カメラ教室を開いたりといった奉仕活動をしていたようだ。(このときに何か犯罪行為があったかどうかはわからないし、私はそう主張しているつもりもない。)

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※画像はクリックで原寸。キャプチャだが、写真の部分にはモザイク処理をしてある。


ここにある「ハックール・フォトグラフィー」という名称でウェブ検索すると、flickrのページが出てくる。

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今FlickrのURLを叩いても404で、内容は確認できない(検索結果の画面に「画像」もあるので、そこを見ればキャッシュなどで残っているサムネイル程度の写真は見られる。それらを見ると、特に上手いフォトグラファーではないように思うが……)。

FlickrのAPIを利用している外部サイトで、誰かがFaveした写真をFaveしたほかのユーザーのFaveから、「たぶん同じ分野・同じ系統の写真」をまとめて見せてくれるサービスがあるのだが、「ハックール・フォトグラフィー」でウェブ検索したら、"「ハックール・フォトグラフィー」がFaveした写真" が含まれている(とGoogleの検索結果画面に表示されている)ページが見つかった。その写真そのものは、「ハックール」のFlickrアカウントが消滅しているので、こちらでも表示されていないのだが、そのページは「その写真と同じような傾向・ジャンルの写真」が集まっていて、それが、何というか……世の中のお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。子供や孫のむき出しのお尻がどんなにかわいくても、ウェブにその写真をアップするのはやめましょう。女の幼児の、スカートからパンツが見えてる写真もダメです。10歳くらいの少女のビキニ姿なんてもってのほか。。。と言いたくなるような内容。こんな写真がFlickrで公開されてるのかと愕然とするようなものもあった。

リチャード・ハックルが今回起訴された法廷で証拠として示された写真がflickrにアップされているとは考えづらいが、flickrはこういうユーザーも使ってるんだと思うと、ぞっとする。誰でもアカウントを作れるんだから、別に不思議ではないけどね。ボランティアに応募するときなどに「よければ行事の写真撮りますよ。普段から写真撮ってるんです」ということでflickrのURLが印刷された名刺でも渡せれば、それなりに格好はつくし(Proアカウントのバッジがついていればなおさらだ)、独自ドメインをとってflickrに転送するようにしたりもできる。

そういえばFlickrで、何年も前のことだけど、自分では写真をアップせずに他人の写真をひたすらfaveしていくというユーザーがいることがユーザーのフォーラムで問題になったことがある。ひとつには、「シェア」が前提のコミュニティーで自分からは何もgiveせず、他人のものをtakeだけしていくのはどうなのか、という問題。これは結局のところは「気持ち」の問題だし、どうしてもいやならブロックするなり鍵かけるなりすれば、ということなのだが、不自然に「子供の写真のコレクション」を作ってるのがいるということで、これは運営に相談していたんではなかったかと思う。

なお、「ハックール・フォトグラフィー」のウェブ検索結果にはFacebookのページも表示されているが、こちらもFlickrと同じく、現在は削除済みである。

さらに胸糞悪くなるようなツイートを、法廷から。











BBC記事:
http://www.bbc.com/news/uk-36429385
Huckle, a practising Christian, first visited Malaysia on a teaching gap year when he was 18 or 19. He then went on to groom children while doing voluntary work.


このBBCの記事には、リチャード・ハックルが使っていたダーク・ウェブのサイトのことが次のように説明されている。
Police in Australia and Europe were aware of a paedophile site called the Love Zone hidden in the so-called dark web. It was protected by passwords, encryption and specialist software. Users were totally anonymous.

The images and videos there were particularly disturbing - showing the abuse of babies and very young children.

Members had to post increasingly graphic material to remain on the site. There were tens of thousands of accounts.


このおぞましいサイトの開設者(アデレード在住のオーストラリア人の男)は、ネットでは匿名だったが、言葉遣いを元に調査を進めたオーストラリア当局によって特定、逮捕・起訴され、昨年「禁固35年」の判決を受けたという。

そして、このサイトの利用者の中でも際立ってひどいのがいた。それがリチャード・ハックルと特定され、オーストラリア当局から英当局に連絡が入り、2014年のクリスマスに英国に戻ったところ、ガトウィック空港での逮捕となったのだそうだ。

※この記事は

2016年06月02日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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